LLM(大規模言語モデル)とは?
生成AIの基盤技術について概要や活用方法を紹介
ChatGPTやGemini、Claudeなど、さまざまな生成AIの登場により、ビジネスや業務のあり方は劇的に変化しています。こうした生成AIの基盤となっている技術がLLM(大規模言語モデル)です。LLMという言葉は聞いたことがあっても、具体的にどのようなものでどのような活用方法が考えられるのか、実際には知らない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、LLMの概要や活用方法、課題などについて詳しく解説します。
LLM(大規模言語モデル)とは
まず、LLMとは何か、具体的なモデルとしてどのようなものがあるかなど、LLMの概要をご紹介します。
LLMの概要
LLM(Large Language Models)とは、自然言語処理技術の1つであり、単語の出現確率をモデル化して、次に続く言葉を予想する仕組みのことです。日本語では「大規模言語モデル」と訳されます。
LLMを理解するためには、まず「言語モデル」について理解する必要があります。たとえば、「海の色は」に続く言葉であれば「青い」や「緑色」などが多く、「茶色」や「黒い」といった言葉が続く可能性は低いと予想できます。言語モデルは大量の文章データを学習して、ある文脈の中で次にどのような言葉が続きやすいかを予測します。
「大規模」言語モデルであるLLMは、ディープラーニングにより膨大な量のデータを学習した言語モデルです。大量のデータを学習することで、あらゆる文脈において、次にどのような言葉が来るかを予測できます。LLMはユーザーからの入力に対して、汎用的に回答を作成します。ある言葉の意味を説明したり、自然な会話を行ったり、英語を日本語に翻訳したりと、LLMは大量の学習データをもとにさまざまなユースケースで利用できます。
LLMと生成AIとの違い
近年では、生成AIというキーワードを耳にする機会が増えました。生成AI(Generative AI)とは、文章や音楽、画像、動画など、さまざまなコンテンツを作成できるAIを指します。従来のAIは、あらかじめ定めた方法に基づいて分類や予測などを行うものでしたが、生成AIでは大量のデータをもとに新たなコンテンツを生み出すことができます。
生成AIの技術的なベースとなっているのがLLMです。LLMは、現在世界を席巻しているChatGPTなどの生成AIサービスの根幹を支える技術であり、LLMの登場により、生成AIという新たなサービス領域が発展しました。
近年では、LLM以外にもテキストから画像を生み出す「text-to-image」という技術や、テキストと画像を組み合わせて利用する「マルチモーダル」といった技術の活用も進んでいます。LLMをはじめとするさまざまな技術により、生成AIのユースケースも広がっています。
主なLLM
世の中には、さまざまなLLMが存在します。以下では、その中でも知名度の高いものをご紹介します。
GPT
GPTはOpenAI社が開発するChatGPTに用いられているLLMです。最新バージョンであるGPT-4oではテキストに加えて音声、画像、映像なども扱えるうえ、自然なテンポで人の感情を認識するなど、性能の向上が際立っています。
Gemini
GeminiはGoogle社が提供するLLMです。2023年12月に発表され、一部ベンチマークではGPTを上回る結果を示すなど、高度な自然言語処理能力で注目されています。
Llama
LlamaはMeta社が開発するLLMです。最新バージョンであるLlama3は80億のパラメータ数を持つなど高い性能を誇ります。Llamaは超高速で回答作成できる生成AI「Groq」などで利用できます。
LLMの利点
LLMにより、従来は個別にAI開発を行っていたようなタスクに対しても、汎用的に対処できるようになりました。既存提供されているLLMだけではなく、自社で新たにLLMを構築し、サービスとして提供することも可能です。
LLMの開発、提供には以下のようなメリットがあります。
- 精度:大量のデータを学習しているLLMは、高い精度でユーザーのニーズに応えられます。
- 多様な用途:言語翻訳や要約、質問への応答など、1つのLLMで幅広い用途のユースケースに対応できます。
- ゼロショット学習:事前に特定用途にチューニングせずに、各タスクを高い精度で実行できます。
ビジネスでの活用シーン
以下では、LLMのビジネスでの活用シーン例について紹介します。
文章の作成、校正
文章の作成や校正、要約などはLLMの得意分野です。返信メールや報告書の下書きを作成したり、翻訳をしたりと、さまざまなユースケースで活用できます。
音声や画像などさまざまな形式の情報を扱えるマルチモーダル型のLLMであれば、会議の録画ファイルから音声データをもとに議事録作成なども行えます。
プログラミングの補助
目的に合わせたコードの生成もLLMが得意な領域の1つです。条件を指定したうえでコードを生成したり、コードのバグをチェックしたり、テストを自動化するといったさまざまな用途が考えられます。
対話型でコード生成を行うこともできるため、エンジニアリングのスキルがあまりない人でもプログラミングが可能です。近年では、IT人材の不足とともにシステム開発を内製化する動きも進みつつありますが、LLMは自社で独自にシステム開発を行う際にも大きな武器となります。
ユーザーサポート
LLMによりチャットボットの構築も可能です。LLMは一般的にインターネット上に存在する汎用的な知識を備えていますが、そこに自社の製品・サービスの情報を追加で学習させて、コールセンターやカスタマーサポートなどの用途に展開することもできます。
このとき、自社データをLLMにインプットして追加学習を行う方法のほか、追加学習のステップを踏まずに自社固有の情報をLLMに与えられるRAG(検索拡張生成)という方法もあります。
RAGはコストを抑えて自社のデータをLLMに与えられる有効な方法として注目されています。詳しくは以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
LLMの課題
LLMを利用するにあたって、注意しなければならない点もあります。ここでは大きく分けて2つのリスクについてご紹介します。
虚偽の内容を生成するリスク
LLMは汎用的に文章の生成を行う能力を持ちますが、一方で生成内容が必ずしも正確ではないリスクがあります。「ハルシネーション」と呼ばれるこのリスクは、生成AIの構築や利用に際し、認識しておくべき重要な点です。
企業として提供しているLLMに誤りがあったり、場合によっては差別的な文章を生成してしまったりする可能性がありますが、これは、企業にとっては大きなリスクです。
LLMを構築する場合には、ハルシネーションのリスクがある点を理解し、可能な限り対策する必要があります。たとえば、出力結果に対してフィルターをかけ、偏見や差別的な表現を表示させないようにしたり、強化学習としてユーザーから得られたフィードバックをもとに誤りを含む情報を改善したりするなどの方法が考えられます。
不正にLLMを利用されるリスク
もう1つのリスクは、不正にLLMを利用されてしまうリスクです。悪意のあるユーザーがLLMから不適切な回答を生成するという攻撃手法が知られています。
「プロンプトインジェクション」と呼ばれるこの攻撃により、LLMが本来想定しているものとは異なる動作をしてしまう可能性があります。機密情報や個人情報の流出リスクともなるため、注意が必要です。
プロンプトインジェクションを防ぐためには、プロンプトの入力内容を制御したり、出力結果を適切な内容のみにフィルタリングしたりするといった対応が必要になります。
企業向け生成AI・LLM利用環境を提供する「Alli LLM App Market」
企業で生成AI・LLMを簡単に利用するための環境をオールインワンで提供する「Alli LLM App Market」は、生成AI・LLMをさまざまな業務で活用できるメニューを、生成AIから有効な回答を得るためのノウハウが詰まったプロンプトとともに提供しています。
また、独自のRAGシステムにより、表形式を含むドキュメントも高精度で検索して生成AIにインプットでき、上述のLLM利用時の課題である「ハルシネーション」にも対処できます。
日立ソリューションズは、Alli LLM App Market の開発元であるAllganize Japan株式会社と販売代理店契約を結んでおり、Alli LLM App Marketの再販および提案・導入作業を実施しています。日立ソリューションズの長年にわたるシステムインテグレーションの実績により、生成AI・LLMで機密情報を安全に取り扱えるプライベート環境を提供できます。また、既存システムとの連携など、お客さまの要望に合わせて適切な生成AI・LLM活用環境を提供します。
まとめ
この記事では、LLMについてその概要や主なユースケース、注意点などについてご紹介しました。LLMは革新的な技術であり、生成AIというサービス領域の基盤となっている技術です。今後、生成AI分野はますます発展していくでしょうし、LLMの技術概要の理解は重要といえるでしょう。
記事でご紹介したとおり、ChatGPTをはじめとした既存のLLMを利用するだけでなく、目的に合わせたLLMを個別に構築し、顧客へサービス提供を行えます。LLMの構築には一定のリソース、コストが必要ですが、Alli LLM App Marketであれば既存の仕組みを選択して組み合わせて、すぐに本格的な生成AI・LLMの利用環境を構築できます。ご興味のある方は、ぜひ当社までお問い合わせください。
- ※本記事は、2024年9月時点の情報をもとに作成しています。
- ※本記事は、一般的な情報提供を目的としたものです。記事内の内容については、当社は情報が最新のものであること、また、正確であることを保証することはできません。当社は本情報を使用したことにより生じる責任、損害を補償する義務を負いません。
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