第20回 在宅勤務とテレワークの違いとは?導入のメリットやポイントをご紹介
第20回 在宅勤務とテレワークの違いとは?導入のメリットやポイントをご紹介
働き方改革を実現するため、多様な働き方のひとつとして在宅勤務を導入する企業が増えています。テレワークという言葉が使われることもありますが、「在宅勤務」と「テレワーク」は厳密には同じ意味ではありません。ここでは、2つの言葉の違いから、在宅勤務のメリット・デメリット、導入する際に企業が気をつけるべきことまでを解説します。これから在宅勤務を導入される方、また、導入したもののうまく運用できていない方は、ぜひご一読ください。
在宅勤務とテレワークの違い
働き方改革はもとより、新型コロナウイルスの感染拡大防止策として人流を抑制するために推奨されたのがテレワークです。そこで多くの企業が在宅勤務制度を取り入れました。テレワークと在宅勤務という言葉は混同されがちですが、在宅勤務はテレワークの一種です。詳しくは後述しますが、テレワークには他にも「モバイルワーク」「サードプレイスオフィス勤務」があります。
なお、テレワークという言葉は、「テレ(tele)=離れた場所で」と「ワーク(work)=働く」を組み合わせた造語です。その意味は、「情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」と定義されています。在宅勤務よりも概念的に広い言葉で、リモートワークとほぼ同義と考えて良いでしょう。
テレワークの種類は3つ
テレワークには、「在宅勤務」「モバイルワーク」「サードプレイスオフィス勤務」の3種類があるとご説明しましたが、ひとつずつ簡単に解説します。
在宅勤務
在宅勤務とは、オフィスや決められた勤務場所に出向くことなく、自宅で仕事をする勤務形態です。多くの企業では、ビジネスチャットツールやWeb会議ツールなどを活用することで、自宅にいながらオフィスと同様に業務ができるようにしています。また、まったく出社する必要のない「完全自宅勤務」だけでなく、「週3日まで在宅勤務可能」といったかたちで運用しているケースもあります。
モバイルワーク
モバイルワークとは、一定の場所で仕事するのではなく、移動中の新幹線や飛行機、出張先のホテル、取引先の近くのカフェなど、場所を変えながら業務を行う勤務形態です。経営層や営業職など、外出や出張が多い人に適した働き方と言えます。スマートフォンのテザリング機能やポケットWi-Fi、ホテルやカフェで提供されるWi-Fiを活用することで、インターネットを使用した業務も行うことができます。
サードプレイスオフィス勤務
サードプレイスは、アメリカの社会学者が提唱する考えから生まれた言葉です。その考えとは、人間にはファーストプレイスである自宅、セカンドプレイスである職場以外にも、心地よく過ごせる「第三の場所」が必要というものです。そこから応用されたのがサードプレイスオフィス勤務であり、自宅でもいつも勤務しているオフィスでもない場所で働くことを指しています。シェアオフィスやコワーキングスペースで仕事をするケースや、旅先で休暇を取りながら働くワーケーションなどが、これに該当します。
在宅勤務を導入するメリット・デメリット
在宅勤務を導入すると、企業だけでなく従業員にとってもメリットとデメリットがあります。まずは企業側と従業員側のメリットを分けて、3つずつご紹介します。
企業側のメリットその1「コストが削減できる」
在宅勤務であれば、従業員に支払う通勤費、インクやコピー用紙、飲料水といった消耗品にかかる費用を削減することができます。また、在宅勤務が定着した場合にはオフィスの規模を小さくして、賃料を削減することもできます。
企業側のメリットその2「人材が確保しやすい」
在宅勤務を導入すれば、働き方の選択肢が増えるため、オフィス勤務が難しいと考えている求職者からの応募が増えることが期待できます。また、従業員のために働きやすい環境整備に取り組んでいる企業としてイメージが良くなるので、求職者が応募する際の動機付けになります。
企業側のメリットその3「BCPにつながる」
BCP(事業継続計画)とは、大地震などの自然災害や新型コロナウイルスのような感染症のまん延、社会生活に影響をおよぼすような大きな事故や事件といった不測の事態が発生した際にも、重要な事業を継続する、もしくは、すぐに立て直すことができるように体制や方針を計画しておくことです。もしそういった事態によって自社オフィスが使えなくなった場合でも、あらかじめ在宅勤務を導入していれば、一部の従業員だけでも業務を行い、事業を継続することができます。
従業員側のメリットその1「通勤のストレスがない」
オフィス勤務の場合、通勤ラッシュの時間帯に出社することになります。特に都市部では、心身ともに疲れるほどに交通機関が混雑します。在宅勤務であれば、そのストレスから解放されるだけでなく、通勤にかかっていた時間を有効活用することができます。
従業員側のメリットその2「ワークライフバランスが実現しやすい」
育児や介護を行っている従業員にとっては、仕事との両立がしやすくなります。たとえば、親の介護をする場合には、住環境などさまざまな事情から親が住んでいる家で介護をしなければならないケースがあります。在宅勤務が認められていれば、オフィスから離れた場所に親の住む家があったとしても、転居をして自宅で介護をしながら仕事ができるようになります。
従業員側のメリットその3「落ち着いて仕事ができる」
オフィス勤務には、同僚や上司とコミュニケーションを取りやすいというメリットがありますが、その一方で、集中して作業をしたい場合にも中断せざるを得ないこともあります。在宅勤務の場合は、電話などで中断せざるを得ないこともありますが、オフィス勤務よりはひとつの業務に集中して取り組むことができます。
次に、企業側と従業員側のメリットを分けて、2つずつご紹介します。
企業側のデメリットその1「情報漏洩のリスクがある」
在宅勤務ではほとんどの場合、従業員それぞれが契約している自宅のインターネット回線を利用して業務を行うことになります。また、私物のパソコンやスマートフォンを活用することも考えられます。しかし、オフィスに比べてそれらの情報セキュリティーレベルは高くないでしょう。マルウェアやサーバー攻撃、通信傍受などによって、会社の重要な情報が漏洩しないように注意する必要があります。
企業側のデメリットその2「生産性が低下する恐れがある」
在宅勤務では、従業員の働きぶりを上司などが直接目で確認することができません。そのため、従業員が必要以上に休憩をとっていたり、ダラダラと長時間労働をしていたりする可能性があります。これでは生産性が下がってしまいます。防止策として、業務可視化ツールなどを使って、業務を行っている時間や遂行状況を常に確認できるようにしましょう。
従業員側のデメリットその1「仕事ができる環境を整える必要がある」
オフィスであれば、業務遂行に適したデスクや椅子などが用意されていますが、自宅でそういった備品が整っている従業員はそう多くありません。また、夏場や冬場には冷暖房が必要になるため、自宅のどのスペースで仕事を行うのかを考えなければならず、在宅勤務が快適に行える環境づくりに苦労する可能性があります。対策として、そういった環境整備するための費用をサポートしている企業もあります。
従業員側のデメリットその2「モチベーションが低下する」
周りの目を気にせず集中して作業ができる反面、コミュニケーションが少なくなり、孤独感を感じやすくなります。また、自分の仕事ぶりがきちんと評価してもらえるのか不安になる従業員もいます。その結果、仕事に対するやる気が持てなくなってしまう可能性があり、生産性低下につながりかねません。企業としては、積極的にコミュニケーションをとるようにするなど、従業員のメンタルケアを行う必要があります。
企業が在宅勤務を導入する際のポイント
在宅勤務にはさまざまなデメリットがあるため、企業としては下記のようなことについて対策を講じる必要があります。
情報漏洩への対策
上で述べたように、従業員の自宅環境はオフィスに比べてセキュリティー面で不安があります。外部脅威対策ソフトを導入したり、VPNを構築したりと、情報漏洩リスクに関して、徹底的に対処する必要があります。また、在宅勤務をする従業員に対して研修を実施するなど、セキュリティー意識を高めておくことも重要です。ネットワークに関わるリスクはもちろん、業務内容が記された紙の資料やデータの取り扱い方も含めて、セキュリティガイドラインを策定し、注意を促すようにしましょう。
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労働時間の把握
従業員が休憩をとりすぎることで生産性が低下するケースを紹介しましたが、企業としては、さぼり対策としてだけでなく、従業員の労働時間を正確に把握する必要があります。これは労働基準法によって義務化されていることで、働きすぎを防止するという目的があります。在宅勤務でも使える勤怠管理ツールを導入し、出退勤時刻や残業時間、休日などを正確に把握できる体制をつくりましょう。これに関連して、長時間労働を防止するための手段として、所定時間になったらパソコンを自動的にシャットダウンするようなツールもあります。メリハリをつけて働ける環境を整えることで、生産性向上を図りましょう。
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コミュニケーションの活性化
従業員のモチベーション低下への対策として、社内コミュニケーションを増やすという方法があります。ビジネスチャットツールやWeb会議ツールはもちろん、社内SNSを活用するのもおすすめです。そして、そういったツールを導入するだけではなく、コミュニケーションの場をつくることが大切です。業務以外のことも含めて気軽に話せる会議や面談を開催するなど、コミュニケーション不足にならないように注意しましょう。従業員にとっては、仕事に対する評価をしてもらえているかどうかを知る機会にもなるので、安心して働けるようになります。
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在宅勤務やテレワーク導入の際の注意点
前項で述べたこと以外に、もうひとつ気をつけなければならないことがあります。それは、オフィス勤務と在宅勤務の両方の従業員がいる場合に、不満や不公平感を覚える人が出てくるということです。オフィス勤務をする従業員が「在宅勤務はプレッシャーがなく、自由で気楽そう」「勤務時間中にさぼっていそう」という印象を持つ可能性があります。一方、在宅勤務をする従業員が「楽そうだと思われているが、実際にはオフィス勤務に比べて仕事がスムーズに進まない」といった不満を持つことがあります。その結果、従業員同士の関係が悪くなってしまったり、従業員のモチベーションが下がってしまったりすると、生産性低下につながりかねません。そのため、企業としては適切な対策をしておく必要があります。では、どんな対策をすれば良いか見てみましょう。
情報共有の徹底
コミュニケーションを活性化することがモチベーション維持に必要である、と説明しましたが、在宅勤務を行っている従業員が担当している業務内容や業務量、それによる成果といった情報をオフィス勤務の従業員を含めて社内で共有することは、不公平感の解消にも役立ちます。さらに、お互いの意見を交換することで、業務の分担方法やフローの見直しにつながり、業務効率化を実現できる可能性もあります。
評価制度の明確化
在宅勤務とオフィス勤務のそれぞれにおける業務上ルールや勤怠管理方法、評価制度については明文化し、社内の誰もが見られる状態にしましょう。そうすることで、在宅勤務を行う従業員とオフィス勤務を行う従業員の間に不公平感が生まれるのを防ぐことができるだけでなく、それぞれが自分の目標を定めるきっかけになります。
また、こういった情報は、他部署で在宅勤務を導入する際の参考にもなるため、社内で在宅勤務を拡充していくことにもつながります。
まとめ
在宅勤務を含め、テレワーク導入によって働きやすい環境を整備していくことは、多くの企業にとってもはや避けられない課題です。そして、テレワーク導入で失敗しないためには、自社に最適なITツール選びが重要になってくるため、ここでご紹介したメリットやデメリット、注意点などの情報をぜひご活用ください。
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