日立ソリューションズでは、「人財の多様性を引き出し、イノベーションを起こすためには、Will(やりたいこと)を持った強い個が不可欠である」ということを人財施策の中心に置き、さまざまな制度の改革などを進めてきました。多様な人財が、個性を最大限に発揮し、Willを持って、「自律的かつアジャイルに」チャレンジし続ける組織をめざしていきます。
日立ソリューションズがめざすDEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)実現に向けて、人事部門および営業部門の3人のリーダー達が、新たな人財制度の立ち上げ、また、社内副業の試行を開始しました。
人事総務本部
ダイバーシティ推進センタ センタ長
須加 深雪
人事総務本部
タレントマネジメント部 採用グループ
部長代理
石川 陽平
新卒で入社後、一貫して人事総務部門に所属し、組織・異動、役員、採用、労務、処遇、ダイバーシティ推進など幅広く業務に従事。また、合併や事業再編などの業務にも携わる。現在は、採用責任者として業務に従事し、キャリア(経験者)採用へ注力している。
人事総務本部
タレントマネジメント部 人財開発グループ
部長代理
槙田 理恵
営業統括本部 バリューチェーン営業本部
第2営業部 第3グループ 部長代理
吾郷 陽平
新卒で入社後、一貫して営業部門に従事。製造・流通業の営業から、パートナー営業など幅広く経験。2019年からは管理職として、組織運営・人財育成に尽力し、現場発信での社内副業制度の立ち上げにチャレンジ中。
須加:変化の激しい時代に、お客さまのニーズに応えるソリューションを提供し続けるためには多様性が不可欠であるため、当社はジョブ型人財マネジメントを導入しています。多様性の推進というと、一般的には女性などの属性への対応、育児や介護などさまざまな事情への配慮などが注目されがちです。これらが大切であることは言うまでもありませんが、多様性推進のための要素の一つであると思います。本質的には、一人ひとりが経験を積み重ねて個性を最大限に発揮し、「高い内発的動機=Will」を持って、「自律的かつアジャイルに」チャレンジし続ける人財のいる組織をつくりあげ、事業の成長に寄与していく。それが、当社のめざす多様性の姿です。
経験値を高める方法の一つとして、人事異動は重要な要素です。しかし私が入社した頃、当社は異動が少ない会社という実感がありました。それがこの3年ほどで劇的に変化し始めていると感じます。
各取り組みについて、お話を聞かせてください。
「エルダーマッチング制度」
石川:近年、さまざまな業界で、人手不足が深刻化する中、定年という区切りを設けず、能力や経験に応じて、活き活きと働く環境づくりが重要な課題となっています。当社においても、60歳以上の「エルダー従業員」に対して、より一層事業に貢献していただくことが課題でした。
このため、業務や処遇が限定的であった従来制度を大幅に改訂し、職務定義に応じた処遇を取り入れることで、エルダー従業員の「ジョブ型雇用」を開始しました。本人の知識や経験、ノウハウに合った職務を選択することで、これまで培ってきた能力や経験を活かして、働くことができます。
また、「エルダー従業員の経験やノウハウを活かしたい」という社内のニーズを踏まえて、「エルダーマッチング制度」を立ち上げました。本人がシステム上に公開した職務経歴を各職場で閲覧し、スカウトすることができる制度です。スカウトに両者が合意すれば、部門を跨いで働くことも可能です。
これらの制度は、今後もブラッシュアップを図りつつ、エルダー従業員がよりやりがいを感じられる環境の実現をめざしていきます。
「若年層ジョブマッチング制度」
槙田:若手従業員のキャリア意識を醸成し、自律的なキャリア形成、成長を促すための制度として、「若年層ジョブマッチング制度」を2022年度より開始しました。本制度では、新卒入社3年目の従業員全員が社内求人への応募もしくは現在の部署での勤務継続を自ら選択することができます。
本制度を立ち上げるに至った背景として、社会環境が大きく変化していく中、若手従業員が自身でキャリアを考え、Will・Can・Must(*1)が重なりあった環境の中で、「Can=できること」を自律的に磨き、成長していくことが必要と考えました。また、当社は入社直後の新入社員教育期間に配属先を決定しますが、実際に働いてみないと「具体的にどのような業務を行うのか」「この仕事は自分のやりたいことにつながるのか」などがよくわからず、仕事をしてみて「実際と想定が違った」「実務をしてみたら希望が変わった」というケースについて、対応が難しいことも課題としてありました。
この制度の活用により、若手従業員が自分のキャリアについて考え、それを実現する環境として他部署へ異動するか、または、今働いている部署で仕事を継続するかを考えることができます。自分の仕事に改めて向き合うことが成長の加速につながると考えています。また、従業員が異動することで、他部署での経験やノウハウを持ち込むことになり、組織の中で多様性が生まれてくるというメリットも考えられます。
本制度は導入初年度から実際に部署を異動した従業員が十数名出てきました。対象者の約1割です。SE(システムエンジニア)として働いていた事業部門の従業員が、お客さまへの提案業務に携わりたいと営業部門へ異動した例や、システム開発の上流工程を中心に担当していた従業員が開発工程から関わりたいと自社製品の開発を行う部署へ異動した例などがあります。実施後の対象者へのヒアリングからは「今後のキャリアに真剣に向き合うきっかけになった」「仕事がわかってきた時期に自分の意思で異動できるのがよい」「選考を通して考えることで、今の部署で経験を積むべきと決断できた」などの声が上がっています。
上司側のアンケート結果も、「自身の人財マネジメント意識に変化があったか」という問いに対し、8割が「意識が変化した」という結果となり、「人財マネジメントについて考える良い機会になった」「組織活性化の制度として良い」「他社へ転職されるよりも、できれば社内で活躍してほしい」などの声をいただきました。
このように、組織としての理解・協力を得ながら、若手従業員一人ひとりが自律的にキャリアを形成し、成長するための基盤をつくることができたと思います。従業員一人ひとりが、やりたい仕事を見つけて、多様な人財がチームの中で活躍することで、環境や社会の変化にも柔軟に対応できる会社にしていきたいと思います。
*1: Will「やりたいこと」・Can「できること」・Must「やらなければならないこと」を整理する、キャリアプラン策定のためのフレームワーク。
吾郷:営業部門で、所属する部署から異動せずに、自部署の仕事を行いながら、他部署のジョブをサポートすることができる社内副業の試行を開始しました。
私は、営業部門の所属なのですが、以前、出産休暇、育児休暇に入る部下の休暇前に業務を引き継ぐ際、なかなか引き継げる従業員を社内で見つけることができなかったという苦い経験がありました。部署を異動するとなるとハードルが高くなり、どこの部署でも人財が不足しているので容易ではありません。この問題に頭を悩ませていた頃、他社では社内副業の制度があることを知り、「当社でも取り組んでみよう」と思い、管理職や人事部門にも働きかけて、営業の一部の部門で試行的に始めました。
このように、他部署のジョブをサポートすることで、リソース不足問題を解決するだけではなく、募集業務に対して、自分のWill(やりたいこと)に近いものがあれば、業務のサポートを通じて本人のやりがいや成長(EX向上)にもつなげることができます。
2022年の後半から、社内副業の試行を開始し、2022年度は、11件の募集に対して9件のサポート実績がありました。体験者からは、「チャレンジしてみて良かった」「人脈が広がった」「異なる営業スタイルを学ぶことができた」などの声が上がりました。営業の中でも違う部署の従業員同士が交わることにより、互いに良い影響を与えていきながら、組織の中で、イノベーションが起きることを期待しています。
現在、営業部門で試行しながら制度設計を行っていますが、今後は社内全体にも広げることで、人財が育つ会社にしていきたいと考えています。
今後、当社がどのような会社になっていくことを期待されますか。
須加:当社は仲間を大切にし、チームワークを重視する企業文化を持っています。それは利点である反面、時には多様な個を押し殺してしまったり、内向きで自己よりチームを優先しすぎたりする可能性を持つものでもあります。今回取り上げた事例は、単に新しい人事制度を導入したという話ではありません。それぞれの立場にいる三人のミドルマネージャーが、「高い内発的動機=Will」を起点とし行動し、議論を重ね、改革を試みた事例です。彼らの熱意や変革のプロセスを共有する事で現場のマインドも変わっていきました。そしてそれに応え、制度を利用し自らの可能性を開かせようとしている従業員がいます。
「従業員一人ひとりが仕事を通じて自身の意思を実現していく」。そのように、輝く人財であふれた会社にしていきたいと思います。