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ALMツールのCodebeamerを使いこなすには?自社のプロセスに合わせた最適な活用方法

2024年10月23日

自動車業界における車載ソフトウェア開発は、ますます複雑化し、高度な品質管理が求められています。その中で、Automotive SPICE®(以下、ASPICE)は、車載ソフトウェア開発プロセスの品質を評価するための国際標準として広く認知されています。ASPICEのプロセスを確実に実行するためには、適切なALM(Application Lifecycle Management=アプリケーションライフサイクル管理)ツールの導入が不可欠です。

本記事ではCodebeamerというALMツールを活用して、ASPICEのプロセスを確実に実行する方法について詳しく解説します。

Codebeamerとは

要件・開発・リスク・品質などを包括的に管理するCodebeamer

Codebeamerは、アプリケーション開発の効率化と品質向上、開発プロセスの標準化を支援するALMツールの1つです。このツールはデジタルワークフローを活用して、要件管理、テスト管理、品質管理、リリース管理などの開発プロセスを一元管理することで、開発効率の向上や品質の向上に寄与します。

Codebeamerの主な特長

Codebeamerは、次の4つの特長を備えています。

1. ASPICE準拠の開発プロセス定義
ASPICE基準に沿った開発プロセスを定義し、効率的に運用できる環境を提供します。

2. ASPICEレベル達成に必要なエビデンスの自動取得
ASPICEの各レベルに対応するための証拠(エビデンス)を、成果物に関連付けてツール上で一元管理できるため、プロセス評価の手間を軽減します。

3. データサイロの解消
部門間で分断されたデータ(サイロ化されたデータ)を統合し、全体の情報をスムーズに共有できるようにします。

4. 工程間のトレーサビリティ確保
開発工程間でのトレーサビリティを維持し、プロセス全体の透明性と効率性を向上させます。

これらの機能により、開発チームはASPICEの細かな要件を意識することなく、新たな開発プロセスをスムーズに導入・運用できるようになります。

トレーサビリティ機能の詳細

上記の特長の1つであるトレーサビリティ機能では、要件、テスト、リリース、タスクなど、開発プロセスにおけるさまざまな作業項目を「トラッカー」として管理し、それらを相互に関連付けます。この仕組みにより、プロセス全体がシームレスに連携され、包括的なトレーサビリティが実現します。

変更の影響範囲の特定や、問題発生時の迅速な原因分析が容易になるため、迅速かつ効果的な対応が可能になります。

プロジェクト全体を繋ぐトレーサビリティ

外部ツールとの連携

Codebeamerでは、既存のツールと連携しながら可視性の向上とデータの一元管理も実現できます。APIやプラグインを利用して、さまざまな外部ツールと容易に連携できるため、現在使用中のツールを活用しながらも開発プロセス全体を改善できます。

ソースコード管理ツールやJiraなどのプロジェクト管理システムとも統合でき、従来異なるツールで分散していたデータをCodebeamer上で一元管理することで、プロジェクト全体の進捗や成果物に対する可視性が向上します。

さまざまな外部ツールとの連携

2. Codebeamerを使いこなすには

上記のようなさまざまな機能や導入メリットのあるCodebeamerですが、効果的に導入するためには、自社の開発プロセスやニーズにあわせたカスタマイズが必要となります。Codebeamerは柔軟性に優れたツールである一方、プロジェクトごとの設定やユーザー権限の細分化、特定業界の規制に合わせたプロセスの調整など、専門的な知識と経験が必要となる作業も多くあります。そのため、初期導入コストが高くなる場合もあります。

Codebeamerにはあらかじめテンプレートが用意されており、このテンプレートをベースにカスタマイズを行うことで、初期コストを抑えながらスムーズに導入を進めることが可能になります。Codebeamer のテンプレートには、成果物の構成や成果物間の参照関係が定義されており、自動車、航空機器、医療機器などさまざまな業界や規制に対応することができます。

では、どのようにCodebeamerを自社のプロセスに適合させ、活用していけばよいのでしょうか?次章で詳しく解説します。

3. Codebeamerを自社のプロセスに合わせて活用する方法

Codebeamerをカスタマイズする際は、下記のステップで進めるのが効果的といえます。

1. 現行プロセスとのギャップ分析と最適なプロセス構築
2. 自社に最適なプロセスを踏まえたCodebeamerの要件定義
3. 自社の最適なプロセスに合わせたCodebeamerのカスタマイズ

1.現行プロセスとのギャップ分析と最適なプロセス構築

まず、ALMツールを導入する前に、自社の現行プロセスとASPICEの要求事項とのギャップを分析することが重要です。ギャップ分析を行うことで、現行プロセスのどこに問題があるのか、どの部分を改善する必要があるのかを明確にすることができます。この分析結果をもとに、自社に最適なプロセスを構築します。

日立ソリューションズならプロセス改善のコンサルティングからご支援が可能です

2.自社に最適なプロセスを踏まえたCodebeamerの要件定義

次に、自社に最適なプロセスを踏まえたうえで、Codebeamerの要件定義を行います。要件定義はALMツールの導入において非常に重要なステップです。ここでのポイントは、自社のプロセスに最適にフィットするように、Codebeamerの機能をどのように活用するかを明確にすることです。

3.自社の最適なプロセスに合わせたCodebeamerのカスタマイズ

要件定義が完了したら、次にCodebeamerのカスタマイズを行います。Codebeamerのカスタマイズ性の高さは、自社の開発プロセスに最適にフィットさせるための大きな強みであり、テンプレートを用いることでカスタマイズから導入までをスピーディーに実施できます。具体的には、以下のようなカスタマイズが可能です。

●柔軟なプロセス定義 Codebeamerのワークフロー機能を使えば、ASPICEに適合した最適なプロセスを詳細に定義できます。たとえば、システムアーキテクチャ設計のプロセスおいては、SysML図の作成から承認までの一連の流れや必要な承認者などをワークフローとして定義することで、ASPICEの要求に準拠したプロセスに対応することが可能です。

●カスタムフィールドの追加 ASPICEで定義される要素(要求、設計、テストケースなど)にカスタムフィールドを追加することで、企業固有の属性や情報を管理できます。この柔軟性により、ASPICEの要求を効果的に満たすことが可能です。

●レポート作成 ASPICEでは、各プロセスにおける成果物の測定と評価が求められます。Codebeamerのレポート機能を活用すれば、ASPICEで規定されるさまざまな指標を測定し、視覚的にわかりやすいレポートを作成できます。

●開発ツールとの連携 Codebeamerは、バージョン管理システムやビルドツールといった開発ツールとの連携も容易に行えるため、開発プロセス全体の効率化を図れます。

まとめ

車載ソフトウェアの品質管理は、ますます重要性を増しています。ASPICEのプロセスを確実に実行するためには、適切なALMツールの導入が不可欠です。Codebeamerは、その柔軟なカスタマイズ性とASPICEのテンプレートを活用することで、自社のプロセスに最適にフィットさせることができます。

まずは現行のプロセスとのギャップ分析を行い、自社に最適なプロセスを構築します。そのうえで、Codebeamerの要件定義を行い、カスタマイズを実施します。最後に、ASPICEのテンプレートを活用することで、導入コストを最小限に抑えつつ、迅速にプロジェクトを立ち上げることができます。

これらのステップを踏むことで、Codebeamerを活用してASPICEのプロセスを確実に実行し、高品質なソフトウェア開発を実現することができるでしょう。車載ソフトウェア開発にALMツールの導入を検討している方々にとって、Codebeamerは非常に有力な選択肢となるはずです。

とはいえ、ASPICEの知見を有しつつ、開発現場の実運用に即したカスタマイズを行うのは至難の業です。豊富な知見と実績を持つ日立ソリューションズでは、Codebeamerのカスタマイズを含めた導入サポートを行っています。ご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

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