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第16回 テレワークで始める働き方改革!メリットやポイント・留意点を解説
第16回 テレワークで始める働き方改革!メリットやポイント・留意点を解説

政府主導で進められている働き方改革。その中でも、大きな柱になっているのが「テレワーク」の推進です。新型コロナウイルスの感染拡大防止策としても有効だと考えられており、コロナ禍をきっかけとして、さまざまな企業がテレワークを導入しました。では、なぜテレワークが働き方改革につながるのかをご存知でしょうか。ここでは、テレワークと働き方改革の関係、現状どのくらいテレワークが社会に普及しているのかについてご紹介します。また、テレワークを導入する企業にとってのメリットとデメリット、従業員にとってのメリットとデメリット、さらにテレワークを導入する際に企業がとるべき対策についても解説します。
目次
テレワークは働き方改革につながるのか?
そもそも働き方改革が何を目的にしているか、ご存知でしょうか?働き方改革は、政府が掲げている「一億総活躍社会」を実現するための施策のひとつです。なぜ「一億総活躍社会」を実現する必要があるかというと、今後労働力人口が減少していくと予想されているからです。日本では少子高齢化が進んでおり、その傾向は加速しています。これにより、労働力人口も減少し、経済が縮小してしまうという差し迫った課題があります。
テレワークを推進すると、多様で柔軟な働き方が可能になるため、働く意思はあるにもかかわらず何らかの理由で就業を諦めていた人たちが働くことができるようになり、労働力の増加につながります。そのため、テレワークは働き方改革を行うための切り札と位置付けられています。
テレワークは国が支援する改革のひとつ
テレワークは、働き方改革を進めるうえで、さらには、日本の明るい未来を創造するうえでも重要な役割を担っているため、政府としてもさまざまな支援を行っています。その例を紹介します。
テレワークによる効果の説明、テレワークに適したシステム(在宅勤務などを行うためのICT機器、システム)や情報セキュリティ、勤怠労務管理、その他テレワーク全般に関する情報提供・相談、導入に向けての支援等を行います。
総務省「テレワークマネージャー相談事業」Webサイトより引用
テレワーク導入について、総務省が認定するテレワーク専門家に無料で相談することができます。
良質なテレワークを制度として導入・実施することにより、労働者の人材確保や雇用管理改善等の観点から効果をあげた中小企業事業主が助成対象となります。
支給対象となる経費の範囲
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就業規則・労働協約・労使協定の作成・変更
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外部専門家によるコンサルティング
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テレワーク用通信機器等の導入・運用
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労務管理担当者に対する研修
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労働者に対する研修
厚生労働省「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」Webサイトより一部抜粋
テレワーク環境を整えるためにはコストがかかるため、条件を満たした中小企業事業主を対象に、助成金を支給しています。
新型コロナウイルス感染症の流行が継続している中で感染拡大を抑えながら経済の持ち直しを図り、中小企業のポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環を実現させるため、令和2年度第一次・二次補正で措置した特別枠を改編し、現下及びポストコロナの状況に対応したビジネスモデルへの転換に向けて、労働生産性の向上とともに感染リスクにつながる業務上での対人接触の機会を低減するような業務の非対面化に取り組む中小企業・小規模事業者等の積極的なIT導入を優先的に支援する。
「IT導入補助金2021 低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D 類型)」公募要領より引用
新型コロナウイルスの感染拡大防止にもつながるとして、テレワーク環境の整備を対象にした助成を行っています。
テレワークが勧められる理由
国がここまでテレワークを推奨する理由としては、これから予想される労働力人口の減少に備えるということがひとつ挙げられます。そして、それ以外にも社会全体として見たときに、次のようなメリットがあることが理由となっています。
女性が活躍する社会につながる
企業に勤める女性が、出産と育児をきっかけに離職をするケースが多くあります。働く意思やスキルがあるにもかかわらず離職してしまうことは、企業にとっても、社会にとっても損失であると言えます。テレワークが今よりも社会に浸透していけば、女性が育児と仕事の両立がしやすくなるだけでなく、夫も家事や育児に参加しやすくなり、有能な女性が自身の能力を存分に発揮できるような社会にすることができます。
地方創生につながる
テレワークが認められるようになると、従業員は通勤のことを考える必要がなくなります。これまで企業が集まる都市部にアクセスしやすいような場所を選んで住居を構えていた人も、都市部から離れて、地方に移住しやすくなります。また、ワーケーションとして、地方の観光地やリゾート地で休暇を取りながら仕事をするといった働き方も可能になります。これによって、地方創生につながると考えられます。
一極集中を避けられる
上で述べたように、テレワークが浸透すれば、企業で働く人が都市部に住む必要がなくなります。また、業種にもよりますが、取引先とのやりとりもオンライン上で完結できるようになるでしょう。その結果、企業は都市部にオフィスを構える必要がなくなります。現在のように東京のような都市部に経済機能が集中している状況は、災害が発生した際には大きなリスクです。企業はもちろん、行政組織に関しても、地方にその機能を分散させることで災害発生時のリスクも分散させることができます。
テレワーク導入の現状・社会的背景
働き方改革の一環として推進されてきたテレワークですが、新型コロナウイルスによる影響で、感染拡大防止策としてもテレワークが有効だという理由から、さらにその流れは加速しました。テレワークの実施率については、下記のようなデータがあります。
従業員のテレワーク実施率
- 2021年 7月30日 - 8月1日時点でのテレワーク実施率は、正規雇用社員で27.5%。 昨年の1回目の緊急事態宣言時の27.9%からほぼ横ばい(マイナス0.4ポイント)。
- 非正規雇用は17.6%、公務員・団体職員は14.0%であった。
- テレワークに関する企業方針も、テレワーク推奨+命令の合計で37.3% (従業員回答) 。 昨年の1回目の緊急事態宣言時は40.7%で、マイナス3.4ポイントとやや微減傾向。
- 非実施理由の推移を見ると「テレワーク制度が整備されていない」「ICT環境が整備されていない」は減少傾向。
コロナ収束後のテレワーク希望(すべて正規雇用ベース)
- テレワーク実施者のテレワーク継続意向は78.6%。2020年11月調査時点から横ばい。
- 現在テレワーク実施者では、コロナ収束後も78.8%が1週間に1日以上のテレワークを希望している。
- 現在テレワーク非実施者では、同33.0%。
パーソル総合研究所「第五回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」より引用
コロナ禍によって急速に進んだテレワークが、一定程度は定着したと考えられます。また、テレワークを継続したいと考えている人が多数を占めていることが分かります。
テレワークの普及が進まない理由
ある程度はテレワークが普及してきているとは言え、まだまだ社会に浸透しているとまでは言えない状況です。なぜテレワークの実施率がもっと上がっていかないのか。その理由として考えられるものを挙げてみましょう。
中小企業での導入率が低い
総務省の調査(*)によると、従業員規模別のテレワーク導入状況については、従業員数が2,000人以上の企業では60.8%がテレワークを導入しているのに対して、従業員数が100~299人の企業では15.1%に留まっています。その理由のひとつとして考えられるのは、導入コストです。助成金などのサポートがあるとは言え、中小企業にとっては決して少なくない負担となるでしょう。また、現実問題として、導入のために人手を割けるほど労働力に余裕がないということもあると推測されます。
*総務省「令和元年通信利用動向調査」
業界や業種の偏りがある
上記調査によると、産業分類別のテレワーク導入状況については、情報通信業では46.5%がテレワークを導入しているのに対して、運輸業・郵便業では11.7%、サービス業・その他では16.3%に留まっています。やはり業界によって、運輸のように物理的にテレワークが不可能な業務や、直接対面しなければ円滑に進められないような業務があるため、社会全体で見たときに、なかなかテレワーク導入率が上がらないものと考えられます。
テレワークの導入による企業側のメリット・デメリット
政府が人手不足解消などを目的に推進しているテレワークですが、企業にとっても導入によるメリットはあります。また、導入コストがかかる以外にもデメリットがいくつかあるので、確認しておきましょう。
メリットその1:コストが削減できる
テレワークのデメリットとして、導入コストがかかる反面、導入後に得られるコストメリットもあります。たとえば、在宅勤務を取り入れることで、従業員に支払う通勤手当が削減できます。また、出勤する人数が少なるため、オフィスを小さくしても問題ないでしょう。そうなると、賃料を抑えることができるほか、光熱費も下がります。それ以外にも、紙代やインク代といった消耗品にかかる費用も削減することができます。
メリットその2:人材が確保しやすい
テレワークの導入によって、働き方の選択肢が増えます。そうすることで、採用活動において、応募が増えることが期待できます。通勤距離や時間の問題で応募を見送っていた人や、育児との両立が難しいと考えて応募を諦めていた人などからの応募があれば、これまでよりも幅広い層の人材を選考の対象とすることができ、より有能な人材を雇用できるチャンスが広がります。また、離職率の低下にもつながると考えられます。
メリットその3:企業イメージが良くなる
テレワークを導入していると、働き方改革を推進している企業として認識されるようになります。働きやすさを考え、労働環境の改善に積極的に取り組んでいるように見られることで、企業としてのイメージは良くなります。さらにコロナ禍においては、テレワークの導入が従業員の健康を守ろうとする経営姿勢と捉えられ、好印象を持たれることもあります。企業イメージが良くなれば、採用活動にも良い影響が生まれるでしょう。
デメリットその1:情報漏洩リスクが高くなる
在宅勤務の場合には、従業員自身が保有するパソコンやスマートフォンを活用したり、従業員の自宅の通信回線を使って業務を行うことになるでしょう。しかし、オフィスに比べてセキュリティー対策が万全ではない可能性があり、それだけ情報漏洩のリスクは高まります。また、シェアオフィスやカフェなどで仕事をする際も、業務に関する重要な資料を他人に見られる危険性は高くなります。
デメリットその2:マネジメントが難しくなる
マネジメントを行う立場の人にとっては、オフィス勤務のときのように直接部下と顔を合わせることがなく、業務に取り組む姿勢を目で確認することもできません。仕事の進捗状況だけでなく、部下の体調の変化にも気づきにくくなるため、フォローするのが難しくなります。また、評価をする際にも、業務にどれだけ真剣に取り組んでいたのかといったことが分からないため、判断材料が少なく、一人ひとりを適切に評価するのが難しくなります。
デメリットその3:勤怠管理が難しくなる
オフィス勤務であれば、出社してから退社するまでを勤務時間として把握することができます。しかし、在宅勤務の場合には、何時から業務に取りかかっているのか、何時に仕事が終わったのかを確認することができません。そのため、自己申告による勤怠管理になってしまいます。決められた時間以上に休憩をしている可能性もありますし、長時間労働をしてしまっているかもしれません。特に後者は、法定の労働時間を遵守する責任がある企業としては見過ごすことができません。
テレワークの導入による従業員側のメリット・デメリット
前項までは、企業から見たメリットとデメリットを紹介してきました。次に、従業員から見たメリットとデメリットを確認しておきましょう。従業員にとって働きやすい環境をつくるための取り組みが、従業員の負担にならないように注意が必要です。
メリットその1:通勤ストレスがない
都市部では通勤ラッシュが発生し、毎日混雑した電車やバスに乗って仕事に行くだけでも体力を消耗します。精神的にも苦痛を感じる人も多いでしょう。しかし、在宅勤務の場合は通勤をする必要がなく、通勤のストレスから解放されます。また、通勤のために費やしていた時間を削減することができ、その分家事をしたり、自己研鑽(じこけんさん)をしたり、リフレッシュをしたりと、時間を有効に使えるようになります。
メリットその2:育児や介護との両立がしやすい
在宅勤務であれば、家族の介護を自宅で行いながら空いている時間に業務を行う、といった時間の使い方が可能になります。何かあった際にもすぐに対応ができるという安心感もあります。また、小さな子どもを育てている場合、朝から病院に連れて行ったり、日中に突然子どもが熱を出して保育園に迎えに行くことになったりすることも珍しくありません。そういった場合にも、自宅勤務なら対応がしやすくなります。
メリットその3:住む場所の選択肢が広がる
通勤がないというメリットともつながりますが、従来のオフィス勤務であれば、自社へのアクセスのしやすさを基準に住む場所を選ぶことが多くなるのに対して、テレワークが導入されると、自分の好きな場所に住むことができます。たとえば、勤務先が都市部にある企業だったとしても、郊外の自然豊かな場所に住みながら仕事をすることができ、それまでよりもプライベートを優先した働き方が可能になります。
デメリットその1:作業効率が低下しがち
アットホームな職場だったとしても、オフィスには仕事をする場所としてのある程度の緊張感があります。それに比べて自宅で仕事をする場合、周りの目もなく何かと誘惑が多いため、ついつい休憩が多くなったり、仕事以外のことが気になって集中力が低下してしまったりすることがあります。オンとオフをきちんと切り替えられる自己管理力がないと、作業効率は悪くなってしまうので注意が必要です。
デメリットその2:長時間労働になりがち
上記のとおり、在宅勤務の場合はオンとオフの切り替えが重要です。それができていないと、集中力が低下した状態でダラダラと仕事を続けることになり、長時間労働に繋がってしまいます。また、いつでも仕事ができる状態だからと言って、退勤した後に業務連絡が来た際にもパソコンを開いて再び仕事をしてしまうことは、労務管理上も健康管理上も望ましいことではありません。適切な管理ができるよう対策しましょう。
デメリットその3:やりがいを感じにくい
オフィスであれば、上司や同僚が周りにいて、何気ないコミュニケーションも頻繁に起こります。しかし、自宅で黙々とひとりで仕事をしていると、周囲の反応もなく、自分の仕事ぶりに対する評価を感じにくくなるため、不安になる可能性もあります。また、誰かの役に立てているといった自分の役割や存在意義も見出しづらくなり、仕事に対するやりがいを感じにくくなります。テレワークだからこそ、積極的なコミュニケーションが必要です。
テレワークで働き方改革を成功させるポイントと留意点
働き方改革を成功させ、企業として成長するためには、ここまでに述べたようなテレワークのデメリットに対してしっかりと対策をすることが重要です。ここからは具体的な対策を紹介します。
セキュリティー対策を行う
情報漏洩は、企業にとって死活問題です。情報漏洩のリスクがある場合には、可能な限りの対策を行いましょう。まずは、業務資料やパソコン、記録メディアなどの持ち出しや管理方法などのルールを定めて、社内に周知徹底しましょう。私物のパソコンやスマートフォンを使用する場合には、外部脅威対策ソフトをインストールすることでマルウェア感染を防止します。また、従業員の自宅で使用している家庭用のインターネット回線は、オフィスに比べてセキュリティーレベルが低い可能性があります。さらに、カフェやホテルなどで仕事をする場合、公衆Wi-Fiを使用することがありますが、情報漏洩のリスクが高く、注意が必要です。VPNを活用し、安全なネットワーク環境を整えることが有効です。
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コミュニケーションを積極的にとる
在宅勤務では、オフィスとは違い、従業員同士が直接顔を合わせることがないため、コミュニケーションの量が圧倒的に少なくなってしまいます。その結果、従業員同士の連携が悪くなり、業務の質が下がってしまいます。また、コミュニケーションの量だけでなく、質の低下も問題です。無駄なやり取りが増え、円滑に進まないことでストレスが増える可能性もあります。ビジネスチャットアプリやWeb会議システムなど、コミュニケーションツールを導入し、積極的にコミュニケーションを取るようにしましょう。コミュニケーションが増えることで、業務がスムーズになるだけでなく、互いの体調を気遣うことができたり、評価を伝えあうことができたりと、チームとしての一体感が生まれてやりがいを感じやすくなります。
組織運営方法の見直しを行う
まず1つ目は、勤怠管理です。きちんと業務に取り組んでいるか、長時間労働になっていないかを把握するため、勤怠管理システムの導入を検討しましょう。自己申告だけに頼った出退勤の管理ではなく、パソコンのログイン時間を記録するもの、作業内容が遠隔で確認できるものなどがあります。2つ目は、マネジメントです。管理職にある立場の人が、部下の行っている仕事の進捗状況を把握し、なおかつ、仕事に対する姿勢や仕事ぶりをきちんと評価できるだけの情報を掴めるような、組織づくりをする必要があります。コミュニケーションツールの活用はもちろん、評価面談を増やしたり、評価方法自体を見直したりと、従業員のモチベーションが低下したり、生産性が低下してしまないように注意しましょう。
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まとめ
テレワークには多くのメリットがある反面、デメリットも多くあります。しかし、現実問題として、労働人口の減少による人手不足は、もはや避けられない事態になっています。この課題に対して、テレワークは有効な手段だと考えられるため、ここで紹介した助成金やデメリットへの対策方法を参考にしながら、ぜひ前向きに導入を検討してください。これは働き方改革を実現し、有能な人材が集まる企業へと変革するチャンスなのです。