次世代CASB Forcepoint ONEの導入事例

京阪ホールディングス株式会社様・株式会社ビオスタイル様

背景と課題

初の自社運営ECサイト開設。求められた個人情報保護体制

京阪ホールディングス株式会社 経営統括室IT推進部 課長補佐
森岡 邦之 氏

京阪グループが取り組む、健康的で美しくクオリティの高い生活を実現し、循環型社会に寄与するライフスタイル「BIOSTYLE」。その新しいブランドを具現化するフラッグシップ施設として複合型商業施設「GOOD NATURE STATION」をオープンしました。1階は「GOOD NATURE MARKET」（市場食堂）、2階は「GOOD NATURE GASTRONOMY」（レストラン）、3階は「GOOD NATURE STUDIO」（ショップ＆サロン）というフロア構成です。そして、4階から9階までは「GOOD NATURE HOTEL」（宿泊施設）になっています。

企画と運営を担っているのは、京阪ホールディングスのグループ企業である株式会社ビオスタイル（以下、ビオスタイル）です。ビオスタイルは、「NEMOHAMO」（化粧品）と「SIZEN TO OZEN」（食品）の2つのオリジナルブランドの製造小売りも展開。これらの商品は、「GOOD NATURE STATION」内のショップだけでなく、施設オープンと同時にサービスを開始したオンラインショップでも販売しています。

「GOOD NATURE STATION ONLINE」の業務システムを構築するに当たって、全面的にクラウドを活用。流通業で実績のあるSaaS型のクラウドサービスの採用によって、高品質のシステムを短期間に構築することをめざしました。

「今回、お客様向けのコールセンターと配送センターを外部に委託していますが、そこでは商品配送や顧客対応業務のために、お客様の個人情報を利用することになります。『素早くサービスを立ち上げることと、当社の個人情報保護規程に従って、顧客の個人情報をいかに適正に管理するか』が会社としての大きな課題でした」（森岡氏）

このように、SaaS型のクラウドサービスを活用してシステム構築する場合、顧客の個人情報もクラウド上に保存されます。そのため、SaaSに対応した個人情報を保護する仕組みが必要でした。

「本格的な検討を始めたのが2019年8月頃、サイトリリースの予定は12月であり、それまでに個人情報保護の仕組みを決定して稼働させなければなりませんでした。また、ビオスタイルの運用担当者はITの専門家ではないため、専門知識がない人でも使いやすいものを求めていました」（森岡氏）

選定と導入

運用管理が容易な「Bitglass」を選択。わずか2カ月で実装を完了

株式会社京阪ビジネスマネジメント IT事業部
中山 大空 氏

もっとも、森岡氏には解決の方向性が見えていました。ユーザーによるクラウド内データへのアクセス制御や、データに対する操作の可視化などにより、クラウドサービスのセキュアな利用を実現するCASB（Cloud Access Security Broker）を使えば、SaaS側にある個人情報を適切に保護できるのではないかという見込みがあったのです。

「CASBについて以前から状況をウォッチしており、データ漏洩防止（DLP）という機能で、既存のSaaSに高度な情報保護機能を付加できると考えていました。今回CASBに求めた要件は、『顧客の個人情報を扱える人を限定すること』『万が一、データの取り扱いを間違えた場合でも情報の漏洩を防止すること』『セキュリティインシデントが発生したときも後追いできるようにすること』の3点。もちろん、『GOOD NATURE STATION ONLINE』が利用するクラウドサービスに対応していることも採用の条件でした」（森岡氏）

主要なCASB製品を調査した結果、2019年夏の時点でこれらの条件を満たしていたCASBは2製品のみでした。採用するサービスを決めるために、京阪ホールディングスとビオスタイルは製品評価（PoC）を2019年9月にスタートさせました。

「PoCでは、テスト用のアカウントを使って、クラウド上に用意したテストデータへアクセスし、どのようにコントロールできるかを検証しました。その結果、機能面での要件はどちらも満たしていましたが、PoC時のサポート面と稼働後の運用管理がしやすいという面で『Bitglass』の導入を決定しました」（中山氏）

2019年10月には実装作業を開始。この段階から、本稼働後にシステムの運用管理を担当するビオスタイルのマーケティング部スタッフもプロジェクトに参加し、日立ソリューションズの技術支援を受けながら作業を進めていきました。

「初期設定の作業では、日立ソリューションズにいろいろと助けられました」（中山氏）

「『Bitglass』のインストールから管理画面の設定まで、丁寧にレクチャーしてもらいました」（東氏）

実装作業では、社員と外部コールセンターの作業スタッフのアカウントを作成したうえで、それぞれの役割や職務に応じたアクセス権を設定。不正なダウンロードができないように、状況をリアルタイムにモニタリングしたり、ユーザーが行った操作を追跡確認できる体制を整えました。

「Bitglass」の実装が完了したのは、作業開始から約2カ月後の2019年11月末。個人情報保護を含む「GOOD NATURE STATION ONLINE」の業務システムは、2019年12月2日のプレオープン時から稼働を開始しました。

成果と今後

すでに施設内の他店舗にも適用を拡大。社内での活用も検討

株式会社ビオスタイル マーケティング部 リーダー
東 陽太 氏

新規ビジネスを短期間で立ち上げるためにSaaSをフル活用しながらも、クラウド上に存在する顧客の個人情報を確実に保護する――。「Bitglass」の導入により、京阪ホールディングスはこの目的を2カ月という短い期間で達成することができました。本稼働後の運用管理は、京阪ホールディングスIT推進部の支援を受けつつ、ビオスタイルのマーケティング部が実施しています。

「ITの専門家でなくても、『Bitglass』なら容易に運用管理ができます。例えば、業務上の理由があって、ファイルのダウンロードやアップロードをコールセンターに一時的に許可する必要が生じた場合も、10分ほどで設定を変更できます」（東氏）

個人情報保護に対する「Bitglass」の効果を確認した京阪ホールディングスは、他の業務への導入も検討しています。すでに、「GOOD NATURE STATION」内では、当初対象ではなかったトータルビューティサロン（ヘッドスパ・ボディトリートメント・ヘアメニュー・ネイル・スタジオ・カウンセリング）会員の個人情報を保護するために、「Bitglass」を活用中。京阪ホールディングスの社内でも、個人情報を含むファイルが、クラウドストレージにまぎれ込んでしまうといったリスクを回避するための仕組みとして導入を検討中です。

「極めて短期のプロジェクトでしたが、『Bitglass』が非常に導入しやすいサービスだったことと、日立ソリューションズから技術面でも支援してもらったことで、プレオープンまでに本稼働させることができました。『Bitglass』には多彩な機能が備わっていますが、当社が現在利用しているのはデータの漏洩を防ぐDLP機能だけです。ユーザー権限に応じたダウンロード制御だけに絞ったことも、短期導入の成功につながった要因でしょう」（森岡氏）

日立ソリューションズはこれからも、クラウドサービスを活用し事業の拡大をめざす同社を支援していきます。