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第9回 タレントマネジメントで成果を上げるチームづくり
第9回 タレントマネジメントで成果を上げるチームづくり

人財管理の意義とは
現在、働き方改革によって多様な働き方が推奨されている一方、ダイバーシティなどの浸透により多様な人材の有効活用が企業には求められています。ワークスタイル変革の視点からも、従業員個人個人の特性に注視することが必要になります。 そこで重要性を増してきているのが、人材の管理です。職場で働く多種多様な個性を持つ従業員の強みを把握し、顕在的・潜在的を問わず組織のパフォーマンスを引き出すことができれば、企業の成長が可能になります。企業としてはそのためのサポートを、組織的に、かつ積極的に進めていくことが求められているといえます。
とはいえ、スキル、キャリア、あるいは性格や趣味嗜好など多彩な個性を持つ従業員をまとめ上げ、組織として成果を出すことは、決して簡単ではありません。では、効果的な人材管理を実現するために、企業の視点からはどのように臨むのが理想といえるでしょうか。 従来であれば、まず何より組織の業務を遂行するという視点から従業員を管理することが、企業の人材管理の柱といえるポイントでした。この場合、従業員それぞれの個性はいわば二の次で、あくまでも「業務」という視点が中心にあり、人材管理はそこからトップダウンで行われるものでした。残業の強制など、押し付けに近い業務スタイルも当たり前のものであったといえます。 ところが現在は、従業員それぞれの個性を起点として、人材を適材適所に配置することで、各プレイヤーのポジティブな関わりによって組織のパフォーマンスを上げていくという、ボトムアップの逆転の発想が必要になっています。
人財データの分析
では、従業員個人個人のパーソナリティは、どのようにしてつかめばいいのでしょうか。これまでも、上司が部下を観察し、得意な業務やパーソナリティを推測したうえで仕事を依頼するということはあったかもしれません。ただ、この方法では、概して部下の特性を定性的な観点から見つけ出そうとする傾向が強かったように思われます。 極端な言い方をすれば、それはあくまでも上司の“勘”を頼りにしたものであって、上司それぞれの恣意的な観察と判断に基づいており、上司のキャラクターによっても異なる見解にたどり着いてしまっていたことでしょう。
上司が熱意あふれるアグレッシブなタイプであれば、同様に積極的で明るいタイプの部下を重用し、あるいは部下にもその価値観を押し付け、仕事の性質に関わらず「君ならできる」といういわば根拠のない仕事の頼み方がまかり通っていたともいえます。 すると、たとえば地道な知的追求を得意とする部下に対して「当たって砕けろ」的な営業の仕事を与えることで、結果的にその部下のストロングポイントをまったく活かしきれず、業務の面でも大きな成果を上げられない、といった事態が発生していました。 この点は、考え方を改めたほうがいいでしょう。現在重視されているのは、上司の“勘”やキャラクターに依存した主観的な判断ではなく、また「根性」や「気合」「残業も当たり前」といったスタイルの要求でもありません。データから個人のスキルやキャリア、特性などを“見える化”し、一人ひとりの特性が業務にマッチしているか分析して、管理者は、その分析結果を参考にマネジメントに活用することが、組織を活性化させるために必要です。
人財の管理と分析によるタレントマネジメントの実践
データを基にして人材の採用や登用、業務の割り振り、従業員それぞれの特性に合った育成・研修などを行う方法に「タレントマネジメント」があります。タレントマネジメントとは、簡単にいえば従業員それぞれの持ち味を最大限に活かして、企業の業績を上げるために行う取り組みのことです。 すべての人材が業務において同様のスキルや資質を持っているわけではありません。もちろんある業務に対してその業務をスムーズに進められるスキルを持っていない従業員も、経験を積むことによって仕事に慣れ、一定の成果を残すことは十分に考えられます。上にも書いたように、むしろこれまでの日本企業はそうした方針で人材の登用や育成を行ってきた面があります。 ただ、その場合、仕事を与えられる側の人材のスキルを活かせず、あるいはモチベーションが上がらずに、期待したような成果を上げられないケースも多かったことでしょう。挙げ句の果てに、自分に向かない仕事で悩み、ストレスが蓄積されて健康を害する事態に発展してしまったケースもあったと思われます。
それならば、企業が達成したい目標や注力したい業務の遂行にふさわしい人材を選び出してチームをつくる、あるいは業務遂行に向けた育成を行うという方針を取ったほうが、企業全体から見てもはるかに有意義であると思われます。人手不足で少ない人材を効率的に活用しなければならない時代だからこそ、この視点に基づく人材管理の手法が有効です。 そこで、各従業員のスキル、キャリア、これまでの仕事の成果、その他の情報をデータとして蓄積し、そのデータをAIなどを活用して分析することで、各人材の特性を定量的に把握します。そこから各従業員が組織のパフォーマンス向上や企業の目標達成に貢献できる要因を把握し、人事戦略の策定に活かしていくことが求められます。 これにより、プロジェクトの成功に最も貢献できる人材の配置はもちろんのこと、特定のスキルに関する後継者の養成や、心身の健康不調による休職者・退職者の発生抑止にも役立てられます。また、個々の業務に関する進捗状況を把握することで、各従業員の働き方を導き出し、柔軟なワークスタイルの実現や、その従業員にとって最も有効な人材開発のサポートにもなるでしょう。
まとめ
客観的なデータを基にした人材管理は、従業員それぞれの特性に合った人材配置や育成につながり、さらには従業員個々の充実感をアップさせ、モチベーションや会社へのロイヤルティ向上も実現できる施策です。その結果として、従業員の統合体である企業のパフォーマンスもアップし、生産性向上の達成にまで発展させられる可能性があります。 まずは人材一人ひとりが「人財」であることを改めて意識し、タレントマネジメントの導入やそれをサポートするプラットフォームの採用によって、「人財」をさらに効率活用するチームづくりをめざしてください。
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