指静脈認証システム 静紋の導入事例
長崎県庁様5,000人の県職員の正確迅速な本人認証には容易に構築できる「統合認証環境」が不可欠だった
長崎県庁では、2007年12月に2,000台の指静脈認証システムを導入した。政府のeジャパン構想に合わせて、01年からIT化に取り組んできた長崎県庁では、オープンソースを用い、かつ小口分割発注で開発を進めるという独特な手法を展開し、大幅なコスト削減や中小地場企業をシステム開発に多数参加させるなど数々の成功を収めている。今回は、成功の立役者である長崎県総務部理事(情報政策担当)島村秀世氏に、その取り組みとセキュリティ対策について聞いた。
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電子自治体化に向けた課題と戦略
島村秀世 氏
島村氏は、2001年の春に長崎県からの要請で、県の情報化の旗振り役として民間企業から招かれた。当時、県は3つの課題を抱えていた。
「電子自治体化にあたるコストを試算したところ、福岡県では200億円という金額がでました。
長崎県では、なんとか安くする方法がないかと模索していました。
2番目の課題は、地場企業が参加できるIT調達の実現でした。システム開発は中央の大手に依存しており、地場企業には活躍の場がありませんでした。そして3つ目が、県職員をシンクタンク並みの優れた人材に育成することでした」と島村氏は語る。
3つの課題をクリアするためには、行政側が発注者責任を果たすという意識改革が必要だった。そこで島村氏は、県側が詳細な設計書を作成し、地場企業にオープンソースを用いて開発してもらうという大胆な戦略を推進する。
「例えば就任当時、長崎県では大手ベンダーのグループウェアを利用しており、ライセンス料およびハードウェアリース料を含め年間で3,000万円を超える費用がかかっていました。そこで思い切って職員に設計をしてもらい、1,500万円かけて地場のIT企業にオープンソースで開発し直してもらったんです。この結果、ライセンス料はゼロになり、ハードも他のシステムと共用できるようになったので、年間数百万で済んでいます」(島村氏)
長崎県庁では、LAMP(Linux、Apache、MySQL、PHP)と呼ばれるオープンソースがシステムの基盤だ。どのシステムも同じ環境の上で動いているので、データベースやサーバの共有は当然スムーズに進められている。
オープンソースのリスクを担保すべく認証の強化を
「大手Sierに依頼したシステムは、『保証を求めたシステム構築』といえます。だから、高額であっても仕方ない。それに対して、われわれは発注側が『リスクを承知したシステム構築』を選んだ。しかし、保存されるデータが個人情報に及ぶようになると、情報に対する安全性の担保が暗号化だけでは不十分です。認証も強化する必要があります」と島村氏はセキュリティに対する取り組みについて説明する。
長崎県庁の電子県庁システムは、02年の電子決裁がスタートだが、当時からIDとパスワードだけに頼らない認証システムの構築を進めている。
「5,000人の職員全員が、IDとパスワードを常に適正に管理・運用できるとは考えられません。ICカードには紛失や不正利用の心配がある上に更新も考えねばならない。でも、生体認証なら、こんな事に悩まされずに済みます」と島村氏は生体認証を採用した経緯について振り返る。
認証の正確さと速さと開発の柔軟性が必要
当初、長崎県庁の電子決裁システムでは指紋認証を利用していた。しかし、指紋認証には認識速度の遅さや手荒れなどに伴う本人認識拒否などの問題があり、数年前から指紋に代わる生体認証システムの選択に取り組んできた。
「最終的に、他の静脈認証と比較して、認証の正確さと速さという点から、指静脈認証に決めました。
日立ソフトの『静紋』は、認証サービスを提供するAUthentiGate(オウセンティゲート)が利用できるので、既存のシステムと組み合わせた統合認証環境を構築するのが容易でした」と島村氏は話す。
日立ソフトの『静紋』はデバイス単体での発注が可能になっている。加えて、指静脈情報を一元管理するアプリケーションの「AUthentiGate(オウセンティゲート)」を採用することで、既存のシステムと連携した統合認証が可能になるなど、柔軟な開発も実現している。現在では、本庁内の全職員が『静紋』による認証を利用できるようになっている。登庁した職員は、『静紋』を用いてポータルサイトへログインし、出勤簿、休暇、電子決裁、旅費システムなどを利用している。
「指紋はどうしても犯罪のイメージがつきまといますが、指静脈にはこのような悪いイメージがないことも利点だと思います。今後は、県庁内だけではなく、出先機関でも利用できるように導入を進めていきます。最終的には、全職員が指静脈認証でシステムを利用できるように整備していきます」と島村氏は今後の取り組みについて語る。
今後も長崎県庁では、指静脈による生体認証を活用し、コスト効果に優れたシステムの開発に取り組んでいくと同時に、地場産業の育成や発展にも尽力していく考えだ。
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