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ASPICE対応=コスト増は勘違い!開発コスト削減と品質向上への鍵
2025年2月5日
自動車産業の車載ソフトウェア開発における品質と信頼性の向上をめざす中で、Automotive SPICE®(以下、ASPICE)は避けて通れません。また、昨今のSDV(Software Defined Vehicle)化の潮流でも重要な要素になっています。特に、ヨーロッパ市場への輸出をめざす日本の自動車メーカーやサプライヤーにとって、ASPICEへの対応は必須です。
しかし、「ASPICE対応は開発プロセスを複雑化し、製造コストを増加させるため、生産性が悪化するのではないか?」という誤解が、開発担当者の間で多少なりとも残っていることもまた事実です。本記事では、この誤解を払拭し、ASPICE対応がもたらす真のメリットについて詳しく解説します。
ASPICEとは
ASPICE(Automotive Software Process Improvement and Capability dEtermination)は、ISO/IEC 15504(SPICE)に基づいて開発された自動車業界向けのプロセス評価モデルです。ソフトウェア開発プロセスの成熟度を評価するためのフレームワークであるため、具体的な開発プロセスそのものではありません。
自動車のIoT化や自動運転技術の進展にともない、車載ソフトウェアの複雑性が増している昨今、複雑化するソフトウェアの品質、コスト、納期(QCD)を維持・向上させるためには、世界標準のプロセス評価モデルであるASPICEの監査項目を満たす、自社に適した「開発プロセス」を構築することが不可欠となります。
ASPICEのプロセスと成熟度レベル
ASPICEでは、主にマネジメントとエンジニアリングの2つの視点から32のプロセスを定義しています。各プロセスには、「目的」、「プロセスによる成果」、「成果物の作成方法」などが明確に規定されており、プロジェクトがこれらのプロセスにどの程度対応できているかを、レベル0からレベル5までの6段階で評価する仕組みとなっています。
自動車業界では、ASPICEの成熟度評価でレベル3を達成することが、安全性と信頼性が確保されていることの客観的な証明とされています。
ASPICEの高い成熟度レベルを維持することは、顧客やパートナー企業からの信頼を得るだけでなく、製品開発のすべての段階における安全性、品質、効率性の向上を支える重要な基盤となります。
ASPICE対応がコスト増加を招くという誤解が生まれる理由
前述したように、ASPICEの高い成熟度レベルを維持することには多くのメリットがあります。しかし、その一方で、いまだに多くの企業が「ASPICE対応を行うと運用が煩雑になる」あるいは「コストが増加してしまう」と考えています。なぜこのような誤解が生まれるのでしょうか?主な原因について考えてみましょう。
イニシャルコストがかかる
ASPICE対応が一見して追加の作業やコストを伴うように見える理由の1つは、新たなプロセスや手順の導入を必要とするためです。特に、初めてASPICEを導入する企業やプロジェクトでは、初期段階での学習やプロセス整備に時間とコストがかかることが少なくありません。
確かに、ASPICEの導入にはプロセスの見直し、新しいツールの導入、スタッフのトレーニングなど、短期的なコストがともないます。しかし、長期的な視点で見ると、これらの取り組みによりランニングコストが削減されるため、最終的にはコスト削減につながるのです。
レベル達成を目的にしたプロセス構築を行っている
ASPICEの成熟度レベルの達成を優先するあまり、実際の現場に合わない「生産性の低いプロセス」が構築されることがあります。その結果、開発チームが不要な手順や報告書作成に追われ、生産性の低下やコストの増加を引き起こす可能性があります。
ASPICEの理解が不十分な状態でプロセスを構築してしまっている
ASPICEの要求事項を過剰に解釈したプロセスが構築されたり、逆に軽視したりすることで適切なプロセスが構築されず、生産性や品質が損なわれることがあります。特に、ASPICEを初めて導入する企業では、誤った解釈が多く見られます。
ASPICEの本来の目的は、開発プロセスの標準化と安全性、品質を向上させることにあります。レベル達成やプロセスの複雑化はその手段に過ぎず、これが逆転してしまうと誤解が生まれ、生産性が悪化する状況が生じます。
ASPICE対応を効果的に進めるためのステップ
では、どうすれば最適なASPICEプロセスを開発に適用できるのでしょうか?ASPICE導入の際に重要となる3つのステップを紹介します。
ステップ1 現状のプロセスとのGAP分析
まずは、GAP分析によって「現在の自社の開発プロセス」と「ASPICEが要求するプロセス」の違いを特定する必要があります。要求事項に対して遵守できている箇所、できていない箇所を明確化することで、現状のプロセスに対する課題抽出、改善点の洗い出しを行います。
ステップ2 「ASPICE知見」と「現場の理解」を兼ね備えた有識者によるプロセス改善
次にASPICEの知見と現場の理解を兼ね備えた有識者によるプロセス改善が必要です。ASPICEの理論的な専門知識だけでなく、現場での実務を深く理解している人材が関与することで、実際の業務に適した、効果的かつ実現可能なプロセスの構築が可能になります。
ステップ3 トレーニングと教育によるASPICEプロセスの現場定着
構築したプロセスを現場に確実に定着させるためには、トレーニングや教育を実施することが重要です。新たに導入されたプロセスが現場で理解され、実際に活用されなければ、その効果は限定的なものになってしまいます。
とはいえ、ASPICEの知見を深め、現場の理解を促し、定着させるには長期的な活動が欠かせません。また、プロセスが正しく運用をされているかを管理するにも、従来の運用では多くのコストが発生してしまうのは事実です。そこで、「現場がASPICEを意識しなくても、機械的にプロセスが定着される仕組みを作る」という手段が注目されています。これを実現するのがALMです。
次の章ではALMツールを活用して得られるメリットを見ていきます。
ASPICE運用の効率化に向けて
ALMツールは、要件管理、設計管理、テスト管理、構成管理など、多岐にわたる機能を提供し、開発プロセス全体を一元管理・可視化することができます。具体的には、以下が可能になります。
1. プロセスの自動化と一元管理
2. ワークフローの標準化
3. リアルタイムの監視とエビデンスの取得
4. トレサビリティーの確保
5. コミュニケーションの円滑化
6. 継続的なプロセス改善
ALMツールを活用すると、ASPICEプロセスの運用がさらに効率化され、現場への定着化を進めることが可能です。プロセスの自動化や一元管理、ワークフローの標準化、リアルタイムの監視とエビデンスの取得、コミュニケーションの円滑化、継続的なプロセス改善といった多くのメリットを享受することができます。
まとめ
ASPICE対応は、コスト増加を招くなどと誤解されがちですが、実際にはプロセスの最適化とリスクの最小化により、トータルコストの削減が可能になります。さらに、ALMツールの導入により、ASPICEへの効果的な対応が可能になります。
日本の自動車メーカーが欧州市場で競争力を持つには、ASPICE対応は避けて通れない道です。コスト面での誤解を解消し、ASPICEが持つ真のメリットを理解すれば、より効率的かつ高品質な開発が実現できるでしょう。
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