PLMソリューション Windchill、産業IoTプラットフォーム ThingWorxの導入事例
株式会社リコー様設計・製造・サービスの統合BOMをPLM上に構築し、製品開発に関わる約1万人の工数を削減
リコーグループは、お客様のDXを支援し、そのビジネスを成功に導くデジタルサービス、印刷および画像ソリューションなどを世界約200の国と地域で提供しています。そのリコーでは、業務改革の一環として、設計技術情報の管理方法を刷新。設計・製造・サービスの統合BOMをPLMソリューション「Windchill」上に配置することによって、製品開発に関わるすべての部署からの技術情報を容易に検索・連携できるようにしました。現場ニーズへの対応には、産業IoTプラットフォーム「ThingWorx」を情報利活用の基盤として整備を進めています。
※BOM:Bill Of Materials(部品表)
※PLM:Product Lifecycle Management(製品ライフサイクル管理)
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背景
工程をまたぐ技術情報検索や連携が困難
吉村 俊哉 氏
デジタル複合機(MFP)やプリンターの世界的メーカーとして知られる株式会社リコーは、企業理念の使命とめざす姿に「“はたらく”に歓びを」を掲げて、デジタルサービスの会社としての変革を進めています。そのための業務改革の1つとして同社のデジタル戦略部が2018年から実施してきたのが、製品開発に関連する技術情報の管理方法の刷新でした。
「当社はかつて、エンドユーザーコンピューティング(EUC)に全社で取り組んでおり、技術情報の管理にもスクラッチ方式で手組みしたPLMシステムとEUCツールを併用していました。しかし、EUCのソフトウェアは現場ごとのニーズを反映した個別最適で作られていることが多く、工程や部署をまたぐ情報の検索や連携が難しいという課題をかかえていました」(吉村氏)
また、長らくEUCを続けてきたために、同社のソフトウェア開発・改修体制にも限界が訪れつつありました。
「EUCツールは古くから存在していた製品なので、DBの上限容量などの点で老朽化が目立っていました。さらに、EUCツールを熟知するメンバーが減ってきた結果、ソフトウェアのメンテナンスや機能改修にも支障が出てきました」(池田氏)
取り組み
統合BOMに強い「Windchill」でPLMを再構築
池田 賀一 氏
検討を進めたリコーは、設計効率と製品品質を高めるには、PLMを再構築する必要があると判断。PLMのパッケージソフトウェアを導入するとともに、従来は工程別だったBOMを1つにまとめた統合BOMに整備する方針を固めました。
PLMソフトの選定にあたって、同社は「国内外すべての設計・製造拠点で利用」 「利用者数は約1万人」などの要件を設定。そして、Fit to Standard*方式で導入することを決めました。
「ソフトについては、複数のPLMソフトベンダーから見積もりを取って、統合BOM管理に強い『Windchill』を選定しました。実装作業は、総合力があり、われわれのITプラットフォームを熟知している日立ソリューションズへ依頼することに決めました」(池田氏)
実装が完了して「Windchill」が稼働したのは、2021年3月です。その後、現場でのPLM活用を促進するためのツールとして、産業IoTプラットフォーム「ThingWorx」を導入することも決定しました。
「現場では、コストや在庫情報を統合BOMの情報と組み合わせて1画面で見たいというニーズがあります。それには『ThingWorx』が最適でした」(飯田氏)
*Fit to Standard:システム導入時にアドオン開発(パッケージの標準機能で不足している機能を追加で開発すること)を行わずに、業務内容を標準機能に合わせること
効果
統合BOMと自動双方向連携で検索性向上
飯田 正史 氏
リコーの現場で「ThingWorx」が使えるようになったのは、2023年10月です。一連の大がかりな導入はこれで一段落しましたが、細かな改修や機能拡張はその後も継続的に続けられています。
「PLMは決して『パッケージソフトを導入して終わり』ではありません。継続的に手を入れることによって、ユーザーの満足度を高めたり価値を創出できたりすると、われわれは考えています」(飯田氏)
「Windchill」ベースの新しい技術情報管理で、リコーは設計BOM、製造BOM、サービスBOMを統合した統合BOMを構築し、生産・サービスシステムと連携することによって検索性を高めました。さらに、「ThingWorx」の導入によって、情報の可視化という現場ニーズへ継続的にこたえることも可能となっています。
定量的な導入効果としては、技術情報の検索に要する工数を削減できたことが大きなポイントであり、製品障害や不具合などのトラブル発生時における原因特定や対策の迅速化につながっています。
展望
設計工程と製造工程の連携をさらに強化
リコーグループでは、「Windchill」を軸とした技術情報改革で、エンジニアリングチェーン基幹業務領域の刷新が進みましたが、継続して、ものづくり現場におけるさらなる生産性および品質の向上のための進化を続けています。その一つの戦略的なツールとして「ThingWorx」を採用し、「Windchill」標準機能と組み合せることで、例えば、設計変更が生じた時の生産やサービスの現場への伝達プロセスの改善などを進めています。
また、「Windchill」が持つ、部品やBOM情報や資材システムが持つコストの情報、生産管理システムが持つ各拠点の部品在庫情報といった、ものづくりに関連する情報群を統合的に現場で利活用する環境の強化を進めていく構想です。これらの情報を、各現場がBIツールなどを利用して創意工夫のうえで利活用してゆくニーズにも応えていく計画です。
「リコーグループグローバルで、製品開発に関わる約1万人が利用する高SLO(サービスレベル目標)かつ大規模な環境の構築といった挑戦に対して、日立ソリューショズが総合力を発揮してくれて、成し遂げることができました。2021年の『Windchill』稼働開始後も、『ThingWorx』などの技術導入や Microsoft Azure への移行、2回のメジャーバージョンアップ実施完了などの取り組みに対して、私達と一緒にチャレンジしていただきました」(吉村氏)
わが国の重要産業であるものづくり――。業務改革に最新ITの力を活用しようと考える企業に向けて、日立ソリューションズはこれからもPLMなどのさまざまな製品とソリューションで支援してまいります。
マルチCAD対応で統合BOMの管理もできるPLM
- 設計工程で作られたCADデータ、図面、仕様書、BOMなどの技術情報を一元的に管理(Windchill)
- 設計BOM、製造BOM、サービスBOMを統合した統合BOMを構築し、生産・サービスシステムと連携(Windchill)
- 設計工程で作られた情報と外部アプリケーションの情報を統合し、見やすく可視化(ThingWorx)
株式会社リコー
所在地 | 東京都大田区中馬込1-3-6 | |
---|---|---|
設立 | 1936年2月6日 | |
従業員数 | 79,544名(連結:2024年3月31日現在) | |
事業内容 | お客様のDXを支援し、そのビジネスを成功に導くデジタルサービス、印刷および画像ソリューションなどを世界約200の国と地域で提供 | |
URL | https://jp.ricoh.com/ |
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本事例の内容は2025年1月14日公開当時のものです。
最終更新日:2025年1月14日