導入事例
GeoMation 地理情報システム
スズキ株式会社様
災害時における取引先様の状況を「地図情報」により可視化。生産工程への影響を把握する納入部品危機管理システムを構築
四輪車、二輪車、船外機のメーカーであるスズキ株式会社は、日本全国の取引先様から部品を調達しています。災害発生時、被災エリアや被災可能性のある取引先様を早期に把握し、工場ライン稼働への影響を判断することが、お客様への製品供給と取引先様の安全確保のため、重要課題となっています。同社では、空間情報ソリューション「GeoMation」を活用して災害発生時に取引先様からの部品の納入状況を迅速に把握。サプライチェーンマネジメントの側面から経営課題に貢献する取り組みを始めています。
この事例に関するソリューション・商品
課題 | 効果 |
---|---|
災害発生時、被災可能性のある取引先様の抽出と工場における生産への影響を把握するのに時間がかかっていた |
地図上で被災エリアの取引先様を可視化し、生産ラインへの状況把握、影響調査、報告までの時間を約1/5に短縮 |
背景と課題
災害の影響を最小化するために、迅速に取引先様を特定
生産物流部
物流課 課長
金井 浩 氏
2020年に創立100周年を迎えるスズキ株式会社。1920年に創立して以来、先進技術を駆使した製品は、世界の多くの国で愛用されています。
製品の主力である四輪車、二輪車、船外機は数多くの部品から構成されており、スズキでは多くの取引先様から部品を調達し、製品を製造しています。その数は1次取引先様だけでも300社を数え、2次取引先様、3次取引先様まで含めると膨大な数になります。
効率化された製造サイクルにとって、脅威となるのが自然災害です。取引先様が被災して部品の納入が遅れれば、サプライチェーン全体に影響を及ぼします。
「遅れが発生した場合には、優先的に部品を供給する生産ラインを特定し、できる限り納期を遵守することが重要です」(戸塚氏)
しかし、その対応は決して簡単ではありません。災害が発生した際に、確認しなければならない事項は多岐にわたります。被災エリアにある取引先様の特定、どの部品がどこの工場に納入される予定なのか、遅延発生の有無、工場の部品在庫で何台まで生産できるのか、納期のデッドライン――。これらの状況を迅速に把握して、対策を立てなければなりません。
「もともと納入の進捗状況から欠品を予測する部品納入管理システムを日立ソリューションズに構築してもらっていました。災害発生時には購買部が納入先の状況を調査し、その回答を受けて欠品を予測していたのですが、もっと能動的に欠品状況を把握し、即座に対応策を判断する仕組みが必要でした」(増田氏)
こうした能動的な仕組みを実現するために考えられたのが、地図情報を使って取引先様を絞り込み、被害状況を把握して既存システムと連携し、欠品を予測することでした。
「発想の原点は、スマートフォンのグルメサイトです。地図を見ながらワンタッチで周辺のレストランなどが探せるように、被災地の取引先様を特定できれば、もっと迅速な対応が可能になるはずだと考えました」(戸塚氏)
選定と導入
既存システムとの連携や将来の拡張性も考慮
生産物流部
物流課 係長
戸塚 博行 氏
地図情報を活用したいと考えた同社では、地図アプリケーションを手がける数社にヒアリングを実施しました。
「選定の条件として挙げたのが、ランニングコストがかからないこと、レイヤー構造を持っていて災害情報や気象情報、さらには交通情報を取り込めるといった拡張性があること、そして既存システムとの連携ができることでした」(戸塚氏)
今回のシステム導入の特徴は、生産物流という枠組みの中でシステムが検討されていたことです。
「地図アプリケーションにコストをかければ、さまざまな機能を実現できることがわかりました。ただ、目的はあくまでも生産ラインの欠品の迅速な把握です。システムとしての機能の充実よりも、現場で役に立つことが第一でした」(戸塚氏)
こうした中で有力候補として挙がってきたのが、最少の構成でシステム構築をスタートすることができ、将来の拡張も自由に行える、日立ソリューションズの空間情報ソリューション「GeoMation」でした。「GeoMation」は、位置の時間的な変化に関連した情報をシームレスに統合できるソリューションで、拡張性にも優れています。
「地図機能が充実しているアプリケーションは他にもありましたが、地図は最初のきっかけでしかありません。目的は災害対策に絞り、地図機能にかけるコストはできる限り小さくして選定を進めた結果、国土地理院の地図が利用できて必要な機能を提供している『GeoMation』を導入することにしました」(戸塚氏)
「部品納入管理システムも日立ソリューションズに開発してもらいましたが、今までの実績が決め手となりました。またシステムのスムーズな連携という面でも期待ができました」(増田氏)
こうして2017年3月に導入されたのが、「GeoMation」をベースとした「納入部品危機管理システム」です。まず、災害情報を基に被災地と該当する取引先様を特定。そこから部品の納入状況を把握して欠品を予測し、調査結果をレポートします。この一連の流れを、人手ではなくシステムによってフォローする仕組みができ上がったのです。
成果と今後
調査の時間が1/5まで短縮。事前予測が可能になり迅速な判断を実現
生産物流部
物流課
増田 英直 氏
「納入部品危機管理システムが導入されたことで、購買部からの取引先様の被災情報を待たずに対応できるようになり、調査にかかっていた時間は短くなりました」(増田氏)
被災地の確認から現場への報告まで、これまで約300分かかっていたところが、約60分に短縮されました。被災エリアから影響のありそうな取引先様を抽出することで、先行して調査を進められるようになったことは大きな成果だといえます。
「しかし、重要なのはこれからです。各工場の稼働可否の判断は確実に速くはなりましたが、使っていればそれが当たり前になってしまいます。今はまだ初期段階の基盤ができたという状態。今後は、二次・三次取引先様など、前工程の取引先様の製造拠点、出荷拠点、保管倉庫の場所を正確に把握した上で、精度の高い調査を進めていく必要があります。先日、大型台風が直撃し、多くの取引先様で停電が発生した際、調査に時間がかかってしまいました。南海トラフ地震のような大規模災害でも早期に判断できるようになれば、と考えています」(金井氏)
現在、納入部品危機管理システムは、四輪車の国内工場と海外向け生産部品を作るノックダウン工場に導入されています。今後はその対象を二輪車と船外機にも広げていく計画です。
「簡単に操作できるシステムで全工場を網羅して、一つの取引先様の部品をどの工場の、どの生産ラインに送ることが最適なのかを誰もが判断できるようにしていきたいです」(戸塚氏)
システム基盤として完成すれば、インドやタイ、インドネシアといった海外でも活用できるようになります。
地図情報を活用したシステムのもう一つの適用領域として考えているのが、物流です。災害発生時だけでなく、平常時における物流拠点の把握、輸送ルートの決定、近隣における取引先様の混載化を進めたコストダウンなど、物流の効率化を想定しています。
「現在のシステムはまだ発展途上です。今のままではもったいない。使用目的が災害対策であれ、物流改善であれ、必要なデータベースは同じです。災害対策が導入したきっかけではありますが、このシステムを活用して、今後やりたいことにつなげていきたいです」(金井氏)
そこで期待されているのが、「GeoMation」の拡張性です。利用できるコンテンツを増やせば、適用範囲を広げることができます。周辺システムとの連携も含めたトータルな視点から使い道を考えることで、「GeoMation」のポテンシャルをもっと引き出すことができます。
日立ソリューションズは、今後も同社の期待にマッチするソリューションを提供していきます。
COMPANY PROFILEスズキ株式会社
スズキグループは、四輪車、二輪車および船外機・電動車いす・住宅他の製造販売を主な内容とし、さらに各事業に関連する物流およびその他のサービスなどの事業を展開しています。
- 本社所在地静岡県浜松市南区高塚町300
- 設立1920年3月
- 従業員数65,179人(連結、2018年3月末時点)
- URLhttp://www.suzuki.co.jp/
この事例に関するソリューション・商品
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本事例の内容は2018年12月13日公開当時のものです。
最終更新日:2018年12月13日