Microsoft Dynamics 365 統合ERP構築サービスの導入事例
株式会社資生堂様日本とタイの基幹系業務を「 Microsoft Dynamics 365 」で統合管理
世界的な化粧品メーカーとして知られる株式会社資生堂は、プロフェッショナル事業の基幹系システムをIBM AS/400からクラウドサービス「 Microsoft Dynamics 365 for Finance and Operations 」に移行しました。さらに、タイ現地法人で稼働していた基幹系システムを取り込むことにより、グローバルな統合管理も実現。その結果、業務の標準化が進むとともに、日本の本社はタイ現地法人の経営データをいつでも参照できるようになり、よりスピーディーな経営判断が可能となりました。
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背景と課題
ベンダーの保守終了を契機に国内外のシステム統合を計画
細谷 亮 氏
東京都中央区に本店を置く、化粧品メーカーの資生堂。プロフェッショナル事業として、国内外のヘアサロン向けに「SHISEIDO PROFESSIONAL」ブランドのアイテムを提供しています。プロフェッショナルブランドを専門とする販売会社は、日本の資生堂プロフェッショナル株式会社(以下、SPI)とタイ向けのShiseido Professional (Thailand) Co.,LTD(以下、SPT)の2社のみ。ほかの国では、一般消費者向け化粧品の販売会社がプロフェッショナルブランドの製品も併せて取り扱っています。
プロフェッショナル事業の商流・物流はほかの事業部と大きく異なっているため、基幹系システムが資生堂本体とは別になっていました。2017年初頭までは本社事業部および販売会社は国内に設置されたAS/400で処理し、タイのSPTは現地の独自システムを使うという形態だったのです。
このような状況を一変させたのは、AS/400で稼働していた基幹系システムの担当ベンダーの事業終了でした。
「ベンダーが事業を終了すれば、基幹系システムの保守も新規開発もストップしてしまいます。そこで当社のICT部門に相談したところ、最新ERPシステムへの切り替えを勧められました。当時から当社ICT部門は資生堂グループ内の基幹系システムをERP化するように促しており、推奨製品として挙げられていたものの1つが『 Microsoft Dynamics 365 for Finance and Operations 』(以下、 Dynamics 365 )でした」(細谷氏)
旧基幹系システムからERPソリューションへの切り替えは、従来からの課題を解決する絶好の機会でもありました。
「当時は日本側のシステムとタイ側のシステムが切り離されていましたから、プロフェッショナル事業全体での経営数値を集計するのに一苦労でした。そこで、SPTも同じシステムに統合し、集計を簡便にしたいと思いました。また、日本側の課題として、システムが人に合わせるのではなく、人がシステムに合わせるようにすることが業務効率を上げることにつながると考えていたので、業務プロセスの見直しも見込めると考えました」(細谷氏)
選定と導入
「 Dynamics 365 」構築ベンダーを海外対応力も重視して選定
新しいERPシステムの検討が始まったのは、2017年初めでした。まず、新システムに求める基本機能は、従前とほぼ同様であることを確認しました。
内容としては、本社側で購買管理・販売計画・在庫管理・販売管理の4機能、日本のSPIとタイのSPTでは購買管理・在庫管理・販売管理・会計の4機能が必要でした。このほか、外部工場や外部倉庫(3PL*)との連携性、本社側が販売子会社のデータを必要に応じて調べることができる統制性、将来の事業拡大に応じてシステムの能力を高めることができる拡張性、海外販売会社でも使うことができる国際性も欠かせません。さらに、投資額を必要最低限に抑え、業務プロセスの最適化をめざすために、カスタマイズやアドオンを極力減らして、「パッケージに人が合わせる」という方針も決めました。
このような提案依頼書(RFP)に応じた複数のベンダーの中から資生堂が選んだのは、「 Dynamics 365 」をベースとする日立ソリューションズの提案でした。
「当社のプロフェッショナル事業が必要とする機能をすべて満たしており、システムの拡張性が高く、海外展開に対応できるのは、日立ソリューションズの提案だけでした。日立ソリューションズはタイに現地法人を置いているので、切り替え時のエンドユーザー教育や稼働後の保守を依頼できるという安心感もありました」(細谷氏)
「 Dynamics 365 」の実装に向けたプロジェクトがスタートしたのは、2017年10月。プロジェクトチームはプロフェッショナル事業の商流・物流と資生堂独自の用語を理解したうえで、新しいERPシステムのTo-be(あるべき姿)をゼロベースで定義していきました。
「As-is(現状の姿)とTo-beにはギャップがありますので、カスタマイズやアドオンで対応したり、現状の業務をそぎ落としたりといった方法で対処しました。もちろん、現状の業務プロセスを変更するには社内を説得する必要があります。社内会議では、日立ソリューションズが技術的な説明をすることで支援してくれました」(細谷氏)
システムが完成して、プロフェッショナル事業の本社側業務とSPIの業務が「 Dynamics 365 」で本稼働したのは、2019年3月でした。切り替えのための業務停止は行わず、週末をはさんで月曜日には新システムをサービスインさせました。
続けて、SPTの業務を「 Dynamics 365 」に載せるための第2次作業がスタートします。
「SPTの商流と物流は比較的シンプルでしたが、マスターや商品コード体系を資生堂本社側に合わせたり、同時期に行われた3PL事業者替えに伴う業務プロセス変更に対処する作業は必要でした。日立ソリューションズのタイ拠点でエンドユーザー教育を実施してもらった結果、2020年2月に無事、サービスインすることができました」(細谷氏)
*3PL:サード・パーティ・ロジスティクス
成果と今後
国内とタイを統合ERPで管理。今後は在庫圧縮にも取り組む
「 Dynamics 365 」ベースの新しいERPシステムの稼働によって、本社からSPIやSPTの経営データをいつでも参照できるようになりました。経営数値の速報値はマネージャー層のスマートフォンに毎日送られており、経営上の判断もタイムリーに下せるようになりました。プロフェッショナル事業の業務の標準化が進んだことや、業務プロセスの見直しによってペーパーレス化が進んだこと、また、ガバナンスの強化につながったことも「 Dynamics 365 」の導入による定性的な効果として高く評価しています。
定量的な効果については、「そもそもERPは定量的効果を出しにくいシステム」と資生堂は考えていますが、「SPTでの在庫管理を『 Dynamics 365 』で精緻化したことによって、在庫の数量・金額が減少し、物流コストは確実に低下しました。また、新システムの稼働によりオペレーションミスの減少にもつながりました。今後はサプライチェーンの効率化によって、在庫費用をさらに圧縮するつもりです」と、細谷氏は語ります。
このほか、現場のエンドユーザーには「 Microsoft Excel 」と組み合わせた活用方法が好評です。旧システムはデータを入力してレポートを作成することが機能の中心となっていましたが、「 Dynamics 365 」ではシステムに入力したデータを外部に取り出すことが可能です。「 Microsoft Excel 」の形式でダウンロードすれば、Excel関数を使ってチェックなどの処理を効率的に行えるのです。
「業務を止めることなくシステムを切り替えることができ、稼働後の安定性にも十分に満足しています。当初の3カ月ほどは日立ソリューションズに半常駐でフォローしてもらいましたが、今ではほとんどの問い合わせ案件を社内要員だけで解決しています」(細谷氏)
変化の激しい時代を迎えて、経営状況を早く正確に把握することはあらゆる企業にとって喫緊の課題となっています。「 Dynamics 365 」でグローバルをシームレスに連携し、躍進を続ける資生堂を、日立ソリューションズはこれからも支援していきます。
株式会社資生堂
本社所在地 | 東京都中央区銀座7-5-5(本店) 東京都港区東新橋1-6-2(本社事務所) |
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設立 | 1927年、創業1872年 | |
従業員数 | 40,000人(就業人員数) 8,130人(臨時従業員の年間平均人員数) *2019年12月31日時点 |
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事業内容 | 化粧品事業、レストラン事業、美容室事業など | |
URL | https://corp.shiseido.com/jp/ |
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本事例の内容は2021年2月16日公開当時のものです。
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最終更新日:2024年4月17日