Microsoft Dynamics 365 統合ERP構築サービスの導入事例
株式会社カインズ様ホームセンター業界でのプレゼンスを確固たるものにするために
「 Dynamics 365 」でオムニチャネル対応強化を短期間で実現
ホームセンター大手のカインズは、主にeコマース事業強化を目的としたシステム刷新プロジェクトを2018年に開始。受発注業務については、「 Microsoft Dynamics 365 」を導入することで、オムニチャネル対応の新システムを2021年8月に稼働させました。また経営戦略に沿った施策を迅速に実施するために、内製化による対応を進め、すでに、いくつかの新サービスを自社で開発しています。
この事例に関するソリューション・商品
*1 O2O(Online to Offline)
*2 OMO(Online Merges with Offline)
背景
求められていたECシステムの全面刷新
田島 和修 氏
ホームセンター大手である株式会社カインズの店舗は、2021年2月末現在で225店舗に及びます。これら実店舗での販売に加えて、オンラインショップと「カインズアプリ」によるeコマースが、同社の重要な販売チャネルです。2018年、このeコマース用システムを全面的に刷新するためのプロジェクトが開始されました。プロジェクトを統括した田島氏は経緯を次のように語ります。
「当社でeコマースが始まったのは、2011年ごろでした。既存システムはその当時より使い続けてきたものであるため、O2OやOMOなどの新しい施策・考え方を取り入れるのにも苦心し、老朽化が進んでいることを感じていました」
また、受注から発送までのリードタイムが長くなってしまうケースがあることも、業務上の課題になっていました。
「在庫情報がリアルタイムに更新されず、在庫のない商品がオーダーできてしまうなどの問題が生じることがありました。その結果、出荷しようというときになって在庫切れが判明し、発送までのリードタイムが長くなってしまうケースもありました」(田島氏)
今回のプロジェクトでシステム構築を指揮した磯道氏も、「受発注での在庫情報更新方法についても、見直す必要があることは明白でした」と振り返ります。
取り組み
実績重視で受発注に「 Dynamics 365 」を採用
磯道 善和 氏
受発注管理についての詳細な検討が開始されたのは、2020年夏でした。主な機能要件は「注文に引き当てできる在庫がある場合は出荷を自動指示」「在庫がない場合は卸に自動発注」の2つです。eコマース、店舗、その他のオンラインサービスの3種の販売チャネルに対応するのも条件です。
また、非機能要件は「SaaSでの提供」「稼働後の内製化対応」としました。その理由を、磯道氏は次のように説明します。
「SaaSなら、新しい機能が次々と使えるようになるはず。また、経営戦略に沿って新しい一手を仮説検証型で試していくには、アジャイル型の内製開発のほうがスピーディーだと考えました」
このような要件に基づいて、カインズは世界中の小売業で使われているSaaS型ERP「 Microsoft Dynamics 365 」(以下、 Dynamics 365 )を選択。システム構築は、「 Dynamics 365 」の導入実績が国内でトップクラスの日立ソリューションズに依頼することにしました。
システム構築に要した期間は、2020年8月から12月まで。開発作業とミーティングは、すべてリモートで対応しました。新しい受発注システムのバックエンド部分は2021年2月から、フロント部分は2021年8月から日々の業務で利用されています。
効果
リードタイム短縮でキャンセル率が低下
「 Dynamics 365 」の本稼働によって、オムニチャネル対応の受発注管理システムが完成。カインズは、O2OやOMOなどの最新マーケティング施策・考え方をeコマース・店舗販売・その他のオンラインサービスに活用できるようになりました。経営層も「意思決定をスピーディーに反映でき、これで競争力が高まる」と、新システムの意義を評価しています。
また、リードタイムやキャンセル率、従業員の作業効率についても十分な定量的効果が得られています。
「在庫数量データが常に正確であり、リードタイムは導入前のおよそ3分の1になりました。受注後に在庫切れが判明してお客様をお待たせする、ということがなくなり、キャンセル率も半分以下に低減しました」(田島氏)
「予想外の在庫切れで急きょ発注対応が必要になる場面がなくなり、現場担当者の作業効率が120%以上に高まっています」(磯道氏)
さらに、受発注業務の最前線では業務改善の意識も高まってきました。
「正確な在庫数量が見えるようになると、新たな課題も見えてきます。例えば、『“ Dynamics 365 ”の画面で在庫切れの商品を発見した後の発注作業に手間がかかる』という気づきによって、『その項目の横に発注ボタンを設置しておけば、ワンクリックで発注処理に飛べるのではないか』という具体的な提案が現場から上がってくるようになりました」(田島氏)
展望
内製化によりオムニコマースへの対応を加速
経営戦略に沿った施策の迅速な実行を目的として、新受注管理システムの機能拡張、メンテナンスはデジタル戦略本部所属のエンジニアが担当しています。使用している開発ツールは、X++(「 Dynamics 365 」用のプログラミング言語)やノーコード開発ツールなどで、すでにいくつかの新サービスの開発も開始されています。
「まずは、店舗にない商品をお客様に代わってオンライン注文したり、倉庫からではなくお客様の近くの店舗から商品を配送したりといった、新サービスの実装と展開を進めています」(磯道氏)
さらに、長期的にオムニコマースへの対応をより深めていくことをめざしています。実現に向けて、在庫情報をほかのシステムに通知するためのAPIの開発も進行中です。
「日立ソリューションズはわれわれと一緒になってシステムを構築してくれました。オンラインでのやり取りでも、仲間と思える関係を築けたのは、いつも迅速に対応してくれる真摯な姿勢があったからだと思います」(田島氏)
カインドネスを大切に、顧客と向き合うカインズ。日立ソリューションズは「世界を、日常から変える。」同社をこれからも支援していきます。
オムニチャネルを支える小売業システム基盤
- 店舗・eコマース・倉庫に関わる受発注業務を統合管理することによって、欠品率低下と出荷リードタイム短縮を実現
- 小売業の基幹システムに欠かせない購買・倉庫管理などの機能をSaaSで提供
- ノーコード開発ツールの活用による内製化の推進
株式会社カインズ
所在地 | 埼玉県本庄市早稲田の杜一丁目2番1号 | |
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設立 | 1989年3月1日 | |
従業員数 | 13,097名(2021年2月末) | |
事業内容 | ベイシアグループの中核1社として、製造小売(SPA)に強みを持つ ホームセンターを運営 |
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URL | https://www.cainz.co.jp/ |
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本事例の内容は2022年2月24日公開当時のものです。
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最終更新日:2024年4月17日