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カギはレビュー自動化!CASE新時代の「超速開発」に対応するために

2022年12月20日

自動運転化や電動化を含む「CASE」領域におけるモビリティやサービス、ソフトウェアの開発においては、従来よりも効率的かつ柔軟な対応が可能な開発体制が必要とされています。日本を含む世界の各国企業が、CASE領域で熾烈な開発競争を繰り広げているためです。

ただし、開発体制の強化やスピードアップは決して簡単ではありません。採用の強化による人的リソースの拡充にはコストも時間もかかり、効率化に向けた開発工程の最適化の検討、そして最適化に対応するための開発人材に対する研修にも、通常、多くの時間を要します。

高橋 昌志

株式会社日立ソリューションズ
モビリティソリューション本部 オートモティブソリューション部
技師

超有望市場で絶え間なく進む技術の進歩

「CASE」(ケース)とは、「Connected」(コネクテッド)、「Autonomous」(自動運転)、「Shared&Services」(シェアード&サービス)、「Electric」(電気自動車)の頭文字をつなげたワードです。

冒頭でも少し触れましたが、CASE領域におけるモビリティやサービス、ソフトウェア開発において、従来のスピード感では対応できなくなってきているのはなぜなのでしょうか。その理由の1つとしては、CASE領域では技術が絶え間なく進化していることが挙げられます。

CASE領域はさまざまな先端市場の中で各社が競うようにこの分野でリーダー企業になろうと、多額の研究開発費やレイバーコストを投じています。そのような状況の中では、もともと自動車業界に属している企業であっても、新たにこの市場に参入したIT・ベンチャー企業であっても、従来の開発体制では競合他社との開発競争に太刀打ちできないのです。

CASE領域への参入企業増で競争が激化

特にCASEの「A」に相当する「自動運転」に関しては、OEM(完成車メーカー)各社による競争が激しく、年々開発スピードやリリースまでのスピードが早まっています。そして、リリースしたソフトウェアも大規模化・複雑化しており、更新頻度も高くなることが想定されます。また、仮に問題が発生してもすぐに対応できるスピード感が求められます。

サービス、すなわち「S」の切り口でモビリティ市場に参入する企業も増えています。インターネットとの常時接続、すなわち「C」(コネクテッド)の要素を備えた車両が大部分を占めるようになっていく中、車内向けのエンタメコンテンツやインフォテインメントシステム(IVI)といった事業領域には、非常に大きなビジネスチャンスが潜んでいます。Googleやソニーなどデータ・情報やエンタメを事業ドメインとする企業が参入しているのはそのためです。

物流サービスを自動運転車や自動配送ロボットを使って無人化する動きも、国内外で加速しています。

自動運転領域に参入した非OEM系企業の一例

  • Google(自動運転タクシー、車載システム)
  • Walmart(配送無人化)
  • 楽天(配送無人化)
  • ソニー(車内向けエンタメ)
  • 損保ジャパン(自動運転車向け保険)

開発期間の短縮「半分から4分の1」は当たり前

このような状況において、完成車を手掛けるOEMだけではなく、そのメーカーと取引があるシステム開発企業やソフトウェア開発企業、さらに車載向けサービスのビジネスを手掛ける企業、そのほかモビリティに関わるあらゆる企業が、開発のスピードアップを求められています。取引先に求められるスピード感に対応できない企業は、受注減のリスクにさらされています。

例えば実際に開発現場においては、従来では1年をかけるようなプロジェクトで「アジャイル開発」(短期間で検証・開発を繰り返す手法のこと)の手法を用いて、開発工程を2週間ごとに細かく区切り、最終的に3カ月で仕上げるといった案件も増えています。開発期間を従来の半分から4分の1に短縮させる必要がある案件が、決して少なくない状況です。

こうした中、納期厳守のために短期的に組織を大規模化する傾向もあります。たった3カ月で開発人員を2倍に増やす、といったケースも散見されます。開発スピードを上げながら同時に開発の質も高めていくためには、ずばり「自動化」がカギとなります。特に「モデルベース開発」という手法がトレンドとなる中、その重要度は増しています。

プロジェクト状況可視化システム

AIを活用したドキュメント診断やソースコード診断により、品質の均一化を実現。日々のレポートにより品質不良や後期遅延リスクを早期発見し、手戻り防止や業務効率化を支援します。

レビュー担当者の過大な負荷は「リスク」

自動車業界では近年、「モデルベース開発」(Model Based Development)を導入する動きが盛んになっています。モデルベース開発とは、シミュレーション技術を活用した開発手法のことで、シミュレーター上で実際の動作を可視化して検証することが可能になります。

モデルをドキュメント化(要件定義)し、プログラムを開発してテストする——。モデルベース開発ではこの一連のサイクルが非常に速く進んでいます。しかしこの速さに合わせ、ドキュメントやソースコードのすべてを短時間でレビューすることに、多くの企業が苦戦しています。

レビューの専任担当者がいる場合もありますが、ただでさえ多忙なプロジェクトリーダーがレビュー担当を兼ねているケースもあり、レビューが必要なドキュメントやソースコードを計画通りにさばき切れない状況も頻繁に発生してしまっています。

例えば、7名の開発チームにおいてレビュー担当者が1人しかいないとします。特にモデルベース開発においてはレビューの遅れはプロジェクトの遅れに直結するため、レビュー担当者が抱える責任、そして負荷・ストレスは相当なものとなります。このような「綱渡り」の状況の中でプロジェクトを進めることは、リスク以外の何物でもありません。

こうした状況の中で活躍するのが、レビューの自動化システムの存在です。人間が担ってきたレビュー業務の一部をシステムやAIに担わせることで、人間が対応しなければならないレビュー業務の量を大幅に減らすことができます。さらに「浮いた時間」を人間でしか対応できない付加価値が高いタスクに充てることも可能になってくるため、プロジェクトの「質」も高まります。

たとえば当社の「プロジェクト可視化システム」を活用すると、ドキュメントレビューの一部を自動化することができ、まさに上記で触れたようなスピードアップと質の向上を同時に実現することができます。

システム導入でレビューのクオリティを均一化

レビューの一部をシステムに担わせることで、レビューのクオリティを均一化することも可能になります。

人間によるレビューの場合、担当者によっても、レビューする際の担当者の集中力によっても、レビューのクオリティにばらつきが生じます。また、レビュー時間をしっかり確保できず、ドキュメントにほとんど目を通さずにGOサインを出してしまうケースも実際に存在します。

しかし、特に上位仕様に関するドキュメントの場合、レビューで誤りが発見できないことは致命的になります。上位仕様に関するドキュメントは参照回数が多く、誤ったドキュメントの内容を前提にさまざまな下位仕様の開発が進められてしまうからです

ソフトウェアの開発工程だけに限らず、プロジェクトにおいては早め早めのレビューを行って改善していかないと、後工程になればなるほど修正が大変になってきます。例えば、「基本設計」の修正コストを1倍とすると、市場リリースされた後に見つかった不具合を修正するコストは200倍ほどになるケースもあります。

日経BP社「ソフトウェア開発201の鉄則」より抜粋

日経BP社「ソフトウェア開発201の鉄則」より抜粋

「AIに可能なレビューはAIに任せる」重要性

整理すると、ドキュメントのレビューは大きく以下の2種類に分類できます。

  1. 人が必ず必要になるレビュー

  2. テクノロジーでスピードを上げるレビュー

1の「人が必ず必要になるレビュー」では、人間がしっかりとドキュメントを精査し、要件確認をして、品質を見定める必要があります。一方、2の「テクノロジーでスピードを上げるレビュー」では、AIなどを含めたシステムを使って定量的な評価を行い、検証が必要な箇所を洗い出し、ドキュメントの作成者に対する差し戻しを自動化できます。

人間によるレビューが必要になる部分は、プロジェクトの成果物の品質を高めるうえで実は一番重要な部分で、最も時間をかけるべきです。この記事でも既に触れたことですが、AIが担えるレビューはAIに任せることで、人間によるレビューが必要な部分にしっかり時間をかけることができるようになるわけです。

当社のプロジェクト状況可視化システムは、こうした観点で多くの顧客企業様に貢献できるよう、開発されました。次回は、実際にプロジェクト状況可視化システムが開発現場でどのように役立つのかを、具体的に紹介していきます。

高橋 昌志

株式会社日立ソリューションズ
モビリティソリューション本部 オートモティブソリューション部
技師

2008年 旧日立ソフトウェアエンジニアリング(現)日立ソリューションズに入社。
カーナビゲーションシステム、車載カメラ、車載ミリ波レーダー、車載ソフトウェアシミュレータ開発などのソフトウェア開発に携わり、2020年よりプロジェクト状況可視化システムの開発・拡販活動に従事。

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