スマートマニファクチャリングソリューション
ITを活用した安全管理で労働災害ゼロをめざす
~AI・IoTが実用化されている今だからこそできる安全対策~
スマートデバイスを活用した技術継承で事故を減らす
熟練技術者の高齢化やシステムの複雑化・多様化に伴うヒューマンエラーの誘発などにより、依然フィールド業務での事故は多発している。スマートグラスやスマートフォンなどのスマートデバイスを活用し、テキストや音声だけでなく映像を使ったコミュニケーション活性化、およびリアルタイムな指示ができれば事故は減少すると考えている。スマートデバイスを活用したヒューマンエラーの防止や熟練技術者の技術継承を実現する仕組みをご紹介する。
当社の「フィールド業務情報共有システム」は安全面での適用シーンが大きく2つあると考えている。1つ目の適用シーンは定期点検などあらかじめ実施する手順が決められた作業だ。点検作業と言えど作業手順を飛ばしたり間違えたりすれば重大な事故につながりかねない。特に経験の浅い新人や外国人労働者は勘違いから手順を飛ばしたり、作業手順書に記載された専門用語が理解できなくて必要以上に時間がかかってしまうこともあるだろう。作業の手順をあらかじめシステムに登録しておけば、作業者はスマートフォンで手順を確認しながら点検作業を実施できる。手順完了のボタンを押さないと次の手順が表示されない仕組みになっているので、誤って手順を飛ばすことはなくなる。
また、手順内容をテキストでは理解できない場合もあるのでベテランの作業を撮影した動画コンテンツを登録しておけば、不慣れな作業者でもその動画を手本として正確な作業ができる。点検結果の入力方法も選択可能だ。現場作業員にとって手袋をしたままの状態で文字を入力するのは困難な場合もあるので、テキスト入力以外にもチェックボックス、写真撮影、音声入力など作業員が効率よく入力できる方法をあらかじめ登録できる。作業終了後には事務所に戻り、自分が点検入力した内容をパソコンで確認したうえで報告書を自動で作成する便利な機能も備わっており、お客さまからもご好評いただいている。
2つ目の適用シーンは故障などのトラブル対応だ。現場の作業員がスマートグラスをかけていれば、作業者と同じ目線の現場画像を遠隔地でもリアルタイムに共有することができる。事務所にいる管理者は現場の映像を確認しながらテキストで指示を出したり、スタンプや自由描写で確認すべき該当箇所を的確に伝えることができる。現場の作業者はスマートグラスのレンズに透過性の画面が見えるので、現場と画面を重ね合わせて見ることで間違うことなく安心して作業を進められる。管理者のパソコンの画面をそのままスマートグラスに投影することも可能なのでマニュアルを表示したり、CAD図面を表示したり利用方法はさまざまだ。管理者は同時に3台のスマートグラスを管理できるので、それぞれ別々の場所にいる3人の作業者に対して遠隔支援すれば、熟練者不足で悩む現場課題の解決策の一つになると考える。
旧バージョンでは作業者主導でできるコミュニケーションは音声のみだが、新バージョンでは現場の“いま” を現場データ(写真、動画、手書き、音声、テキストコメント)として“手軽に”、“素早く”、管理者側に伝えることができるようになった。使用するデバイスはスマートグラスには限らずスマートフォンやタブレットでも対応可能だが、現場作業員は手袋をしていると操作しにくい。スマートグラスのメリットは何と言っても両手が使えること。最近ではデバイスメーカ各社が軽量・高機能な機種を発売している。ヘルメットや保護メガネを装着している状態でも違和感なく利用できる機種も発売されており、実際に作業現場で使われることも増えてきている。
おわりに
今回はIT活用による安全衛生対策をご紹介してきたが、現時点でITによる対策をしている企業はまだ少ないと感じる。労働災害防止対策を検討する際に大切なのは職場にある危険性の特定・リスクの見積もり・優先度設定を行い、その結果に基づいて適切な対策を検討する、いわゆるリスクアセスメントが重要となる。その適切な対策検討の中にITによる対策も含めて検討していただきたい。今回ご紹介したITソリューションを適用した際に労働災害が減少することはもちろんだが、副次的効果も期待できると考えている。例えば、作業員の位置情報をリアルタイムに検知できる仕組みを導入することで監視業務の負担軽減になり、本来の生産業務に専念し生産性を向上できる。また、安全に働ける環境があることで作業員のモチベーション向上や優秀な人材確保も期待できる。当社としてはITによる対策を検討しているお客さまと協同で新たな製品開発にも積極的に取り組んでいる。例えば腕時計型のウェアラブルデバイスの活用もその一つだ。体温、血圧、心拍数などの健康状態を記録するだけでなく体の動きも認識できるのでその活用方法は幅広い。この記事ではご紹介できなかったが、ヒヤリハットの事例や労働災害情報の登録から検索・閲覧など安全衛生管理業務を支援する情報共有基盤も提供可能だ。企業内はもちろん、企業間でも成功事例を共有しながら全国の労働災害が減少傾向に向かうことを願う。
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