スマートマニュファクチャリングソリューション
コラム「いまさら聞けないPLM入門」
~ 導入推進の最前線から ~
第4回 データと仕事の流れを考えてみよう ~部品表連携って難しい?~
先回まではPLMを導入していくうえでの考え方や基本中の基本の「製品データ管理」についてお話してきました。
今回からは、PLMを活用していくという視点で業務改革につながるようなテーマについて紹介したいと思います。そのためには、仕事の流れのなかでデータをどう作成し活用するかを再考することが必要になってきます。仕事の流れをPLMの中で表現するには、部品表をうまく扱うことが有効です。そしてその部品表と製品データを連携させます。今回はこの部品表と製品CADデータの連携(部品表連携)について考えていきたいと思います。
「部品表連携」は非常に奥の深いテーマです。ですので、今回は最初のステップとして、いったい部品表連携ってどういうものなのか?について整理していきます。
部品表連携ってなんか難しそう?
よく使われる「部品表連携」という言葉ですが、ちょっと定義があやふやで、PLMベンダーの説明を聞いてもイマイチしっくりこない、なんてことはないでしょうか?
- うちの会社ではそもそも部品表が正しく運用されていないのに、いきなり部品表連携って言われてもな。。。
- 部品表という言葉の定義が会社によってまったく違うので、PLMベンダーの話が理解しづらい
- 連携した方がいいという理想はわかるが、実際に連携したところで、何がうれしくなるのか、さっぱりイメージつかない
- 部品表って基幹システムで、PLM担当からは口だしできないんだよね。。。
なんとなく、部品表は「踏み込まない方がいい禁断の領域」みたいな印象があって取組に躊躇してしまっている方も多いのではないでしょうか?かくいう私もそう感じていた一人でした。
ですので、今回のコラムではそのあたりを一つずつ紐解いていきたいと思います。
部品表と製品データはまず切り離して考えよう
「部品表連携」というのが今回のコラムのテーマですが、いったん「部品表管理」と「製品データ管理」とに切り離して考えてみたいと思います。製品データ管理については、これまでのコラムで紹介してきたのでここでは部品表管理に着目します。
部品表の交通整理が必要
BOM(Bill of Material)とも言われる部品表に相当するものは皆さんの会社ではどんなものが存在しているでしょうか?
部品調達のための品目リスト、生産管理のための部品構成表、設計のための部品構成図や出図管理表など、用途と名前が異なるものの、部品表という区分に該当するものがたくさん存在していると思います。表記方法や表記対象物も統一されていない、それらを十把一絡げにして「部品表」と呼んでしまっているのが、混乱を引きおこしていると思うので、まずは自社内で一旦整理するのが良さそうです。
ただし、整理すると言っても統合するというようなレベルのことではなく、各「部品表」に含まれている構成要素で共通のものがあれば、わかるようにしておくくらいのレベルで十分です(例えば各リストで名前は違うけど、どちらも部品番号のことを指しているものは同一の情報として扱おうなど)。
部品表の管理はPLMではやらない
これにはさまざまな意見があると思います。しかし最初は割り切って考えたいと思います。部品表の管理は既存の部品表システムに任せます。たとえそれがエクセルであっても、それで部品表管理システムとして現状仕事が回っているならば、当面はその利用を続けてもらいます。
そのうえで、その既存部品表システムからPLMに定期的に部品表情報を出力してもらう、あるいはPLMシステムから取得しにいくようにします。つまり、PLM内で保管されている部品表情報はマスターではなくコピーです。マスター情報はこれまで同様、既存の部品表管理システムが行っています。
読者の皆様のなかには「物足りない」と思われる方もいるかも知れません。しかし「部品表連携」はかれこれ30年以上前から存在しているコンセプトにも拘わらずいまだ決定的なソリューションが出ていません。その一因はいきなりあれもこれも解決・実現しようと欲張りすぎているからだと感じています。ですから、まずはこれぐらい単純なところから着手するのが、実は早道であると考えます。
PLMでの部品表の取り扱い
さて、そうして取り込んだ部品表情報のPLMでの扱いですが、部品表はPLMで管理されている製品データを紐づけるための箱の集合体と捉えるとわかりやすいですね。前述のとおり、部品表情報として製品データとは切り離して管理し、そこに製品CADデータを紐づけるだけ、というのが基本コンセプトになります(下図参照)。
PLMには部品表管理機能が豊富に用意されていますが、ここでも必要なものだけに絞って利用します。最初はとにかくシンプルにはじめ、必要性が出てきたら機能を追加しましょう。
とはいえ、
- 外部ファイルの取り込みと自動更新
- 製品構成の管理(バリエーションも)
- 製品構成と部品の履歴管理
- 部品とCADとの紐づけ
くらいは最初から活用できるとよいでしょう。
これらを活用した部品表管理を、まずは1種類の部品表から始めます。そこで、うまくいくことが確認できれば、対象部品表を増やす、紐づける情報を増やす、CADだけでなくビューワデータも活用する、など適用の範囲を広げていきます。
理想の部品表連携実現まで長い道のり 一歩ずつ進もう
私がCAD・PLM業界に踏み込んだ1990年代にはすでに「部品表連携が必要だ」と言われていました。にもかかわらず、いまでも「部品表連携」は相変わらず大きなテーマのままで多くの企業が悪戦苦闘しているという印象です。つまり、それだけ難しいテーマだということなのでしょう。
その「部品表連携」への取り組みの第一歩としての基本的な考え方を今回はご紹介しました。困難な取組みですが、ひとたび実現できると、「データの一元化」だけでなく、設計変更や工程変更が発生した場合に関係者へ素早く漏れなく伝達する「変更管理」や、いつどの工程でどの部品を使っていたのかの「トレーサビリティ」などが実現できるようになり、まさに製品のライフサイクル全体を管理把握できる世界が訪れます。
連載コラム「いまさら聞けないPLM入門」の第4回「部品表連携って難しそう」は以上になります。次回は、PLM活用という視点での第2弾として「データ一気通貫」製品データと部品表」についてお話しする予定です。
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