さらなる女性活躍の推進で 多様な人財が自分らしく輝く組織へ
企業が必要とするイノベーションに多様性は欠かせません。日立ソリューションズでは、性別・国籍・年齢などを問わない多様な人財を登用し、持てる創造力を最大限に発揮できるよう組織の活性化を図ってきました。女性活躍をサポートする制度の拡充にともない、働くすべての人のワークライフバランスの向上に努めています。誰もが自分らしく、描いたキャリアライフを満喫できる組織づくりをめざしています。
株式会社日立ソリューションズ
執行役員
ITプラットフォーム事業部 事業部長
月折 郷子
入社直後よりソフトウェア製品の開発に従事。ITソリューション・サービス本部長を経て、2021年にITプラットフォーム事業部 事業部長、2022年 執行役員に就任。経営基盤強化に向けた戦略策定、コミュニケーション活性化支援、対外的な発信などの重責を担う。
株式会社日立ソリューションズ
デジタルインサイト・サービス本部
デジタルインサイト・サービス第1部 部長
山田 裕子
データ活用基盤構築やBIソリューション導入で、データドリブンなビジネス戦略に取り組む企業を支援するかたわら、100名超の多様な人財を擁する部署のリーダーとして、各自のライフプランにマッチしたキャリアアップの実現をめざし、奮闘する日々を送る。
女性活躍推進に先駆 日立ソリューションズのDEIの歴史
経緯をお聞かせください。
月折:私が就職活動をしていた当時、女子の求人はあまりありませんでした。IT業界は女子も含めて採用意欲が旺盛で、先輩の女性もいたことから入社することになりました。
ちょうどPCが世に出回りはじめた頃、私は教育学部の学生でした。大きなデスクトップマシンが研究室にも導入され、実習で実施した社会調査の統計データの分析をそのPCで行うようになりました。調査結果をデータベース化して分析、結果を発表するという作業を通じて、これからは情報化の時代になる。ITはますます進展するだろうと確信を持つようになっていたのです。
面接時に、当社では多数の女性従業員を採用していること、処遇などは男性と変わらないこと、男子寮だけでなく女子寮が用意されていることなどを知りました。今にして思えば、当社は、早くから女性活躍推進に真剣に取り組んできた、DEIにおける先駆的な企業だったのだといえると思います。
入社後は、OSの開発プロジェクトの担当になりました。そこで一から、本格的なプログラミングの経験を積み、2017年にITソリューション本部長を拝命しました。製品およびソリューションの開発とサービスの提供を行う部署です。今までの業務で経験してきた内容内容とはまったく異なるビジネスモデルに戸惑うことしきりでした。苦労が大きかっただけに、みなさんの頑張りで予算が達成できたときの感動は今も忘れることができません。
現在は、ITプラットフォームの事業部長としての職務が主要な業務です。年度予算の達成に向けた施策、3年ごとの中期経営計画の策定、その実現のための戦略づくりをはじめ、組織を活性化していくためのさまざまな取り組みに従事しています。
山田:私は主に、BIやDWH(*)、AI関連の事業に関わっています。当社のお客さまのほとんどがDXを推進されている企業です。私たちの部署では、企業内のデータをどのように活用すればDXやSXの取り組みにつなげられるかを考えて提案し、その推進にあたっています。データドリブン経営を意識されるのは上位職の方ですが、現場が必要な時に必要なデータにアクセスし、企業全体でデータ活用を促進するデータ駆動型の組織構築も必要です。こうした仕組みをつくり支えているのが私たちの仕事です。
*BI(Business Intelligence):蓄積・統合されたデータを可視化・分析し課題解決に役立てる技術。データドリブンの考え方の基礎になる。
*DWH(Data Ware House):さまざまなシステムからデータを集めて整理する、データの「倉庫」。
女性のステップアップを周囲がサポート
月折:産休・育休で1年半ほどお休みさせていただきました。課長職への昇級の話があったのは、育休明けから半年ほど経ったときのことでした。子どもの保育園への送り迎えもひと仕事です。育児をしながら課長がつとまるのかと不安で、正直、プレッシャーはかなりありましたが、直属の上司も相談にのってくれ、会社が伴走してくれるかたちで、現実的に必要な制度を拡充してくれた気がしています。
山田:タイミングよく、私が出産した時期と、シンクライアントの配布時期とがうまく重なりました。シンクライアントのおかげで在宅勤務がスムーズに行えるようになったこともあり、産休から10か月で業務に戻ることができました。課長を拝命する際には、復帰して日も浅い私が、メンバーに指示を出すといった組織運営に関わる大役を、育児と両立させていけるのか。不安や葛藤はありましたが、時短勤務をはじめとする制度をフル活用することで、子どもの成長を見守りながら、家庭優先で仕事をすることができました。当時の上長の理解あるサポートがとても心強く感じられました。部内の他の課長さんたちも連携して私を支えてくれ、仕事の悩みを聞いてくださるなど、助けていただいたことに心から感謝しています。
同期の女性従業員とのつながりも支えになりました。女性同士でなければ話せないこともありますので、育児の悩みを共有できる存在は、やはりありがたいものでした。
*シンクライアント:クライアント端末の機能を最小限の構成にし、アプリケーションの実行やデータの保持をサーバー側で行う仕組み。在宅勤務などのテレワークに適しているとされる。
山田:私が担当する業務の領域は、データがすべての基本になります。社内のあらゆる部署の情報を収集し、そこから生まれたデータをどのように活用していくかを考えるのが私たちの役割です。例えば基幹システムであれば、構築を担当している事業部と連携して業務内容を吸収し、そのデータ活用の提案へとつなげていきます。また、その逆の場合もあります。お互いに情報共有し合いながら活動を進めています。
これは当社の風土的なものが影響しているのかもしれませんが、事業部間の垣根を感じたことはありませんし、何かあると相談ができるオープンな関係性が築けています。
1on1コミュニケーションで 将来を見据えたキャリアプランを一緒につくる
ついての考え方を教えてください。
月折:社会の動向として、転職によってキャリアアップをしようという考えを持つ人が若い世代を中心に増えているように思います。特に、IT業界はその傾向が強いといえるでしょう。ステップアップや経験値を増やすためのチャレンジは大切なことです。
当社では、男女を問わず、自身でキャリアを考え、社内の求人へ応募できる機会をいくつか設けています。その一つが「若年層ジョブマッチング制度」です。現在、当社には6事業部がありますが、展開している事業は多岐にわたっており、さまざまな活動をしています。そこで入社3-5年目を対象に、本人が希望する他部門への異動を実現する制度ですが、転職の抑止につながるだけでなく、エンゲージメントの向上にも確かな効果を発揮しています。
また年齢に関係なく、マッチングの範囲を日立グループ全体に広げたFA制度も導入しました。募集に対し、所属する組織には伏せたままで応募することができます。希望がマッチした場合、送り出す部署にとっては痛手にはなりますが、人財を募集する側、また従業員にとってもジョブの選択肢が、事業をグローバルに展開する日立グループ全体の職種へと飛躍的に広がったことで、制度を利用する側にとってのメリットは計り知れません。グループ内で人財を流動的に活用できることは、SXという視点からも大きな意味を持っていると思っています。
さらに、海外で活躍する人財育成のための「スタートアップ創出制度」や、50代のベテラン従業員を対象とした「プロフェッショナルエルダー制度」などもあります。
山田:ライフプランやキャリア形成について、直接、本人から話を聞くために、月に1度の頻度で1on1の対話を実践しています。仕事に限らず、育児などの悩みの相談にのることもありますが、自分のスキルを活かすためにどうすればよいかといった仕事の相談も受けます。適性を考慮しつつ、その人にふさわしいと思うキャリアの道をアドバイスしたり、ジョブディスクリプションを活用し、スペシャリストとして自分に見合った業務や報酬を得る職種に就けることなどを紹介しながら、将来を見据えたキャリアプランを一緒に考えていくようにしています。
DEIはこれからの経営に必須のマネージメント
月折:一人ひとりが違うという前提にたったマネジメントが必要だと感じています。当社には多様な人財がいますが、各自が抱えている事情や抱いている希望もさまざまです。思うようにパフォーマンスを発揮できない時期もあれば、介護の都合などで遠方に居住しなければならない人、経験値を増やすために海外をめざす人もいます。すべての従業員のライフプラン、キャリアプランを実現できる環境をどうやって整えていけるか。これからの組織マネジメントに問われているのはこの点です。人口減少が激しくなり、今までとは異なる観点で労働人口を維持し拡大していく必要性が生じています。DEIはこれからの経営に必須のマネジメントであり、まさに組織そのもののSXの話だと言えるのではないでしょうか。
山田:まさに私の部署には、若年層若手ジョブマッチング制度を利用した人、退職後にアルムナイネットワークを活用して、当社とのコミュニケーションを保ちながら復職した人、プロフェッショナルエルダー制度を利用した人もいます。九州で親の介護をしながら仕事を続けている課長や、看病が必要なお子さんを抱えているメンバーもいます。それぞれの状況を理解し、立場を尊重し合って仕事ができる環境が構築できています。誰もが、いつそういう立場になるかわかりません。お互いに、他の従業員社員や周囲の環境を考慮しながら仕事に取り組んでいけたら、みんなが働きやすくなり幸せを感じられますよね。
何かを犠牲にしてまで仕事をこなしたり、家庭の都合で退職したりする人を増やしたくはありません。そのためにも、コミュニケーションの重要性を痛感しています。もちろん合意形成がなければ成り立たない関係ですので、みなさんの仕事への想いと、私たちが期待していることを明確に伝えあうように心がけています。
*アルムナイネットワーク:日立ソリューションズでは、協創できる相手を探すという視点で、退職者のネットワークをつくり、再雇用を仕組み化している
月折:女性活躍に前向きな企業は、女性にも男性にも働きやすい会社という認識が、ようやく社会にも浸透しつつありますよね。当社では、出産・育児、介護といったライフと、ワークとをバランスよく両立させる制度の充実を、他社に先駆けて実現してきました。かなり高い水準で整備されていると思っています。
私たちは、SXという言葉を使い、将来のビジョンを鮮明に打ち出してきました。DEIを支える制度の充実ともあいまって、当社の取り組みへの理解が社内外に広がっていることを感じています。社内コミュニケーションの活性化にも良い効果をもたらしています。心理的安全性を確保することによって生まれた「よい」空気の循環は、風通しの良いコミュニケーションだけでなく業績の向上や個々人のライフプランの充実にもつながっていくものです。自由な風土を盛り上げ、チャレンジするマインドを醸成していきたいと思っています。
山田:部署を超えたコミュニケーションが可能になる仕組みが、横断的にあるといいですね。
月折:今、私は職位の異なる人たちとの縦・横・斜めのコミュニケーションを積極的に進めています。意識しないと決まった人だけの閉鎖的なコミュニケーションに陥りがちです。みなさんがもっと元気になれる横断的でオープンなコミュニケーションを実現する仕組みを、一緒につくっていきましょう。