IT人材不足の現状と解決策|企業がとるべき戦略・アプローチを解説
更新日:2024年12月13日
ITを取り巻く環境は日々進化・変化しています。新たな技術が生まれる一方、課題となっているのがIT人材不足です。とくに、日本国内ではIT人材不足が深刻化しており、企業の経済活動やデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の遅れといった影響を及ぼしています。
本記事では、IT人材不足の背景と現状を解説し、IT運用の改善や人材戦略の最適化など、企業が取り組むべき具体的な手法についてまとめました。さらに、具体的な解決策の例として、システム運用管理ソリューションをご紹介します。
1. IT人材不足の現状
IT人材不足の背景・現状
経済産業省が公表した『IT人材の供給動向の予測』では、2030年までに日本では約80万人のIT人材が不足するという試算が示されました。これは、現在の日本のビジネス界で深刻な課題となっているIT人材不足の現実を如実に表しています。
多くの企業では、人材不足がすでに顕在化しており、DX推進の遅れやITの活用施策の停滞の一因となっています。その背景にあるのが、急速に進化・変化する技術環境や、その変化に追いつくのが難しい教育・研修システムです。
AIやクラウドサービスなどの最新技術への対応が求められるなかで、実務に即したスキルを持つ人材が不足しています。さらに、IT職種への魅力の不足やキャリアパスの不明瞭さも、若い世代のIT分野への関心を減退させている要因です。
このような状況下で、企業はIT人材不足に対応するための具体的な戦略を練る必要があります。具体的には、教育プログラムの充実、適切な人材採用戦略、そして技術革新に即応できる柔軟な組織運営が求められるでしょう。
日本国内と海外の状況比較
日本と海外、特に米国のIT人材の状況を比較すると、顕著な違いが見られます。例えば、同じ品質の仕事を行う際、日本では3名のIT人材が必要であるのに対し、米国では1名で可能な場合も少なくありません。日本のIT業界は、労働生産性の面で遅れをとっている状況です。
また、生産性の差異は給与にも反映されています。米国ではIT人材の給与が高い傾向がある一方、日本では20年以上大きな変動がありません。日本がIT人材の質の向上や効率的な業務運営において改善すべき状況にあることを示唆しています。
IT人材不足による経済・企業への影響
グローバルレベルで見た際の日本企業の労働生産性の低さや、DXの遅れは顕著なものとなってきています。これらの問題は、IT人材不足が1つの要因であり、将来を見据えた対策が急務とされています。単なる技術やシステムの導入だけではなく、人材戦略を含めた包括的なアプローチが必要です。
現状の把握とともに、企業はヒト、モノ、カネの総点検を行い、長期・中期・短期の目標と施策を明確にしなければなりません。人材の確保と育成、効率的な業務プロセスの構築、そして資金投資の最適化は、日本企業がグローバル競争において生き残るために不可欠です。
包括的な戦略を実行することで、IT人材不足を乗り越え、企業の持続可能な成長を実現できるでしょう。
2. 企業・IT部門が直面している課題
現代の企業が直面する課題は多岐にわたります。特にIT人材不足は深刻な問題です。くわえて、労働生産性の低さ、DXの遅れ、後継者問題、そして時代遅れの運用方法も企業の成長を妨げています。本章では、これらの課題を掘り下げていきます。
IT人材不足
現代のビジネス環境は、急速な技術進化に伴い、高度なスキルを持つIT人材の需要が増加しています。しかし、供給が需要に追いついておらず、多くの企業が人材確保に苦戦している状況です。
特に、米国に比べて日本の給与水準が低いことも、優秀な人材が不足している一因となっています。IT人材不足に対処するためには、採用だけではなく、最新の状況に適応した人材育成体制の構築も重要です。
労働生産性の低さ
IT人材不足は、企業の生産性を低下させる一因であり、競争力の低下に直結しています。IT人材が不足すると、新しい技術の導入や既存システムの最適化が滞り、企業全体の業務プロセスを効率化できません。また、十分なITサポートが提供されない状況では、業務効率が著しく低下し、全体の生産性に悪影響を及ぼします。
DXの遅れ
近年、多くの企業でDXの遅れが顕著な問題となっています。DXが進まない原因の一つが、レガシーシステムの維持・保守に多大なリソースが費やされていることです。くわえて、IT人材不足により、新技術の導入やデジタル化の進行が遅れています。
DXの遅れは、市場での競争力低下に直結し、企業の将来性にも悪影響を及ぼしかねません。新しい技術の活用や業務プロセスのデジタル化は、現代のビジネス環境において必要不可欠です。IT人材を確保して適切に育成することは、DXを加速し、企業が競争力を維持するためのカギとなります。
後継者問題
IT分野における後継者不足も重大な課題です。多くのシステムやプロセスが「ブラックボックス化」し、それを理解する有識者が不足しています。さらに、経験豊富なIT専門家の退職やキャリアチェンジにより、重要な知識やスキルの継承が途切れてしまうケースも少なくありません。
後継者問題は、企業のIT運用におけるリスクを高め、イノベーションの障害となりえます。
時代に合わなくなった運用
現代の市場環境は絶えず変化しています。既存のITシステムや業務プロセスが変化に対応できていない場合、企業の成長を阻害しかねません。時代に合わなくなった運用は、システムのメーカーサポートが終了していることにも起因します。
また、新しい技術への移行や既存システムのアップデートには、専門的な知識とスキルが必要ですが、これらを有する人材が不足しているため、変革が進まない状況です。
3. 企業がとるべき戦略・アプローチ
前述した課題に対処するために、企業がとるべき解決策を3つ解説します。
IT運用・環境の改善
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IT運用のあるべき姿の明確化
企業・IT部門は、現代のビジネス環境に適合する運用モデルを確立する必要があります。例えば、業務プロセスの見直しや、新たなテクノロジー・システムの導入が挙げられます。
現状のIT運用を改善するためには、まず課題を抽出し、その解決策と仕掛けを検討しましょう。これにより、IT運用の効率と効果を高めることが可能です。
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改善実行による業務の効率化・自動化、生産性向上
IT運用の効率化と自動化を進めることで、限られた人員でも最大限の成果を出せるようになります。その結果、生産性の向上とコスト削減につながるでしょう。施策の検討と推進には、技術的な知識と経験が不可欠です。
社内での人材育成だけでは賄えない場合、後述するアウトソーシングの活用も一つの有効な手段となります。これにより、企業はIT運用の質を大幅に向上させることができます。
人材戦略
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人材育成
IT人材不足を解消するためには、社内での継続的な教育プログラムの実施が不可欠です。既存の従業員のスキル強化に焦点を当て、最新技術へのトレーニングやリーダーシップ育成を積極的に行い、内部から人材の質の向上を図ります。これにより、社員の能力を最大限に引き出し、企業のIT戦略の立案や実行を支えることが可能です。
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人材採用
多様な採用チャネルを活用して高度なスキルを持つ人材を獲得する取り組みも重要です。グローバル人材の採用やインターンシッププログラムを通じて、新しい視点とスキルを企業に取り入れるのもよいでしょう。IT運用の改善により捻出された資金を採用活動に充てることも、質の高い人材を確保するための手段の一つです。
アウトソーシングの活用
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マネージドサービス
社内で十分な人材を確保できない場合や、人材育成に時間がかかる場合、特定の業務やプロジェクトを外部の専門企業に委託することは、戦略的な選択肢となりえます。
アウトソーシングを活用すれば、専門的なスキルが必要な領域において迅速な対応が可能となり、社内IT部門の負担軽減につながります。また、外部の専門家と協力することで、最新の技術やトレンドを取り入れられる点もメリットです。ただし、アウトソーシング先の選定時には、信頼性や専門性、コストパフォーマンスを慎重に検討する必要があります。
具体的なソリューションについては、次の章で詳しくご紹介します。
4. システム運用管理ソリューションのご紹介
この章では、具体的なソリューション事例として、当社のシステム運用管理ソリューションから、アセスメント・コンサルティング、マネージドサービスをご紹介します。
システム運用管理ソリューションとは
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概要
システム運用管理とは、ITシステムが正常な状態を継続できるようにメンテナンスを行うことです。クラウド、インフラ、アプリケーション、ネットワークなどを対象に「管理」「分析」「監視」の視点から運用を行うことで、ITシステムの安定稼働を実現できます。当社では、システム運用管理に関して、お客さまに合わせた解決策のご提案から、導入・運用までを一貫してサポートします。
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特徴・強み
日立ソリューションズは、日立製作所の統合システム運用管理ツール「JP1」を中心に、長年にわたるシステム運用管理ツールの導入経験と先端技術、日立グループのユースケースをもとにしたノウハウを活用し、お客さまのITシステム運用のニーズに応えています。ITシステムの運用を、より効果的かつ効率的に行うことが可能です。
システム運用管理ソリューションの詳細については、以下サイトをご参照ください。
アセスメント・コンサルティングのご紹介
IT運用の改善には、アセスメント・コンサルティングの活用がおすすめです。アセスメント・コンサルティングでは、まず企業のIT戦略や組織目標の理解・現状のIT運用の詳細把握を行います。
次に、具体的な課題を抽出し、それにもとづいたあるべき姿をデザインします。このプロセスを通じて、企業はDX推進のための具体的なマイルストーンを設定し、施策やアクションを計画的に実施可能です。IT運用の効率化・企業のDXを現実のものとするための有効な手段となりえます。
日立ソリューションズが提供するアセスメント・コンサルティングサービスの詳細については、直接お問い合わせください。
マネージドサービスのご紹介
マネージドサービスとは、企業のITシステム運用や管理を外部の専門企業にアウトソーシングできるサービスです。最大の特長は、社内で必要とされるITスキルを外部から確保できる点です。
マネージドサービスの活用により、社内リソース不足の解消・最新の技術トレンドへの対応・コスト削減・運用の効率化・リスク管理の向上が期待できます。
各クラウドサービスにおけるマネージドサービス
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Amazon Web Servicesのための運用支援サービス
AWSクラウドの運用に必要な「24時間365日のシステム監視」や「日次バックアップ」「障害発生時の一次対応・エスカレーション」など一連のサービスをまとめて提供
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マネージドサービス for Microsoft Azure
3つの監視サービス「エージェント監視」「マルチクラウド監視」「エージェントレス監視」と「マルチクラウド運用」を組み合わせて最適なサービスを提供
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マネージドサービス for Microsoft 365
毎月1回「よろず相談会」の基本サービスに加え「管理者・利用者向け問い合わせサービス」TeamsからAIに問い合わせできる「AIチャットボットサービス」「通知サービス」「運用代行サービス」を提供
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マネージドサービス for Oracle Cloud Infrastructure
「問い合わせ代行」「課金レポート」「監視通知」にてトータルにOracle Cloud Infrastructureの運用をサポート
5. まとめ
本記事では、IT人材不足が企業に与える影響と、その解決策について解説しました。企業・IT部門が直面する諸問題、特に労働生産性の低さやDXの遅れに対処するためには、効果的な戦略とアプローチが必要です。IT運用の改善、人材戦略の策定、そしてアウトソーシングの活用が有効な手段となるでしょう。
具体的なアウトソーシングサービスの一つとして、システム運用管理ソリューションが挙げられます。本サービスを活用することで、IT運用の効率化や安定稼働の実現が可能です。また、アセスメント・コンサルティングの活用は、企業のIT戦略を強化し、DXの実現に貢献します。