画像判定トータルソリューションの導入事例
島津ダイアグノスティクス株式会社(旧 日水製薬株式会社)様※「日水製薬株式会社」は、2023年4月1日付で「島津ダイアグノスティクス株式会社」へ商号変更となりました。本事例内容は公開当時のものです。
アプリを活用したクラウドサービスにAI導入。コロニーカウントの高速化と利便性を向上
細菌検査のリーディングカンパニーとして、人々の健康を支える日水製薬株式会社。その主力製品である菌数測定用簡易培地「CompactDry®(以下、コンパクトドライ)」で培養されたコロニーカウントを、世界中いつでも、どこでも、簡単に行えるよう、スマートフォンアプリを活用した、業界初のクラウドサービス「@BactLAB®(以下、バクトラボ)」を開始。日立ソリューションズの画像解析技術と、AIを組み合わせることにより、コロニーカウントの高速化と高精度化を実現し、利便性を飛躍的に向上しています。
この事例に関するソリューション・商品
背景と課題
主力製品「コンパクトドライ」とモバイル連携したサービスをめざして
寺田 慎一郎 氏
日水製薬株式会社は、1935年(昭和10年)に株式会社日産水産研究所として創業し、漁業や水産資源の高度活用など、多岐にわたる研究に取り組んできました。現在では臨床診断薬や産業検査薬の細菌検査におけるリーディングカンパニーとして、検査現場のニーズに応える製品を数多く提供しています。
同社の主力製品である「コンパクトドライ」は、食中毒の原因となる微生物を簡単に検査できる培地で、国内市場に限らず海外市場においても大きな実績を上げています。ドライという名前が付いているように乾燥した培地が特長で、冷蔵での保管が必要ないため、貧困地域や、検査環境やインフラ整備が整っていない場所でも使用されています。
「コンパクトドライで培養したコロニーの検査結果を、モバイルデバイスを活用して世界中どこにいても、スピーディーに知らせるサービスができないか考えたのがバクトラボ開発のきっかけでした」(寺田氏)
培養したコロニーのカウントは、専門的なノウハウが必要で、属人化の解消も大きな課題でした。
「培養した細菌を目視で数えるには、経験を積んだ専門家でも手間と時間がかかります。大型のカウント装置もあるのですが、コストの割には、判定結果の精度において、なかなか満足のいくものがありませんでした」(水落氏)
選定と導入
新サービス実現へのチャレンジ精神が決め手。技術面では判定精度の向上と高速化の両立も
水落 慎吾 氏
バクトラボの開発構想は、5年前の2015年に遡ります。
「海外市場でニーズの高かったコンパクトドライについて、IT技術とモバイルデバイスを活用した新たなサービスを提供できないか、社長から発案があり、プロジェクトは始動しました」(寺田氏)
具体的には、海外のコンパクトドライ利用者向けに、クラウドとAI(人工知能)を活用し、培養したコロニーの画像をスマートフォンにアップして自動で検査判定できるサービスの提供をめざしました。
「私たちの製品は、世界中で使われていますが、ニッチな領域なので、すべてを知ってもらうのは難しい。だからパートナー選びには、私たちの事業の重要性を理解してもらい、お客様の声や要望を取り込みながら、新しいサービスとしていかに形にしていけるかが重要でした。プロジェクトの立ち上げから半年ほど、一緒に取り組んできた中で、一番チャレンジ精神があり、その可能性を感じたのが日立ソリューションズでした」(寺田氏)
「検査の判定精度を上げるため、コロニーの画像データを増やし、細菌の種類や特徴に応じた見方、数え方など、コロニーカウントのノウハウをひとつずつAIに教え込ませるのですが、日立ソリューションズは粘り強く取り組んでくれました」(水落氏)
今回導入した日立ソリューションズの画像判定トータルソリューションは、デジタルカメラ開発や自動車の物体認識機能など組込みソフト開発で培った技術、ITシステム構築やビッグデータ解析などで蓄積した機械学習技術といったAI、これらを組み合わせて、さまざまな判定作業の自動化が可能になります。コロニーのカウンターにおいても、コロニーの画像をアップロードしてからわずか数秒で判定できるなど、日水製薬の高い要求レベルに応える判定精度と高速化を図りました。
まず日立ソリューションズが取り組んだのは、コロニーの特徴、検査の項目、検査判定の対象エリア、判定の基準などから、精度の高い結果を得るための最適な画像処理と学習方法を決定し事前検証。その結果を踏まえ、使用デバイスやクラウド環境に合わせてプロトタイプを開発。試験運用により、誤判定や問題を抽出し、追加学習しながら調整を行い、最終的にシステムの稼働をめざしました。
「学習を重ねると次第に判定精度が上がっていくのに反し、判定までに時間がかかってしまうという問題がありましたが、それも日立ソリューションズの技術で解決できました」(水落氏)
画像認識技術には、日水製薬と日立ソリューションズが共同で開発した画像認識システム用のAI技術を使用しています。コロニーカウント画像処理手法には、従来の手法である画像処理に、新しい技術である機械学習とDeep Learningを加えたカウント技術を利用。さらに、複数グループとなるサンプルを学習し、それを区分させる識別アルゴリズムSVM(Support Vector Machine)、脳の神経回路網を多層に接続し学習・判断を行う技術CNN(Convolutional Neural Network)など、テクノロジーの組み合わせにより、画像判定の精度を上げる一方、並行して画像処理を行うことで判定の高速化を実現しています。
クラウドのプラットホームには、AWS(Amazon Web Service)を採用。サービスの安定稼働や高度なセキュリティー要件を満たしている点に加え、ユーザーニーズに対応するための柔軟な拡張性と可用性を備えていることを重視しました。
成果と今後
世界で8,000ユーザーがインストール。今後は企業の基幹システムへの組み込みを視野に展開予定
バクトラボは、2018年8月より海外限定で試験運用を経て、機能性向上などの改良を加え、2019年8月にリリースしました。現在、世界で約8,000ユーザーがバクトラボをインストールしています(2020年2月)。手持ちのスマートフォンなどで、画像をアップロードするだけで、世界中どこにいても、短時間で高精度な検査結果を受け取ることができます。またコロニーカウントにおける属人化の問題も解消することができました。
「単月1,000ユーザーのペースで伸びています。当初予想していた倍以上のユーザーにご利用いただいています。また運用のコストパフォーマンスも高く、たいへん満足のいくものになりました」(寺田氏)
バクトラボでクラウドを活用したデータ管理を行うことにより、製造工場での品質管理だけではなく、原料生産地から製品供給まで一連の流れについて、本社部門(QC・QAの統括部門)が各拠点での衛生管理状況をリアルタイムに把握することが可能となります。
「バクトラボは今後、食品メーカーなど企業の基幹システムに連携し、原料生産地、食品製造工場などの各拠点から検査データへアクセスを可能にするなど、企業内システムへの組み込みを考えています。日立ソリューションズの強みを発揮できるフィールドですので、今後も一緒に取り組んでいきたいと思います」(寺田氏)
「貴重な検査データをデータベースとして共有するにはセキュリティーが重要です。日立ソリューションズの技術でシステム強化に取り組んでいきたいと思います」(水落氏)
日立ソリューションズはこれからも、独自の技術とサービス開発により、世界を舞台に新たな価値やイノベーションを生み出していく同社と協創していきます。
島津ダイアグノスティクス株式会社(旧 日水製薬株式会社)
病院などの機関へ向けた体外診断用医薬品・臨床検査機器、細菌検査に用いる培地や食品企業での衛生検査に使われる検査薬などの製造・販売を主力事業としています。
本社所在地 | 東京都台東区上野三丁目24番6 上野フロンティアタワー20F | |
---|---|---|
創業 | 1935年4月6日 | |
事業内容 | 診断薬事業(臨床診断薬/産業検査薬の各領域) | |
URL | https://corp.sdc.shimadzu.co.jp/ |
この事例に関するソリューション・商品
導入事例ダウンロード
本事例の内容は2020年5月25日公開当時のものです。
最終更新日:2023年9月4日