アプリケーションパフォーマンス管理 AppDynamicsの導入事例
株式会社ローソン様ユーザー視点によるシステムのパフォーマンス監視をAPMで実現
店舗や消費者からのリクエストにリアルタイムでレスポンスするシステムが増えているなか、大手コンビニエンスストアとして誰もが知る株式会社ローソンは、顧客の体感をリアルタイムで把握できる環境整備を進めています。そのための鍵となるのが、システムの停止やスローダウンを防ぎ、エンドユーザーの満足度を向上させること。パブリッククラウド上の業務システムに対する性能監視を的確に行い、社内の運用担当者でも容易に障害対処ができるツールとして、同社が採用したのは「AppDynamics」でした。
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背景と課題
新システムに対応するリアルタイムな状況把握のためにパフォーマンス監視ツールを検討
大川 直人 氏
消費者の意識が変化し、社会全体でデジタル化が進む近年、コンビニエンスストア業界でもシステムの次世代化が急ピッチで進行中です。
店舗や消費者からのリクエストにリアルタイムでレスポンスするシステムが増えているなか、1つのテーマとしてローソンが取り組んでいるのが、パブリッククラウドをデータセンターとして活用し、リアルタイムで状況把握ができる環境を整備することです。そのような基盤を実現するには、性能監視の仕組みについても見直す必要があると考えていました。
「お客様の間近でオペレーションしている店舗スタッフや、スマートフォンなどでサービスを利用されるお客様に、より良い『エンドユーザー体験』を提供するには、システムの停止やスローダウンは回避したいところです。しかし、当社がオンプレミス時代から使っているシステム運用では、クラウド上のアプリケーションについて適切なパフォーマンス監視が難しいことが分かりました」(大川氏)
例えば、サーバがダウンするようなことがあってもパブリッククラウドには自動復旧の仕組みがあるので、運用担当者が対処をする必要がないこともあります。
「深夜にサーバーダウンのアラートを受け、運用担当者が現地に急行したところ、既に自動復旧が実行され問題が解決済みだったため、現場では何もやることがなかったということがありました」(大川氏)
社内のさまざまな部門や、その委託を受けたベンダーによるシステム開発において、性能指標はそれぞれの使用するツールに委ねられていました。そのため、ローソンでは性能を把握することに苦労していました。
「アプリケーション開発については、社内で管理している部門や担当しているベンダーなど、各アプリケーションごとにさまざまです。そのような状況でシステム全体での性能指標を横断的に把握することが難しい状態でした」(大川氏)
また、エンドユーザー側でスローダウンが発生したときに、発生した要因の特定までにはたどり着くことができなかったり、時間がかかったりしていました。
選定と導入
AWS環境で動作しJP1と連携できる「AppDynamics」を選定
渡邊 雄一郎 氏
転機となったのは、2016年に始まった「次世代CVSシステムプロジェクト」でした。このプロジェクトでは多くの業務システムをパブリッククラウドのAmazon Web Services(AWS)上に構築することになっていました。そこで、1つの業務システムをパイロットシステムとして選び、開発・検証過程でパブリッククラウド対応であるアプリケーションの性能監視ツールを試してみることになったのです。
「最新のアプリケーションパフォーマンス管理(APM)なら当社の課題を解決できるのではないかと考え、2016年夏から数社のAPM製品についての調査・検討を開始しました。主な要件は、従来使ってきた統合システム運用管理『JP1』にフィットし、既存のサービスに性能劣化などの悪影響を及ぼさないこと。また、SaaSとして利用するのではなく、AWSのIaaS環境にスムーズに導入できて、ローソンの社員が容易に運用できるものであることも必要でした」(大川氏)
検討の結果、最終候補として残ったのは、日立ソリューションズが販売するアプリケーションパフォーマンス管理「AppDynamics」でした。ローソンは2016年12月からパイロットシステムのレスポンスタイムなど、性能を測定するためのツールとして、価値検証(PoV)を始めました。
導入がスムーズで、既存サービスへの影響がないことや効果的なデータが取得できていることを確認できたため、2017年3月から正式ライセンスに切り替えるとともに、「JP1」と連携するための「イベント通知連携ツール for AppDynamics+JP1/IM」の導入検討を開始しました。デジタルインフラソリューション部は「AppDynamics」を「AWS上にある業務システムのための標準的な性能監視ツール」に位置付け、他部署の運用担当者やソフトウェア開発者に利用を勧めていきました。
「店舗システム部では、新規の業務システム開発や、既存業務システムを更改する際に、AWSを基盤として使うことにしています。ある案件が始まろうとするタイミングで『AppDynamics』のことを聞いたため、性能テストの段階から使用してみることにしました」(渡邊氏)
「オンプレミスの業務システムについても、『システムのパフォーマンス監視』の視点を加えるために、可能な範囲で『AppDynamics』を適用したいと考えています。突発的に大量アクセスが発生するタイプの業務システムの場合、従来のやり方では障害対応に少なくとも1日は掛かってしまいます。『AppDynamics』では、そうしたタイムラグがなく、リアルタイムでパフォーマンスを監視できるというのは大きな魅力です」(石川氏)
成果と今後
システム環境における性能劣化の早急な特定により、平均復旧時間を60%短縮
石川 真也 氏
「AppDynamics」の導入効果は徐々に現れ始めています。
「最大の効果は、システムにわずかな性能劣化が生じた段階で障害の兆しをつかみ、大きな障害に発展する前にトラブルの芽をつめるようになったことです。また、システム環境を常に俯瞰的に監視することにより、ボトルネックを早急に特定できるようになりMTTR(平均復旧時間)を従来比で60%短縮できました」(大川氏)
「『AppDynamics』の管理コンソールに表示されるグラフはとても見やすく、メソッド単位で処理時間が把握できるので、原因究明と対処を素早く行えるようになりました。また、消費税改定の際にも『AppDynamics』を使うことで、深夜のサービス停止と切り替えを確実に実施することができました」(渡邊氏)
「オンプレミスの既存業務システムの一部についても、3カ月ほどで新しい性能監視の仕組みを提供できるようになりました。オンプレミス側からの性能情報をAWS上の『AppDynamics』コントローラーに送るだけでよいので、改修にもほとんど手間はかかりませんでした。現在では数分前の稼働状況をチェックできますから、新商品の発売開始日や、大規模トラフィックが発生するイベント日を、安心して迎えることができます。今後、オンプレミスで稼働しているほかの業務システムにも『AppDynamics』を適用していきたいと思います」(石川氏)
ビジネス視点の状況把握と可視化に「AppDynamics」を役立てるという構想もすでにスタートしています。ビジネスのKPI(重要業績指標)の中には、業務システムの品質指標が関与する部分も多くあります。経営幹部や事業部門と共有すれば、KPIという共通言語を使ったコミュニケーションが社内全体で盛んになることでしょう。
「『AppDynamics』のPoVから基盤の構築、ダッシュボード画面の作成、『イベント通知連携ツール for AppDynamics+JP1/IM』連携機能の開発、さらにソフトウェア開発者への教育や製品サポートについても日立ソリューションズが親身に協力してくれました。おかげで、当社の『AppDynamics』活用は順調に進んでいます。今後も、さらに詳細な分析・可視化機能を実装したり、リリースされた新機能を追加したりといった拡張を予定しています」(大川氏)
「AppDynamics」をビジネスの原動力として今後ますます活用していく同社を、日立ソリューションズは引き続き支援していきます。
株式会社ローソン
企業理念「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。」のもと、「マチのほっとステーション」をコーポレートスローガンに掲げ、コンビニエンスストア「ローソン」「ナチュラルローソン」「ローソンストア100」などを主にフランチャイズ方式で展開。国内47都道府県に14,659店舗(2019年2月末現在)を置くほか、中国、インドネシア、米国(ハワイ)、タイ、フィリピンに進出している。またSDGsの一環として、プラスチック使用量と食品ロスの削減にも取り組む。
本社所在地 | 東京都品川区大崎一丁目11番2号 ゲートシティ大崎イーストタワー | |
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設立 | 1975年4月15日 | |
従業員数 | 10,395人(連結:2019年2月現在) | |
事業内容 | コンビニエンスストア「ローソン」のフランチャイズチェーン展開 | |
URL | https://www.lawson.co.jp/ |
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本事例の内容は2020年4月10日公開当時のものです。
最終更新日:2020年4月10日