電子署名法って?
電子契約における電子署名のポイント
電子契約を行ううえで重要な電子署名に関しては、電子署名法という法律で規定されています。本コラムでは、この法律を理解するために、重要ポイントや条文の内容、法的な要件について解説します。
この記事の目次
電子署名法って?
「電子署名法」は通称で、正式名称は「電子署名及び認証業務に関する法律」です。社会全体がデジタルシフトする中、ビジネスの現場で電子署名が円滑に利用されることを目的に、2001年4月1日に施行されました。電磁的記録の真正な成立の推定や、特定認証業務に関する認定の制度などを規定しています。つまり、この法律が定める要件を満たす電子署名が付された電子文書は、真正に成立したものであると推定されるなど、法的な有効性を裏付けるものとなっています。
電子署名法が制定された経緯
今や私たちの日常生活において欠かすことができなくなったインターネット。ビジネスを行う企業の間でも、電子メールやチャットツールを利用したコミュニケーションが当たり前になり、商取引がネットワーク上で行われることも急速に増えています。
しかし、対面で行う商取引に比べて、インターネットを介した場合には、なりすましや電子文書の改ざんといった、不正が行われるリスクが高くなります。
そこで、署名や押印によって、契約が真正に成立したことが推定される紙文書と同じように、電子文書でも、署名や押印に代わるような方法により、なりすましや改ざんの可能性を排除することで、真正に成立したと推定できるようなものを法律で規定する必要がありました。
このようにデジタル化する社会の中で、安心して電子商取引が行える環境を法的に整備するために制定されたのが、電子署名法です。
電子署名法の構成
電子署名法の全体構成
電子署名法は、第1章から第6章まであり、全47条で構成されています。
「第1章 総則」では、電子署名の要件を定めています。
「第2章 電磁的記録の真正な成立の推定」では、電子署名の有効性を条文化しています。
「第3章 特定認証業務の認定等」では、電子署名が本人のものかどうかを証明する業務について定めています。
「第4章 指定調査機関等」では、特定認証業務を行う認証局に対するチェック機能について定めています。
「第5章 雑則」では、この法律を実行するための細かなルールを規定しています。
「第6章 罰則」では、虚偽の届出を行った者などへの罰則を定めています。
電子署名法
その中でも特に重要なポイントとなるのが、第2章の第3条です。
詳しくは後述しますが、この第3条が、電子契約の法的有効性の根拠となっています。
電子署名法第2条第1項の内容
第3条の前に、電子署名の要件を定めた第2条第1項を分かりやすく解説します。
第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
電磁的記録とは、電子データのことで、ここではイメージしやすいように電子文書と考えてください。
この第2条第1項によると、電子署名の要件は3つです。
1つ目が、電子文書に対して行われる措置であること。
2つ目が、電子文書の作成者が、間違いなく本人であることを示すための措置であること。
3つ目が、電子文書に改ざんがないことを確認できる措置であること。
つまり、電子文書において、「本人であること」と「改ざんされていないこと」の両方を証明できるものだけを、法的に電子署名とすると定めているのです。
電子署名法第3条の内容
次に、この電子署名法の最重要ポイントである、第3条について、分かりやすく解説します。
第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
この第3条では、本人による電子署名があるときは、電子文書が真正に成立したものと推定される、つまり、その電子契約に法的効力が生じるということを定めています。
民法上の原則として、契約は申し込みと承諾があれば成立するとなっており、特別な規定がない限り、文書化することは必ずしも必要ではありません。しかし、ビジネスの現場では、その後のトラブルを防ぐためにも、契約の事実を示す証拠として、文書での契約締結を行っています。
ただし、電子文書は紙文書に比べて、痕跡を残さずに容易に改ざんすることができてしまいます。証拠能力を持たせるためには、本当に本人が作成したと認められるだけの根拠が必要です。
だからこそ、電子署名には第2条で定める要件が求められており、それを満たした場合には、その電子契約に法的効力を認めると第3条で明文化しているのです。
電子契約における電子署名で注意すべきポイント
電子契約における電子署名で注意すべきポイント
認証の必要性
電子署名法の第4条以下では、特定認証業務に関わる事項を規定していますが、第3条を読む限り、第4条以下で定めている特定認証が必ずしも電子署名に必要ではないということに注意してください。
特定認証業務を行う機関としての基準をクリアしている認証局を利用することで、電子署名の信頼性を高めることはできますが、電子契約の法的有効性とは無関係だということです。
署名者が本人であるか否か認証の必要性
第2条1項では、その電子文書が本人によって作成されたことを示すものであることが、電子署名の要件とされています。ここで注意が必要なのは、あくまで電子文書が本人によって作成されたということを示せば良いのであって、その電子署名を本人がしたかどうかは、電子署名法上で問われていないということです。
身元確認の必要性
現在では、さまざまな事業者から電子契約サービスが提供されています。電子契約サービスを利用する際には、身元確認が行われるのですが、注意したいのは、この身元確認は、第3条による法的保護を受けるための条件にはならないことです。この点については、内閣府が行った「第3回 デジタルガバメント ワーキング・グループ」の中でも言及されています。
第3条に規定する電子署名に該当する要件として、電子署名サービスの利用者と電子文書の作成名義人の同一性の確認(いわゆる利用者の身元確認)は求めていない。
資料3-2-1 論点に対する回答(総務省・法務省・経済産業省提出資料)より引用
電子署名については、こちらの記事もご覧ください。
まとめ
電子契約のセキュリティー面に関わる電子署名。それを規定する電子署名法を理解するための最重要ポイントは、電子署名の要件と法的有効性を定めた第2条と第3条です。
電子署名法第2条と第3条について、正しい理解を持つことが、電子契約の導入を検討するうえで、自社の環境に合った電子契約サービスを選ぶ手助けとなるでしょう。
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電子署名法の要件に沿った電子契約の導入に向けて、是非ご検討ください。
- ※本記事は、2022年1月時点の情報を元に作成しています。
- ※本記事は、一般的な情報提供を目的としたものです。記事内の法律に関する情報については、短期間に法改正が行われる場合もあるため、当社は情報が最新のものであること、また、正確であることを保証することはできません。当社は本情報を使用したことにより生じる責任、損害を補償する義務を負いません。
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