人事総合ソリューション リシテア/就業管理の導入事例
日本航空株式会社様航空会社ならではの複雑な勤務時間を正確に把握。就業管理ソリューションで働き方改革を支援
働き方改革の目的の一つを、「社員が活き活きと働くために生産性を高め、生み出された時間を使って自己成長の実現」と位置付ける日本航空。しかし従来の勤怠管理システムでは、柔軟な働き方を管理し、タイムリーに把握することが困難でした。同社はこの解決に向け、日立ソリューションズの人事総合ソリューション「リシテア/就業管理」を導入。「コアタイム無しのフレックスタイム制」への勤務制度変更にもシステム改修が必要なく、時間外労働の削減や現場でのコミュニケーション活発化などさまざまな成果が得られたことで、グループ会社にも利用を拡大しています。
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*1 コアタイム無しのフレックスタイム制や、時間単位年休
背景と課題
多様な勤務態様。適正な勤務時間の管理・実現が難しかった
倉原 和成 氏
約70年にわたり、日本と海外の空の運航を支え続けてきた日本航空。社員が活き活きと働ける環境の整備でも注目されています。例えば時差通勤では、東京都庁の「平成30年度 時差Biz推進賞」を受賞。また、生産性向上を目的としたテレワークやワーケーション*2の推進、結婚・出産による女性社員の退職を減らすため、子育て中でも働きやすい勤務体系など、さまざまな取り組みを進めています。そんな同社がめざしているのは、社員も会社も成長し続けることです。
「今後弊社がお客さまから求められる企業であり続けるには、事業に付加価値を高めることと、新規事業へ参入する会社に成長することが必要で、そのためには社員の成長も不可欠です。自身で勤務時間を管理して、自己研さんができる時間を生み出せるような働き方の改革が必要でした。そのために勤怠管理システムの更新が求められていました」(倉原氏)
これまで利用していた勤怠管理システムは、この目的を達成するに当たり、いくつか課題がありました。同社の勤務態様は、24時間飛行機の安全運航を担保するために複雑・多様という特徴があります。例えば、時差がある海外との会議が深夜に開催されるため、日中の勤務時間の途中で休憩(不就業)が生じます。また、飛行機の運航管理や乗務員のスケジュールを管理している部門は不定型シフト勤務で、業務によっては2暦日勤務があり、シフト手当、夜勤手当が支給されます。しかし、「変則的な勤務時間」や「手当の支給条件がさまざまである」など、条件によって対応が異なるため、既存の勤怠管理システムでは管理しきれませんでした。
そのため、システムによる勤怠管理と紙タイムカードで勤務時間を入力・承認する2つの方法に分けて管理していました。日々出社・退社時間を入力することを原則としているものの、徹底することは想像以上に難しく、数日分をまとめて入力・承認するというケースが散見されました。
「勤務時間の把握や分析に必要な集計が担当者の手作業のため、結果をまとめるのに相当な時間を要していました。そのため適正な勤務時間実現の施策を打ちたくても、対策が後回しになるという課題がありました」(倉原氏)
*2 ワーケーション:長期有給休暇取得の促進に向け、有給休暇を取得中に一部勤務をすること。
選定と導入
法改正に対応できる柔軟性を重視。自社仕様のわかりやすいUI*3で定着へ
鎌仲 義久 氏
2015年、新しい勤怠管理システムの導入について社内で議論を開始。2016年になると、適正な勤務時間の実現と企業コンプライアンスに対し、世間の意識も高まるようになりました。これを受け、世間の動きに先んじる形で、新しい勤怠管理システムの具体化に着手。「2018年4月に、社内2,400人の地上職社員用の新勤怠システムを稼働させる」という目標を立て、2017年4月以降、以下のような点に注目しながら時間をかけて新システムの選定に臨みました。
「まずは多様な勤務態様に対応できる機能要件を満たしているという前提で、検討ポイントを詰めました。コストが適正であることや期間内でのシステムリリースはもちろんのこと、これから先の労働基準法関連の改正や勤怠管理制度が登場することに対して、どれだけ柔軟かつ迅速に対応できるかどうか、という点です」(鎌仲氏)
この条件で検討した結果、最終的に同社が選んだのが、日立ソリューションズの「リシテア/就業管理」(以下、リシテア)でした。
「コストが適正であったことに加え、短期間でシステムを導入できるためスケジュールに安心感がありました。将来的に複数のグループ会社に導入するという考えもあったので、展開しやすい点も評価しました」(鎌仲氏)
2017年7月に要件定義を開始し、10月にはマスターパラメータの設定やインターフェースの構築に着手。シフト勤務時間やそれに対する手当支給条件を定めたほか、所定労働時間の策定や、時短勤務社員の勤務時間オーバーの条件設定など、ありとあらゆる勤務体系について就業規則に照らし合わせ、それを給与ロジックに落とし込みました。
11月にはあらゆるケースを想定した検証データを使い、パラメータの網羅性を検証すべく、総合運転試験を実施。2018年1月からは、実データを使った業務運用テストを開始しました。
システムの実装を進める一方、「易しさ、見やすさ、使いやすさ」を意識し、マニュアルに極力頼らずに入力できるようインターフェースにはこだわりました。
「社員が毎日見るものなので、画面をコーポレートカラーで統一、親しみやすいデザインにしました。システムの名称も、耳に優しい語感にしたいと考えて社内公募した結果、『SWAN』(Smart Work Assistance and Navigation)に決定。現場への定着を図りました。プロジェクト終盤には、新たに『コアタイム無しのフレックスタイム制の導入』という要件が追加されましたが、日立ソリューションズはパラメータ設定で対応してくれ、無事4月にサービスインを迎えることができました」(倉原氏)
*3 UI:User Interface(ユーザーインターフェース)
成果と今後
社員の時間管理への意識が向上。グループ会社への展開をめざす
2018年4月の本格稼働に向け、このシステムを各部署に浸透させるため、2月に各部の勤務管理担当者へ使い方のレクチャーを実施しました。
「並行稼働中の3月と本格稼働を始めた4月には、プロジェクトチームと日立ソリューションズで『駆け込み寺』と称するサポートチームを結成し、会議室に常駐して入力方法や承認に関する社員からの疑問に答えていきました。この地道な対応により、現場の疑問を一つひとつ解消したことで、導入・定着がスムーズに進みました」(倉原氏)
現在、社員がPCを起動すると、前日のPC起動時間(出社時間)と電源を落とした時間(退社時間)が自動的に画面に表示されます。
「社員が毎日の勤務時間を入力し、それを上司もほぼ毎日承認することで、部下の業務負荷を従来よりもこまめに把握できるようになりました。それにより『ここ数日は時間外労働が多いので、明日は早めに業務を終えて帰るように』など迅速なアドバイスも可能に。勤怠を日々承認することでコミュニケーションが活発になったのも、良い変化だと捉えています」(倉原氏)
システム導入後、自身の勤務時間に意識を向ける社員が増えたことも変化の一つです。
「以前はPCの電源のオン・オフ時間など誰も気にも留めなかったのに、今は画面に出てこないとすぐに私のところに電話がかかってきます。自分で勤務時間を管理しないといけない、という意識が芽生えてきた証だと思います」(倉原氏)
こうした成果を踏まえ、同社では「リシテア」のグループ会社9社への展開が進んでおり、2019年7月には、対象社員数が約14,000人に拡大しています。
「すでに日本航空で稼働中のシステムには、グループ会社にも展開できる勤務ルールがあります。ベースができているのでグループ会社への展開を効率的に進められると評価しています」(鎌仲氏)
グループで就業管理システムが統一されれば、出向中の社員の就業データが連携・互換でき、管理側としてもメリットが大きいと期待されています。
「今回のプロジェクトで、日立ソリューションズは『リシテア』の機能と日本航空の勤務体制、実現したいことをきちんと把握して、積極的な提案をしていただき、作業を進めてくれました。今後は、年次有給休暇の取得状況や時間外労働時間の分析ツールとAIソフトなどを融合することで、適正な働き方のアドバイスが行えるシステムにバージョンアップができればいいなと考えているので、引き続きご提案をお願いします」(倉原氏)
働き方改革の一環で人財育成に取り組む日本航空を日立ソリューションズは今後も支援していきます。
日本航空株式会社
戦後初の航空運送事業企業として1951年に設立。翌年10月から自主運航による国内線定期航空輸送事業を開始、1954年に東京~ホノルル~サンフランシスコ線を開設し、本邦企業初の国際線定期輸送を開始する。以降、日本と海外をつなぐ航空運送事業の要として事業を営んでいる。2018年には英調査会社の航空会社の格付けで最高評価の「5つ星」を認定された。
本社所在地 | 東京都品川区東品川二丁目4番11号 | |
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設立 | 1951年 | |
従業員数 | 12,127人(2018年3月現在) | |
事業内容 | 定期航空運送事業および不定期航空運送事業、航空機使用事業、その他附帯するまたは関連する一切の事業 | |
URL | https://www.jal.co.jp/ |
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本事例の内容は2019年8月20日公開当時のものです。
最終更新日:2019年8月20日