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ASPICE=開発プロセス?よくある誤解と対応のポイントを解説

2025年2月5日

自動車産業における品質と信頼性の向上をめざす中で、Automotive SPICE®(以下、ASPICE)は避けて通れません。また、昨今のSDV (Software Defined Vehicle) 化の潮流でも重要な要素になっています。特に、ヨーロッパ市場への輸出をめざす日本の自動車メーカーにとって、ASPICEへの対応は必須です。

しかし、ASPICEに対する誤解が多く、結果としてASPICEの対応を進めるうえで重大な問題が生じる場合があります。そこで本記事では、ASPICEの本質を理解し、ASPICEの対応を成功させるためのポイントを詳しく解説します。

ASPICEとは

ASPICEの定義とバージョン遷移を表す図。詳細は以下

まず、ASPICEの基本的な定義から確認しましょう。ASPICEは「Automotive Software Process Improvement and Capability dEtermination」の略であり、ISO/IEC 15504(SPICE)をベースにした自動車業界向けのプロセス評価モデルです。ソフトウェア開発プロセスの成熟度を評価するフレームワークのため、具体的な開発プロセスそのものではありません。

ASPICEの管理運営を行っているのは、「ドイツ自動車工業会品質管理センター(VDA QMC)」です。ASPICEはこれまでに複数回のプロセス見直しが行われており、2017年にはAutomotive SPICE® 3.1、そして2023年にはAutomotive SPICE® 4.0がリリースされています。

ISO26262との違い

ASPICEと混同されやすい規格として「ISO 26262」があります。ISO 26262は、自動車の機能安全に関する国際規格であり、車載機器やソフトウェア開発において遵守すべき機能安全開発プロセスを規定しています。

ASPICEとISO 26262の主な違いは、その適用範囲にあります。ASPICEは主に開発プロセスに焦点を当てた規格です。一方、ISO 26262は、自動車の要求定義から開発、生産、保守・運用に至るまで、広範囲にわたるプロセスをカバーしている点が特徴です。

ASPICEの必要性と適用するメリット

ASPICEへの準拠は、車載ソフトウェア開発の安全性と品質の確保、開発プロセスを標準化し、SDVに対応するために非常に重要です。車載ソフトウェアには自動ブレーキや歩行者検知など、安全性に直結する多くの機能が含まれています。これらの機能が適切なプロセスを通じて開発されていないと、重大な事故を引き起こす可能性があります。そのため、ASPICEの基準にしたがって開発を進めることで、安全性の高いシステムの構築が可能となります。

また、ASPICEは世界的に認知されたプロセス評価モデルのため、その基準に準拠することで、無駄なコストを削減しながら製品の安全性と信頼性を客観的に証明できるというメリットもあります。

最新の業界動向とASPICE

近年、自動車業界では電動化や自動運転技術の進展にともない、ソフトウェアの重要性が一段と増しています。こうしたなか、ASPICEの役割がより重視されており、特にサイバーセキュリティや機能安全(ISO 26262)との連携が不可欠となっています。企業はこれらの要素を統合的に管理していかなければなりません。

さらに、欧州連合(EU)の新しい規制や標準化の動きにも注目が集まっています。たとえば、EUの「General Safety Regulation(GSR)」では、自動運転車両に対する新しい安全要件が導入され、企業はこれに対応するためのプロセス改善を進める必要があります。

ASPICEでよくある誤解とは?原因とその影響について

ASPICEは「開発プロセス」と誤解されることがよくあります。その理由は、評価項目が具体的なプロセスに関連しているからです。しかし、ASPICEはあくまで「監査項目」であり、これを満たすためのプロセスは各企業が独自に構築しなければなりません。この誤解が原因で、以下のような問題が発生することがあります。

ASPICEをベースにプロセスを構築しようとしてしまう

ASPICEの監査項目をもとにプロセスを構築すると、現場の実情が反映されないプロセスが導入される可能性があります。現場の実情に合わないプロセスが導入されてしまうと、作業効率の低下や不要な手順・チェックポイントが発生することが懸念されます。

その結果、現場の負担が増し、開発に必要な工数やコストが膨らみ、プロジェクトの予算超過につながるケースも考えられます。

レベル達成を目的にした形式的なプロセスが生まれてしまう

「レベル達成」を優先しすぎると、本来の目的である「開発品質の向上」が疎かになる可能性があります。形式的なプロセスに固執することで、ソフトウェアの性能や品質の向上を十分に追及できなくなるおそれがあります。

現場にとって嬉しくない、開発スピードが落ちるプロセスになってしまう

プロセスを過度に重視することで、開発スピードが遅れ、市場での競争力が低下するリスクもあります。厳格なルールに縛られた開発プロセスは、新しいアイデアの採用や改善の機会を逃し、結果として製品の競争力の低下につながりかねません。

ASPICE対応を成功させるためのポイント

ASPICE対応を成功させるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

1. ASPICEの本質を理解する
2. 自社に適したプロセスを構築する
3. 継続的な改善を行う
4. チーム全体の理解と協力を得る

1. ASPICEの本質を理解する

ASPICEは「評価モデル」であり、「開発プロセス」ではとないという理解が、ASPICE対応を成功させるための第一歩になります。ASPICEの目的は、安全性と品質の確保、開発プロセスの標準化のために、プロセスの成熟度を評価し、改善点を明確にすることです。これを理解すれば、形式的なプロセスに固執することなく、実質的な改善に焦点を当てられるはずです。

2. 自社に適したプロセスを構築する

ASPICEの監査項目を満たすためには、自社の開発環境や文化に合致したプロセスの構築が不可欠です。自社の既存プロセスを基盤としつつ、強みや課題を考慮したうえで、ASPICEの要求を組み込んだ形でプロセスを改善することが求められます。

3. 継続的な改善を行う

ASPICEは一度の対応で完了するものではなく、継続的なプロセス改善が求められます。プロセスの成熟度を向上させるためには、定期的な評価とフィードバックが不可欠です。開発プロセスを常に最適化しておくことで、高品質な成果物の提供が可能になります。

4. チーム全体の理解と協力を得る

ASPICEの対応には、開発チーム全員の協力が不可欠です。チームメンバーがASPICEの目的と意義を十分に理解し、共通の目標に向かって協力することが成功への鍵となります。継続的な教育やトレーニングを通じてチーム全体がASPICEの重要性を理解すれば、業務プロセスの変更に対する抵抗も軽減されてスムーズな導入が可能になります。

まとめ

ASPICEは車載ソフトウェア開発の安全性と品質の確保、開発プロセスの標準化を図るうえで重要な評価モデルです。しかし、その本質を誤解すると、製造コストの増大や品質の低下、さらには競争力の低下といった問題が生じる可能性があります。

ASPICEの本質を正確に理解し、自社のニーズに合ったプロセスを構築しながら継続的な改善を行うことで、真の品質向上と競争力の強化を実現することができます。

ASPICEに準拠したプロセスの構築、改善、管理において、課題を抱える企業は少なくありません。日立ソリューションズでは、ASPICEに準拠した開発プロセスの導入から定着までを包括的に支援します。詳細は、以下のページをご覧ください。

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