自動運転
コネクテッド
組み込み開発
コネクテッドカーの未来、スマートシティで「移動体」が担う役目とは?
2022年6月28日
通信機能を備えたコネクテッドカーの普及が現在進行形で加速している。そう遠くない将来、コネクテッドカーはスタンダードな存在となり、OTAによるソフトウェアアップデートをはじめ、スマートフォン連携や路車間通信(V2I)など、あらゆるサービスが実装されることになりそうだ。
IoT(Internet of Things)機器と化すコネクテッドカーに期待される各種機能は、スマートシティとの相性がすこぶる高い。ちなみに日本国内ではトヨタが技術実証のためのスマートシティとして「Woven City」(ウーブン・シティ)を建設中で、将来的にWoven Cityではコネクテッドカー向けのさまざまな先進機能が試されるはずだ。
この記事では、コネクテッドカーとスマートシティの関係について考察していく。
自動運転専門メディア「自動運転ラボ」寄稿
※本記事は「自動運転ラボ」の見解に基づき執筆されています。
そもそも「コネクテッドカー」とは?
一般的に、コネクテッドカーは、通信機能を搭載することでICT端末・機器としての機能を有する自動車を指す。あらゆるモノやサービスがインターネットを介してつながるIoTの輪に自動車も加わり、さまざまな情報を送受信しながら走行する。
既に、車両の走行実績をもとに保険料金を算定するテレマティクス保険や緊急通報システム、スマートフォンと連携して車両の状態確認や一部操作を行うサービスなどが実用化されている。
今後は、信号機など道路周辺の交通インフラやクラウドなどと常時通信し、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転システムなどに有用な情報を送受信する機能や、交通渋滞の緩和、プローブ情報のビッグデータ化による各種サービスの実現など、コネクテッド技術が多方面で活用される見込みだ。
一方、スマートシティは、ICTやIoT技術を駆使して都市や地域が抱える課題の解決を図る取り組みを指す。スマートフォンやまちの中に設置されたセンサーなどからさまざまなデータを収集し、都市インフラの最適化や企業活動、住民生活などの改善・向上を図るものだ。
道路交通分野では、位置情報や交通観測データを利用し、移動や輸送の最適化を図る取り組みや、自動運転やMaaS(Mobility as a Service)の活用などにより、都市部や観光地における混雑緩和や地方における交通空白地帯の解消を図る取り組みなどが進められている。
通信インフラがコネクテッドカーの能力を最大化
コネクテッドカーとスマートシティに共通する要素として、「通信基盤」と「データ基盤」が挙げられる。スマートシティはエリア内に設置されたカメラなどのセンサーや、道路を走行する自動車などから随時データを収集・発信する通信インフラを備える場合が多い。
特に、道路交通情報を活用するケースは多い。道路周辺に設置したセンサーで交通流を計測し、リアルタイムの渋滞情報や最適ルートの生成に生かしたり、商業施設の集客に生かしたりすることができる。
また、V2Iシステムを設置し、エリア内を走行するモビリティに信号情報や道路交通情報を送信したり、各モビリティから情報を収集したりすることも可能だ。
さらには、さまざまな移動体とデータの送受信を行うため、5Gをはじめとしたモバイル通信網が整備されているケースも多い。こうした通信基盤は、そのままコネクテッドカー向けの通信インフラとなる。
現在実用化されている多くのコネクテッドカーは、車載通信機によって自動車メーカーなど所定のサーバーと通信するシステムが主体となっているが、こうした通信インフラを有効活用することで、交通ビッグデータの生成や利活用の道が開けるとともに、コネクテッドカーの可能性も大きく広がるのだ。
この通信インフラの活用は、自家用車に限ったものではない。既存のバスやタクシーといった公共交通や物流トラックをはじめ、実証が進む自動走行ロボットや自動運転シャトルなどで本領を発揮する。
また、生成されたデータを最大限生かすためのデータプラットフォームも必須となる。データをただ集めるだけではなく、各種データをどのように連携・連動・解析して有効なものとしていくかが重要となる。
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スマートシティでコネクテッドカーはどう活躍?
交差点情報や渋滞情報を先取りで受信
コネクテッド化された自家用車においては、交通インフラから交差点情報や渋滞情報、事故情報などを先取りで受信し、安全かつ快適な走行に役立てるサービスが第一に考えられる。
前方の赤信号情報をいち早く知らせることで緩やかな減速を促し、事故防止や渋滞防止に役立てたり、渋滞や事故情報をリアルタイムで入手することで柔軟に走行ルートを変えたりすることができる。
ビッグデータ化する情報を走行しながら収集
また、スマートシティならではのポイントとしては、道路上を走行する各モビリティからいかに有用なデータを収集し、ビッグデータ化するかが問われる。
自家用車のADAS用カメラやドライブレコーダーの映像などをクラウドに収集・解析し、障害物や陥没といった道路面の異常を把握したり、道路周辺店舗の開店情報やガソリン価格情報などを得たりするシステムの実用化も可能だ。
各種データの収集・利活用においては個人情報やプライバシーに配慮する必要があるが、人の移動に関するデータやエリアに関するデータは貴重な資産となり、有効活用することで交通安全や地域活性化、利便性の向上などさまざまな面に役立てることができる。
スマートシティで配送ロボットはどう活躍?
実用化に向け実証が加速する自動走行ロボットも、スマートシティで本領を発揮する。ラストワンマイル・宅配を担う配送ロボットは、主に歩道を自律走行して配達先へ向かうが、一般的には遠隔監視・操作システムを備え、常時通信を行いながらタスクを実行する。
ベースとなる高精度3次元地図とカメラやLiDARなどのセンサー情報を照合し続けることで正確な走行を実現するほか、地図上の配送先データをもとに最適な走行ルートを生成する。
スマートシティにおいては、コネクテッドカー同様、ロボットもV2Iや車車間通信(V2V)などを行う。例えば交差点を渡る際、周囲の車両にV2Vで直接、あるいはV2Iを介してロボットの接近を知らせることなどができる。
また、低速で歩道を走行するため、歩道上の障害物や不審物の発見、路面店の情報などを得やすく、さまざまな情報を収集することができそうだ。
スマートシティで自動運転シャトルはどう活躍?
スマートシティでは、オンデマンド系の移動サービスが花を咲かせそうだ。例えば、需要に応じて柔軟な運行を実現するオンデマンド乗り合いサービスだ。乗り合い系の移動サービスは、複数の乗車希望者に対し、ピックアップする順番やピックアップポイントを指定し、最適ルートで目的地に向かうことが求められる。場合によっては、移動開始後に新たな乗車希望者が出てくる可能性もあるだろう。
こうした際、収集したデータを最大限活用し、過去の乗車リクエストの場所や時間帯、道路の混雑状況などを念頭にさまざまなケースを想定しつつ最適ルートを導き出す必要がある。また、スマートシティであれば、ピックアップポイントに並ぶだけで自動的に乗車依頼が発され、到着予定時間などもその都度提示できるインフラが整っている。
こうしたサービスは、自動運転シャトルが得意とするものだ。コネクテッド化が前提となる自動運転モビリティは、無人化技術と各種データを最大限利活用し、効率的かつ効果的な移動サービスを実現する。
重要性増す通信インフラやデータプラットフォーム
現在主流のコネクテッドサービスはオーナー個人や個々の自動車向けのサービスにとどまるが、今後は、道路上を走行するモビリティ総体としてデータを収集・解析し、さまざまなサービスに役立てていくことになる。データの活用主体・枠組みが、パーソナルなものからパブリックなものへ、ソサエティ全体へと広がるイメージだ。
こうした際に重要となるのが、スマートシティのような通信・データ基盤だ。未来のモビリティのパフォーマンスを最大化し、新たな価値を創出していくには、通信インフラやデータプラットフォームが従来以上に欠かせない存在となるのだ。
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