生産管理システム構築ソリューション TPiCSの導入事例
カンケンテクノ株式会社様カスタマイズ不要、中国語対応ソフト採用で台湾工場の開設にあわせた短期間での現地生産管理システム立ち上げに成功。
他の製造業に先駆け、韓国や台湾との競合が激化していた半導体製造業業界。メーカーの海外進出に応じて、設備関連企業もまた国際的な拠点展開を進め、海外企業からの受注も狙うようになった。それに伴いITソリューションに求めるニーズも高度化する。台湾工場において、短期間で生産管理システム立ち上げに成功したカンケンテクノの事例を紹介する。
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海外顧客に対応し、低コスト省プロセスの台湾現地生産を決断
高階英一氏
半導体業界では、プレイヤー同士の国境を問わない合従連衡・M&Aが進んでいる。半導体工場における排ガス処理など環境浄化設備を生産しているカンケンテクノ株式会社も、この影響を強く受けてきた。
顧客である国内メーカーの海外工場進出に対応して、アジアを中心に世界7ヵ所に海外事業拠点を開設、海外メーカーへの機器販売も強化してきた。海外で受注があった場合は、中国などアジア圏から安価な部品を調達し、国内工場に運びこんで組立て、完成品を輸出するというのがこれまでの流れだった。
しかしグローバル市場からの納期・品質・コスト面での要求はさらに厳しく、これに素早くきめ細かく応えるため、製造拠点自体の海外進出が不可欠になる。いわば海外受注への対応を“地産地消的”に効率化し、物流・製造コストの大幅な削減を果たそうというのだ。顧客に近い場所に製造拠点を設置することで、よりきめ細かな市場ニーズをつかむことができ、今後のビジネスチャンスの拡大につなげられるという狙いもあった。
その手始めとなったのが、世界最大のファウンドリ(半導体製造請負企業)である台湾TSMC社との取引だ。同社への納入実績は10年前からあり、3年前からはTSMC社台南工場に隣接して現地法人によるメンテナンス拠点を置いていたが、2011年初夏をめどにカンケンテクノとしては初の海外製造拠点を開くことになったのだ。熱源としてヒーターを用いた高効率除害装置「KT1000」シリーズが海外で初めて生産されることになった。
部品表をベースにした生産管理の考え方を台湾で導入
川上真吾氏
工場開設にあたって真っ先に求められるITソリューションは、生産管理システムだ。
環境浄化装置は顧客工場ごとに仕様が異なることが多く、個別一品受注生産がほとんどだ。しかし、個別受注だけに偏っていたのでは、事業的にもバランスがよくない。そこで、新設の台湾工場では個別受注品ではなく、標準品・量産品を中心とした低コストな製造ラインを立ち上げることにした。高度な受注生産対応を中心とする国内工場と、標準品の海外工場というように2本立てのラインで、社内国際分業体制を構築し、全体の収益向上を図ろうというのである。
そこで求められたのが、標準品向け生産管理システムの、安価かつ迅速な導入だった。
中堅・中小製造業向けの生産管理分野で定評のあるパッケージソフトとして、株式会社ティーピクス研究所の『TPiCS-X』がある。カスタマイズ不要、英語・中国語への対応などが特長で、ベーシックシステムは105万円からと、他のソフトに比べてかなり安価だ。日立ソリューションズは、TPiCSのシステム導入、構築、ユーザー教育、保守サポートなどの一貫したサービスを提供しており、国内での導入企業150社以上とトップクラスのセールス実績を誇っている。
「現在、国内工場では別の生産管理システムを導入していますが、これは個別受注生産対応なので、そのままでは台湾では使いにくい。標準品の生産管理のためには、やはりBOM(部品表)をベースにしたMRP(資材所要量計画)の考え方を導入すべきで、それができるパッケージを探していました」
と言うのは、取締役管理本部長の高階英一氏だ。
ティーピクス研究所からTPiCS導入に詳しいベンダーとして日立ソリューションズを紹介され、仕様打合わせが始まった。
「パッケージがいかに安価でノンカスタマイズを謳っていても、導入ベンダーの技術力やサポート力は不可欠。特に今回は台湾工場での導入ということになるので、その面倒を最後までみてくれるかどうかが、ベンダー選定の最大のポイントになった」と、高階氏は指摘する。
日立ソリューションズと二人三脚で進んだBOM整備
福田 直人氏
MRPタイプの生産管理ソフトを使う場合、BOMの整備は重要だ。実はこの部分で苦労があった。
「個別受注製品は、細かい部品管理をしなくても、現場の技術者が鋼材を上手に曲げて組み立ててしまうというような、一種の職人の勘で生産が行われています。ところが標準品ではそうはいかない。設計BOMと手配BOMのギャップを埋め、それらを統合化するためのBOM構成作業が実は一番大変でした」と振り返るのは、PS事業部新潟事業所の川上真吾氏だ。
初めての海外赴任で台湾工場に派遣され、日立ソリューションズのSEや台湾人技術者と共に、いわばTPiCS導入の“地ならし”を行ったのだ。
「日本の工場の技術者と同じ職能を、台湾人技術者にそのまま期待するわけにはいかない。PCの管理などベーシックなところから再教育する必要がありました」
台湾のオペレーターを日本に呼び、日立ソリューションズが開催するTPiCS研修会にも参加させた。
なによりも大変だったのは生産マスタの整備徹底だった。国内であれば設計・製造・外注先といったチェーンの中である程度「あ・うん」の呼吸で処理できる問題が、海外生産となると曖昧さが許されないのだ。日立ソリューションズは、膨大な部品表整備と業務ルールの確立に取り組む川上氏らを支援しながら、現地のシステム立ち上げに奮闘した。
Excelで作った7,000点に及ぶマスタをTPiCSに流し込めるようになるまで、3回の台湾出張が必要だったという。
「私たちだけではもっと時間がかかったかもしれない。TPiCSの豊かなノウハウをもつ日立ソリューションズのSEがそばについてくれたおかげで、なんとか工場稼働に間に合わせることができました」と言うのは、川上氏と共に台湾工場立ち上げにかかわった経理部の福田直人氏だ。
2011年6月、顧客や現地政府関係者を招いた盛大な新工場開所式が開催された。TPiCSによる効率的な生産管理の様子は、来賓にもお披露目された。
海外での本格的な生産は始まったばかり。部品はまだ鋼材など日本からの輸出に頼る部分もあるが、今後は台湾および中国本土での部品調達率を高めていく。日本発ではありながらも、現地の企業と一緒に肩を組むアジア企業として展開が期待される。
「設計・調達BOMの統合化が進んだので、今後は補修パーツのBOM管理にも乗り出したい。当初は1機種だけの生産ですが、今後は生産機種を増やしていきます。さらにシンガポールや大陸内での生産も視野に入れています。台湾工場で培った設計・製造の標準化は、いずれは国内工場の業務効率化へとフィードバックされていくことになるでしょう」
と、高階氏は確かな手応えを感じている様子だ。
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本事例の内容は2013年2月14日公開当時のものです。
最終更新日:2013年2月14日