GeoMation 地理情報システム マルチプラットフォームクライアントの導入事例
九州電力株式会社様配電の現場業務支援をスマートフォンで実現。電気の安定供給業務を強力に支援
九州電力では、お客様からの電気に関するお申し出や停電時の復旧に迅速に取り組むため、フィーチャーフォンを用いた配電業務システムを運用していました。同社は現場におもむく作業員の業務を支援するため、スマートフォンを用いた新しい配電業務システムを構築。「GeoMation 地理情報システム マルチプラットフォームクライアント」(以下、GeoMation MPC)の表現力と拡張性を生かすことで、スマートフォンの地図上で複雑な表記ルールがある配電設備情報を直感的に操作することが可能となり、配電業務システムの利便性向上を支援しました。
この事例に関するソリューション・商品
背景と課題
従来の配電業務システムに限界。利便性向上と運用費削減をめざす
志田 剛 氏
九州電力株式会社は、九州7県のあらゆる地区へ電力の供給を行っている一般送配電事業者です。そのミッションは、お客様に対し、電力を公平かつ安定して届けること。この役目を担っているのが配電です。
配電とは、電気をお客様へ届ける最終プロセスです。発電所で作られた電気は、まず送電線を通じて変電所に届けられ、変電所で電圧を変えた後、最後に低圧線を通じてお客様に送られます。
配電の業務は、電気の供給のほかにも、新しい建物の建設や引っ越し時の申し込みに応じた電気の開通作業、停電時の復旧作業、メンテナンスなど多岐にわたっています。そのため必要とする配電設備の情報も業務によってさまざまです。
九州電力では、以前から配電業務システムの地図基盤として日立ソリューションズの「GeoMation 地理情報システム」(以下、GeoMation)を採用し、その高い信頼性で配電業務システムの連続稼働を支えてきました。また、2009年には、現場の業務支援用にフィーチャーフォンベースの業務システムを構築し、業務連絡や情報共有を実現。当時の最先端技術を活用し、必要な機能を網羅していましたが、業務や用途ごとに端末を分けて運用する必要がありました。
「画面遷移やデータ入力はフィーチャーフォンのボタン操作だったため、今振り返ると、使いにくいという課題がありました」(志田氏)
そこで、2018年3月末の端末の保守契約終了をめどに新システムに移行することにし、2016年から現場のヒアリングと新システムの構想を始めました。その結果、今回の新システムでは、「既存の資産を生かして効率的に新システムを構築できること」「フィーチャーフォンで実現している業務機能を網羅し、かつこれまで以上に使いやすくすること」「保守費や通信費、端末費などを低減して運用コストを抑えること」などを基本方針とすることにしました。
選定と導入
多様な業務機能をスマートフォン1台に集約。地図機能の使いやすさや拡張性が決め手
久保 健 氏
新システムでは、フィーチャーフォンに代わりスマートフォンの導入を決定。スマートフォンなら、さまざまな配電業務ごとに端末を分けることなく、1台ですべての機能を搭載できます。ただしあまりに機能を作り込むと、今後の保守メンテナンスやシステム移行で工数がかかるので、アンドロイド標準のAPIを活用すること、できる限り他アプリと密結合とならないこと、独自実装を控えることを心掛け、疎結合アーキテクチャーを採用することにしました。また、業務連絡や現場の写真撮影用には、スマートフォンに付随する標準機能を活用することで、アプリの開発工数を削減し、開発コストや保守コストを抑えられるというメリットもありました。
「最も留意したのが、既存の配電網に関する情報資産の再利用です。配電設備は地図記号のように表記ルールがあり、作業員がその表記を見ればどんな設備でどう処理すればよいのかがわかります。これを一から作り直すより、既存資産を生かす方がコストや開発工数の面で大きなメリットになるということで、日立に相談しました」(久保氏)
そこで日立ソリューションズが提案したのが、「GeoMation MPC」でした。「GeoMation MPC」は既存の配電業務システムに搭載されている「GeoMation」と連携して地図情報を高速表示・編集するWebアプリを開発するためのライブラリ群です。このライブラリを活用することでiPad、Android、PCなど複数のプラットフォーム上で動作する地図アプリを開発することができます。独自の表記ルールがある配電設備と地図の描画やデータ管理といったコアな機能については、既存の情報資産を流用しつつ、スマートフォン上での地図操作部分のみを「GeoMation MPC」の豊富なライブラリ群を利用して短期間で構築することができます。また、画面の動きもなめらかで、特にスマートフォンアプリの場合は指でピンチアウト(拡大)・ピンチイン(縮小)が簡単にできるので、フィーチャーフォンのボタン操作のような煩わしさはありません。
「拡張性も高く、今後スマートフォンのOSが変わっても開発した地図アプリを再利用できます。1台に機能を集約する予定だったので、標準プラットフォーム上でアプリを自由に追加できる提案だったことが決め手となりました」(久保氏)
フィーチャーフォンベースのシステムでは、画面の小ささや使い勝手の面から、配電地図アプリはあまり活用されず、戸別の表札情報が掲載されている住宅地図や配電図を印刷して利用していました。スマートフォン導入に伴い、配電設備の情報を住宅地図に重ねて表示させることで現場作業スタッフの利便性向上をめざしました。
「端末メーカー、地図データの供給元、各アプリの開発元など、複数の機能やデータを連携する大規模プロジェクトでしたが、関係者同士の情報共有を徹底して開発作業を進めていくことで、スケジュール通りに開発できました。特に日立とはほぼ1日置きに打ち合わせを重ね、業務部門のさまざまな要求に応じていただきました」(久保氏)
成果と今後
地図利用は3~4倍に向上。業務に応じた地図表示のパーソナライズへ
堂上 高司 氏
2017年4月から着手した新システム全体の設計は、6月には開発作業を進め、同年内で結合テストを完了できました。2018年1月からは、総合テストと運用テストを進め、予定通り2018年4月から、新しい「配電モバイル D-MOT」が本格稼働を始めました。以前よりも直感的に操作できるようになり、現場からは「使いやすくなった」「画面が大きくなって見やすくなった」という評価が上がっています。
「以前はあまり活用されていなかった配電設備の地図情報も、新システム稼働後はアクセスが増加。アクセスログを見ると、以前に比べて3~4倍ほど利用者が増えました」(堂上氏)
利用者が増えたことで最近では、配電ITグループに対しさらなるシステムの機能や改善案が多く寄せられるようになりました。
「ユーザー同士でSNSのコミュニティを作り、活用アイデアや今後の改善ポイントなどをディスカッションしているそうです。配電ITグループもこうしたディスカッションを時々チェックしており、必要な提案については今後の改善プランに生かしていきたいと考えています」(堂上氏)
「単に地図だけなら、手軽に開発できるサービスはほかにもありますが、複雑な配電設備の表記ルールに従うことができる高い表現力があるのは『GeoMation MPC』だけです。地図情報に、業務要件に合った独自の付加価値を与えることで、当初の『使い勝手を向上する』という目的を達成できました」(志田氏)
今後はさらに使い勝手を改善し、ユーザーの担当業務に応じて表示する配電地図情報をパーソナライズ化するなど、さまざまな構想を考えているそうです。
日立ソリューションズは、社会インフラ分野向けに「GeoMation MPC」のライブラリ群を強化し、今後も同社の多岐にわたる業務システムをサポートしていきます。
九州電力株式会社
「ずっと先まで、明るくしたい。」のキャッチフレーズの下、九州地方7県への電力供給事業を展開。電気を安定して届け、快適で環境にやさしい毎日の実現に貢献することを使命にしている。またグループ全体で、再生可能エネルギー発電プロジェクトや他地域への電力供給に取り組むなど、日本のエネルギー環境の向上に向け、新しい施策を打ち出している。
本社所在地 | 福岡県福岡市中央区渡辺通二丁目1番82号 | |
---|---|---|
設立 | 1951年5月1日 | |
従業員数 | 13,022人 | |
事業内容 | 電気事業、エネルギー関連事業、情報通信事業、その他の事業 | |
URL | https://www.kyuden.co.jp/ |
この事例に関するソリューション・商品
導入事例ダウンロード
本事例の内容は2019年1月16日公開当時のものです。
最終更新日:2019年1月16日