組み込み開発
開発支援
Automotive SPICE®
セキュリティ
自動車業界における「規格対応」を全方位で支援!開発プロセスの構築など
2023年2月24日
自動車業界において先進技術の導入が進み、ソフトウェア開発の重要度も増す中、多様なプレイヤーが業界に参入し、規格統一の流れが今後一層加速していくことは確実です。
ただし、規格への対応は難易度が高く、自社内ですべての課題を解決するのは容易ではありません。
新海 良一
株式会社日立ソリューションズ
モビリティソリューション本部 オートモティブソリューション部
主管技師
目次
水平分業化で規格統一の流れが加速
従来は、ハードとしての車両の製造が業界を構成する主たる要素でした。しかしいま、その状況は大きく変化しつつあります。
自動運転化に伴いソフトウェア開発の重要度が増し、車両のコネクテッド化はクルマをさまざまなサービスを提供する場へと変貌させています。コネクテッド化は即ちハッキングのリスクを高めるため、高度なサイバーセキュリティ対策も求められるようになっています。
こうした状況は、自動車業界で水平分業化が進んでいることを意味します。1台の車両を完成させるために、従来よりもさまざまなプレイヤーが関わるようになったわけです。多くの企業の参画が進むこの状況において、規格統一の流れがより一層加速していくことは言うまでもありません。くわえて言えば、国内のサプライヤーだけでなく、海外のサプライヤーも含めて分業が進んでおり、グローバル化が進展する中で国際規格や業界標準のプロセスモデルは、開発の共通言語としてもその重要度を高めています。
そして現時点でも、規格対応は自動車業界へ参入するための実質的な「最低条件」となっています。
特に対応が必要とされる3つの要素
特に対応が必要とされているのが、車載ソフトウェア開発プロセスのフレームワークを定めたプロセスモデル「Automotive SPICE®」、自動車向け電子部品の安全に関する規格「ISO 26262」、車両開発における比重が増しつつあるサイバーセキュリティに関する規格「ISO/SAE 21434」です。
これらの規格やモデルへの対応は、OEM(完成車メーカー)や大手サプライヤーから開発案件を受注するうえでほぼ必須となっています。
Automotive SPICE®について
Automotive SPICE®はヨーロッパの自動車メーカーが集まり、サプライヤー選定のために作り上げた「アセスメントモデル」(評価モデル)です。業界団体の標準モデルであり、評価を目的としているため、国際的なISOなどにはなっていませんが、サプライチェーン全体でAutomotive SPICE®への対応は不可欠のものとなっていると言っても過言ではありません。
Automotive SPICE®は評価モデルであるため、「何をすべきか」(What)は書いてあるものの、「どのように実装すべきか」(How)の部分は詳しく書かれていません。そのため、概念を正しく解釈しながらプロジェクトを進めるのは容易ではありません。
こうした課題の解決をサポートするのが、当社が提供する「自動車関連規格準拠支援ソリューション」です。Automotive SPICE®モデルの内容を解釈し、開発の実装に必要な具体的な活動に基づき、プロセスの構築を支援しています。さらに、プロセスの遵守状況を自社で確認できる自己診断ツールも提供しています。このツールにより、通常の有資格者によるAutomotive SPICE®アセスメントの実施に比べて、大幅に費用および現場の負荷を軽減して、プロセスの遵守状況のみえる化を支援します。
Automotive SPICE® プロセス参照モデル プロセスアセスメントモデル バージョン 3.1
ISO 26262について
車両開発において「安全」は最も重要な要素と言えます。ドライバーや同乗者の安全はもちろん、事故によって他者を巻き込む事態も最大限避けられるよう尽くすべきことです。こうした自動車の安全の確保のために対応すべき事項が記載されているのが、自動車向け電子部品の安全に関するISO 26262です。
自動車業界ではこのISO 26262への対応はほとんどの製品開発で必須のため、既に各社がスペシャリストを養成しており、多くの企業で規格対応への体制や対応プロセスは既に構築されていることが多く見受けられます。
自動車関連規格準拠支援ソリューション
OEM/Tier1 受注必須条件となることが多くなっているAutomotive SPICE®・機能安全規格準拠に対して、組織の体制・プロセス構築支援から、自己診断ツールでの開発環境支援まで、豊富な支援サービスを提供します。
サイバーセキュリティ対応について
新車を発売するためには「型式認定」の取得が必要です。型式認定では、サイバーセキュリティに関する国際法規「UN-R155」に対応しなければなりません。UN-R155への対応には、「ISO/SAE 21434」(※自動車のライフサイクル全般におけるサイバーセキュリティ対策を定めた規格)への対応も実質的に必要になります。
ちなみに前述のAutomotive SPICE®においても、サイバーセキュリティに対応していることを確認するために「Automotive SPICE®for Cybersecurity」という新しい評価モデルが整備されており、ISO/SAE 21434とAutomotive SPICE® for Cybersecurityの両方への対応を求めているOEMが出始め、今後はその要求が増えてくることが予想されます。
当社ではこれらの規格とモデル規格への対応を同時に可能とするための具体的な統合プロセスを構築する支援も行っています。
規格遵守に対する業界の課題について
また、規格遵守やモデルへの対応は自社開発のみが対応していればよいわけではなく、サプライチェーン全体で対応していかなければなりません。そのため、Tier1(一次サプライヤー)はTier2(二次サプライヤー)以降のサプライヤーの規格遵守やモデル対応を確認する必要もあります。
しかし、Tier1がTier2以降に規格やモデルへの遵守を要求していても、Tier2以降の規格やモデルへの遵守状況を十分に監視できていないなど、現時点ではリソース不足でサプライチェーンとして十分に規格やモデルへの対応ができていないケースがあることも、業界の課題となっています。
対応プロセスの「スリム化」も重要
ここまで説明した通り、企業は規格に沿った開発体系を構築する必要がありますが、規格への準拠状況の確認などにはかなりの専門性が必要です。企業にとってはこの点が最も難題と言えます。誤った状況把握によってプロジェクトで「手戻り」が頻発すると、進捗に重大な影響が発生しかねません。
課題はさらにあります。規格対応のためのプロセスは、現場の担当者に余計な負荷がかからないよう、良い意味で「スリム」でなければなりません。つまり、必要な要素は満たしつつ、無駄な部分を省き、プロセスをブラッシュアップする必要があります。開発現場では規格遵守やレベル達成を重視するあまり、以前よりも作業負荷が増え、生産性が低下してしまうケースが散見されます。
また、1つのプロジェクトで複数の規格に対応する必要が出てくると、プロセスのスリム化の難易度は一気に高まります。
規格準拠支援ソリューションを提供
規格対応のための支援のために、当社では「自動車関連規格準拠支援ソリューション」を提供しています。規格対応のための体制作り、組織レベルでのPDCA開発サイクルの構築、プロジェクトの監視および制御、準拠状況の確認などのために、コンサル的支援とツールによる支援、さらには開発現場へのプロジェクト管理支援や品質保証活動支援を行います。
例えば、「自己診断ツール for Automotive SPICE®」では、一問一答形式の質問に一通り回答いただくと、評価に関する有資格者が行う診断に近い形で課題の抽出が分析結果として表示されます。遵守できている箇所、できていない箇所がみえる化され、改善案などに関するアドバイスも表示され、費用面や作業工数面で大きなメリットがあります。定期的な診断によって、改善が行われたかの変化(改善傾向)もみえる化できるようにもなっています。
このツールによる診断は、評価を関する有資格者に診断を依頼する場合の料金相場よりかなり費用を抑えて行えるため、導入企業様からご好評を頂いております。また、中国市場やベトナム市場などを含めてグローバル展開をしているサプライヤー様向けに、英語や中国語などへの多国語対応も予定しています。
プロジェクトの「土台作り」の重要性
規格対応を念頭においた開発プロセス・開発フローの構築は、プロジェクトを進めるうえでの「土台作り」といった側面を有しています。この土台作りでミスがあれば、プロジェクトの後半で致命的な手戻りが発生してしまう可能性が高まります。
開発プロジェクトにおける既存のプロセスを最大限に生かすことを前提に、規格対応への外部の知見、ノウハウ、対応実績、さらには関連ツールを活用することは、費用面、工数面でより効率的・効果的に改善を進めることができるアプローチになると思います。
新海 良一
株式会社日立ソリューションズ
モビリティソリューション本部 オートモティブソリューション部
主幹技師
日立ソリューションズ入社以来、UNIX OS、ミドルウェア(RPC、ネームサーバー)などの開発に従事。ミシガン大学コンピュータサイエンス&エンジニアニング学部での研究を経て、自社製品(インタラクティブホワイトボード)の開発およびSEを担当(内3年間、米国法人でのテクニカルマネージャー担当を含む)。現在は、Automotive SPICE® Principal assessorおよびCMMIリードアプレイザ、インストラクタ資格を活用した国内および海外向けコンサルティング/アセスメントサービスを展開中。
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自動車関連規格準拠支援ソリューション
OEM/Tier1 受注必須条件となることが多くなっているAutomotive SPICE®・機能安全規格準拠に対して、組織の体制・プロセス構築支援から、自己診断ツールでの開発環境支援まで、豊富な支援サービスを提供します。