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第7回 AIによる業務サポートが生産性の向上をもたらす
第7回 AIによる業務サポートが生産性の向上をもたらす

AIとはどういうものか
ワークスタイル変革を実施するうえで、RPAと並び注目されているのがAI(人工知能)の活用です。AIを適材適所に導入することで、業務の生産性を高めたり、社員の柔軟な働き方を実現したりすることが可能です。ここではAIの基本、実現できる機能、企業での導入事例などを見ながら、AIの効果について解説していきます。まずはAIについておさらいしておきましょう。一般的にAI(Artificial Intelligence)は、人間の言葉(自然言語)を理解し、人間の脳が行う知的作業をコンピューターで行えるようにするプログラムのことだと考えられています。実はAIの定義自体がまだ定まっていないため、「AIとは何か」「AIがあれば何ができるか」についても現時点ではっきり特定することはできないのですが、世間一般では次のような作業が可能になるといわれ、実際に活用もされています。
- 質問への回答を提示する
- データ分析や予兆検知を行う
- バックオフィス業務を代行する
ビジネスからいったん離れて考えてみましょう。たとえばゲームでは、プレイヤーの発言や行動に対して、登場するキャラクターが言葉を返したり、何らかの振る舞いをしたりします。これらのプログラムにもAIの技術が活用されています。近年話題になった事例としては、Googleが開発した囲碁AI「AlphaGo」が挙げられます。2016年3月、当時最強といわれた韓国のプロ囲碁棋士、イ・セドル氏を「AlphaGo」が破りました。ゲームの世界ではAIが急速に発展していることが伺えます。
機械学習とディープラーニング
現在開発されているさまざまなAI技術を支えているのが「機械学習」と「ディープラーニング(深層学習)」です。機械学習は、AIにデータやパターンを学習させたうえで、人間が判断材料を与え、それをキーとしてAIが言葉や現象を区別する力を身につけさせる方法です。たとえば「色」をキーにすると、AIは「青い」「赤い」などそれまでに学習した経験から判断し、並べられた画像の中から青いものや赤いものを選び出します。この機械学習を発展させたディープラーニングは、人間のニューラルネットワーク(神経回路)を模した仕組みを作り、判断材料自体をAIに考えさせて、AIが自ら学習を進めていく方法です。たとえば「色」という判断材料を与えなくても、「青い箱」と「赤いボール」の違いをAI自身が判断し(判断材料をAI自身が考え)、そこから一定の結論を導き出します。現在、ディープラーニングが発達し、AIの学習能力とそれに基づく理解・判断能力は飛躍的に高まっているといわれています。
AIでワークスタイルが変わる
AIはゲームだけでなく、ビジネスの世界でもすでにさまざまな業務で活用されています。ある企業では、コールセンタースタッフの対応業務を減らすため、WebサイトのQ&Aコーナーに組み込むAI対話型エージェントを開発、すでに多くの企業で採用されています。このシステムは、ユーザーがQ&Aコーナーに書き込んだ自然言語の質問をAIが理解し、質問に応答するエンジンと対応させることで、AIエージェントのキャラクターが質問に答えてくれます。コールセンターに電話をかける以前の段階で一定程度のユーザーの疑問が解消されるため、電話本数を減らすことができ、必然的にスタッフの対応業務も減少します。
自然言語処理の研究を進めるある企業は、ディープラーニング技術を活用し、総務人事のもとに寄せられる社員からの定型的な質問にAIで対応するソリューションを開発しました。社内での総務人事への質問は給与や経費、福利厚生、休日取得などに関するものがほとんどで、それに対する回答も定型的であることが多いため、質問対応をAIに任せることで総務人事の定型業務を削減するメリットが得られます。
また、ある銀行では、顧客情報の膨大なデータをAIを使って分析することで、その顧客に適した金融商品を提案する実証実験を終えました。それまで人力で数カ月かかっていたデータ分析がわずか1日で済み、同行の試算では生産性が40倍向上したといいます。問題となる提案の精度も、従来の窓口対応と同等あるいはそれ以上のレベルを実現できているため、同行はマーケティングなどの分析業務で実用化を開始しています。
AIにできること・できないこと
AIと聞くとまだまだ遠い世界のできごとのように思うかもしれません。しかし上で見たように多くの企業ではAIを活用していますし、ビジネス上のみならず日常生活においてもすでにお世話になっています。最近のスマートフォンは、Googleの「Googleアシスタント」、iPhoneの「Siri」など、音声の問いかけを理解して対応するAIアシスタントを多くの機種が搭載しています。米国の市場分析会社のレポートによると、2019年にスマートフォンの半数以上、2023年には90%がAI音声アシスタントを装備するようになると予測されています。昨今はAIエンジンを搭載したスマートスピーカーも人気商品となっており、日常生活でのAIの浸透はさらに進んでいくことでしょう。
AIアシスタントは、音声によるものだけとは限りません。文字を入力することで情報の検索を行えたり、質問に答えたり、あるいはオフィス業務をサポートしてくれたりするAIアシスタントもあります。音声によるアシスタントは言語認識の点でまだまだ未成熟の部分がありますが、文字入力なら誤解なく認識し、的確な反応を示してくれる可能性が高まります。スマートフォンにAIアシスタントを導入しておけば、たとえば外出中に取引先情報などを手軽に調べられるようになるだけでなく、会社で利用するWebアプリケーションやRPAといったさまざまなシステムと連携して、バックオフィス業務を代行させることも可能になります。オフィスにいなくても仕事ができるようになるため、柔軟な働き方を実現できるでしょう。一方、現状のAIはまだまだ発展途上であり、基本的にデータに基づいた作業しかこなせません。たとえば「赤い帽子」は判断できても、「かわいい帽子」を判断することはできないのです。文章やデザインの優劣、クリエイティブな製品の企画、数字に表れない社員の働きの評価など、人間が感性で行う作業には対応できないので、AIの得意・不得意を見極めることが大切です。
まとめ
業務にAIを導入することで、ワークスタイルを大きく変えることが可能になります。スマートフォンの音声アシスタントを使えば外出先でも会社のシステムを利用した業務を行えますから、これまで以上にテレワークを浸透させられます。また、AIによるシステムは様々な業務を自動化できるため、社員は空いた時間を生産性が高い別の業務に充てることができます。AIが効果を挙げられる分野を見極め、生産性向上やワークスタイル変革に役立つと判断できるところに導入していく心構えが必要です。