この記事は、CAST AI社により公開されたブログ記事を元に翻訳・作成したものです。元の記事については以下をご覧ください。また、記載している価格は、CAST AI社のオリジナル記事の投稿時点のものであり、実際の価格とは異なる場合があります。
(記事最終更新日:2023年4月13日)
2023年FinOpsがあなたの会社を救う
公開日:2023年8月30日
更新日:2023年8月30日
FinOpsリーダーは、クラウドのROIを向上させる正しいカルチャーと実証済みのプラクティスをもたらす人材となりつつあります。クラウドコンピューティングの普及は、技術チームとビジネスチームの間に大きな知識ギャップを生み出しました。ファイナンスチームはクラウドコストの把握が困難であると感じており、エンジニアは自分たちが発生させるインフラの経費に対して責任を感じ始めています。その解決策として登場したのがFinOpsであり、わたしたちはFinOpsを活用して組織を成功に導くツールを提供しています。

どのように、計画やチームのトレーニングに何カ月も費やすことなく、クラウドのFinOpsを実現すればよいでしょうか?そして、チームをトレーニングしたとしても、チームメンバーはやりたくないタスクを定期的に実行しなければなりません。
この記事では、業界や規模に関係なく、企業にFinOpsを導入するための2ステップの実践的なアプローチを紹介します。
FinOpsはクラウド財務管理に対する究極の解決策となるか?
企業はクラウド予算を平均13%超過しており、クラウド支出の32%は無駄に使用しているといわれています。1
FinOpsは、クラウドでのアプリケーション実行するにあたり、最も困難な問題に対処するために登場しました。つまり、クラウドの浪費、オーバープロビジョニング、未使用のリソース、チームごとのリソース使用制御の欠如などです。
「FinOps」は比較的新しい言葉ですが、クラウドコストの監視とレポートは、パブリッククラウドサービスが広く利用可能になったころから行われていました。パブリッククラウドに移行した組織は、柔軟性とスピードが提供される一方で、クラウドの財務管理には新しい課題が伴うことにすぐに気づかされました。昨今、業界ではクラウドのROIと、それが予想外に低くなる可能性について多くの議論が行われています。
クラウドコストを管理するために、多くの企業ではリソースを几帳面にタグ付けしたり、コスト高騰を避けるために、使用量のしきい値を細かく設定したりと、手作業に頼ったソリューションを使い続けています。
クラウドFinOpsでは、このような手法を継続する理由はありません。これまで、私たち業界での多くの問題は自動化ツールによって解決されてきました。であれば、ここでも自動化ツールを使ってみてはどうでしょうか?結局のところ、FinOpsの最終目的はクラウドコストを削減することです。コスト最適化ソリューションを使えば、チームは数分以内にこのステージに到達できます。
コストの可視化はクラウドFinOpsの中核であり、自動化と組み合わせることで大幅なコスト削減をもたらします。大幅なコスト削減を素早く実行する方法を紹介しましょう。
FinOps step1:クラウドコストの可視化
コスト監視ソリューションは、以下のようなFinOps機能の実現に役立ちます。
クラウド予算の維持
チームは常にクラウド予算の使用率をチェックし、その範囲内に収まっていることを確認できます。日次または週次で支出をチェックし、そこから推測することで、月次コストの現実的な見積もりを得られるようになります。
これはCAST AIの日次クラウド支出レポートのサンプルです。このレポートはバーンレートを把握するときに、役立ちます。

コストの異常をより迅速に発見
異常なコストの高騰を発生直後に発見するにはどうすればよいでしょうか?クラウドプロバイダが提供するコストデータは通常1日に1から2回の更新頻度なので、あまり期待するべきではありません。
リアルタイム監視ソリューションを採用することで、把握しておくべき情報がすべてダッシュボードまたは日次支出レポートに表示されます。そして、問題が発生したときにはすぐに、その問題が雪だるま式に深刻化するずっと前に発見できます。
より正確なクラウド計画
クラウドコスト監視のもう1つの利点は、チームがクラウドサービスの予算を計画するときに、実際のコストを把握できることです。アプリケーションを過剰にプロビジョニングするのは、気持ちよく夜に寝る前に、自分たちのワークロードが円滑に稼動することを知っておきたいからです。しかし、プロビジョニングされたリソースが、要求されなかった場合、クラウドリソースの最終的なコストは高くなります。
使用されたCPUと実際にプロビジョニングされたCPUを比較することで、このギャップを発見できます。使用されたCPU1個あたりのコストを計算して、計画をより現実的なものにしましょう。
クラウドの無駄がクラウド予算に与える影響を示す例です。

プロビジョニングしたCPU1個あたりのコストは2ドルです。しかし、最終的に使用量がそれ以下だった場合、使用されたCPU1個あたりのコストは10ドルに上昇します。このことは、想定の5倍の価格であなたのクラスターが稼働していることを意味します。
コストの履歴データに基づく迅速な問題調査
最近行われた調査で、エンジニアの55%はクラウドコストに関する問題に毎週時間を費やしていることが報告されています。2その内容は、予期せぬコストの急増から、予算と実績のコスト差異まで広範囲に及んでいます。回答者の11%は、コストに起因する問題によって1スプリント以上の混乱が続いたと回答しています。
履歴データを利用することで、コストの不一致を素早く調査できるため、戦略的なタスクに取り組むときに時間を無駄にすることがなくなります。コストの異常を調査する段階的なガイドはこちらの記事を参考にしてください。
CAST AIでは以下のようなコスト履歴レポートが提供されます。月間の平均コスト、日次平均コスト、そしてCPUあたりの平均コストが確認できます。

Bonus Tips:コスト指標をエンジニアと共有し、FinOps文化を創りましょう
FinOpsの現状についての調査で、回答者の約40%がコスト最適化の推奨事項を、エンジニアに実行させることが最大の課題であることがわかりました。3
エンジニアがよく使用する形式でコスト管理指標を提供することで、エンジニアがインフラストラクチャーのコストに対する認識を広め、インフラストラクチャーへの投資について充分な情報に基づいた意思決定を行うことができるようになります。
エンジニアは、アプリケーションのパフォーマンスをリアルタイムで監視できるモニタリングツールをよく使っています。そのような既存の運用ツールと統合できるソリューションを用いて、コストの情報を追加するのは簡単です。そして、それにより技術チームとビジネスチームの間に共通の基盤が形成され、全員がコスト管理に責任を感じる、より強力なFinOps文化が醸成されます。
当社のエンジニアリングマネージャーが投稿した、この記事をご覧ください。標準のオブザーバビリティツールであるGrafanaを用いてコストメトリックを共有するためのいくつかのベストプラクティスを共有しています。:Control Cloud Costs and Build a FinOps Culture with Grafana
FinOps Step 2:クラウドコストの最適化
クラウドベースのアプリケーションでは需要と使用率が急速に変化するため、手作業でコストの最適化をするには時間と労力がかかりすぎます。
その解決策は自動化にあります。自動化することで、チームは企業の技術者たちが余分な労力を費やすことなく、クラウドを財務管理するときの目標を達成できます。
クラウドコスト最適化の自動化よって以下が可能になります。
- アプリケーションの要求に適合する最もコスト効率が高いインスタンスのタイプとサイズが選択されます。
- クラウドリソースを自動的にスケールして需要の急増に対応します。
- 誤って実行されたままの仮想マシンなど、アイドル状態のリソースをすべて排除します。
- コスト削減のために、より少数のVMにワークロードを再配置します。
- スポットインスタンス運用を自動化してコストを削減し、中断時も、適切に処理します。
最も重要なのは、これらのアクティビティがすべてリアルタイムで行われることです。自動化ソリューションを導入することで、インフラストラクチャーのベビーシッターという追加の作業負荷を発生させることなく、ポイントインタイムなクラウド最適化が可能になります。
ケーススタディ:Branchがスポットインスタンスを自動化して数百万ドルのクラウドコストを削減した方法
スポットインスタンスは時間あたりのコンピュート単価の割引が最も高くなりますが、ダウンタイムのリスクとその管理に費やされる工数を考慮すると、マーケティングオートメーションのリーダーであるBranchがスポットキャパシティーを使い続けることは現実的ではありませんでした。
そのため、スポットインスタンスの運用の自動化や、リアルタイムのコストの可視性、最もコスト効率がよいクラウドリソースをプロビジョニングする機能を提供するソリューションを探し始めました。
そして、BranchはCAST AIによってクラウドコスト管理を自動化することで、次のことを実現しました。
- スポットインスタンスの安全なディプロイ
- リザーブドインスタンスの前払い金の削減
- コストのリアルタイムな可視性
- 最もコスト効率が高いEC2コンピューティングリソースの自動プロビジョニングによる、クラウドコストのさらなる削減
CAST AIによるKubernetesのコスト最適化ソリューションは、Branchにとって大きな成功をもたらし、Kubernetesクラスターが使用するAWSクラウドコンピューティングコストは、信頼性SLAを維持したうえで、年間数百万ドルものコスト削減を達成しています。私たちチームのささやかな努力の結果、このことは、Branchが行ったクラウドコスト削減の取り組みの中で最も高いROIの1つとなっています。
Mark Weiler, Senior VP of Engineering, Branch
適切なツールの使用でFinOps戦略をサポート
FinOpsを導入するにはどのような選択肢があるでしょうか?
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ネイティブのクラウドコスト管理ツール
AWS Cost Explorerのようなツールは、通常、ほとんどのチームにとってクラウドコストの世界への入り口となります。しかし、クラウドへの取り組みが単一のクラウドプロバイダやサービスを超えて拡大していくと、ネイティブのコスト管理ツールだけでは正確な情報を得ることができなくなります。
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カスタムツール
一部の企業では自製のコスト監視ソリューションを構築することを判断することがありますが、この選択にはいくつかのリスクが伴います。
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サードパーティのコスト最適化・監視ツール
クラウドネイティブのコストダイナミクスを扱うさまざまな最新のソリューションを選択できます。クラウドリソースをリアルタイムで処理するすべてのコスト監視、および最適化機能をチームにもたらします。
上記のアプローチにはそれぞれ利点と限界があるため、多くのチームはコストの可視化と最適化の可能性を求めて、複数のレガシーなソリューションを組み合わせています。
リソースのグループ化に関する実践的なFinOpsガイド
主要なクラウドプロバイダはすべて、クラウドリソースをグループ化するためのサービスを提供しています。Azureにはリソースグループがあり、Google Cloudではプロジェクトを使用します。AWSであれば、組織の概念が提供されています。
各グループは請求先アカウント、保有サブスクリプション、請求先クレジットカードなどに結び付けることができます。この結び付きを使い、同一のランディングゾーンやリージョン内であっても、さまざまなリソースグループに対して別々に会計ができます。
より下位のレベルでは、ランディングゾーン内に作成された各リソースに、適切な分類法でタグまたはラベルを付ける必要があります。タグまたはラベル付けすることで、各リソースの料金がそれぞれのグループ内で確実に割り当てることができます。
注:ランディングゾーンでは、最初から必須ラベルを強制しておくのが最善です。ランディングゾーンの操作は、コード化された明確で不変なルール(Policy as code)によって管理される必要があります。クラウド移行を成功させるためには、クラウドのベストプラクティスに基づいた最低限のポリシーを確立し、成文化することです。
クラウド移行後に確認するべきFinOpsの4つの質問
1.移行の費用対効果は?
同じワークロードをクラウドで実行すると、移行前よりもコストが安くなっているでしょうか?クラウド移行の費用対効果を判断する最善の方法は、ワークロードの移行前後の合計コストをワークロードごとに比較することです。
2.コストを発生させた部署を特定できますか?
もし一般的なインフラコストに関する知見しかない場合は、問題に備えておく必要があります。クラウドでは、コストレポートとその振り分けのために、適切なツールを準備しておく必要があります。
なぜこのことが重要なのでしょうか?それはクラウド化したことで、エンジニアは必要なときには、いつでもオンデマンドでリソースを起動できるようになるからです。コストを特定のチーム、プロジェクト、または事業部門に振り分けることができないと、急速に増大するクラウド請求額に対して誰も責任を負うことができなくなります。
ここで必要なのは、詳細なコスト配分とレポートで、FinOps文化とエンジニアリングチームのコスト意識とを合致させることです。
3.クラウド支出の予測は、実際のコストと比較して正確ですか?
使用量ベースのクラウド支出を予測するのは困難です。しかし、将来的なリソースのニーズを理解しておくことで、これらの費用を抑えることができます。
予測の根拠となるのはコストレポートです。通知を設定して、リソース利用データを定期的にチェックすることで、毎月の支出の見積もりに活用できます。
クラウド支出モデリングも優れたアプローチです。クラウドプロバイダの価格モデルを分析し、長期にわたるキャパシティ要求を予測して、総所有コストを計算してください。
リソース使用率のピークを把握することも大切です。これには定期的な分析と統計レポートが役に立ちます。周期的な需要の傾向がないかを調べてください。もし、そのパターンがリソースの使用量のピークと一致するのであれば、それらを予測に使うことができるようになります。
4.要求されたリソースのコストを測定していますか?
クラウド予算というと、多くの場合、リソースのコストだけしか含まれません。もちろん、その価格はクラウドプロバイダが公開する価格表に記載されている価格です。
しかし、この価格設定は実際のコストを反映していないかもしれません。
実際、エンジニアは自分たちのアプリケーションの最適なパフォーマンスと可用性を得るため、過剰なプロビジョニングをする傾向にあります。結果として、アプリケーションがプロビジョニングされたリソースをすべて使用することはないでしょう。だからこそ、より正確なコストレポートや見積もりのため、プロビジョニングされたキャパシティと要求されたキャパシティとのギャップを計算しておくこが重要になります。
クラウドコスト可視化がFinOpsのはじめの1歩
FinOpsは組織の、増大する使用量に対処や、節約の機会の特定、無駄なリソースを排除、特定の部門やグループへのコスト配分などを助けることができる段階に来ています。アプリケーションをクラウドに移行する場合でも、クラウドですでに稼働している場合でも、FinOpsは同様に重要です。
複数ソリューション内の1つをクラウドコスト監視、および最適化アプローチへの統合が、多くの組織で行われている一般的なやり方です。
アプリケーションがKubernetes上で実行されている場合は、CAST AIの無料のKubernetesコスト監視ツールで始めることができます。ワークロード、ラベル、名前空間の内訳とともに、日次、および月次のクラウドコストを表示できます。
FAQ
FinOps(Financial Operations)は、組織がクラウド財務管理を改善するのに役立つプラクティスとして成長しています。FinOpsに関して最もよく寄せられる10個の質問は次のとおりです。
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FinOpsとは何ですか?
FinOpsは、クラウドコンピューティングのコストを最適化し、テクノロジー費用とビジネス価値を最適化することを目的とした一連のベストプラクティス、原則、プロセスです。
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FinOpsはなぜ重要なのですか?
FinOpsは、組織がクラウドコストを適切に管理し、データに基づいて意思決定をし、責任を明確にし、ビジネスでのクラウドへの投資を最大限に活用するのに役立ちます。
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FinOpsはどのように機能しますか?
FinOpsはテクノロジー、ビジネス、財務の知識を組み合わせて、チームの共同作業、クラウドの使用状況の監視、コスト削減戦略の導入、利用できるリソースの最大限の活用を容易にします。
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FinOpsの重要な原則は何ですか?
FinOpsの主な原則は、コラボレーション、コストの透明性、継続的な改善、データに基づいた意思決定、組織にとって何が最善かに基づいてリソースを割り当てることです。
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FinOpsには誰が関与するべきですか?
FinOpsでは、エンジニア、開発者、プロダクトマネージャー、財務担当者、ビジネスリーダーで構成される、部門を横断するようなチームが構成されます。チームはコストが正しく管理されており、ビジネス目標が達成されているかを確認します。
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FinOps実践のコアとなるコンポーネントには何がありますか?
FinOpsのコアコンポーネントには、コストの可視化とレポート、コストの割り当てとチャージバック、最適化とコスト削減、予算編成と予測が含まれます。
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FinOpsを組織に導入するにはどのように進めればよいですか?
FinOpsを導入するには、まずFinOpsチームを編成します。次に、現在クラウドにどれだけ費やして使用しているかを把握します。コストを確実に可視化して報告し、コスト配分とチャージバックシステムを設定します。くわえて、クラウドコストを継続的に監視して最適化します。
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FinOpsの一般的なツールとテクノロジーにはどのようなものがありますか?
よく使用されるFinOpsツールとテクノロジーには、クラウドコスト管理プラットフォーム、クラウドネイティブ自動化ツール(CAST AIなど)、データがどのようになっているかの確認を支援するツールなどがあります。
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FinOpsへの取り組みの成功をどのように測定するとよいでしょうか?
FinOpsの成功を測定する主な業績評価指標(KPI)には、コスト削減、コストの最適化、リソースの使用率、ビジネスゴールに対するクラウド支出の比較などがあります。
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FinOpsについて詳しくはどこで学ぶことができますか?
FinOpsについてさらに詳しく知るには、FinOps Foundationのリソースを調べてください。そこで開催されているFinOpsに焦点を当てたイベントやウェビナーに参加したり、FinOpsコミュニティーに参加したり、この分野の業界の専門家や思想的リーダーをフォローすることもできます。もちろん、CAST AIのブログにも注目してください。
参考文献
- 1―Flexera 2022 State of the Cloud Report
- 2―The State Of Cloud Cost Intelligence
- 3―The State of FinOps 2022

2018年にオラクルに買収されたZenedgeの共同創業者兼最高製品・事業責任者を務めました。
Laurentは、2012年にGoogleに買収されたViewdleのCEO兼共同創業者でもあります。
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