SOA(Service Oriented Architecture)ソリューションの導入事例
株式会社ニッセン様トランクルームサービスにおけるWebサービス実証実験
ネットワーク&ソリューション情報誌 Pint 9号掲載
Interviewee :
通販事業部 情報システム部 システム統括担当チーム マネージャー 射鹿 良次 様
通販事業部 情報システム部 システム統括チーム シニアマネージャー 藤本 達夫 様
- 複数の企業に構築されたアプリケーションを、ビジネスに応じて連携できることを確認。
- アメリカで、実際の運用を目の当たりにし、早期の取り組みの必要性を実感。
- 社内外のサーバの連携により、受付からサービス依頼までを処理。
- 対応製品や、策定されている仕様、プロトコルを、開発時に有効に活用。
- お客様プロフィール
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複数の企業に構築されたアプリケーションを、ビジネスに応じて連携できることを確認。
アパレルや日用品などの通信販売事業を展開する株式会社ニッセン様は、ここ数年、SCMやCRMの構築などを通じて、より効率的なビジネスを追求し続けてきた。
その結果、2002年には過去最高益を達成するなど、「低コスト経営」を実現。さらに同社は、次のステップとして「事業拡大」をめざすために、1700万人の顧客データベースや海外からの商品調達力、物流システム・コールセンターをはじめとした通販インフラといった「経営資産の活用」をテーマに掲げた。
そして、その中で浮上してきたのが、BtoBを通じて、社内のさまざまな“機能”を、個別にサービスとして提供しようというビジネスだ。もちろん、具現化に際しては、“Webサービス技術”が不可欠であり、その有効性と可能性を探るために、今回、日立システム&サービスと共同で「実証実験」に取り組んだ。ここでは、具体的な内容について紹介したい。
アメリカで、実際の運用を目の当たりにし、早期の取り組みの必要性を実感。
「経営資産の活用とBtoBの推進というテーマが出たときに、まず最初に考えたのは、社内外のシステム連携の重要性でした。そんな中で、Webサービスを知り、さらにアメリカで、実際にそれを低コストで運用しているのを目の当たりにする中で、『すぐに取り組まなければならない』と感じたのが、実証実験を行なうきっかけでした」と話すのは、射鹿氏。実験対象としては、一昨年から試行を始めている“トランクルームサービス(図1)”が選ばれた。
これは、オフシーズンの衣料などを預かり、保管し、必要なときに配達するサービスで、同社と集配業者、倉庫業者(ニッセン)、信販業者の連携で行なわれる。今回は、これをWebサービスにより実現する実証実験を行い、技術の適用方法、既存システムの対応方法などを検討することになった。
その中で、特にポイントとしたのが、
- 機能をコンポーネント化する際の単位
- セキュリティ技術の適用
- トランザクション技術の適用
の3点。動作環境についても、互換性や接続性を検証するために「J2EE」、「.NET」の両方を採用した。
「特に、コンポーネント化の単位については、オブジェクトではなくサービスの単位という発想で、一つひとつが“機能体”として、独立して利用できるように切り分けることをテーマとしました」と射鹿氏は語る。
社内外のサーバの連携により、受付からサービス依頼までを処理。
それでは、実際のシステムの概要と適用技術について見てみよう。
図2にあるように、トランクルームサービスは、ニッセン側の基幹システム、受付サーバ、トランクルームサーバ、ゲートウェイサーバ、および集配業者、信販業者、倉庫業者(ニッセン)側サーバによって構成される。この中で、Webサービス技術により接続されるのは、受付サーバとトランクルームサーバ間とトランクルームサーバとゲートウェイサーバ、および各業者サーバ間である。
具体的な流れとしては、まず受付サーバに利用が申し込まれると、それがトランクルームサーバに通知される。トランクルームサーバは、ゲートウェイサーバに顧客情報などの確認を行なうが、その際、ゲートウェイサーバは基幹システムと連携してその要求に応える。
トランクルームサーバは確認後、各業者サーバにサービスの提供を依頼するというものだ。
さらに、各サーバには、次のような特徴も持たせた。
トランクルームサーバ
サービスを受け付けるWebアプリケーションやコールセンターなどの共通ミドルウェアとして利用できるようにする。
ゲートウェイサーバ
Webサービスのプロトコルを基幹システムのプロトコルに変換することで、基幹システムの機能をWebサービス技術で利用できるようにする。
各業者サーバ
インターネット利用により、接続のための調整を最小限にする。さらに、システムやソフトウェアの構成に依存せず、一貫したサービスを提供できるようにする。
対応製品や、策定されている仕様、プロトコルを、開発時に有効に活用。
その中で、課題となってくるのが、セキュリティの問題である。通常、Webサービスでは、SSLが適用できるとされているが、「利用環境が限定される」「中継サーバがあった場合、セキュリティが解除される」などの問題がある。そこで、標準化団体OASISによって提唱されているWS-Securityを採用。「.NET環境では、マイクロソフト社のWSE、J2EE環境では、IBM社のWSTKといったサポート製品・ツールがあったので、開発は比較的容易でした」と藤本氏は言う。
また、同システムでは、一連の処理の中で、各サーバを整合させるためにトランザクション処理が必要となる。ところが、自律して動作する複数のソフトウェアのリソースコントロールや、ロングトランザクションへの対応といった問題があった。そこで、既に仕様として提唱されているWS-Transaction、Business Transaction Protocolの適用と、独自の処理シーケンスにより対応を図った。
そして、2003年1月接続テストを終了。動作やレスポンスなど、満足のいく結果が得られた。
「今回の実証実験の最大の成果は、Webサービス技術により、複数の場所に構築されたアプリケーションをビジネスに応じて連携できることを、具体的な事例で確認できたことですね」と語るのは射鹿氏。既に、この成果を活かして、自社向けに開発した事務処理システムをWebサービス化し、販売代理店に活用してもらう計画が進んでいるほか、コールセンターが持つ機能や、宅配確認サービス、クレジット与信サービスといったものも、今後Webサービス化する予定だ。
「Webサービスは、実証段階を終え、いよいよ実際に活用していく段階に入ったと考えています。それだけに、少しでも先んじたい。新しいビジネスやサービスを起こすときの、それが鉄則ですから。」射鹿氏は、最後にそう結んでくれた。
株式会社ニッセン
本社: | 京都府南区吉祥院西ノ茶屋町79番地 |
---|---|
売上高: | 1,288億円(2002.12現在) |
従業員数: | 840名(2002.12現在) |
事業内容: | 通販事業、ユービスト事業、シェイブファンデ事業、優美苑事業 |
ネットワーク&ソリューション情報誌 Pint 9号掲載
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本事例の内容は公開当時のものです。
最終更新日:2011年11月29日