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自動車業界と「SDGs」、最新の取り組み・動向を解説

2022年9月28日

100年に一度の変革と言われる「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアリング・サービス、電動化)の波に揺れる自動車業界だが、潮流はもう一つある。「SDGs」だ。SDGsという国際目標とCASEが息を合わせ、業界が進むべきベクトルを指し示している。

この記事では、SDGsと自動車業界との結び付きについて解説していく。

自動運転専門メディア「自動運転ラボ」寄稿

※本記事は「自動運転ラボ」の見解に基づき執筆されています。

SDGsと自動車業界

まず、SDGsについて簡単におさらいしておく。SDGsは「Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標」を意味し、2030年までにめざすべき国際目標として2015年に国連サミットで採択された。17の目標(ゴール)と169のターゲットで構成されている。

SDGsと自動車業界

出典:国際連合広報センター(UNIC)

後述するが、自動車業界はこのうち「目標3」「目標7」「目標9」「目標11」で密接に関係する。

特に、自動車業界では「脱炭素社会、カーボンニュートラル」実現に向けた動きが顕著だ。欧州委員会は2035年を目途にガソリン車をはじめとした内燃機関車の新車販売を終了する方針を発表した。日本も同年までに新車ベースでハイブリッドやPHEV(プラグインハイブリッド)を含むEV化を推し進める方針だ。

このほかにも、自動運転や「MaaS」(Mobility as a Service)といった技術・サービスがSDGsに関連しており、業界におけるSDGsの機運は年々高まっている印象だ。

ちなみに、自動車メーカーによってSDGsに対するアプローチは若干異なるが、例えばトヨタ自動車の場合は、「交通事故死傷者ゼロ社会」をめざすことや、電動車の普及を通じた「CO2ゼロへの挑戦」などを掲げていることで知られている。

以下、SDGsと自動車業界との結び付きについて、分野(目標)ごとに解説していく。

「3:すべての人に健康と福祉を」と自動運転

「3:すべての人に健康と福祉を」

目標3「保健:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」では、達成すべき項目の中に「2020年までに世界の道路交通事故による死傷者を半減させる」が掲げられている。

WHOが2018年に発表したレポート「Global status report on road safety 2018」によると、世界における交通死亡事故死者数は右肩上がりで増え続けており、2016年には135万人に達したという。

日本においては減少傾向が続いており、2020年における24時間以内死者数は2,839人、国際基準に照らした30日以内死者数は3,415人となっている。

警察庁交通局が発表したデータを参照すると、交通事故のうち、原付以上運転者の第1当事者(最初に交通事故に関与した事故当事者のうち最も過失の重い者)に法令違反があった割合は約93%に上る。大半の交通事故、ひいては死亡事故において、ドライバーに過失があるのだ。

こうした事態を解決に導く技術の一つが、自動運転技術だ。ドライバーに代わり運転を司る自動運転システムは、原則として道路交通違反を犯さず、最大限安全を追求する。

また、国土交通省所管のASV推進検討会による分析では、第1当事者が自動運転車、第2当事者が従来の手動運転車であっても、死傷事故を9割弱削減できると試算している。ADASを含め、自動運転技術の社会実装が交通事故死低減に大きく寄与することはほぼ間違いなさそうだ。

一方、現状は各国の法規制やインフラ整備などが追い付いておらず、各国・地域によって公道実証にかかる要件や規制にはばらつきがある。社会受容性もまだまだ足りていない。

国際標準の策定などに尽力している国連には、SDGs同様自動運転が世界的なムーブメントとなるよう、さらなる後押しを願いたいところだ。

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「7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに」と電動化

「7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに」

目標7「エネルギー:すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」では、再生可能エネルギーの割合の大幅拡大など、世界全体のエネルギー効率の改善が求められている。

欧州を中心とした自動車業界が最も力を入れている分野で、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させるカーボンニュートラル実現に向け、動力にガソリンなどの化石燃料を使用しない純電動化を推し進める動きが広がっている。

バッテリーの電力のみで走行するEVのことを「BEV」(バッテリー・エレクトリック・ビークル)と呼び、米国や中国でもBEVを開発するスタートアップが続々と立ち上がっており、中には株式上場段階まで成長を遂げた企業も出始めている。

一方、日本では、トヨタを中心にBEVを視野に入れつつPHEV(プラグインハイブリッド)など広義のEV化を浸透させていく動きが活発化し始めている印象だ。

カーボンニュートラルを考えるうえでは、LCA(ライフサイクルアセスメント)の視点が重要となる。原料調達から製品化、廃棄・リサイクルに至るサイクル全体を通し、環境負荷を定量的に算出する手法だ。

欧州では、発電における再生エネルギーの割合が化石燃料を上回り始めており、クルマの生産時においても再生エネルギーを活用する割合が多く、サイクル全体を通してCO2(二酸化炭素)排出量が少ない。

一方、日本は化石燃料による発電が約75%を占めている状況だ。電気に色はなく、原発や化石燃料、再生エネルギーで作られたものも一律で使用されているが、カーボンニュートラルの観点を踏まえると、電気を使用する側も発電方法をしっかり意識しなければならない。

巨大産業である自動車産業には、再生エネルギーを取り入れながらサイクル全体でCO2排出量を抑えていく取り組みが今後強く求められそうだ。

「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」と技術協力

「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」

目標9「インフラ、産業化、イノベーション:強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進およびイノベーションの推進を図る」では、持続可能な産業化や技術革新の促進をはじめ、開発途上国における技術開発や研究・技術革新の支援などが盛り込まれている。

先進国における自動運転開発は成熟期に入り、社会実装のフェーズを迎えている。開発上、実装エリアは公道実証が可能なエリアに限られているが、今後は世界展開をめざす動きが加速していくことが想定される。その中には当然、開発途上国も含まれる。

ビジネス的視点がベースとなるが、現地企業などとの提携のもと、開発途上国でも自動運転技術の普及が始まるのだ。その際、通信インフラやデータ基盤なども整備され、エリア全体のスマート化が見込まれる。

自動運転技術をきっかけに、交通法規の見直しをはじめとした道路交通のあり方、ひいては都市計画の視点でまちづくりを再考し、地域に即した生活環境が整えられる可能性も考えられそうだ。

「11:住み続けられるまちづくりを」とMaaS

「11:住み続けられるまちづくりを」

目標11「持続可能な都市:包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市および人間居住を実現する」では、公共交通機関の拡大などすべての人が利用できる持続可能な輸送システムへのアクセスなどが盛り込まれている。

ここでは、MaaSの観点が生きてくる。さまざまなモビリティを統合し、効率的かつ効果的な移動を実現するMaaSによって、子どもや高齢者、障がい者など、誰もが場所を選ばず安価に移動可能な仕組みを構築するのだ。

フィンランドでは、官民協働のもと早くからMaaS開発を進めており、2016年にMaaSの元祖と言われるMaaS Global社によるサービス「Whim」が実装されている。Whimでは、バスや電車、タクシー、レンタカー、バイクシェアなどさまざまな移動手段を統合したサブスクリプションサービスが提供されており、日本をはじめ世界進出も進めている。

関連サイト

  • Whim公式サイト

重要性増すカーボンニュートラルの観点

以上のように、CASEに関する取り組みはそのままSDGsに結び付くといっても過言ではないほど両者のベクトルは一致している印象だ。

特に、世界的に高い関心が寄せられているカーボンニュートラルの観点は今後ますます重要性を増す。電動化の波はもはや時代の要請でもあり、発電段階から意識した事業の展開が非常に重要視されそうだ。

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