コラム

建設業向けソリューション

建設業の生産性向上|鉄筋出来形検測の効率化を解説

労働人口の減少は、さまざまな業種で人手不足の状況を作り出しています。しかし、今後も労働人口の十分な回復は期待できず、速やかな対策が求められる状況です。特に建設業では人の手による作業が必須であり、労働者の高齢化の問題とも相まって、重要性、至急性の高い課題となっています。

生産性の向上は人手不足への有望な対策ですが、そのための具体的な施策となるのが、デジタルトランスフォーメーション(以後、DX)の推進の一環となるICTツールの活用です。この記事では、前半に生産性向上における課題や改善策について、後半にDX化にともなって注目を集める「鉄筋出来形検測」についてそれぞれご紹介します。

360度カメラの普及と活用

1.建設業における生産性向上の課題

今、さまざまな業種の企業活動で重要視されている課題の一つに、生産性の向上があります。

生産性向上とは、投資する経営資源に対して得られる効果の効率性を向上させることです。資源には、金銭に加え人的リソース、期間などが含まれており、より少ない期間と人的リソースにより業務を回すことが利益を上げるために必要となります。また、人的リソースや期間といった資源は有限であり、限られた資源内で成果を出すことも重要です。

特に建設業においては、以下のような背景から生産性向上が強く求められています。

1.1.人手不足を補う労働力の確保

建設業が抱える課題として挙げられるのが、人手不足です。現場では人の手による作業が欠かせませんが、日本全体が抱える人手不足の現状が建設業においても大きくのしかかっています。

厚生労働省の不動産・建設経済局による令和3年「最近の建設業を巡る状況について【報告】」では、建設業界の人手不足についての状況があらわになっています。建設業の就業者数の推移はピークだった平成9年と令和2年を比較すると約28.1%減少しており、技能者数も約31.1%減少と、働き手の数が減っていることがわかります。

また、就業者の高齢化も進んでおり、令和2年時点では建設業就業者の約36%が55歳以上(全産業平均は約31.1%)で、平成2年の調査開始以降ほぼ右肩上がりの傾向を示しています。特に令和元年から令和2年の間では55歳以上の就業者数が約1万人増加しており、その勢いは顕著です。

この現状はすぐに解決できるものではなく、生産性向上や業務効率化による人手不足への対処が求められる理由となっています。

1.2.工数のかかる事務作業が多い

建設業では、工事現場での業務に加え事務作業も多く存在します。現場の状況を示す写真の管理、工程表や見積書の作成など、事務作業に必要となる人的リソースは少なくありません。このことも生産性の向上を妨げる要因となっています。

1.3.対面でのコミュニケーションを求められる場合が多い

建設業では高い安全性や正確性が求められるため致し方ないところもありますが、作業指示や図面の共有などで対面のコミュニケーションが重視される傾向が強いことも、生産性向上を阻害する要因の一つです。テレワークの導入は非常に難しく、作業効率を低下させる結果につながっています。

2.建設業の生産性向上のためには

建設業において生産性向上をめざすためのポイントには、以下の3つがあげられます。

2.1.ICTツールを活用する

業務の生産性を高める有効な施策の一つが、情報通信技術(Information and Communication Technology、以後ICT)ツールの活用です。ICTツールを利用すれば作業者1人当たりの作業効率を高めることができ、現場全体の生産性を向上できます。

ICTツールを活用する具体的な場面としては、測量や施工管理、検査などがあげられます。この記事の後半では、中でも注目を集める「鉄筋出来形検測」について詳しく解説しておりますのでぜひご覧ください。

2.2. 業務の見える化をおこなう

業務を見える化(可視化)することも生産性向上において重要なポイントです。

見える化とは、業務の状況を細かに収集し、目に見える形にまとめ、関係者間で共有することです。ICTツールを用いて見える化を実現すれば下記のような効果が期待でき、生産性向上につながります。

  • ● 現行業務での改善余地の分析
  • ● 作業の効率化の提案
  • ● 情報の共有による作業属人化の排除

2.3.従業員のモチベーション維持

生産性の向上においては実際に作業する人員のモチベーション維持も重要であり、現場の管理者による適切なマネジメントが必要となります。ICTツールの導入によってこれまで煩雑だった作業が効率化できれば、従業員のモチベーションは維持され、作業の品質向上が期待できます。

3.建設業ではDX化が求められている

360度カメラの普及と活用

近年、生産性向上の有効な手段として、建設DXへの取り組みが推奨されています。

DXとは、デジタル技術を用いて業務を変革し、効率化や新たな価値の創出をめざすことです。ICTツールを用いた生産性向上は、DXの実現の一環といえます。

DXの推進にあたっては、経済産業省や国土交通省など国の機関や建設業界が力を入れて取り組んでいます。多くの業務がDXの対象となりえますが、まずは一つずつ対処していく必要があります。

4.建設DXにともなって注目されている【鉄筋出来形検測】

その業務の煩雑さからICT活用による効率化が期待されているのが鉄筋出来形検測です。

内閣府の官民研究開発投資拡大プログラム(通称:PRISM)の一環として、国土交通省の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」にも取り上げられた業務で、注目を集めています。

国道交通省は令和5年、「デジタルデータを活用した鉄筋出来形計測の実施要領(案)」を発表しており、今、鉄筋出来形検測のデジタル化は建設現場改革の手段として注目を集めています。

現行の鉄筋出来形検測は、実施に向けた備品の持ち運び、片付け、アナログな手法による記録など多くの手間がかかり、計測に多くの人員が必要となることも課題の一つです。

これらの課題の多くは、ICTツールの導入により解決できます。機器の小型化による運搬や片付けの人員削減、計測における即時記録やデータ整理の高速化、実作業の人員削減などが期待できるためです。

一般的に、鉄筋出来形検測には下記の工程が存在します。

  • ● 紙面での情報管理
  • ● 準備・計測・片付け
  • ● 写真の管理
  • ● 帳票の作成

これらの工程を踏まなければいけないことに加え、計測作業では複数の人員で作業に取り組まなければならないことや、発注元が立会検査に出席しなければならない点も、作業の生産性低下につながる課題です。

しかし、「GeoMation 鉄筋出来形自動検測システム」を利用すれば、タブレットで鉄筋を使った現場の状況を撮影するだけで、準備・計測・片付けと写真の管理、帳票作成までを自動出力できます。また、これまで複数人での作業が必要だった計測の作業人数を減らす効果もあります。

計測結果についても、Web会議システムなどで遠隔の発注者とも共有でき、立合検査の負担軽減も実現します。

5.ICTを活用した鉄筋出来形検測のメリット

ICTを活用した鉄筋出来形検測について具体的なメリットを、日立ソリューションズが提供する「GeoMation 鉄筋出来形自動検測システム」を活用した場合の例としてご紹介します。

GeoMation 鉄筋出来形自動検測システムを活用すると下記のようなメリットが得られ、鉄筋出来形検測にかかる時間を最大1/3に短縮することが期待できます。

5.1.遠隔地との情報共有が可能になる

GeoMation 鉄筋出来形自動検測システムを利用した計測は、Web会議システムを利用して遠隔地との情報共有ができます。従来の鉄筋出来形検測では発注者の現場での立会検査が必要でしたが、GeoMation 鉄筋出来形自動検測システムを活用することにより発注者側は現場への移動時間を削減可能でき、現場側は事前の日程調整が不要となります。

5.2.1人での計測作業の実施が可能

従来の計測では、計測作業は複数人でおこなうことが一般的でした。計測のための機器などが多く、その運搬や計測の補助に人手が必要だったためです。

GeoMation 鉄筋出来形自動検測システムを活用した計測では、デプスカメラを搭載したタブレットを1台用意するだけで計測が可能です。持ち運ぶ物品が減り、作業も1人でおこなえるため、現場作業の作業人数の削減・効率化につながります。

5.3.事前準備が不要でデータの取得・管理が容易

GeoMation 鉄筋出来形自動検測システムでは計測前の事前準備が必要ありません。ツールを用いて取得したデータは粒度が揃っているため、管理も容易です。管理のための手順も従来に比べ簡素化されるため、業務の属人化防止にもつながります。

6.まとめ

建設業では、人口減少による人手不足や事務作業の複雑さなどにより、業務の生産性をいかに向上するかが大きな課題となっています。その解決のためにはDX推進の一環ともなるICTツールの活用が重要です。

建設業のDXのなかでも、その効果が期待され、実現に向けて国土交通省も力を入れているのが、鉄筋出来形検測のデジタル化です。日立ソリューションズが提供する「GeoMation 鉄筋出来形自動検測システム」を活用すれば、鉄筋出来形検測の作業時間を最大1/3まで短縮できます。ぜひご利用をご検討ください。

この記事に関連するサービス

GeoMation 鉄筋出来形自動検測システム

鉄筋の出来形検測をスマートデバイスで自動化。作業時間を従来の3分の1に短縮。
国土交通省の「デジタルデータを活用した鉄筋出来形計測の実施要領(案)」に対応。

GeoMation 鉄筋出来形自動検測システム

デプスカメラ(対象物までの距離を計測するカメラ)を搭載したスマートデバイスを活用し、配筋間隔を自動で計測し、計測結果をデータとして記録します。多段配置された鉄筋も正確に抽出することが可能です。ロッド(メジャー)を使用した手作業での計測よりも大幅に短い時間で、だれでも簡単に計測できるため、現場の生産性向上と人手不足解消に貢献します。

その他コラム一覧

建設業向けソリューション コンテンツ一覧

関連商品・キーワード