ハイブリッドインテグレーションソリューションの導入事例
宝印刷株式会社様アプリケーションのクラウド基盤への移行や既存の自社運用基盤との連携等を実施
有価証券報告書などの企業内容の開示(ディスクロージャー)を支援する宝印刷株式会社。同社は、クライアント企業向けにディスクロージャーの電子化を支援するASPツール「X-Editor」を提供しています。同ツールのクラウド化検討に際し、システム基盤にマイクロソフトのWindows Azureプラットフォームを採用、システム開発は日立ソリューションズの「ハイブリッドインテグレーションソリューション」により、アプリケーションのクラウド基盤への移行や既存の自社運用基盤との連携等を行いました。
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システム導入の背景
システムの負荷低減とピーク時の安定稼働を目指して
「X-Editor」をASPで提供しはじめたのは2004年からです。「このツールは自社で管理するデータセンターにサーバーを置き、インターネット上で動作するシステムとして開発されました。ディスクロージャーのための電子データを編集、作成するためのツールをASPとして提供した背景には、ディスクロージャーが紙の印刷物から電子データに移行してきている流れがあります。企業が関係官庁に提出するデータは、各種財務報告書の情報を扱うXBRLというデータフォーマットで作成するのですが、電子データで開示すべき情報の範囲が徐々に拡大し、それに伴い、処理するデータ量も増大していきました(青木氏)」。
こうした背景に加え、ツールの使用が決算前に集中するという事情もありました。「日本の会社はほとんどが3月決算なので、決算前はシステムへのアクセスが集中します。処理すべきデータ量の増大に加え、繁忙期にシステムを安定的に稼働する必要がありました。こうした課題を解決し、お客様に更なる利便性を提供するために、システムのクラウド化を検討し始めたのです(田中氏)」。
近年は以下のような課題に直面していました。
選定のポイント
幅広い層の技術者がいるという安心感
開発ベンダー選定の際には、日立ソリューションズの「組織力」が決め手となりました。「日立ソリューションズにはX-Editorの中のXBRL編集ツールの重要なエンジン部分を開発していただいていました。自分たちのシステムを熟知してもらっているという安心感がありましたし、クラウドに精通した技術者を多数擁しているという点も安心してお願いできる部分でした(善場氏)」。
導入時の取り組み
セキュリティ確保のための"ハイブリッド"運用
青木 孝次 氏
X-EditorのXBRLツールがマイクロソフトの.NETフレームワーク上で開発されていたことから、クラウド基盤はWindows Azureプラットフォームが採用されることとなりました。「Windows Azureが発表された直後の2008年10月頃にクラウドへの移行の検討を始めました。社内にプロジェクトチームを立ち上げて技術的な検討を始めたのが2009年4月頃、日立ソリューションズに入っていただいたのは2009年の10月頃からです(青木氏)」。
「クラウド化のメリットが一番生かせるのがアクセス集中による負荷に応じて柔軟にサーバーをスケールイン、スケールアウトできる点です。ピーク時にシステムを安定的に稼働させるためには、かなりの台数のサーバーを用意する必要があります。これらのITインフラをすべて自社で所有するとなると相当な投資が必要となります。その点、クラウドは繁忙期と閑散期のギャップ、需要予測の見通しに対するリスクなどに柔軟に、スピード感を持って対応できる仕組みでした(田中氏)」。
今回のクラウド化の最大の特徴は、クラウド上で動作するアプリケーション部分と、自社運用のデータセンター内に格納されたデータベース部分とが連携する「クラウドとオンプレミスとのハイブリッド」な運用形態です。「私たちは、システムを一気に全面的にクラウド化できるとは認識していません。移行期間を設け、徐々にクラウド上で動作するシステムを増やしていくような導入イメージです。そうなると、移行期間中はクラウドとオンプレミスのサーバーが共存することになります。そこで、オンプレミスのサーバーにはお客様の重要な情報を置き、アプリケーション部分はAzureに置く運用としました(善場氏)」。
期待される導入効果
スピード感あるビジネス展開に期待
田中 洋一 氏
クラウドとセキュリティという点については、クラウド上に重要な情報を置くことに対する抵抗感というのは少なからずありました。「ただし、これはクラウドだからセキュリティが悪いということではありません。クラウドであれオンプレミスであれ、きちんとした管理体制下でデータの秘匿性を担保することが大事なことは言うまでもありません。こうしたデータの取扱いについては、データ管理のガイドラインやポリシーが確立され、実際にシステムがクラウドで運用される事例が増えてくれば、社会的な認知も変わってくるのではないでしょうか(田中氏)」。
目下、クラウド上での正式運用開始に向けての準備が進むX-Editorですが、サービスイン後の想定効果は、2つの側面から期待できます。「私たち営業サイドからは、クラウドという基盤上で新しいサービスを提供しやすくなると期待しています。クラウドであればサービス開始に必要なサーバーや施設などへのインフラ投資が最小限で済むので、スピード感を持ってビジネスを展開することが可能になると思います(青木氏)」。
「システムのパフォーマンスという部分で期待しています。性能の絶対値という点では、オンプレミスの方が優れている部分がありますが、ピーク時に安定的なパフォーマンスを発揮できるという点では大いにクラウドに期待しています(善場氏)」。
今後の展望
お客様へ利便性の高いサービスを提供するインフラとして
善場 正仁 氏
「このX-Editorを通じて、ディスクロージャーという分野で更にお客様に利便性の高いツールを提供していきたいと思っています。開示されるデータをどのように作成するか、どのように公開するか。利便性の高いサービスを実現するインフラとして、クラウドには大いに期待しています(田中氏)」。
「また、XBRLツールのクラウド化では何から何まで日立ソリューションズにお任せという感じで助かっています。クラウドの領域では日本一といわず世界一のベンダーになって欲しい。今後も他のベンダーでは望めないような質の高い技術とサービスを提供していただきたいです(青木氏)」。
宝印刷株式会社様
宝印刷株式会社は、ディスクロージャーならびにIR関連のコンサルティングを提供しています。情報化時代の新しいディスクロージャーのあり方として「e-Disclosure」を提唱し、スピード感をもったディスクロージャーを支援するための各種サービス、ソリューションの提供に取り組んでいます。
本社所在地 | 東京都豊島区高田三丁目28番8号 |
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設立 | 1960年4月 |
資本金 | 20億4千9百万円 |
従業員数 | 689名(2010年5月時点) |
事業内容 | ディスクロージャー並びにIR関連物のコンサルティング、制作、印刷、ディスクロージャーに関連するソフトウェアの開発と販売等 |
URL | http://www.takara-print.co.jp/ |
日立ソリューションズ担当者からのコメント
今回の特徴である「クラウドとオンプレミスとのハイブリッド」な運用形態。オンプレミスのデータセンター内にお客様の重要な情報を置くことで、セキュリティ面でもご安心いただけるのではないかと思います。クラウド化におけるセキュリティという点については、今後クラウド化が進んでいけば、社会的な捉え方も変わってくると思いますので、クラウドの啓蒙という意味でも、より一層努力していきたいと考えています。
また、日立ソリューションズでは、「Windows Azure Platform導入ソリューション」をご用意しており、導入にあたっての適用診断・計画策定から構築・移行までをワンストップでお手伝いしています。さらに、2010年10月からWindows Azure Platformの提供を開始し、当社から提供しているWindows Azure Platform環境をご利用いただいているユーザも増えてきております。
クラウド化を検討されているお客様をトータルサポートできる会社となれるよう、今後も上記のような取り組みや技術を一層向上させ、お客様のご期待にこたえられるように取り組んでいきます。
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本事例の内容は2010年11月19日公開当時のものです。
最終更新日:2024年2月27日