【専門家コラム】「電子帳簿保存法制度改正に対して、企業が対応すべきこととは? ユースケースも紹介」

記事公開日:2022/03/25

この記事の概要

令和3年度の税制改正に伴って電子帳簿保存法が改正され、令和4年1月1日から施行となりました。 令和3年度の電子帳簿保存法改正では、メールなどの電子取引で受領した文書は電子データで保存しなければならなくなるなど、いくつか企業の文書の取り扱い方法に関して変更がありました。 ただ、企業の中には施行日までに改正に対応した体制を整えられていないところも多いようです。 こうした背景を鑑みて、政府は電子取引情報の電磁的保管の義務化に対し2年間の宥恕(ゆうじょ)措置期間を設定しました。 これから電子帳簿保存法改正に対応する企業は、この2年の間にどのようなことをすればよいのでしょうか。 日立ソリューションズ スマートライフソリューション事業部の前原が答えます。

監修者

株式会社日立ソリューションズ
スマートライフソリューション事業部 ビジネスコラボレーション本部
ドキュメントマネジメントソリューション部  第2グループ
グループマネージャ

前原 哲也

電子帳簿保存法制度改正に対して、企業はどのように対応すべき?

そもそも、令和3年度の改正では何が変わるのか

まずは、簡潔に電子帳簿保存法と改正のポイントについて確認しておきましょう。今回の改正では、主に次のような変更がありました。

  • 事前承認制度の廃止
  • タイムスタンプの要件の緩和
  • 電子データの検索要件の緩和
  • スキャナ保存後の定期検査の廃止
  • 電子取引データの紙出力保存の廃止

このように、電子帳簿保存法がより活用しやすくなるよう、要件が大幅に緩和されました。 ただ一方で、電子取引データの保存方法については逆に要件が厳しくなっています。
メールなどの電子取引で受領した文書は電子データで保存しなければならず、紙に出力して保存する方法では電子帳簿保存法における保存要件を満たしません。 今回、多くの企業で電子帳簿保存法改正への対応が遅れてしまったのは、この項目への対策が不十分だったものと考えられています。

具体的な対応策を考える前に、現状把握と整理がとても大切

日立ソリューションズは、電子帳簿保存法改正に対応しなければならない情報システム部門や経理部門の担当者だけでなく、企業をサポートする会計事務所などからも広くご相談を受けています。 日々寄せられる相談の中でも多いのが、「電子帳簿保存法改正に向けて準備を進めたいが、何から優先して取りかかればいいのか分からない」というご相談です。

電子帳簿保存法への対応をスムーズに進めるためにまず取りかかっていただきたいのが、「自社のどのような業務において、どのような文書が発生しているのか」という現状把握と整理です。 業務内容、業務フロー、担当部署、取引相手、発生文書、文書の作成方法、例外ケースの場合の取扱方法など、各項目について細かく業務を洗い出す作業が必要です。

電子帳簿保存法改正への対応にかかる期間とプロセス

現状把握と整理が一通り済んだら、具体的に改正に対応するために何を行うかを洗い出します。 電子帳簿保存法改正に対応したシステムを導入する場合、システムが社内に導入されて稼働するまでには、どの程度の期間が必要なのでしょうか?

プロセスとしては、要件定義・パッケージを導入するに当たっての基本設計・業務システムとの連携という作業が発生します。 要件定義に1〜2カ月・基本設計に約2カ月・周辺システムとの連携に3カ月ほどかかるというのが、大まかなスケジュールのイメージです。

これに加え、システムを導入する下準備としてのコンサルティングや現状把握と現状整理の期間を加えると、プロジェクトが1年以上に及ぶ可能性もあります。 特に大企業はグループ会社や関連会社で統一した運用を行いたいというニーズも強く、大がかりなプロジェクトになることも珍しくありません。

ここまで大きなプロジェクトとなれば費用もかかりますから、前年度から予算を組んで準備をしなければならないことなどを考えると、2年の宥恕(ゆうじょ)措置期間があるといっても余裕があるわけではないことが分かります。

令和5年12月31日までに電子帳簿保存法改正に対応できる環境を整えるには、今年中にある程度のプロジェクトの概算を把握して予算を確保し、遅くとも令和5年の頭にはシステム導入を開始できるよう、今年から準備を始めておく必要があると言えるでしょう。

業務システムの改善や導入ではなく、証跡の保管庫の導入を推奨する理由とは

電子帳簿保存法改正への具体的な対応策としては、次の3つが考えられます。

  1. 電子帳簿保存法改正に対応できるように既存の業務システムを改修する

  2. 要件を満たす新しい業務システムを導入する

  3. 業務システムとは別に、データの保管場所(証跡の保管庫)を追加する

このうち、日立ソリューションズでは3.の「業務システムとは別に、データの保管場所を追加する」ことを推奨しています。

独立した保管庫を用意することで、さまざまなメリットが期待できる

業務システムのリプレイスやシステム刷新に影響を受けない

これまで慣れ親しんできた業務システムを変更すれば、少なからず業務効率にも影響が出てしまいます。 しかし、保管庫を新たに追加する形なら業務システムの変更や作業される方の操作感を含む既存業務、ならびに将来の業務システムリプレース時の影響を最小に抑えることができます。

多種多様な文書の一元管理が可能になる

電子帳簿保存法改正の対象となる文書だけでなく、過去の紙書類をスキャンしたデータの保存なども含めた一元管理が可能となるため、直近では電子帳簿保存法改正にも対応できる他、長期的に見た社内のペーパーレス化にも柔軟に対応できるという大きなメリットがあります。

ファイルの検索や管理などに関する業務効率を改善できる

独立した保管庫ではなく業務ごとに文書を保管する場合、保存先は個々の業務システムに依存するため、関連する複数の文書を探すときに、複数の業務システムにまたがって検索をしなければならず、非常に煩雑です。
その点、保管庫であらゆる文書を一元管理することができれば、こうした検索にかかる手間が大きく削減されます。また、業務に応じた検索項目を設定することが可能です。

日立ソリューションズの「活文」が多くの企業に選ばれている理由

「活文」とは

日立ソリューションズでは「活文」の提供をはじめ、電子帳簿保存法が制定された1995年から27年間にわたり、帳票・文書関連事業をおこなってきました。

活文では電子帳簿保存法改正に対応した文書だけでなく、さまざまな文書を保存することができます。 また、AI-OCRによる検索に必要な情報の自動抽出や、大量の文書に対しても高速に検索できるようになります。 また、AI技術を活用した書類の分類や類似検索など、保存された書類を蓄積したノウハウとして生かすこともできるようになります。

中には「丸1日かかっていた見積書の作成がわずか15分で終わるようになった」という事例もあり、活文は、文書管理の精度を上げ、保存や検索にかかる手間とコストを大きく削減できるソリューションとして定評を得ています。

さらに、日立ソリューションズでは、単にツールを提供するだけでなく「電子帳簿保存法改正への対応をトータルで支援する」ことが非常に重要だと考えています。 そのため、コンサルティングからシステム導入までワンストップでサポートし、導入までの各プロセスにおいて、必要に応じたコンサルティングを行っています。

加えて、「活文」はソフトウェアパッケージやクラウドサービスが電子帳簿保存法の要件を満たしているかをチェックし、法的要件を満たしていると判断された場合に取得できる「JIIMA認証」を取得しているため、安心して利用することができます。

  • 公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が法的要件を満たしていると判断したソフトウェアを認証する制度。

「活文」のユースケースを紹介

大量の紙文書を電子化し、AI-OCRを使って検索性を向上

業種:電力・ガス業
文書の種類:請求書・領収書

本ケースは、全国規模の電力・ガス業を経営しているある法人の事例です。 取引先との請求書や領収書などの証憑類は基本的に紙文書のため、紙文書をスキャンして管理していました。 そのため、ファイル名の統一などの手間が膨大にかかっていたことから、活文を導入。
さらに、保存した文書について情報を自動で抽出してくれるAI-OCRを併用することで、帳票を自動仕分けすることが可能になり、作業効率が大幅に改善されました。

帳簿と書類、スキャンデータを一元管理

業種:建設業
文書の種類:相手方発行分の請求書や領収書/自社発行分の請求書控

建設業の特徴として、取扱業務や取引先が多岐に渡り、書類が多岐にわたって管理が煩雑になるという課題があります。 また、業務や用途に応じてさまざまな業務システムを使い分けており、文書の保管や保管後の検索に非常に手間がかかっていました。

その課題を解決するため、このユースケースでは、各業務システムと活文を連携させ、作成された証憑類の保管先を活文にまとめることで一元管理を実現。 活文では顧客名や工事の発注番号、工事番号などの情報でURL検索、証憑データの参照ができるため、文書の検索にかかる時間が大きく削減されました。

契約の過程に応じて保管先のフォルダを自動で振り分け

業種:製造業
文書の種類:注文書・請求書

電子帳簿保存法改正に伴い「注文書や請求書、契約書などを電子契約に移行したい」とのニーズがありました。
注文書や請求書などを社内で作成する際には、管理者の決済が必要です。 また、契約書には自社と取引先の押印が必要となります。 電子化に当たってこれらもデジタル化を進める必要がありました。 そこで、電子署名サービス「DocuSign(ドキュサイン)」と活文を連携。 電子契約書の押印や署名はドキュサインを使って行い、押印が完了すると活文に自動保管されるよう設計しました。

また、注文書や請求書の社内決済は活文で実施し、承認履歴を記録しています。 ドキュサインと活文の連携により、印刷や押印のペーパーレス化だけでなく、押印記録もシステム化されたことによって、出社して対応する必要がなくなりました。

電子帳簿保存法への対応のために必要なことはたくさん!早急に準備を進めましょう

電子帳簿保存法改正の対応策として、単に電子帳簿保存法改正の要件を満たすという対処療法で終わらないよう、ツールやシステムを導入したあとの運用ルールまでしっかりと定めておくことが大切です。

電子取引情報の電子保存の義務化は令和5年末まで2年間の宥恕(ゆうじょ)措置期間が設けられてはいますが、ツールの導入だけでなく事前準備や運用のことまで考えると、時間的な余裕は実はあまりありません。しっかり時間をとって確実に対応するためにも、早めに取りかかることが重要です。

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電子帳簿保存法とインボイス制度への対応状況に関する実態調査

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大企業(従業員501人以上)の調達・購買部門、経理・財務部門、システム企画部門、情報システム部門に所属する会社員・団体職員・経営者・役員 100名を対象に、「電子取引情報の保管方法」「電子取引情報の管理方法についての課題」「2023年7月までのインボイス制度の対応準備の有無」「「電子インボイス」または「デジタルインボイス」に対応した理由」「「電子インボイス」または「デジタルインボイス」を導入するにあたり、心配な点」などを聞きました。

電子帳簿保存法改正への対応に関する調査

対応前の心配で最も多かったのはデータ保存ルールの整備と社内周知。20~60代の従業員1000人以上の大企業の会社経営者・役員、および総務、経理・財務部署に在籍している100人を対象に、「電子帳簿保存法の対応を行う前の心配点」「対応への課題解決のために行ったこと」「電子帳簿保存法の準備にかかった時間」「電子帳簿保存法の対応時に発生した問題点」「電子帳簿保存法への対応で大変だったこと」などを聞きました。

電子帳簿保存法Q&A 税理士 袖山 喜久造氏 監修

電子帳簿保存法のスペシャリストである税理士の袖山 喜久造氏に、2022年1月1日に施行された令和3年度の改正電子帳簿保存法に関して、企業の皆様が抱いている疑問に回答いただきました。今後の電子帳簿保存法対応への取り組みのヒントとして是非、お役立てください。

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