システムへの入力作業をRPA&AIで軽減する方法

商社・卸売業の人手不足に「秘策」あり!システムへの入力作業をRPA&AIで軽減する方法

2018年12月20日

(株)日立ソリューションズ

受注データの手入力作業が業務効率化のボトルネックに

日々のビジネスを遂行するうえで、注文伝票などの書類を数多く扱う必要がある商社や卸売業。ERP導入やEDIの活用などによって、紙ドキュメントからデジタルデータへの移行も進んできたが、それらを手入力する手間は現在でも多く残っている。

例えば取引先からの受注伝票を、Web-EDIで受け取るケースを考えてみよう。EDIとERPをすでに連携させている企業ももちろん存在するが、Web-EDIとERPが個別のシステムとして切り離されて運用されているケースも決して珍しくない。その場合には、伝票情報を社内の受発注システムや経理システムに反映するため、受注内容をWeb-EDIの画面から目視で確認し、ERP画面に手作業で入力する必要がある。

小規模な取引先が多い企業であれば、Excelなどを添付した電子メールや、FAXで注文を受けるケースも多いはずだ。この場合には、間違いなくERPへの入力は手作業になってしまう。つまりデジタル化はある程度進んではいるものの、データを扱うシステムが孤立した状態で複数存在していることで、業務効率化を徹底することが難しくなっているのだ。

このような状況は、これまでも商社・卸売の企業にとって大きな問題であり、取引量の増加などにより更に重くのしかかってくるだろう。労働力人口は年々減少しており、システムへの入力作業を行う事務職員の雇用が、次第に難しくなっていくからだ。

図1 国内における労働力人口の推移

また取引先からの受注を手作業でERPなどに入力しているようでは、ビジネススピードの向上にも限界がある。商社・卸売業は取引先から注文を受けた後、仕入先への発注処理を行う必要があるが、その間にタイムラグが発生してしまうからだ。

取引先の担当者はすでに消費者として、ECをはじめとするオンラインサービスを日常的に使うようになっており、長いレスポンス時間を好ましく思わなくなっている。そのためタイムラグを最小化する努力を行わなければ、競合他社が登場した時点で競争力を失いかねない。

RPAで可能になる複数システムにまたがった処理の自動化

これらの問題を解決するための手段として、近年注目が高まっているのが、RPA(Robotic Process Automation)やAI(人工知能)である。RPAやAIと聞いて「敷居が高いのでは」と考える企業もいるかもしれないが、最近ではこれらの導入ハードルは大幅に下がっている。すでに数多くのRPAツールが登場しており、AIを搭載したソリューションも増えているからだ。

それではこれらによって、どのようなことが可能になるのか。まずはRPAによるWeb-EDIからERPへのデータ転記を取り上げてみよう。

RPAのメリットは、特定のシステムに閉じることなく、複数のシステムをまたいだ自動処理が可能なことだ。つまりWeb-EDIの画面を開き、その画面の中から必要なデータを取り出し、ERP画面を開いてそれらのデータを入力するといった、人による画面操作と同様の処理が行えるのである。

また高度なプログラミングスキルがなくても、簡単にRPAロボットを作成できる点も、見逃せないメリットだといえるだろう。そのためシステム部門に依頼することなく、業務部門で取り組みを推進できるのだ。

このような自動化を実現すれば、人が行うべきことは入力されたデータの確認だけになる。これによって大幅な省力化と時間短縮が可能になるはずだ。同様のことは、Excelシートが添付された電子メールからのデータ転記にも応用できる。メールを受け取ったら、その中からExcelシートを開き、そこからデータを抽出してERPの画面に入力するといったRPAロボットを作成すればいい。

RPAで自動化できるのは、注文伝票の転記だけに限らない。例えば仕入先から請求書を受け取ったときに、その内容や金額を確認するといった使い方も考えられる。社内システムに登録されている金額と異なる請求金額の請求書だけを自動的にピックアップできるようにしておくことで、特定時期に集中しやすい支払い処理を効率化でき、支払いミスも防ぎやすくなる。

AIを活用すれば多様なフォーマットへの対応も容易に

もちろんこのような処理をRPAで自動化するには、受け取る伝票のフォーマットをある程度定型化しておく必要がある。Web-EDIからの転記であれば、この課題も比較的簡単に解決できるだろう。一方、メール添付の伝票の場合には、必要に応じて取引先ごとのRPAロボットを作成しておく必要があるかもしれない。

この問題を解決するには、AIの活用が効果的だ。機械学習で書式パターンを学習し、その学習内容をベースに、必要なデータを抽出する仕組みを確立するのである。これならば複数のフォーマットが存在しても、問題なく対応できる。

AIならFAXなどで届いた紙伝票への対応も可能になる。紙伝票をスキャンしてPDF化し、その内容をAIに解析させ、必要なデータを抽出するのである。スキャンした紙伝票からデータを抽出する方法としては、従来はOCRが利用されていたが、フォーマットが複数存在する場合にはフォーマットごとの定義が必要だった。これに対してAIであれば、複数のフォーマットに対して1つの定義で対応できる。

図2 AIを活用した紙書類からの情報自動抽出

実際にこのような方法で、大幅な業務効率化を達成した事例もある。ある企業では年間50万枚の紙伝票が発生しており、1枚あたり15項目を目視で確認・入力していた。この作業のために専任担当者が5人配置され、年間約8,333時間が費やされていたのである。これをAIで自動化することで、人が行うべき作業は結果確認だけになった。その結果、1枚の入力にかかる時間は20秒に短縮され、トータルの作業時間も年間約2,778時間と1/3に削減。専任担当者の数も2人に減らすことができ、人的コストも約1,200万円削減できた。

このように入力処理の自動化は、業務効率化や時間短縮に大きな貢献を果たす。ここでぜひ注意しておきたいのが、同様のことを実現するために「ERPそのものに手を入れる、といったアプローチは避けるべき」ということである。ERPに直接手を入れてしまうと、将来バージョンアップを行う際にその部分も更改する必要が生じるため、必要以上のコストと時間がかかってしまうからだ。できる限りERPには手を加えず、周辺ソリューションの追加で対応すべきなのである。

複数のアプリケーションをまたいだ自動化が可能なRPAの存在意義は、まさにこの点にある。またAIを活用する際にも、AI機能を装備した外部ソリューションを利用するほうがよいだろう。もしまだERPを導入していない、あるいはERPの更改を予定しているのであれば、このような外部ソリューションとの連携が容易な製品を選択するほうが、新たな機能を柔軟かつスムーズに追加できる。

商社・卸売業が今後さらなる競争力を発揮していくには、業務の自動化を避けて通ることは難しい。これをいかにスマートかつ柔軟性の高い形で実現するかが問われているといえるだろう。

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