SFAによる営業状況の見える化とBIツールでの経営可視化の導入事例
株式会社日立ソリューションズ営業プロセスのBPRを目的にSFAを再構築
データレイクと連携し、BIツールで業績予測をリアルタイムに実現
SFA*1を導入しても効果が見えないケースは少なくありません。
本事例は、SFAを再構築してBPR*2を推進し、データレイクにより他システムとのデータと連携し、BI*3ツールで業績予測のリアルタイム化を実現した事例です。
再構築以降は、業務コストを削減しただけでなく、業績目標の連続達成にもつながっています。
この事例に関するソリューション・商品
*1 SFA:Sales Force Automation(営業支援システム)
*2 BPR:Business Process Re-engineering(業務改革)
*3 BI:Business Intelligence(企業が持つ膨大なデータを分析し、経営上などの意思決定に役立てる手法や技術)
背景と課題
やらされ感の現場。導入効果はまったく見えず
秦 和男
SFAを導入したものの、入力する現場からは「余計な手間が増えただけ」と敬遠され、導入後の効果が見えないケースは少なくありません。
初期導入から10年が経とうとしていた当時、当社も同様の状態に陥っていました。
「SFAの抜本改革をミッションとして営業戦略部門に異動した当時は、データの質が悪く、量も不十分でした。ある程度の入力がある部門でも更新頻度が低く、中にはまったく入力していない部門もありました」(秦)
適正に入力されない原因はいくつか考えられます。
「まず、従来の他システムやExcelへの入力・集計業務を残したまま、SFAにさらに入力させていたことです。次に、SFAの入力項目が多すぎることです。幹部やマネージャは、いろいろな軸でデータを見たがりますが、その基となっているのは、現場が入力する1件1件の案件情報です。管理側の目線だけで、あれもこれもと入力項目を増やしてしまうと、現場は疲弊し、いい加減な情報を入れてしまうようになります」(秦)
入力負荷を軽減しさえすれば、SFAの入力量が増える訳でもありません。
「ビジネスにおいて百発百中はあり得ず、予算の何倍もの営業活動をしていることは誰もが認識しているのに、当時は予算数値に合わせて報告する習慣がありました」(秦)
SFAは、“勘”や“根性”といった従来の営業スタイルを脱却し、営業活動状況をデータ化し、そのデータを活用することで、“科学的”な営業スタイルに変貌させるためのシステムです。すべての営業状況が適正に入力されないと、SFAの効果を発揮できません。
「これまで表に出ていなかった営業活動状況をいかにして入力してもらうか、が最大の難関でした」(秦)
数値の集計や分析に相当なコストをかけていた
SFA以外にも社内システムにおいて大きな課題がありました。
当社はこの10年の間に、合併や事業移管などの再編を繰り返し、また、社内基幹システムを自社独自システムから日立グループのシェアードシステムへ切り替えたため、業務データが分散化され、データの収集、分析に相当なコストがかかっていたのです。
「まず、データを一箇所に集約し、可視化する必要があると考えました」(園田)
SFA再構築の取り組み
真のパイプライン管理の実現に向け本気のBPRを推進
園田 慶一
SFA再構築においては、不明瞭であった目的を明確化し、「真のパイプライン管理の実現」と定めました。
入力必須項目を極力少なくする、従来のExcelやメールで提出していた報告業務をSFAの入力のみで済ませるなど、現場の負荷軽減を考慮しながら適正な入力を促しました。また、SFAの教科書的概念にとどまらず、目的である「真のパイプライン管理の実現」を達成させるために、BPRの観点での業務改革・文化改革にも取り組みました。
「最大の難関であった『予算数値に合わせて報告する・すべての営業活動を表に出さない』という旧文化の打破には、管理指標を1つ削除しなければならなかったのですが、このたった1つの指標を削除するのにも、幹部やマネージャー、現場の説得に相当長い期間がかかりました」(秦)
データレイクの構築とBIツールでの業績予測の実現
パイプラインを表現するためには、基幹システムにある実績データとSFAシステムにある営業活動中のデータを連結させる必要がありました。
「2つのシステムを直接接続することも可能でしたが、それら以外のシステム連動や他業務への可用性も視野に入れ、データレイクでデータを集約し、BIツールで可視化させる方式を選択しました」(園田)
真のパイプライン管理の実現には、SFAにある営業活動中のデータから業績予測を算出して表現しなければならず、この算出には「受注率」を掛ける必要があります。
「この受注率は、営業戦略部の要望もあり、感覚的な定数を適用するのではなく、SFA上で1件更新する度に、AI的に精度を高め、常に進化し続けるように設計しています」(園田)
「SFAを更新する度に受注率が進化することは、現場の経営参画意識を高め、SFA入力を促進させ、データの質・量向上に寄与しています」(秦)
成果と今後
SFAデータの質・量向上により、再構築以降の全期で業績目標達成
再構築以降、SFAデータ量が日を追うごとに増加し、データの更新頻度も高まり、より質の高いデータが蓄積されるようになりました。何よりも大きな成果は、再構築以降の全期において、業績目標を達成し続けていることです。
「業績目標の連続達成は、SFA再構築やデータレイク構築だけが要因ではありません。ただ、リアルタイムにデータを共有し、精度の高い業績予測をシミュレーションすることで、スピーディーに次のアクションにつなげられていることは、業績目標達成に大きく貢献していると考えています。何よりも、1件1件を適正に入力する現場の皆さんの協力のおかげであり、心から感謝します」(秦)
システム運用コストの4倍の業務コストを削減
データレイク構築とBIツールの導入は、全社の業務コスト削減にも貢献しています。
「データの収集が容易になっただけでなく、BIツールにより集計や分析時間も激減し、ダッシュボードを見れば済む会議の多くを削減しました。また、データを全社公開することで、営業部門、事業部門、スタッフ部門間の他部門情報連携も活性化しました。これにより、年間で、システム運用コストの4倍の業務コストを削減し、利益に貢献している、という試算が出ています」(園田)
SFAから「経営ツール」へ
当社のSFA、データレイクは、これで終わりではありません。
「SFAは『営業部門が使うシステム』ではなく、『全社の経営ツール』と位置づけ、全社員が活用してデータを共有すべきものです。そうすれば、業績予測だけでなく、受注要因・失注要因から市場やお客様の購買動向を予測して、リソースシフトや商材開発につなげるなど、さらに現場に役に立つ情報をアウトプットできるようになります」(秦)
「また、お客様企業の統廃合などによる顧客マスタの改廃・名寄せや、入力データの揺れ補正などに対応していき、鮮度を保った情報提供基盤を維持・運営していくことが、現場に役立つ『経営ツール』として重要になってきます」(園田)
日立ソリューションズは、本事例も含めた豊富な実績とソリューションで、お客様の成長に貢献してまいります。
株式会社日立ソリューションズ
日立ソリューションズは、創業以来40年以上にわたり、情報システムやサービスの提供を通じてお客様や社会の人々と厚い信頼関係を築いてきました。今後も、日立グループの情報・通信システム事業の中核を担うIT企業として、お客様の抱える課題に対し豊富なITソリューションをワンストップでご提供する「ハイブリッドインテグレーション」を実現していきます。
本社所在地 | 東京都品川区東品川4-12-7(日立ソリューションズタワーA) | |
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設立 | 1970年9月 | |
従業員数 | 4,623名(単独) 12,379名(連結)(2019年3月31日現在) | |
事業内容 | ソフトウェア・サービス事業、情報処理機器販売事業 | |
URL | https://www.hitachi-solutions.co.jp/ |
この事例に関するソリューション・商品
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本事例の内容は2019年8月22日公開当時のものです。
最終更新日:2019年8月22日