活文 知的情報マイニングの導入事例
スズキ株式会社様市場から販売代理店経由でフィードバックされる品質情報の重要度をAIで判定
四輪車、二輪車、船外機のメーカーであるスズキ株式会社(以下、スズキ)の製品は、多くの国内販売代理店を通して市場に提供されています。販売代理店からは日常的にそれらの品質について情報がフィードバックされ、製品の品質改善に生かされています。しかし、その案件数は膨大で、社内での処理が大きな負担になっていました。そこで同社では「活文 知的情報マイニング」を導入し、品質情報の受付時に実施する重要度の1次判定業務にAIを活用しています。
この事例に関するソリューション・商品
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背景と課題
人海戦術で対応している重要度判定業務を効率化したい
加藤 昭次 氏
スズキには、国内販売代理店を通じて製品の品質に関する市場からの情報が毎日送られてきます。それに対応する品質情報管理部では、1次判定、2次判定というプロセスを踏んで情報の重要度を判定し、関連部署に情報提供しています。
しかし、この判定業務には多大な負荷がかかっており、品質情報管理部では以前より効率化したいとのニーズがありました。
「AIについての情報収集を行う中で、AIを活用して工数削減をめざすとしたら、この重要度判定業務が適当ではないかと考えました」(溝口氏)
市場品質情報の判定業務は、さまざまな表現で書かれたテキスト文の内容を解釈して行う必要があるため、機械化は困難だと思われていましたが、AI技術の進歩により実現の可能性が見えてきました。
判定業務にAIを活用するには、AIに学習させる“教師データ”が必要です。品質情報の重要度を長年にわたって判定してきた同社には、膨大な量の判定データがありました。
「このデータを教師データとしてAIに学習させれば、高い精度の判定結果が得られるはずだと考えたのです」(溝口氏)
「市場情報処理業務は案件数も多く、四輪自動車に関する1次判定の処理は約10人が担当しています。この1次判定だけでも自動化できればと考え、まずは四輪自動車分野でトライアルすることにしました」(池田氏)
1次判定には、販売代理店での業務経験など自動車整備の経験者が充てられています。ただし、人数には限りがあり、経験値もそれぞれ異なり、時間がかかるとともに、担当者のスキルによって判定の品質自体にもバラツキがありました。1次判定をAIに処理させることによって、判定にかかる時間を短縮し、品質を平準化できれば、さらに深いレベルでの判定に時間が割けるようになります。
また、このトライアルが成功すれば、二輪車、船外機といった他の分野に横展開が可能になると同時に、グローバルにも展開できます。グローバルにビジネスを展開する同社にとっては大きな意味がありました。
選定と導入
実証実験で他社製品をしのぐ正答率87%という高い結果に
池田 真嗣 氏
一言でAIといってもさまざまなアプローチがあり、コストにも差があり、対象となる業務によっても向き不向きがあります。同社では2018年4月から製品情報の収集を開始し、6月に大手ベンダー数社に対して適切なソリューションの提案を求めました。
「選定の主な基準となったのは、導入コストと判定結果の精度です。そして扱う情報の機密性が高いことから、クラウドではなく、オンプレミスで利用できることを前提条件としました」(加藤氏)
同社では精度を確認するためにPoC(実証実験)を行いました。過去の判定データを教師データとして学習させたAIに、市場品質情報を判定させて、実際の判定結果と突き合わせることで正答率を比較しようと考えたのです。同社では、当初の目標とする正答率を70%に設定して、PoCに臨みました。
「チューニングなしで正答率が70%いけばよいと思っていましたが、日立ソリューションズが提案した『活文 知的情報マイニング』の正答率は87%でした。まさに想定以上の結果でした」(溝口氏)
一般的なAIでは初期段階で60~70%の正答率と聞いていたことを考えると、その差は歴然でした。また、導入コストについても、現在の対応コストと比較して大きなメリットがありました。
PoCの結果が評価され、2019年6月に「活文 知的情報マイニング」が導入されました。市場品質情報を受け付けるシステムと、判定結果を入力するシステムの間に「活文 知的情報マイニング」を配置し、寄せられた品質情報の重要度を判定。その判定結果と根拠となった過去の判定データとを合わせて担当者に提示する仕組みとなっています。
「既存システムと連携するためのシステム開発を前提として考えていましたが、『活文 知的情報マイニング』で提供されているAPI*を活用することで、思った以上に短期間で導入できました」(溝口氏)
APIを組み込む際、日立ソリューションズのサポートが迅速だったことも高く評価されました。
*Application Programming Interface
成果と今後
判定結果の精度を向上させて1次判定の無人化をめざす
溝口 亮太 氏
「活文 知的情報マイニング」の導入によって、高い精度でAIが重要度判定を実施できるようになりましたが、今後の自動化に向けてはまだ課題があります。
「確かに正答率は高かったのですが、人が行う判定結果と微妙に違うことがありました」(池田氏)
本来、高い重要度をつけなければならない案件に対して、低い重要度をつけるケースがあり、この見逃しは大きな影響をもたらしかねない課題です。
この課題解決に向けて「活文 知的情報マイニング」のチューニングは現在も進行中です。重要度が上位のものを間違って低く判定したケースでは、正しい判定データを教師データとして「活文 知的情報マイニング」に学習させて、正答率を高めていきます。
「当面の改善目標としては正答率90%をめざしています。1カ月分のデータを判定して学習させることを繰り返して、精度を向上させる取り組みを継続して行っています。3カ月程度で目標をクリアしたいと考えています」(溝口氏)
最終的な目標は無人で1次判定が行えることです。それが実現できれば、大幅に時間を短縮でき、判定品質も安定します。
「精度の面ではまだ発展途上と考えています。大半の判定結果は正しいのですが、今の状況では人が最終的に判定するというプロセスは外せないので、今後の精度向上に期待しています。早ければ早い方が現場は助かります」(池田氏)
「活文 知的情報マイニング」導入に当たっては、日立ソリューションズの製品、SEのスキル、迅速な対応が高く評価されています。もともとの前提となる条件がスズキにそろっていたことも成功の大きな要因となりました。
「質の高い教師データがそろっていることがAI導入の前提条件だと改めて実感しました」(溝口氏)
「活文 知的情報マイニング」の活用については、他の分野などへの水平展開も期待されています。
「当社の課題はグローバルへの展開です。実現できれば成果も大きい。今後は日本語だけでなく英語の業務についても展開していきたいと考えています」(加藤氏)
「活文 知的情報マイニング」は現在も進化しています。今後は搭載するアルゴリズムを強化し、精度のさらなる向上を図っていきます。日立ソリューションズは今後も、進化していく「活文 知的情報マイニング」により、スズキの市場品質情報の判定業務効率化を引き続きサポートしていきます。
スズキ株式会社
日本屈指の四輪車、二輪車、船外機メーカー。二輪車、軽四輪車の先駆けとなった企業であり、四輪車、二輪車とも国内販売台数上位、船外機は世界でも販売台数上位を誇る。国内外に生産拠点を展開し、スズキグループとして、国内連結子会社70社、海外連結子会社61社の計131社を持つ(2018年3月31日現在)。インドでは乗用車市場シェア50%を超える。
本社所在地 | 静岡県浜松市南区高塚町300 | |
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設立 | 1920年 | |
従業員数 | 15,431人(2019年3月末現在) | |
事業内容 | 輸送用機器メーカー(四輪車・二輪車・船外機・電動車いすなど) | |
URL | https://www.suzuki.co.jp/ |
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本事例の内容は2019年9月24日公開当時のものです。
最終更新日:2019年9月24日