「ESG情報開示」を成長の原動力に変える!
後編:企業価値の可視化へ、今から始めるプラットフォーム構築
ESG情報の開示義務化の動きが強まるなか、投資家などステークホルダーの要請に応えるべく自主的に情報開示に取り組む企業も増えています。しかし、日本国内では先を見越した具体的な対応に着手できている企業は、まだ多くありません。中長期的な視点で、ますます複雑化する開示要件に柔軟かつ速やかに対応していくためには、情報開示のプロセスを効率化するとともに内部統制を強化するプラットフォームが不可欠です。外部への情報開示にとどまらず、ESG経営における意思決定や取り組み状況の可視化に役立てるなど、幅広い用途でのデータ活用を見据えた効果的なプラットフォームの構築について、ワーキーバジャパン合同会社の大八木 邦治 氏に伺いました。
ワーキーバジャパン合同会社
エリア セールス ディレクター
大八木 邦治 氏
この記事の目次
ESG情報開示に危機感を募らせる実務担当者
Workivaが独立した調査会社に委託し、世界中の2,000人を超えるESG実務担当者(財務、サステナビリティ、内部監査など、ESG報告に関与する方)を対象に実施した調査結果によると、87%の担当者が、世界的なESG規制に準拠したレポーティングを行うことに課題を感じていることが明らかになりました。さらに、ESG規制の対象外である企業においても、81%の担当者はグローバル標準となるCSRDの全部または一部に準拠する意向があること、またその一方で、83%の担当者がCSRD要件を満たすための正確なデータの収集に対して難しさを痛感していることがわかりました。
このように、ESG情報開示に関わる担当者の多くが危機感を募らせ、何らかの取り組みに着手する必要性を強く感じているものの、「今の段階で、どこまで、どのように対応していけばいいかわからない」という声があるのも事実です。その背景には、ESG情報開示ならではの事情や悩みが存在していると考えられます。
<よく聞く声>
- 開示情報が多種多様で対応すべきことが極めて多い
- 情報開示に必要なデータが複数部門に散在している
- 情報の一貫性・正確性を確保する仕組みがない
- 関与する部門が非常に多く、旗振り役となるオーナー部門が不在である
- 情報開示のプロセスを効率化するプラットフォームがない
情報開示に必要なデータのサイロ化が課題
CSRDに基づいてサステナビリティ報告を行う際に準拠するべき基準となるESRSでは1,200項目についてデータを集める必要があり、さらにそれらの合理的保証が求められます。しかし、経理部門が管理している財務情報と異なり、非財務情報は、社内外に分散するさまざまな部門や取引先から幅広くデータを収集する必要があり、一筋縄ではいきません。しかも、部門ごとに個別最適化されたシステムで管理されているデータは、管理方法や情報の粒度・鮮度がバラバラ。そもそも正確性を担保する仕組みすらない場合もあります。
「すでに各部門で作成したレポートから情報を集めてくるにしても、レポート向けに情報が加工されていることも多く、そうなるとデータの一貫性・信頼性は保証されません。財務情報を取得する仕組みはあっても、非財務情報を取得するための仕組みが整っていないというのが、大半の企業の現状です。つまり、開示に必要なすべての情報を既存の仕組みで収集するのは難しいということです」と大八木氏。
ESG情報開示に向けたデータ収集にあたっては、こうしたデータのサイロ化を解消するところから始めなければなりません。
手作業によるデータ収集に限界
さまざまな部門、取引先が関与する非財務情報の取得において上記のような課題があるなかで、すでにESG情報開示への取り組みを進めている企業は、どのようにデータ収集を進めているのでしょうか。大八木氏は、「まだまだ部門間でメールやチャットを通じてファイルのやりとりを続けている企業が多いですね」と指摘したうえで、こう続けます。
「各部門に期限付きで提出をお願いするものの、戻ってくるタイミングもバラバラ。何度かやりとりしているうちに途中でファイル名が変更されたりカラムが追加されたりすると、データの整合性が損なわれます。統一されたプロセスがないために情報が分断されてしまい、手作業は増える一方です」
また、米国KPMGが発表した調査結果によると、多くの企業はデータ収集を手作業に依存しており、半数近くの企業がESGデータの管理にスプレッドシートを使用している実態が明らかになっています。多くの時間と労力を要する手作業に依存し続けている限り、負荷が減らないばかりか、人的ミスの発生が避けられず、データ品質も保証されません。このほかにも、次に挙げるような課題が顕在化しています。
<データ収集における課題>
- 必要なデータが異なるフォーマットで提供され、整合性を取りにくい
- ミスが発生しやすい手作業に多くの工数を費やしている
- タイムリーかつ正しいデータがなく、リーダーの戦略的な意思決定が難しい
- 集めたデータの体系的な管理が難しく、手作業による都度チェックが必須である
- 誰がどのデータを作成・利用したのか、誰がどの段階で承認を行ったのかを可視化できない
効率化と信頼性確保に向けた適切なツールの選択
このままでは、現場の担当者にとってもESG実務担当者にとっても、情報開示への取り組みは価値を見いだせない手間のかかる業務でしかなくなってしまいます。こうした現状に手詰まり感を抱く企業を中心に、システム化を検討する動きが見られます。
データ収集および開示資料の作成を効率化し、企業全体で情報開示に向けた報告能力を向上させるためには、「適切なツールに頼る」という選択が避けられません。具体的な検討にあたっては、大きく分けて「ESG情報の収集・管理の効率化」と「開示資料の作成プロセスの自動化」の2つの観点から、ツールの持つ機能や特長に着目してみるとよいでしょう。たとえば、以下のような要件を満たすかどうかが重要になります。
<ツール選びのポイント>
-
データの一元化と可視化
単一のプラットフォーム上で、誰でも、必要なタイミングで、必要なデータを取得・利用でき、現状をリアルタイムに可視化できる。
-
single source of truth(信頼できる唯一の情報源)
正確なESG情報を一元的に管理できる環境を実現し、組織全体が同じデータに基づいて業務を行える。
-
タイムリーな報告
正確性が保証されたデータを利用し、タイムリーな情報開示・レポート作成が行える。
-
変更点の迅速かつ正確な反映
データが変更された場合に、手作業が発生することなく、影響を受けるすべての箇所に対して自動的に反映される仕組みがある。
-
ESG経営へのデータ活用
外部からの要請に基づく情報開示にとどまらず、長期的な視点で企業価値の向上につながるデータ活用ができる。
開示業務最適化のためのプラットフォームを提供するWorkiva
上述の要件を満たすツールとして、世界中で6,000社を超える法人のお客さまに導入されているのが※1、財務・非財務情報の開示業務をシンプルにするデータエンパワーメントプラットフォーム「Workiva(ワーキーバ)」です。データ収集からKPI管理、さらには開示まで、監査対応可能な統一されたプロセスを実現することでさまざまな規制への対応を効率化するとともに、グローバル規模での企業価値向上に貢献します。
Workivaで実現できること | |
---|---|
データの自動収集 | 他システムからデータを取得するための豊富なAPIを提供 |
データ更新時の自動反映 | 同じデータを利用するすべての箇所で最新の正しいデータを使用可能 |
データ元・作業履歴の管理 | 報告書とその元となったデータを一元管理することでトレーサビリティを確保 |
協働で作業 | レポート作成の共同作業を効率的かつ安全に実施 |
グローバルの先進事例に見るWorkiva活用の成果
Forrester Consulting社が5人のWorkivaユーザーに実施した調査結果によると※2、Workivaを用いたシステム投資が一定の成果を生み出すことは数値からも明らかです。
監査の工数を
40%削減
報告書の作成時間を
65%短縮
6カ月未満で
初期投資を回収
さらに、ワーキーバジャパンが実際に支援した次の2社の事例から、単に情報開示への対応を効率化するだけにとどまらず、企業価値の向上につながる成果を生み出していることがわかります。
【Case1:A社】
<背景にあった課題>
- ESG報告書の提出に対する投資コミュニティからの強い圧力への対応
- 業界初のESGレポート提出と企業としての社会的責任を果たすことへの経営陣の強いこだわり
- これらの対応に向けたマニュアル作業の負荷増大
<Workivaを選択した理由>
- 外部データの取り込みや、ほかのシステムとのデータ連携が可能であること
- データ収集からレポート作成まで業務全体を効率化するエンドツーエンドのソリューションであること
<改革のポイント>
- マニュアルでのデータ収集に伴うデータリークなどのリスクを回避するためシングルプラットフォーム化を実現
- データ収集のみならず、開示フレームワークへの対応が容易になり、より進化・充実したレポート作成が可能に
- 人的リソースにかかるコスト削減はもちろん、情報の正確性や可視性、一元性や監査性も向上
- 社内の業務効率化にとどまらず、経営陣はもちろん、ステークホルダーからの評価も向上
【Case2:B社】
<背景にあった課題>
- 自社の成長戦略の中核をなすサステナビリティとエネルギー転換に対する取り組みをスムーズに進めるための報告体制の基盤強化
- 変化するESGレポーティングの要件への俊敏な対応
<Workivaを選択した理由>
- 複数の機能を持つ精度の高い統合レポート基盤を計画的に構築できること
- 投資家のニーズに対応できるレベルのESGデータの確保に向け、明確なデータ管理構造を実現できること
<改革のポイント>
- 将来にわたってESGレポーティングの変化に対応できる統合レポートの基盤を構築
- ESG情報ガバナンスの枠組みを確立し、報告対象の指標とデータの監視能力・信頼性が向上
- プロセスの自動化を通じた業務効率が向上しただけでなく、正確なデータを活用したデータドリブンな意思決定を実現
- 企業としてのサステナビリティ戦略とステークホルダーのエンゲージメントを強化することに成功
その先のDXを見据えた「全体最適」の視点
ツールとして適切なプラットフォームを準備することはもちろん重要ですが、その上にDX(デジタルトランスフォーメーション)のためのシステムを構築することも同様に重要です。ESG情報開示対応では、全体最適の視点を持ちながら部門横断的なプロジェクトとしての推進が必要となる理由も、ここにあります。
たとえば、ESG情報開示においては、幅広い分野からの情報収集が必要となり、さまざまな業務システムとの連携が求められます。具体的には、どのような情報が必要で、その情報がどの業務プロセスで生成されるのかを明確にしたうえで、必要な情報を収集するために、既存の業務システムとWorkivaとの連携を設計することになります。
こうしたシステム連携の設計・実装をスムーズに進めるには、業務システムの専門知識を持ち、SI(システムインテグレーション)実績が豊富にあるパートナーとの協力体制が不可欠です。日立ソリューションズは、長年にわたりDXのためのSIを提供してきた実績と経験をもとに、情報開示対応のベストプラクティスを提供。お客さまの伴走者として、ツールの提供だけでなく、データ連携のリアルタイム性、コスト、業務プロセスの実現性などを踏まえた最適なデータ連携方法のご提案から設計・実装、さらには運用面の支援までをワンストップでサポートしています。
まとめ
投資家の要請を受けて、開示情報の充実化に向けた動きが活発化するなかで、中長期的に情報開示のプロセスを効率化するためのプラットフォームが求められています。
重要なのは、ESG情報の開示そのものが目的化してしまわないことです。適切なプラットフォームを整備することで、情報開示プロセスの効率化や内部統制の強化にとどまらず、データに立脚したサステナビリティ戦略の策定と実行、フレームワークへのマッピング、重要指標のモニタリング、社外協力者とのコラボレーションの強化が可能になります。
したがって、こうした企業価値の創出に寄与するデータ活用を見据え、正しいデータをタイムリーに可視化してくれる適切なツールを選択し、プロジェクトを推進する必要があります。
日立ソリューションズは、欧州への進出企業や、国内上場企業が求められている情報管理や情報開示業務のさらなる効率化と内部統制の実装を支援し、重要性が高まる企業のESG経営に貢献していきます。
- ※本記事は、2024年9月時点の情報をもとに作成しています。
- ※本記事は、一般的な情報提供を目的としたものです。記事内の内容については、当社は情報が最新のものであること、また、正確であることを保証することはできません。当社は本情報を使用したことにより生じる責任、損害を補償する義務を負いません。
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