パネルディスカッションレポート「担当者が語る!フィールドサービスのトレンド
対談:Dynamics×Salesforce」

「Microsoft Dynamics365」「Salesforce」による課題解決事例

 ここまでのセッションにより、IT部門やDX推進部門の理想と現場との現実の差、つまりギャップの大きさがフィールド業務のデジタル化・DX化を難しくしていることが見えてきた。そこで、江角氏と落合氏がどのような提案でこのギャップを埋めてきたのか、それぞれで特長的な事例を紹介する。

Salesforceの事例

主に設備工事のサービスを行っているA社では、「受注拡大」「営業および保全業務効率化」「データドリブン経営の実現」を目標としていた。しかし、「設備カルテのシステムが統一されておらず管理が複雑化している」「管理しているサイト情報やシステムも複数存在している」などデータ管理の煩雑化が大きな課題に。さらに、データ管理ができていないことで、提案型での営業もできず、修理依頼を待つことになり、受注拡大の目標達成も難しい状況であった。
そこで、段階的に複数の現行システムからSalesforceへデータを移行し、一元管理を実施。実際の作業工程では、顧客(注文主・サイト・設備)を中心に、3~5年といった長期スパンでの「長期保全計画」を立案し、故障が起きる前の点検作業の「作業計画」。効率的に作業を行うための人員配置を実現する「ディスパッチ」へ。これにより作業の進捗状況のリアルタイム管理を経て、作業実績をまとめる。
その結果をもとに、「案件管理」「提案・見積管理」を行い、また新たな提案を行うという循環サイクルを実現。データの一元化により、効率化だけではなく、データにもとづいた効果的な提案型営業も可能にした。
ポイントは2点。ひとつは、依頼主による「設備カルテは資産」という考えをもとにSalesforceのなかに過去に蓄積されたデータを組み込み、新たなビジネスへとつなげられるようにした点。
そしてもうひとつは、顧客データの整理。クラウド型のデータ統合ツールであるユーソナーを活用し、事業所レベルでの重複排除を行い、整理統合することで効率化を図った。

設備サービスプラットフォーム

Microsoft Dynamics365の事例

主に設置型機器の製造をグローバルに行っている会社B社で、グローバルで保守サービスを行ううえで、世界各国の保守サービス受託会社、販売会社など複数会社の情報を一元管理することを目的にDynamics365を導入。目標とする主な効果は、「修理時間・訪問回数削減による顧客満足度向上」「オペレーション効率化」「経営指標のタイムリーな可視化」の3点であった。
同社では、これまで「システムが地域ごとに運用されていてノウハウが活用できていない」「オフライン環境でシステムが利用できない」「保守サービスと販売系の間での情報共有不足」「経営判断に役立てられるデータの生成に時間がかかる」といった課題を抱えていた。 そこで、Dynamics365の導入で行った解決策は、次の4点。

1. 海外拠点・販売代理店まで含めたシステム・データの統合
2. オフライン環境で迅速な作業報告書の作成
3. 営業~コールセンター~現場業務~営業といったすべての作業をシームレスに完了
4. 経営ダッシュボードによるKPI可視化

これらの施策により、会社や部門を越えて情報の一元化が行われ、修理時間や故障当たりの訪問回数の低減を実現。その結果、データ集計や分析のような間接業務にかかる時間の低減を実現した。

特にシステム導入により最初に出た大きな効果としては、実際に修理にかかる時間や訪問回数などの実態が各エリア、拠点別に可視化された点。その結果、エリア・拠点ごとに見える化されたことにより、改善効果の大きいエリアが特定でき、効果を最大化するための根拠のある計画立案につながったことが、全体の修理時間・訪問回数低減につながった。

グローバルで保守サービスを一元管理

まとめ:フィールド業務のDX推進実現のポイントは適切なIT投資

今回の事例やグローバルな展開も含め、情報を一元的に集めてくるのがDXを実現するうえで最初の一歩となる。それにより、部門や会社を越えてフィールド業務に関する情報のやり取りができるようになることで、よい循環が生まれるようになるのである。
日立ソリューションズのフィールドサービスの考え方は、「日々の業務を支えるDX」。具体的には、「人を育てる」「安全と品質を保つ」「効率化を進める」。そして、設備保守サービスで顧客先に出向いたサービスマンが競合品が稼働しているのを目視してそのサポート期限や機能的な優位性を提案し、リプレイス提案のための情報を営業部門にフィードバックする「現場や企業の成長を促すDX」です。これにより「新しいビジネス機会を創出し企業の成長につなげる形でのご提案をさせていただいております」としてセッションを締めた。

今回のパネルディスカッションにより、改めてDXの重要性を確認したと同時にデジタル化との違いについても認識を改める必要性を実感しています。
DXを進めるうえで勘違いしやすいのが、デジタル化とDXが同じものだと思ってしまう点です。単純にこれまで手作業で行っていたものをデジタルの導入により効率化を進めても、それはデジタル化でありDXではありません。
もちろん、DXの実現にデジタル化は欠かせませんが、導入さえすればDXが実現するわけではない点はしっかりと把握しておく必要があるでしょう。
例えばシステムを導入しても、それぞれの現場によってカスタマイズやサードパーティのツール導入が必要なケースは少なくありません。そのためには、豊富な実績を持ち迅速な対応ができるサポートが必須です。
日立ソリューションズでは、「MicrosoftとSalesforceという2大製品を専門に扱う部隊を揃えている総合力」「日本のお客さまのさまざまな現場環境や業務要件にきめ細やかに答える対応力と製品ラインアップ」で、それぞれの現場が抱える課題に対し柔軟に対応することで適切なデジタル化推進のサポートを実現します。
フィールド業務の課題を解決し、DXの実現を希望されている際は、ぜひご相談ください。

BACK「フィールド業務でデジタル化を進める際に抱える課題点」
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