データ活用とは
データ活用とは、業務の中で発生するさまざまなデータを収集・蓄積・分析し、データから得られた新たな知見を業務上で活用することを意味します。
従来からデータは業務上で発生しています。しかし、これらのデータは一過性のものであり、一度利用した後は役目を終えてまた次のデータを取得し利用する、というサイクルであることが多いようです。
しかし、これらのデータにはさらなる活用の余地があります。データを継続的に収集、蓄積することで、業務状況の把握や将来の予測をし、事業拡大につなげることが可能です。加工、集積したデータはビッグデータやデータレイクと呼ばれるもので、データサイエンスやAIなどの技術やツールを用いて分析・活用できます。
データ分析との違い
データ分析とデータ活用は、業務上で発生するデータの収集・蓄積を行い利用するという意味では同様です。両者の違いは、データを利用する目的にあります。
データ分析は、収集したデータから知見を獲得することを目的としています。一方、データ活用は獲得した知見をビジネスに役立てることを目的にしています。データ活用はビジネスに役立てるという目的が先にあり、ビジネス志向がより強いといえます。
データ活用の重要性
スマートフォンやWi-Fiの利用とクラウドサービスを組み合わせることで、どこからでもデータにアクセスできる環境が一般的なものになってきています。総務省の令和4年版情報通信白書によると、パブリッククラウドサービス市場は世界で3,281億ドル(2020年)、日本国内では1兆5,879億円(2021年)に達しており、今後も成長が続くことが予測されています。利用している企業の割合も増加傾向にあり、2021年時点で国内企業の70%以上は何らかのクラウドサービスを利用しています。
クラウドサービスの活用は事業活動のスピードを高める効果があり、企業競争力の向上にも直接つながる施策です。データの収集や活用はクラウド基盤を活用して加速しているといえます。
実際、クラウド基盤を利用してデータを収集する企業が増える中、データ活用は収集したデータを有効に利用し業務の効率化に役立てる方法となります。
データ活用のメリット
データ活用をビジネスに取り入れることにより得られるメリットには、下記の3つが挙げられます。
現状把握がしやすい
データ活用では、データを収集・蓄積・整理し可視化された情報を分析することで、得られた示唆をビジネスに活用するまでを一つの取り組みとして行います。このデータの可視化を行うことで、各種業務や市場動向に対する現状把握の精度を向上させることができます。
また、データの収集から可視化までをリアルタイム化することにより状況把握の速度が上がり、現状から問題の抽出や改善点を見つけビジネスに役立てることが可能となります。
将来予測ができる
現状把握と合わせて蓄積したデータとリアルタイムなデータから浮き上がってくるのが、企業や市場の将来予測です。データの継続的な集積と分析により精度の高い将来予測が可能となります。データ収集により市場動向や流行を見極め、将来予測の結果と合わせれば、企業の将来に向けたシナリオ作りに利用することができます。
事業拡大のチャンスを発見できる
現状把握と将来予測から事業拡大へのきっかけをつかめることもデータ活用のメリットです。これまで組み合わせて考えられていなかった事象や継続的に変化が観察されていなかったデータにはビジネスチャンスが秘められており、新たな製品や事業領域に踏み出す機会を与えてくれます。
データ活用のデメリット
データ活用の実施にはメリットがある一方、デメリットとなる点も存在しています。
コストがかかる
データ活用は、現状一度利用した後に不要となっているデータを収集・蓄積・加工して利用する手法です。これにはデータを集めて可視化する仕組みが必要となります。データを分析・解析するためにデータサイエンスやAIを用いることも多く、そのためのツールやシステムも必要となります。
これらの仕組み、ツール、システムを導入する際には、初期コストおよび継続的な運用コストが発生します。データ活用によるメリットがコストを上回っていれば問題はありませんが、結果が出るまではコストのみが発生しているように見える可能性があります。
専門的な知識やスキルが必要
データ活用でビジネスとしての成果を上げるには、データの活用に対する専門的な知識やスキルを持った人材が必要となります。
一般社団法人データサイエンティスト協会では、データ活用には「ビジネス力」「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」が必要だとしています。これらをあわせ持った人材育成が必要となることも、コストなどの負担からデメリットに挙げられます。
【業界別】データ活用の事例
データ活用にはどのような効果があるのか、その事例を業界別に見ていきましょう。
製造業界
製造業では、製品の製造予定およびラインでの実績管理データは従来から利用されていました。このデータを蓄積・分析することで、製造の詳細なスケジュール管理に役立てることが可能です。また、品質管理にデータを活用することで業務効率化を図ることにもつながります。さらには、市場の将来予測により生産数量の調整なども精度を高めることができます。
人材業界
人材業の分野では離職率や転職活動における実績などのデータが存在しており、分析・活用により営業活動に役立てています。例えば、顧客の求める人材について適性の高い人材をデータから説明できれば、営業の成功率は高まります。また、離職に関するデータを集めれば人材市場のトレンドも見えてくるでしょう。
金融業界
金融業には取引を行う顧客の情報や経済動向に関するデータが存在しています。顧客のデータからは興味のある分野や取引の傾向などを得ることができ、営業活動に生かされています。また、経済市場のデータの蓄積と状況把握により市場予測を行い、ビジネス上の判断基準として利用することもできます。
データ活用に使用するデータ
データ活用で役立てることのできるデータの例をご紹介します。これらのデータは、組み合わせて利用することにより新たな知見やビジネスチャンスの発見につながります。
社内のデータ
- 販売情報 売上高、販売数、顧客の継続的取引など
- 顧客情報 名称や住所などの基本データ、取引履歴、与信情報など
- 人事情報 名称や所属などの基本データ、保有スキル、業績、勤怠、評価など
- 製品・サービス情報 名称や機能などの基本データ、スペック、競合製品、取り扱い先など
社外のデータ
- オープンデータ 気象、交通、市場価格など
- SNS トレンド、趣味・趣向など
- IoTデータ 位置情報、利用状況、センサー値など
データ活用の進め方
データ活用は具体的にどのように進めればよいのでしょうか。その手順を説明します。
データ活用する目的を定める
データ活用で最初に重要となるのが、ビジネスにどのようにデータを役立てるか、その目的を定めることです。「売上の向上」「生産性の向上」など、目的を明確にします。目的により収集すべきデータやデータ分析の視点が変わるため、非常に大切なポイントです。
データを収集・蓄積する
データの収集においては質・量ともに重要です。継続的にデータ収集できる仕組みを構築し、長期間データを収集すれば、状況把握や予測の精度は高まります。また、多くの種類を集めることでデータ間の関係性が見えることもあります。データはできるだけ多く集めましょう。
データを可視化して分析する
収集、蓄積したデータを分析するにあたり、可視化を行います。図表、グラフなどを用いて多くの人が理解できるような加工を施しましょう。ツールのダッシュボード機能などを用いて複数のデータを並べてみるのも効果的です。
アクションプランを設定する
可視化したデータを分析し、アクションプランを設定します。最初に立てたデータの活用目的を実現するためのKPI(目標)の設定、施策の策定、成果計測方法などを詳細化したものがアクションプランです。いつまでに、誰が、何を行うかを具体化して、実現可能なアクションプランとします。
アクションプランの効果検証・データの品質維持・向上をする
アクションプランを実施し、効果の検証を行います。設定時に立てたKPIが達成できたのか、達成できなかった場合はその原因について分析し、アクションプランの見直しを行います。
成果は必ずしも一度で出るとは限りません。もとにしたデータに起因するケースもあるため、データの品質見直しや維持・改善を行いましょう。そして、さらなるアクションプランの実施へとサイクルをつなげます。
データ活用をする際のポイント
データ活用においては押さえておくべきポイントがいくつかあります。特に重要となる3つのポイントについてご紹介します。
必要なデータの種類を知る
データを活用するためには、どのようなデータがどのような場面で活用できるかを知ることが大切です。データについて知ることで活用の幅が広がります。
人材を確保する
データを分析・活用するためには、専門的な知識とスキルを持った人材が必要です。基礎となる数学・統計学的な知識、データの分析のためのツール活用ノウハウ、自社のデータに対する知見などを持った人材を確保します。この分野の技術者は不足している傾向にあるため、教育・育成を行うことも必要です。
ツールを利用する
データ活用は大量のデータを取り扱うことが前提となります。そのため、ツールや専用のシステムを利用することが一般的です。扱うデータ量や分析の仕方にもよりますが、代表的なツールとしては下記の6つが挙げられます。
- エクセル
- BIツール
- AIツール
- SFAツール
- CRMツール
- MAツール
データ活用に効果的なツール
データ活用に効果的なツールとして、各種Salesforce製品が挙げられます。Salesforce製品では、商談や顧客情報、メールのクリック率などの情報を一元的に管理できます。また、受注まで至らなかった商談や案件に対してもデータを蓄積・分析し、次につなげることができます。
Sales Cloud
Sales Cloudは営業支援/顧客管理(SFA/CRM)をクラウドベースで提供するサービスです。事業上の案件や顧客情報の入力、管理を一元化することができ、必要なデータに必要なタイミングでアクセスすることが可能です。日々の営業活動を記録し、そのデータを分析することで、営業戦略・戦術のPDCA実行と改善を支援します。
Account Engagement(旧Pardot)
Account Engagement(旧Pardot)は見込み顧客を増やすために有効なMAツールです。Web行動をトラッキングすることで、成約につながる確度の高い見込み顧客を発見できます。また、顧客の行動の情報を収集・蓄積できるため、成約確度の高い見込み顧客がとった行動を分析し、マーケティング活動に生かせます。
>Account Engagement(旧Pardot)の詳細はこちらからご確認ください
Tableau
Tableauはユーザー自身によってデータを可視化・分析できるセルフBIツールです。BIとは「ビジネスインテリジェンス」の略で、経営上の意思決定や判断のためにデータを活用する機能を提供します。
Tableuを活用すれば、データの可視化・分析が可能です。
uSonar
uSonarは顧客データ統合ソリューションです。データ分析により、精度の高い意思決定をするためには精度の高いデータが不可欠です。uSonarでは、日本最大級の企業情報データベースが搭載されており、MAやSFA、CRMと統合することで、重点的に注力していくべき顧客群の分析・判断などを実現します。
Salesforce導入実態調査
株式会社日立ソリューションズは、「Salesforceの活用状況に関する実態調査」を実施しました。
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SFA・CRM・MAに関するさまざまなテーマについて日立ソリューションズの知見をもとに有益な情報を発信していきます。
記事のまとめ
データ活用は、業務上で発生しているデータを収集・蓄積・分析することによりビジネスに役立てる仕組みです。業務や市場の現状把握、将来予測などを高い精度で行えるため、事業拡大のチャンスをつかむ役割も持ちます。
データ活用には専門的な知識を持った人材とツールの活用が必要となります。データ活用を実現する効果的なツールとしてSales CloudやTableau、uSonarなどを導入し、より確実なデータ活用を実現しましょう。