デジタルマーケティングソリューション
「個客」データ活用による
デジタルマーケティング
システムインテグレータならではの視点でデジタルマーケティングの枢要を解説
「宣伝会議 インターネット・マーケティングフォーラム2018」出展レポート
6月5日と6日の両日、株式会社宣伝会議が主催する「インターネット・マーケティングフォーラム2018」が、東京・赤坂にあるANAインターコンチネンタルホテル東京で開催されました。
12回目を迎えた今回のフォーラムでは、「Industry Innovation ~新しいルールをつくる人たち~」をメインテーマに、デジタルを駆使した「顧客体験」で急激にシェアを獲得する新しいプレイヤーによるデジタル・ディスラプションのトレンドや、自らがイノベーションを起こしルールをつくるゲームチェンジャーによるデジタルテクノロジーの実践例などが公開され、多彩な議論が交わされました。
日立ソリューションズも展示ブースのほか、セミナー講演も行い、多数の訪問者・参加者を迎えて大変注目を集めました。その概要をお伝えします。
「個客」データ活用によるデジタルマーケティングを
支援するソリューションを展示
この数年、デジタルマーケティングを重要戦略のひとつに据える日立ソリューションズは、今回初めて当フォーラムへの参加を行いました。
当社の企業ブースでは、『個客』データ活用によるデジタルマーケティングをメインテーマとし、ファンクラブやポイントプログラムの会員管理を目的としたデジタルマーケティングソリューションを複数展示しました。
その中で、メイン商材として紹介したのが、ファンクラブ運営のためのトータルCRMソリューション「Fan-Life Platform」(ファン・ライフ・プラットフォーム)です。スポーツ業界や、エンターテイメント事業、商業施設、アミューズメント施設などの、集客や会員へのサービス向上を必要とする企業が、お客さまの趣味・趣向を把握し、「見込み客」を「ファン」に育成することで、会員数の増加、離脱防止、客単価向上などを実現します。
もうひとつの目玉は、ポイント管理ソリューション「PointInfinity」(ポイントインフィニティ)。
日立ソリューションズがこれまで培った大規模ポイントシステムの構築経験を生かし、企業と利用者をつなぐ、安心、安全なポイントシステムとして開発した商品です。店舗・ECサイト・Webサービスなどの顧客情報を一元化し、多様なチャンネルのポイントを共通化することで、顧客情報の統合管理や、収集したデータのマーケティング分析、販促キャンペーンの展開、加盟企業・店舗間の相互送客と囲い込みなどを実現します。
その他にも、AIで有料会員増や売上増、来店・来場増を支援する「会員活性化支援AIソリューション」や、マーケティングのPDCAサイクルを実現する統合マーケティングソリューション「SAS Marketing Automation」、データ分析基盤を整備してデータアナリティクスを高度化する「SAS データアナリティクスソリューション」なども紹介し、来場者の関心を集めていました。
これまで、こうしたCRM製品は、情報システム部門向けにアピールすることが多かったのですが、マーケターを対象とした当フォーラムでは、マーケティング部門や販促部門などの方々も多数訪れていただき、直接アピールできる貴重な機会となりました。
【日立ソリューションズセッション】
事例で見る「個客」データ活用による
デジタルマーケティング
デジタルソリューション部
グループマネージャ
日高 智美
一方の、イベントのメインとなるセミナーの各会場も、立ち見が出るほどの盛況で、どこも熱気に溢れていたのが印象的でした。日立ソリューションズは、デジタルソリューション部 グループマネージャの日高 智美が、「事例で見る『個客』データ活用によるデジタルマーケティング」をテーマに講演を行いました。
デジタルな視点からチャネルを横断して「個」を認識するアプローチがテーマ
冒頭、デジタルマーケティングという言葉をよく聞くようになったと話す日高は、「カスタマーエクスペリエンスやマーケティングオートメーション、オムニチャネル、カスタマーインサイトなど、デジタルを活用するマーケティング手法は数多く存在しますが、それらが共通しているのは、個人のデータに着目してマーケティングを行っているということです」と説明します。
デジタルマーケティングでは、顧客のニーズにリアルタイムに反応してマーケティングを反映させることが求められます。また、お客さまの消費行動にデジタルが密接に関わることで、1)お客さまが情報を選ぶ情報源のデジタル化、2)お客さまの評価がブランドを作る口コミの重要性、3)お客さまの体験に基づく価値が重要視されるニーズの多様化など、マーケティングの中心が商品や市場ではなく「お客さま」になっていることが大きな注目点だといいます。
「また、デジタルマーケティングの施策も近年変わってきています」と日高は続けます。従来は、POSやアンケート、市場調査などによって統計的な分析から得られる傾向を見るのが一般的でしたが、現在はID-POS(購入者を識別できるPOSデータ)やCookie(行動履歴データ)、3rdPartyデータ(データ収集業者による加工済みデータ)、SNSなどから発信されるデータがマーケターに利用されるようになり、「人」の行動から得られるニーズが捉えやすくなっているのが特徴だといいます。
さらに、“個客”(の嗜好のデータ)を中心に考えることも重要になっているという日高は、「デジタルな視点からチャネルを横断して『個』を認識し、お客さまをデータとして捉え、それらをつなぎ合わせてお客さま一人ひとりに最適なアプローチを提供することが大きなテーマになっています」と指摘します。
お客さまをチャネル横断で一意に認識する仕組み作りが重要
では「個」でお客さまを捉えるにはどうしたらいいのでしょうか。その問いに日高は、「お客さま一人ひとりを理解するためのデータには、趣味・趣向、ライフスタイル、興味などさまざまなものがありますが、重要なことは、それらの情報が個人と紐付いている必要があるということです」と強調します。
例えば、会員属性は会員登録をしてもらえれば収集することができ、購買情報、来店情報などは会員カードを提示してもらうことで入手できます。会員サービスを利用していれば、ポイントやクーポンの利用、コンテンツの参照、アプリの起動などでデータ化されます。こうしたデータは膨大に存在するはずですが、ECと店舗、Web/アプリとメルマガ、SNS、コールセンターなどが個々にデータベースで管理し、チャネル横断で連携がされていない場合、お客さまを一意に認識できず、「個」をターゲットにしたマーケティングに十分に活用できません。
日高は、「マーケティングにデータを活用するためには、データが全て会員IDに紐付けされ、お客さまをチャネル横断で一意に認識し、お客さまの行動履歴を一元管理する仕組み作りが重要です」と訴えます。
個客のデータ整備に必要な3つの要素とデータ収集・統合で重要なシステム間連携
そこで日高は、個客のデータ整備に必要な3つの要素を示しました。
1つ目はロイヤルティ制度設計。データの収集や統合の前に、会員育成のための魅力的な会員プログラムが整備されていることが出発点になります。2つ目はデータの収集。各チャネルから必要な情報が収集できていても、目的がはっきりしなければどんなデータをいつ収集すべきかが曖昧になります。3つ目はデータの統合。個客単位にIDで紐付けされ、イベントやSNSに活用できるマーケティング基盤になっていることが大切です。
会員制度の設計にはロイヤルティ定義が必要となります。良質のお客さまを定義し、そのロイヤルティに合わせて会員を階層化(知っている人→会員化→リピーター→ファンへのステップアップ)をすることでめざす方向性を定義します。
その後、LTV(Life Time Value;顧客生涯価値)とサービス活用度を掛け合わせた、お客さまの評価軸による、お客さまがロイヤルカスタマーへと育つ銅線を設計する育成モデルを構築します。ただし、業界や事業特性の違いによって定義や指標は異なるため、世の中の動向や競合の状況を見ながらデータを分析し、正しくファンを育成していくことが必要になります。
「購買データ、属性データ、Web・SNSのアクセス履歴、3rdPartyデータなど、デジタルマーケティングに活用できるデータ多岐にわたりますが、データの収集・統合をする上で重要なことは、各チャネルとお客さまのIDとを紐付ける仕組みを導入し、お客さまの情報を一元的に管理するとともに、個人にアプローチするための有効なデータを収集できるシステム間連携を構築することです」と日高は指摘します。
キャンペーン効果によりファンクラブ会員数が約2倍に増加
続いて、個客情報の統合とデータ活用に成功した、オリックスバッファローズの事例を紹介しました。
「オリックスバッファローズは、野球のプレイそのもので感動を与えることと、球場に来ていただいたお客さまへのサービスで感動をサポートすることの相乗効果によって、ファンの感動を最大化し、それをファン獲得の増加につなげることを目標としていました」と日高は説明します。
球団の収益は、チケット収入と、飲食・グッズなどの物販収入のほか、TVやインターネットでの放送権料収入、スポンサー収入などによって成り立ちますが、オリックスバッファローズの場合は、球団と球場が一体経営しているため一貫した施策が行いやすい環境にありました。
しかし、チケット部門、飲食・グッズ販売部門、宣伝部門、イベント部門、ファンクラブが独立した施策を打ち、相乗効果の好循環が生まれにくい状態にあることが大きな課題となっていました。
相談を受けた日立ソリューションズでは、お客さま情報を一つに統合する施策を展開するため、「Fan-Life Platform」の活用を提案。それを中心に、ファンクラブの入会システムや、チケット販売システム、会場・店舗管理システム、ECサイトなどをつなぎ、各部門のシステムやデータを最大限有効活用しながら、従来の業務モデルで不足していた機能を補完しました。
「すべてのサービスでの購買履歴を紐付けて入場記録や購入データなどを参照し把握することで、見えない真実が浮き彫りになり、施策も変化していきました」と日高は解説します。
チケット購入せず来場しない「ロイヤルティが低い」会員には、球場に来てもらうために、抽選によるチケットプレゼントや試合体験、限定グッズ付きチケットなどのキャンペーンを提案。
また、親子同伴で来場してもらえるよう、夏休みの自由研究支援(見学や体験イベント)なども提案しました。さらに、チケット購入はしても来場しない「ファンリテラシーの低い」会員に対しては、体験レポートやDM、球場での呼びかけなどでポイントプログラムのアピールを実施。くわえて、チケット購入はしないが来場している「誘われタイプ」の会員には、誘ってくれた人にポイントをプレゼントするなど、それぞれの個客に合った施策も行いました。
こうした施策の結果、キャンペーンで無料配布したチケット代金を差し引いても、キャンペーン全体の効果は大幅に向上し、費用対効果も回収。ファンクラブの会員数は約2倍にまで増加したといいます。
「このオリックスバッファローズの事例から、ファンを大事にする業界にはCRMは重要な経営戦略になると確信しました」という日高は、データを活用して現状を把握し、お客さまごとに仮説を立て、施策を実施した結果、仮説の再検討を繰り返すPDCAサイクルを回す仕組みづくりが重要だと強調します。
AIが過去のパターンを学習し、有料会員化確率のスコア化を実現
次に、AIをマーケティングに活用する手法について解説しました。
ファン化のためのマーケティングには、一人ひとりの会員ニーズや購買履歴に合わせてマーケティング施策を実施する「One to Oneマーケティング」と、ランクアップの期待度合いを会員一人ひとりに対して行う「スコアリング」や、ランクアップが期待できる会員群の特徴を「プロファイリング」することに対して特に効果を発揮します。
日立ソリューションズのディープラーニングを活用した「会員活性化支援AIソリューション」は、会員の行動をAIが予測してスコアリングしてターゲティングの精度を向上するソリューションとして開発されました。
それを適用したのが、会員制のサービス事業を行うA社です。同社は無料会員と有料会員(ゴールド・シルバーなど)からなる会員制度を運営しており、年会費とサービスの販売収益を主な収入源にしています。無料会員よりも有料会員の方が購買単価は高く、有料会員を増加させると同時に、販促キャンペーン(DM、ギフト送付など)のコストを最適化させたいと考えていました。
そこでA社は、日立ソリューションズが提案した会員活性化支援AIソリューションを採用。会員管理システムから過去の履歴データを抽出・加工するととともに、2015年度までのデータからAIが有料会員化するパターンを学習。
また、2016年度のデータを用い、1)学習結果の精度検証、2)有料会員化する確率(スコア)の出力、3)プロファイリングを実施しました。
その結果、1)の学習結果の予測精度では、正確度は平均87.0%となり、2)の有料会員化するスコアの算出については、スコア50以上を有料会員と予測した場合、95%が有料会員となりました。
日高は、「かなり当たっている結果となりました。有料会員化の実績とAIが予測した有料会員化スコアがほぼ合致し、有料会員化スコアに基づきターゲティングすることで、販促施策の費用対効果の向上が期待できます」と解説します。
また、3)のプロファイリングでは、AIの予測理由を推定する機能で、各会員に対するイベント・キャンペーンの効果を可視化。マスマーケティングの効果検証や計画立案に活用できると判断されました。
講演の最後に、日高は、「デジタルマーケティングとは、データでお客さまを『個』として捉え、あらゆるチャネルでマーケティングを最適化することです。特に、マーケティング最適化の実現に向けては、データの収集と統合のためのITと、データを活用するためのITが必須となります。日立ソリューションズはシステムインテグレータだからこそ、マーケターをお手伝いできる解決策が豊富にあると考えています」と話し、講演のまとめとしました。
フォーラム当日の講演資料は
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