安全保障貿易管理ソリューションの導入事例
株式会社ソシオネクスト様LSIの輸出に欠かせない安全保障貿易管理を、定評あるパッケージベースに短期開発
大規模集積回路(LSI)の設計・開発・販売に携わるソシオネクストにとって、法令で定められた安全保障貿易管理を実施することは事業の大前提です。この管理業務の正確さと効率を両立させるために、同社は「安全保障貿易管理ソリューション」をベースにした輸出管理システムを新たに導入。受注から出荷までのサプライチェーン管理(SCM)との連携も強化されました。
この事例に関するソリューション・商品
従来からの課題
リスト規制の対象製品が多く、手作業での輸出管理が困難
畑 秀明 氏
商品や技術を輸出する企業に欠かせない業務の一つが、国際的な安全と平和を維持するための「安全保障貿易管理」です。わが国では外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づくリスト規制とキャッチオール規制が実施されており、輸出件数が多い企業はシステム化によって業務の精緻化と効率化に努めています。
ファブレス半導体メーカーのソシオネクストも、輸出件数が多い企業の一つです。
「当社は2015年3月に営業を開始したばかりの企業。数多くの製品を輸出するには、サプライチェーン管理(SCM)と安全保障貿易管理のための自社システムを用意する必要がありました」(畑氏)
同社のコアビジネスは、画像処理などに使われるシステムLSIの設計・開発・販売になります。また、お客さまとなる企業のご要求、仕様に基づいて開発しているカスタムLSIの場合には、リスト規制の対象品(該当)と判定せざるを得ないケースも多く、輸出に当たっては慎重に審査する必要がありました。
「輸出対象の品目は、半年で2,500以上ありました。これだけの品目の中から数十品目を毎日輸出していますので、安全保障貿易管理(輸出管理)の業務を手作業で漏れなく行うのは事実上不可能です」(畑氏)
導入の経緯
パッケージを基に機能を追加し、輸出管理システムを短期開発
久枝 健弘 氏
では、輸出管理のシステムをどのような方法で構築するか―。
それを考えるうえでの前提事項となっていたのが、2017年という期限でした。会社設立後しばらくは、輸出業務委託先の基幹系システムを利用していましたが、SCMも輸出管理も、2017年初めまでに自前のシステムで処理することが求められていたのです。
「ビジネス成長のためには、当社の事業に最適化された輸出管理システムをいち早く構築する必要があり、2017年1月稼働が目標スケジュールでした」(畑氏)
時間的制約も考慮して畑氏が選んだのは、輸出管理機能の充実と稼働実績で定評がある日立ソリューションズの「安全保障貿易管理ソリューション」を導入し、SCMシステムと連携させるという方策でした。
「2015年の11月に日立ソリューションズから製品紹介とデモを行っていただきましたが、懸念取引先チェックの仕組みなどよく考えられた機能が備わっていることが魅力的でした。また、当社のめざす輸出管理の姿を実現するための方法についても具体的に説明してくれました。我々のやりたいことができると確信し、日立ソリューションズ製品の採用を決定しました」(畑氏)
ソシオネクストが安全保障貿易管理ソリューションの導入を正式に決定したのは、2016年1月。
すでに開発が始まっていたSCMシステムと連携させるため、輸出管理システムに盛り込む機能の検討が始まりました。
導入時の取り組み
受注から出荷までの全プロセスを、SCMシステムとの連携でカバー
小川 修治 氏
輸出管理システムを構築するに当たって技術的なポイントの一つとなったのは、SCMシステムと連携した管理をどうやって実現するかということでした。
「当社が求めていたのは、LSI品目のオーダーごとに『輸出できるか、できないか』を判定できる輸出管理。そこで、SCMシステムから輸出管理システムに受注データを渡し、輸出管理システムでリスト規制とキャッチオール規制の判定処理をしたうえで、輸出OK/NGの結果をSCMシステムに返す仕組みとしました」(畑氏)
さらに、輸出管理業務の効率を高めるために機能をいくつか追加しました。
●過去の取引審査結果を自動適用(ただし有効期限付き)
●類似する品目を一つの該非判定結果にまとめる機能
●該非判定証明書の発行を支援する機能(自動採番など)
こうして、SCMシステムと輸出管理システムを連携させ、受注から出荷までのプロセスを一気通貫でカバーし、オーダーごとのお取引先様確認、該非判定、取引審査の未了分や更新分は、輸出を停止する仕組みを実現させました。
安全保障貿易管理ソリューションの検証環境がソシオネクストのデータセンター内に出来上がったのは、2016年10月のことです。システムテスト完了後の2016年12月中旬には、輸出管理システムを単体で使用できるようになりました。SCMシステムとの連携も、2017年1月初めにスタートしています。
「フル稼働を開始した当初に数件のトラブルが発生しましたが、日立ソリューションズのエンジニアの方に当社内で作業していただいた結果、輸出業務をほぼ止めることなく、その日のうちに解決することができました」(久枝氏)
導入の効果
審査の正確性と効率性が高まり、より精緻なコンプライアンス体制へ
輸出管理システムが稼働を開始した成果として、畑氏は、正確な審査を効率的に行えるようになったことを挙げます。
「2時間ごとのSCMとのデータ連携に要する時間は、3分から5分程度。オーダーごとに過去の取引審査から変更があれば、新たな取引審査が自動生成されるようになった結果、安全保障を取り巻く環境が悪化している状況下で本当にやらなければならないところに注力できるようになりました。また、過去の審査結果を自動適用することによって要審査件数はオーダー明細数の約1/4に減っており、類似品処理や該非判定証明書の自動作成によっても業務の効率はアップしました。また、該当品だけでなく、非ホワイト国向け非該当品も審査票を作成し、税関での審査もスムーズになっています」(畑氏)
「輸出管理に関わるすべての機能がこのシステムに集約されている点が使いやすいと感じています。帳票を基に審査していた頃と違って、過去の履歴やエビデンスをスピーディーに検索できるのがありがたいところです。リスト規制の該非判定だけでなく、お取引先様の情報や取引審査の結果も同じ画面にありますから、作業の効率も上がっています」(小川氏)
ソシオネクストの経営層も、新しい輸出管理システムによって、輸出業務に関するコンプライアンス体制が維持されたことを評価しています。
「過去の取引履歴がシステムに蓄積されていますから、新たな商談が発生しても、既に判明している“懸念”の再確認は容易です。また、これらの履歴データは、経済産業省様や税関様からの問い合わせに素早く答えるためにも役立つと思います」(畑氏)
今後の展望
「該非判定の国際化」を実現し、NACCS連携で自動通関もめざす
ソシオネクストでは、「安全保障貿易管理ソリューション」を導入する際、経済産業省が進めている「該非判定の国際化」に対応し、該非判定時、EUの輸出規制分類番号(EU-ECCN)を入力する機能も実装しました。同時にHSコードを入力する欄も用意し、梱包業務を委託する物流会社のシステムに、インボイスへ印刷するデータを送り込む仕組みをSCMシステムとの連携で実現しています。
これら連携を確認し、次の段階として「SCM+輸出管理システム」のシステム連携の範囲を通関業務の自動化に広げることも検討しています。
「日立ソリューションズのSEの方は安全保障貿易管理の実務に精通しており、輸出管理の用語や背景も正確に理解していました。当社の要件を正確かつ的確にくみ取っていただけましたし、安全保障貿易管理ソリューションの先行事例に基づくさまざまな提案も数多くいただきました。まさに、かゆいところに手が届くような対応をしていただけたと感謝しています」(畑氏)
日立ソリューションズは、今後も貿易業務の正確さ、効率性を高めるソリューションの開発を進め、安全保障の一助を担っていきます。
株式会社ソシオネクスト
ソシオネクストは、2015年3月に営業開始したファブレスの半導体メーカーです。社名の Socionextは、会社が体現しようとしているビジョンや価値観の要素を組み合わせて創作されました。中でも先頭のSocはコアビジネスとなる「SoC(System-on-Chip)」を表しています。
本社所在地 | 神奈川県横浜市港北区新横浜2丁目10番23(野村不動産新横浜ビル) | |
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事業開始 | 2015年3月1日 | |
従業員数 | 約2,800人 | |
事業内容 | システムオンチップ(SoC)などの大規模集積回路(LSI)およびそれを核とするソリューション/サービスの設計、開発および販売 | |
URL | https://www.socionext.com/jp/ |
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本事例の内容は2018年1月31日公開当時のものです。
最終更新日:2018年1月31日