活文 メールゲートウェイ・メールインフラソリューションの導入事例
株式会社リコー様10万人規模のメールゲートウェイを刷新。メール送受信状況の可視化と事業継続性向上を実現
メールゲートウェイを長年外部企業に委託していた株式会社リコーは、メール送受信状況の可視化と事業継続性向上をめざし社内運用への刷新を決断。想定件数月間80万件という大規模運用に対応し、メール送信の一時保留機能や添付ファイル暗号化などの機能を備えた「活文 メールゲートウェイ」と「大規模メールインフラソリューション」を採用しました。新システムは東京と大阪の2データセンターで稼働中。事業継続性が高まりました。
この事例に関するソリューション・商品
この事例に関するソリューション・商品
背景と課題
外部委託のネット環境により流量など実態把握が困難に
鈴木 弘之 氏
マルチファンクションプリンター(MFP)やプロジェクターで知られるリコーは、従来のオフィスを対象にしたビジネスから、人々が働くさまざまな現場(ワークプレイス)、そして社会へと価値提供の領域を拡大し、社会課題の解決とリコーの成長の同時実現をめざしているグローバル企業です。同社が電子メールやグループウェアを業務で使い始めたのは、1995年頃。
「当社では仕事の大半をメールが占めている状況で、業務を支えるIT基盤の中でも、メールは最も重要で欠かせないツールとなっています」(鈴木氏)
社員間のコミュニケーションは、これまでコミュニケーション基盤として採用している既存のグループウェアのメールボックスを利用し、取引先とはゲートウェイサーバーを介してメールのやり取りをする構成でした。
ただ、メール用のゲートウェイサーバーを含むインターネット接続環境の運用を外部委託していたため、インターネット利用頻度が高まるにつれて課題が生じてきました。
「まず、アウトソーシング運用だったため、詳細な稼働状況が見えなくなっているという課題がありました。セキュリティ対策の強化やデジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みを進めるには、インターネット接続環境を可視化することが不可欠です。そこで、アウトソースしていたインフラを内部運用に刷新することにしました」(和久利氏)
また、アウトソーシング方式では、サービス契約上インターネットの同時コネクション数の上限や、特定の運用情報までしか提供されないのも問題で「業務の効率化に取り組む従業員のためにも、メールを含めインターネット基盤の整備が必須だと思いました」(鈴木氏)
選定と導入
ネット接続環境を社内運用にし、セキュリティ対策を強化
和久利 智丈 氏
そこでリコーは、インターネット接続環境の刷新をめざすプロジェクトを立ち上げ、その一環として、メールゲートウェイ環境をオンプレミス化するための具体的な検討を2015年夏から始めました。
ただ、詳細な運用状況が分からないところからのスタートだったため、検討作業は容易ではありませんでした。数値として判明していたのは、ドメイン名別の月間総受信数とスパム件数。業務システムから自動送信される取引先向けメールもあり、部署別や時間帯別のメール件数やメールサイズなどは分かりませんでした。
「現状分析から始める正攻法を取ることができず、アウトソーシング先が作成した月次レポートと、各業務システムの運用担当者にヒアリングした数値を基に、大まかなサイジングを算出しました」(鈴木氏)
検討に当たっては、「世間一般の標準的なメールを送れるようにする」ことを重要な目標としました。既存のグループウェアやリコーの業務システムが作成するメールの中には、RFC(インターネットの標準仕様)から逸脱している項目があることもあり、文字化けやメールの不達などの問題が発生していたのです。
また、「不正なメールを送らない、受け取らない」というコンプライアンスの目標を達成するには、十分なセキュリティ対策機能も必要でした。添付ファイルの暗号化やパスワード自動設定はもちろん、SPF(Sender Policy Framework)やDKIM(Domainkeys Identified Mail)などの業界標準の送信者認証方式に対応することも絶対の条件です。さらに、上長の承認後に送信する一時保留機能も必要に応じて使えるようにしたいと考えました。
「これらの要件を定め、いくつかのITベンダに相談してみました。しかし、従業員数が世界で9万人以上、関連会社が220社、想定月間メール件数が80万件という大規模案件ということもあって、日立ソリューションズが提案した『活文 メールゲートウェイ・大規模メールインフラソリューション』だけが残りました」(鈴木氏)
経営層への上申を済ませた上で、新しいメールゲートウェイ環境を構築するための実作業が始まったのは、2016年12月のこと。OSをインストールしたサーバーをリコーのデータセンター(東京・大阪)に用意するところまではITインフラ統括部が担当し、メールソフトウェアの設計・構築・テストは日立ソリューションズのエンジニアが行うという作業分担です。
「短期間の強行スケジュールでしたが、日立ソリューションズの方々には、動作確認試験・性能試験を含めしっかり対応いただき、一般的なメールの在り方もいろいろとご指摘いただくことができました。また、業務ソフトウェアの直し方についてもアドバイスいただき、助かりました」(和久利氏)
成果と今後
東京と大阪の2センターにBCP対応の環境をつくり上げる
東京データセンターで新しいメールゲートウェイ環境が稼働し始めたのは、2017年4月。半年後の2017年10月には大阪データセンターでも同じ仕様の環境で稼働しました。2つのセンターは互いに機能を代替できる仕組みになっており、大規模な自然災害に見舞われたときはBCPのための設備としても機能します。
「ダッシュボードを見ればメールの流量やサイズ、受信メールのSPFやDKIMの評価などの状況が一目瞭然。IT部門としては状況が把握できることで安心できますし、メール不達の場合も理由がすぐに分かります。朝の特定の時間に大量のメールを配信するなどといったメール流量の偏りも、今では簡単に分かるようになりました」(和久利氏)
「工数削減などの定量的な効果を算出するのは難しいのですが、アウトソーシングしていた時と比べ全体コストは変えず、メールの送受信性能などキャパシティーを従来の倍以上に高めて、セキュアな環境を構築できたことは大きな成果だと考えています。また、メール基盤の自社運用により、現場からのメール送信状況に関する問い合わせに対するアジリティ(敏捷性)も向上したと考えています。データの可視化で、リアルな分析を経営に取り込めました。経営層も価値を認めています」(鈴木氏)
大阪データセンターでの稼働開始とほぼ同時期に、リコーはメールシステムを既存のグループウェアから Microsoft Office 365 へと変更。このとき、東京と大阪で稼働している「活文 メールゲートウェイ・大規模メールインフラソリューション」は、日本および、日本を除くアジア、パシフィックのリコーグループで使用されていましたが、メールドメインごとに複数フェーズに分けて配送経路を切り替えることで、既存業務システムや従業員への影響を最小限に抑えました。また、メールシステムの変更から今まで大きなトラブルもなく稼働しています。
「メールをこれだけ快適に使えるようになった今、当社のコミュニケーション環境は次のステージに進むべき時期を迎えています。メールの使用状況をリアルタイムに可視化できるということは、メールによって業務効率や生産性がどれだけ向上したかも数値として分かるということ。この点に注目すると、顧客とのやり取りも、メールではなく、プロジェクト単位で記録が残せるものに置き換えたほうがよいとの意見もあります。当社は Office 365 を使用しているので、ビジネスチャットの Microsoft Teams を併用するとメールがどれだけ減るかを追跡してみたいと考えています」(鈴木氏)
新しいコミュニケーションの時代に対応すべく、日立ソリューションズはメールとビジネスチャットなどを自動連携し、生産性を向上させるためのソリューションも検討中です。
これからも、ビジネスの生産性を高めるための支援策を提供していきます。
株式会社リコー
1936年に理研感光紙株式会社としてスタート。1955年にジアゾ複写機を発売して事務機器分野に進出する。現在では、情報化社会に欠くことのできないオフィスプリンティング、オフィスサービス、商用印刷、産業印刷、サーマルなどの事業分野において、革新的な商品とサービスを提供中。マルチファンクションプリンター(MFP)、テレビ会議システム、電子黒板、プロジェクターなどの商品は国内外の多くのオフィスで使われている。
本社所在地 | 東京都大田区中馬込1-3-6 | |
---|---|---|
設立 | 1936年2月6日 | |
従業員数 | 92,663人(連結、2019年3月31日現在) | |
事業内容 | オフィスプリンティング、オフィスサービス、商用印刷、産業印刷など | |
URL | https://www.ricoh.co.jp/ |
この事例に関するソリューション・商品
この事例に関するソリューション・商品
導入事例ダウンロード
本事例の内容は2019年8月29日公開当時のものです。
最終更新日:2020年5月26日