企業がハンコレスを実現させるには?
メリットや導入手順を詳しく解説
働き方の多様化に伴って、仕事がオンラインで完結するケースが増えつつあります。その一方、文書などの承認に押印が必要で、出社を余儀なくされるケースも少なくないのが実情です。また、国内でハンコレスが推進されているものの、どのように導入すべきか分からない方も多いのではないでしょうか。
今回は、ハンコレスのメリットや課題、導入するための具体的な方法を解説します。
この記事の目次
ハンコレス(脱ハンコ)とは
ハンコレス(脱ハンコ)とは、稟議書や契約書、その他書類に対して従来必要であった押印が不要になることです。
近年、リモートワークが普及したことによって、出社義務を設けない企業が増えています。それにより書類の押印が困難になっただけでなく、押印作業が業務の進行を鈍化させていました。また、ペーパーレスが推奨されている現代において、押印の存在はペーパーレスを妨げる大きな要因にもなっています。
このような事態の打開策として注目されているのがハンコレスです。押印業務をカットすることで業務の進行を早め、業務効率を高めることが期待されています。
ハンコレスの方法
ハンコレス化するには、下記のような方法があります。
- 電子署名
- 電子承認
電子署名
電子署名とは、デジタルデータとなっている契約書などの書類に対して付与される署名のことです。適切な電子署名を行うことで、改ざんが行われていないこと、本人による署名が行われたことを証明できるため、法的効力を持つものとして、高い信頼性が保証できます。
文書を紙に印刷して署名や押印を行う、といった従来必要だったプロセスをカットできるため、業務の効率化にも有用です。
業務で使用しているPDF編集ソフトや、文書を作成するMicrosoft WordやMicrosoft Excelなどからも電子署名の設定が可能ですが、より簡単に電子署名を行える電子署名サービスなども存在しています。
電子署名の方法については、こちらの記事もご覧ください。
電子承認
電子承認とは、先述した電子署名や電子文書に捺印できる電子印鑑などを活用することで、文書内容の承認を行う業務全体のことです。
電子承認を行うことで、従来必要であった紙媒体への印刷や製本、郵送などの業務をカットでき、文書承認が完了するまでのスピードを早めることが可能です。
また、承認が確かに本人によって行われたものであることや、データの改ざんなどが行われていないことを示すために、電子署名や電子印鑑の技術を用いています。
このようにハンコレスの促進に伴って、電子署名を含めた電子承認を企業で取り入れる動きも活発化しています。
ハンコレスを導入するメリット
ハンコレスを導入するメリットは、下記のとおりです。
- メリット1 業務効率や生産性の向上
- メリット2 リモートワークの推進
- メリット3 コンプライアンスの強化
- メリット4 コスト削減
メリット1 業務効率や生産性の向上
ハンコレスを実行することで、業務効率や生産性の向上につながります。
先述したように、ハンコレス以前では、文書の承認を得るためには印刷や製本、郵送の作業に時間と人員を要していました。そのうえ、承認する側も署名や押印するだけでなく、送り手と同様に郵送による返信が必要な場合があるなど、双方の負担が大きかったといえます。
ハンコレスを行うことで、すべてのやり取りが電子上で解決するため、上記のような業務が不要になります。契約書の管理もパソコン上で行うことになるため、紙媒体と比べて管理しやすいでしょう。
ハンコレスによってより本質的な業務に人員や時間を充てることが可能になるため、業務効率や生産性の向上が期待されています。
メリット2 リモートワークの推進
ハンコレスを導入することで、リモートワークの推進を図ることが可能です。
リモートワークが浸透しない要因の一つに、押印作業があります。印鑑を用いる必要がある以上、出社義務が発生してしまうため、リモートワークの推進が行えないのです。
一方ハンコレスを導入することで、前述の電子承認が可能となります。電子承認は一般的に会社のパソコンだけではなく、インターネット環境につながっていればどのデバイスからでも可能です。出社不要で承認作業を完了できるため、進捗もよりスムーズになるでしょう。
メリット3 コンプライアンスの強化
これまで、紙媒体での契約における改ざんは不可能であるとされてきました。しかし現在はスキャナー技術の向上などによって、紙媒体のデータ改ざんリスクが高まっています。
一方、電子承認を適切に行った場合、データが改ざんされていないこと、本人によって承認されたことだけでなく、承認を行ったタイムスタンプなども明確化して保存することが可能です。
また電子上の書類のため、保管に物理的な場所を要することもなく、文書の保存も安全かつ容易に行えます。
このように、ハンコレスによる電子承認の導入はコンプライアンス面の強化にもつながるといえるでしょう。
メリット4 コスト削減
ハンコレスを行うことで、コスト削減が可能です。最も大きなコスト削減は、書類を作るたびに必要となる収入印紙代です。
電子書類の場合は収入印紙代が不要なため、その分のコストを削減できます。さらに、紙媒体への印刷に必要な紙やインクも、継続的に費用がかかる消耗品です。これらの消耗品にかかるコストを考慮すると、ハンコレスの導入は、大幅なコストカットにつながります。
なお、ここまでは金銭面のコストについて言及しましたが、時間的なコストの削減にもつながります。ハンコレスの場合の、文書作成から承認、保管、管理に必要な時間は、紙媒体の場合と比べて短いためです。
このように、金銭的コストと時間的コストの両方を削減できる点もハンコレスの強みといえるでしょう。
ハンコレスの実現に向けた課題
ハンコレスの実現に向けた課題は下記のとおりです。
- 課題1 押印を用いる企業が多い
- 課題2 電子署名の法的効力があまり知られていない
課題1 押印を用いる企業が多い
ハンコレスの実現における大きな課題は、依然として押印を用いる企業が多いことです。
ハンコレスによる契約の締結や承認を行う場合は、取引先の企業もハンコレスに対応していることが条件となります。そのため取引先がハンコレスに対応していない場合は、ハンコレスの推進や実現が困難になりがちです。
特に日本では印鑑に対する信頼性が高いため、押印を求める企業も少なくありません。そういった背景が、結果としてハンコレス推進の障壁の一つになってしまっているのです。
このような状況を打破するためには、後述する電子署名の法的効力をより多くの方に知ってもらうなど、根本的な取り組みが必要になるでしょう。
課題2 電子署名の法的効力があまり知られていない
電子署名によるハンコレスに踏み切れない方のなかには、電子署名の法的効力を実感していない方が一定数いることも事実です。
しかし、電子署名の法的効力は「電子署名及び認証業務に関する法律(以下、電子署名法とする)」と呼ばれる法律で定められています。
「電子署名法」の第二章第三条によると、適切な電子署名が行われた電子文書は、印鑑が押された紙の契約書と同等の効力を持つとされており、電子署名には十分な法的効力があると明記されているのです。
電子署名は、データの改ざんが行われていないことや、本人による電子署名が行われたことなどの必要な情報を、データ上に残すことができます。そのため、適切に利用すれば、紙媒体での押印以上に信頼性の高いものになり得るのです。
企業がハンコレスを導入するための準備
企業がハンコレスを導入するためには、下記の準備を行う必要があります。
- 準備1 書類を仕分ける
- 準備2 セキュリティ面の対策
- 準備3 コストの計算
- 準備4 業務フローの整理
- 準備5 取引先の承認
準備1 書類を仕分ける
ハンコレスを行うにあたって、まず書類を仕分ける必要があります。たとえば以下の3種類に書類を分けるなどするとよいでしょう。
- ハンコが必要な書類
- ハンコに代わる処理で十分な書類
- ハンコが不要な書類
まずは自社が保有している書類の種類や総数を把握します。そのうえで、ハンコが必要な書類は電子署名に代替できないか、ハンコに代わる処理で十分な書類については電子承認ソフトを利用できないかを検討しましょう。
準備2 セキュリティ面の対策
ハンコレスを導入すると書類管理をデータ上で行うことになります。しかし対策を講じなければ、データの改ざんなどが容易にできてしまうため注意が必要です。
セキュリティ対策として電子承認ソフトや電子署名サービスなどを導入し、データの改ざんや第三者の介入などを防ぎましょう。
電子承認ソフトや電子署名サービスの場合、それらのなかで自動的にセキュリティ対策を行ってくれるため、比較的容易に対策が可能です。
効率よくセキュリティ面の対策を行いたい場合は、電子承認ソフトや電子署名サービスの導入を検討することを推奨します。
準備3 コストの計算
新しく電子承認ソフトや電子署名サービスを導入する場合、事前にコストを計算しておきましょう。これらは、1カ月あたりの取引件数や利用者数によってコストが異なります。定期的に料金を支払うサブスクリプション方式になっていることが多いため、必ず年間単位で費用を計算し、費用対効果が十分かどうか吟味することが大切です。
さまざまなソフトやサービスが存在するため、コストを比較して費用面で選定するといった方法も一つの手段といえます。
準備4 業務フローの整理
新たにハンコレスを導入する場合は、改めて業務フローの確認を行いましょう。ハンコレスを導入したとしても、実際に社員が使用方法や業務フローを認知していなければ、円滑に業務を遂行することは困難です。
ハンコレスに関する業務フローや使用するソフト・サービスのマニュアルを作成し、早いタイミングで社内に共有することが業務の効率化につながります。
準備5 取引先の承認
先述したように、ハンコレスの導入は自社内だけで完結するものではありません。取引先にもハンコレスに対応してもらう場合、ハンコレスによる取引を行うことへの承認をもらう必要があります。
なお、電子署名サービスのなかには、取引先が電子署名サービスを利用していなかったとしても、簡単に電子署名を行えるものも多数存在しています。
このようなサービスを活用する際にやり取りの流れを伝えるとともに、ハンコレスの承認をもらう方法も一つの手段でしょう。
【使用場面別】ハンコレスの導入方法
ここからは、使用場面別にハンコレスの導入方法を紹介します。場面によって導入方法が異なるため、それぞれの方法をおさえたうえでハンコレスに取り組みましょう。
社外向けの文書
社外向けの文書の代表例としては、見積書や請求書、契約書などが挙げられます。これらの書類でまず確認すべきことは「本当に押印が必要かどうか」です。
特に請求書や見積書は日々大量に受領している企業も多く、なかには押印確認をしていないケースや、押印を求めていないケースもあります。このようなケースでは、そもそも押印を無くし、電子上で書類を送るだけでハンコレスを完結できるでしょう。
一方、契約書の締結などに関しては押印が必要です。この場合は、紙媒体での契約締結にかかる人的コストや金銭的コストを把握し、業務効率化やコスト削減などのメリットが期待できる場合はハンコレスに踏み切るとよいでしょう。
なお、先述したとおり、社外向けの文書でハンコレスを導入する場合は、取引先の承認を得ることが必要です。こちらも忘れないように行いましょう。
社内向けの文書
社内向けの文書の代表例としては、稟議書や申請書、台帳などがあります。社内向け文書も社外向け文書と同様に、まずは「本当に押印が必要かどうか」を熟考することが大切です。
社内で完結する文書については押印の必要性がないケースも多いため、押印自体を不要にすることができます。記録の残るメールやチャットツールで文書を送ることを義務付けるなども、社内文書を取り扱う手段の一つです。
法律上保存が求められている書類やコンプライアンスの観点から署名が必要な書類の場合は、電子署名などの活用を検討するとよいでしょう。
行政向けの文書
行政向けの文書の代表例としては、申請書や届け出などがあります。行政向けの文書に対するハンコレスは、文書送付先の行政機関に問い合わせましょう。
2020年の新型コロナウイルス感染症拡大以降、行政向け文書の一部においてもハンコレスが推進されています。ただし、押印が必要なケースも多くあるため、問い合わせたうえで適切に手続きを進めましょう。
ハンコレスを実現するなら
ハンコレスの実現を検討している方には、電子署名の世界的な先駆けとなった「DocuSign(ドキュサイン)」がおすすめです。企業間の合意や契約はもちろんのこと、社内の稟議に関する準備や署名、押印、実行、管理といった業務をすべて電子上で管理できます。
DocuSign(ドキュサイン)は多くの業務において活用されていますが、主な業務例は下記のとおりです。
- 業務委託契約
- パートやアルバイトに対する雇用契約
- 請求書や納品書に対する押印
このようにさまざまな場面で電子契約を導入できるのは、DocuSign(ドキュサイン)の大きな強みといえるでしょう。契約書締結に必要だった書面の印刷や製本、署名押印などをオンラインで解決することが可能です。
日立ソリューションズでは、電子署名サービス「DocuSign(ドキュサイン)」の販売だけでなく、導入にあたっての業務の整理や課題の洗い出し、対策方法の提案、社内規定の整備などをサポートしています。導入後も電子署名や電子契約の定着化をサポートしているため、スムーズな電子契約の一般化だけでなく業務効率化も期待できるでしょう。
ハンコレスの実現を検討している方は、ぜひ一度当社にご相談ください。
まとめ
本コラムでは、ハンコレスを行う方法やメリット、課題について解説しました。リモートワークなどの働き方の変化に伴い、ハンコレスはますます多くの企業で導入されていくと考えられます。
ハンコレスを導入する場合はやみくもに行うのではなく、ハンコの必要性を考えたうえで、適切な電子承認や電子署名を行える体制を整えることが大切です。
ハンコレスを検討している方は、今回紹介した内容を参考に実践してみてはいかがでしょうか。
- ※本記事は、2022年7月時点の情報を元に作成しています。
- ※本記事は、一般的な情報提供を目的としたものです。記事内の法律に関する情報については、短期間に法改正が行われる場合もあるため、当社は情報が最新のものであること、また、正確であることを保証することはできません。当社は本情報を使用したことにより生じる責任、損害を補償する義務を負いません。
- ※Microsoft、Microsoft Word、Microsoft Excelは、Microsoft Corporationの米国およびその他の国における商標または登録商標です。
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