SaaS型ITサービスマネジメント ServiceNowの導入事例
株式会社日立製作所様グローバル展開に対応する世界共通のサービスデスクを「ServiceNow」で構築。
株式会社日立製作所では、日立グループも含めたグローバル展開に対応する全世界共通のITシステム基盤を構築中。その一環として、グローバルサービスデスクをサポートするシステムに、海外で1,500社以上の導入実績があり、国内では唯一日立ソリューションズがリセラーパートナー契約を結んでいるSaaS型ITサービスマネジメント「ServiceNow」を採用しました。
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導入の背景
日立グループのグローバル展開に合わせて、IT基盤にも世界共通化の要請が。
大槻 一彦 氏
日立製作所では、「社会イノベーション事業をグローバルに提供していく」という経営計画に沿って、「IT・業務システムのグローバル標準化・集約化」を促進しています。その一環として、従来は日本をはじめアメリカ、ヨーロッパ、中国、アジアという、各地域を統括している会社ごとに管理・運営していたITシステムにも全世界の共通化が求められていました。そこで、システムのグローバル化を検討する拠点として、日立アメリカ(Hitachi America, Ltd.)にGITC(Global IT Center)を設立。IT基盤の統一に向けた構想と、具体的なシステムの選定を進めました。
「私たちITビジネスサービス本部が社内に提供しているサービスの中では、まずメールやネットワークや認証基盤について世界共通のシステムを構築していくことになりました。さらに、ユーザーサポートについても、グローバルで統一システムをつくってサービスデスクのサポートや運用を行えるようにするという課題がありました。日本からも十数名がGITCの検討チームに参加して、ツールの選定や業務スタイルの標準化について議論を重ねた結果、たどり着いたのが『ServiceNow』でした」(大槻氏)。
選定までの経緯
各地域で利用していた従来システムとの比較、クラウド導入の検討の末に。
ユーザーサポートの世界共通システム選定にあたっては、従来各地域で利用していたツールとの比較が行われました。その中では、ユーザー数や運営規模、問い合わせ件数の多さなどから日本が一番のビッグユーザーでしたが、日本で使われていたシステムには多言語に対応していないという課題がありました。
「それまで日本で使っていたシステムは、日本語だけに対応していました。例えば、英語表示もできるようにするには新たにサーバを立てる必要があるなど、一つのシステムでは多言語をサポートできなかったのです。これからは、国内向けだけでなく日本のITビジネスサービス本部から中国・アジア地区のユーザーにもサービスを提供することになり、多言語対応は必須の条件でした」(大槻氏)。
システム選定のもう一つのポイントになったのが、世の中でも注目が高まっていたクラウドサービスを利用していくのか、自前のシステムを持って運用していくのかという選択でした。
「例えば、クラウドサービスの採用によって可能になるシステムの立ち上がりの早さ、運用コストの低減なども選定の理由になりました。また、今まで使っていたシステムはインシデント管理を主体に考えていましたが、今後は運用面の標準化やその他の管理機能の統一も進めていく必要があったので、ITIL(IT Infrastructure Library)への準拠や既存システムより多くの管理に適用できる将来性も考慮して『ServiceNow』を選定しました」(大槻氏)。
導入時の取り組み
業務プロセスの共通化も進めながら、表示機能の改善などにも対応。
2012年7月、グローバルに展開する日立グループ共通のサービスデスクサポートツールとして、「ServiceNow」が稼働を開始しました。それに先立ってアメリカで行われたのが、世界の各地域の担当者が一堂に会する会議。そこでは、「ServiceNow」で扱う定義の確認や統一に加えて、地域ごとに異なっていた業務プロセスの共通化についても意見が交換されたそうです。
「システムを統一するからには、それまで地域ごとに独自のやり方で行われていた業務についても、ある程度考え方を合わせておく必要がありました。それも、共通システムの立ち上げに伴う苦労の一つでしたね。そのほかにも、例えば日本語の表示が機械翻訳レベルなので文章として分かりにくいといった細かい改善点は出てきています。ただ、本番利用を始めたといっても現在はまだユーザーサポートを補助するツールという位置付けで、完全にシステムをつくりあげてから使うという進め方ではないので、今後随時修正を加えてより良いシステムにしていければと考えています」(大槻氏)。
導入後の効果
自らがファーストユーザーとして効果を確認して、グループに情報を提供。
「今はまだ日立グループ全体の導入効果がどうというより、まずわれわれITビジネスサービス本部が使って得られた効果を周囲に広げていく段階だと思っています。例えば、メールサービスについても10万人、20万人がかかわる大規模な事例ですし、ユーザーサポートや運用の面に関しても世の中になかなかない規模のテストケースとなるので、そこで『ServiceNow』の効果を確かめながら、日立グループの各社に伝えていければと考えています。(大槻氏)」
また、日本をはじめ各地域のヘルプデスクから寄せられる要望に対してすべてをカスタマイズして細かく直していくのか、それとも使い方のほうを合わせていくのか、そのバランスをどうするかもこれからの課題の一つだといいます。
「決してツールありきということではありませんが、共通化したシステムに合わせて自分たちの業務プロセスを見直すという意味ではいい機会なのかもしれません。これまでも標準化しましょうといっても、文化圏の違いなどによって自己流のやり方があって、それに合わせてカスタマイズしていた部分もあったので。ITILを真似ることがすべてとは思いませんが、一つのお手本としながら自分たちの業務プロセスを考えるきっかけになれば、それも日立グループのグローバル化を後押しする効果といえるかもしれません」(大槻氏)。
今後の展望
将来は他の機能との連携も。日立ソリューションズには技術と情報の両面のサポートを期待。
「現在稼働しているシステムではインシデント管理という機能を中心に利用していますが、そもそも『ServiceNow』を導入した理由には、それ以外の将来性のある管理機能を活用していくという構想がありました。例えば、システム運用における変更管理とか、問題管理といった機能も利用できるようにして、それをインシデント管理と連携させるといったことを考えています。また、ユーザーのポータルサイト構築なども、可能性としては考えられます。一つのポータルにナレッジや各地域から発信された情報を集約して、グローバルで共有できるプラットフォームをつくるとかですね。」(大槻氏)」
最後に、日本で初めて「ServiceNow」のリセラーパートナー契約を結んだ日立ソリューションズに求める役割と、今後のシステム運用時のサポートへの期待について聞かせていただきました。
「私たち自身に『ServiceNow』についての詳しい知識や技術があるわけではないので、将来の開発や構築も含めた技術支援をお願いしたいのはもちろんですが、海外の多くのビッグユーザーに使われているツールなので、世の中の活用事例についていろいろ教えていただきたいですね。そうしたグローバル企業の仕事のやり方などを学びながら、日立グループ各社のIT部門などに情報として提供していければと思っています」(大槻氏)。
株式会社日立製作所
日立製作所は、1910年の創業以来「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」という企業理念のもとに、社会や暮らしを支える数多くの製品やシステムを提供してきました。現在は、より安全で安心な社会をめざして、長年培ってきたインフラ技術と最先端のITを組み合わせた"社会イノベーション事業"を、グローバルに展開しています。
本社所在地 | 東京都千代田区丸の内一丁目6番6号 |
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設立年月日 | 1920年2月1日 (創業1910年) |
従業員数 | 33,665名 (2013年3月末日現在) |
資本金 | 458,790百万円(2013年3月末日現在) |
カンパニー | 電力システム社、インフラシステム社、交通システム社、都市開発システム社、 ディフェンスシステム社、情報・通信システム社 |
URL | http://www.hitachi.co.jp/ |
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本事例の内容は2013年11月25日公開当時のものです。
最終更新日:2013年11月25日