暗黙知と形式知とは?
違いや変換方法、ナレッジとして共有するために押さえたいポイントを紹介

一つの組織の中には実に多彩な情報が存在しています。顧客に関するデータもあれば、ベテラン社員が長年蓄積してきたノウハウもあることでしょう。こうしたビジネスで有効活用できる情報を「ナレッジ」と呼びます。ところで、このナレッジには大きく分けて2種類あることをご存じでしょうか。すなわち「暗黙知」と「形式知」です。今回は、暗黙知・形式知の違いとそれぞれの特徴、さらに組織内でナレッジ共有を進め、ビジネスを成長させていくためのポイントを見ていきます。

暗黙知と形式知の違い

暗黙知とは、個人の経験則や勘に基づくノウハウ、仕事を重ねる中で身につけたスキルといった、社員それぞれの中にある言語化されていない主観的なナレッジです。例えば、昔ながらの職人の技術は暗黙知の代表格。成績優秀な営業社員が持っている自分なりの成功のコツや、経験に裏打ちされた直感なども、そのナレッジがほかの社員に目に見える形で伝わっていないならば、暗黙知となります。暗黙知の特徴は、形式化されていないため、上述のように同じ組織内で活動する社員であってもそのナレッジを共有できないことです。

それに対して形式知とは、もともと各個人が持っていた知識やスキル、ノウハウなどが、文章・数式・図表によって目に見える形になっているナレッジのこと。システム操作マニュアル、営業のガイドラインといった文書は、誰が見ても操作方法や営業時のポイントを理解できるように言葉や図などを使って知識が形式化され、実際にそれにのっとって実践すれば誰でも一定レベルの結果を出せるようになっているので、形式知といえます。

企業において暗黙知と形式知がうまく共有されない要因

例えば、ベテランの職人は、材料の厚さや磨き具合を指先で触れた微妙な感覚で把握できます。建設現場で長年働くベテランも経験に則した独自ノウハウをもとに、その現場に合った最適な作業条件を選び出すに違いありません。しかしながら、それらのコツを周囲の人間に言葉にして伝えるのは難しいため、技術伝承や人材育成の観点ではいわゆる「背中を見て覚えろ」の世界になりがちでした。

場数を踏み、作業を繰り返して一人前に成長していく時間の余裕があった時代はそれでもよかったことでしょう。しかし労働人口が不足している現代ではそうはいきません。「背中を見て覚えろ」では伝承や育成が思うように進まないうえ、ポイントを的確に教えなければせっかく集まった人材も成長を実感できずに離職してしまいます。

ほかにも、ナレッジが暗黙知のままでは業務が属人化し、その仕事はナレッジを有する担当者にしか行えないという状況が発生します。また、現場で作業の質を上げたい、若手の社員を育てたいと考えても、暗黙知が形式知化されていなければ指示を的確に与えることも、指示された側がその内容を的確に理解することも難しいでしょう。こうした点から、現在は暗黙知を形式知にしないことのデメリット(言い換えれば、形式知化することのメリット)が指摘されています。

ナレッジが形式知として共有されていれば、誤解や漏れなく伝えることが可能になります。社員全体がそのナレッジを生かして業務効率化や生産性向上、仕事の質アップを実現できますし、業務の引き継ぎや技術伝承、さらには社員教育も効率的に実施できます。

とはいえ、社内に存在する膨大なナレッジをきちんと整理したうえで一元管理できていないと、形式知をビジネスにおいて真に生かせる“知(ナレッジ)”として共有することはできません。また、情報が部門ごとに閉じられ、それぞれのシステムにサイロ化した状態にあると、せっかくの情報も孤立してしまい、組織全体で横断的に活用することはできなくなります。

暗黙知を形式知化し、“知(ナレッジ)”として共有する手法

では、暗黙知を形式知とし、さらにそれをナレッジとして共有するにはどうすればいいのでしょうか。注目したいのが、社員が持つ暗黙知を形式知として組織全体で共有し、ビジネスの成長と企業価値向上に活用していく経営手法である「ナレッジマネジメント」の考え方です。

ナレッジマネジメントにおいて重要になるのが、「SECI(セキ)」「場(Ba)」「知的資産」「ナレッジリーダーシップ」という4つの要素です。

まず「SECI」は、共同化(Socialization)・表出化(Externalization)・連結化(Combination)・内面化(Internalization)の4語の頭文字を取った言葉です。この4語は、「暗黙知の共同体験と相互理解」、「暗黙知の形式知への変換と共有」、「形式知と形式知の結合」、「形式知が各社員に内面化することで新たな暗黙知へ」という4つのプロセスを表します。これら4プロセスを経ることで暗黙知を確かな形式知とし、また次の4プロセスにつなげていくというのが「SECIモデル」です。

2つ目の「場(Ba)」は、まさしく組織内部において暗黙知や形式知が生まれ、共有され、活用される場所のこと。SECIモデルの各プロセスに沿って、それらが行われるのに適切な場、たとえば休憩スペースや社内SNSなどをデザインすることが求められます。

3つ目の「知的資産」は、ナレッジを組織の知識資産として捉え、蓄積し、企業理念に沿って継承していく仕組みづくりを行うこと。ナレッジの共有・継承を企業の風土として定着させるための取り組みです。

そして4つ目の「ナレッジリーダーシップ」は、ナレッジリーダーが知識ビジョンづくりやナレッジ活性化の場づくりといったマネジメントをリードし、SECIモデルに沿ってナレッジ共有を促すことが重要です。

こうしたナレッジマネジメントを導入することで、社員個々の暗黙知が形式知となり、それを組織全体が活用し、そのうえでまた新たな暗黙知を創出しさらに形式知化と、循環する中で企業価値向上の実現へと近づいていきます。

ナレッジ共有を成功させるコツとは

ナレッジ共有を成功させるには、上述のナレッジマネジメントを効果的に行うのが近道でしょう。そして、ナレッジマネジメントを実行に移す前提として、社員がナレッジを共有しやすいような環境整備や仕組みづくりも重要になってきます。

とはいえ、知識やデータの共有を紙やExcelファイルなどで行うのは非効率ですし、必要な情報を探し出すだけで余計な時間や手間がかかります。また、システムが部門ごとに独立し、データがそれぞれに分散している状態では、そもそも情報の共有・連携は思うように進みません。

データの所在や利用者を把握できるようしっかり文書管理を行い、社内にあるさまざまな種類のデータを一括して検索することで、データ収集時間の短縮を実現し、社員に負担をかけずにナレッジ共有を進められます。このような機能を備えたITシステムを導入することが、ナレッジ共有を成功させるコツといえます。

まとめ

個々の社員の中にある暗黙知を誰もが見える形式知にすることで、ナレッジの共有と活用を簡単に行えるようになり、業務効率化や属人化防止、効果的な人材育成・業務伝承といった多彩なメリットを享受できます。一方で、ナレッジ共有をさらに有効なものとするには、形式知を共有できる環境づくりも並行して進める必要があります。

「活文 業務プロセスデジタル化ソリューション」は、部門を越えたナレッジ共有に有効なツール。業務システムを横断した検索をスピーディーに行うことができ、その結果を瞬時にわかりやすく表示するので、ナレッジ共有を迅速かつ効率的に実現していくための基盤として活躍します。

(注記)

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