スマートマニュファクチャリングソリューション
コラム「いまさら聞けないPLM入門」
~ 導入推進の最前線から ~
第7回 他社とデータ協業をすすめよう
先回までのコラムではPLMに管理した製品マスターデータを軸とした「データ一気通貫」についてお話ししてきました。多くのデータがPLM上で管理され、その関係性が定義された状態になってきています。
このように社内でデータ中心の仕事が定着してきたら、その仕事のやり方・データの連携を他社との協業でも実現したくなります。しかし、各社利用しているCADやPLMは異なりますから、そのためにはデータ共有のルールや仕組みを改めて整理・検討しておかなければなりません。
そこで今回はデータを他社と共有して協業を進めていくことにフォーカスをあてようと思います。フェーズとしては、出図したデータの流通というよりその前の協業段階でのデータ共有についての話になります。他社はもちろんのこと、自社の海外開発拠点や工場などでまだデータ共有できていないケースについても考えていきます。関係者が常に同じデータをみて仕事を進める環境づくりが今回のテーマです。
もらったデータどこだっけ?
皆さまの会社では他社から提供してもらった製品3Dデータをどう管理しているでしょうか?データを受領した人が個人管理していて、ほかの人はデータの所在はおろか受領したという事実さえ知らない、ということになっていないでしょうか?
他社からもらった最新のデータが社内のどこかに存在しているのに、それを知らず古いデータを使い仕事を進めてしまったら自社内業務のやり直しが発生するだけなく、他社にも迷惑をかけてしまいます。逆もまたしかり。他社に渡したデータが古いままだったら。。。
そうならないためには、他社とのデータ共有についてあらかじめルールやツールの整備をしておくことが必要となってきます。
データを渡すとき
まずは、他社へデータを渡すというケースで考えたいと思います。この場合は、自社PLMで管理しているデータを一旦PLMの外に出さなければいけません。このとき下記のようなことに留意する必要があります。
1. いつ、誰が、誰に、どのデータを渡したか?の情報管理
PLMの外に出したデータはシステム管理外になってしまいますので、いつ、誰が、誰に、どのデータを渡したか?という情報だけはしっかり管理しておきたいところです。これらを人間系で管理することも可能ですが、情報登録をうっかり忘れてしまうことを無くすためにも、システム的に管理できるように仕組みを構築したほうがよいと思います。そうすることで確実にデータのトレーサビリティ性が向上しますので、データ共有の観点だけでなく機密漏洩防止の観点からも有用なものとなります。
2. 送付対象のオリジナルデータと変換データ双方を管理(オプション)
他社にCADデータを送る場合にはSTEPなどの中間フォーマットを使うケースが多いかと思いますが、それら変換した中間フォーマットファイルも一緒に管理しておくとよいでしょう。変換時に意図せぬ形状になってしまった場合などを想定して実際に渡した変換ファイルも見返せるようにしておくと、のちのち問題が発生したときの原因究明がしやすくなります。
データを受け取ったとき
次に他社からデータを受け取ったケースについて考えます。受け取ったデータは、もれなく自社PLMシステムに登録します。このときにも留意することがいくつかあります。
1. いつ、誰が、誰から、どのデータを受け取ったか?の情報管理
他社から受領したデータはPLMに登録して管理しましょう。このとき、単にデータをアップするだけでなくPLMの属性機能などを使い、これらの情報も必ず登録するようにします。
2. 貰ったオリジナルデータと変換データ双方を管理
前述のとおり、STEPなどの中間フォーマットをデータ授受では使うケースが多いと思うので、中間フォーマットファイルそのものをまずは登録します。また、これらは使うたびに誰かが自社CADフォーマットに変換するのではなく、登録時に変換してセットで登録しておくのがよいでしょう。
3. ファイル名は自社CADデータの命名ルールで登録
自社PLMに登録するデータは、自社の命名ルールに沿ったファイル名に変えておきます。ただし、受領したときのオリジナルファイル名がなんだったかはわかるようにしておきたいので、属性などに入れておきましょう。同じ部品データを複数回受領した場合は、そのたびに別名のファイルとして登録するのではなく、PLMのバージョン管理機能を使って、以前受領したデータの新バージョンとして登録します。そうすることで、新しいデータの更新に確実に気付けるようになるため、古いデータのまま作業を続けてしまうという手戻り発生を防げます。
4. 更新されないようにする
受領したデータが勝手に更新されないよう、権限設定しておきます。これにより、受領したデータの真贋性を担保します。
5. 登録先のアクセス権限に注意
他社から受領したデータは、その会社の機密情報となりますので、アクセス権の扱いに特に留意する必要があります。あの会社にデータ渡したら誰でも見える場所に公開されちゃうらしいよ、とならないよう関係者のみが利用できる適切なアクセス権限を付与することが必要になります。
💡 連携頻度が高い場合はPLMシステムの相互参照も視野に
データの共有する頻度が高かったり共有対象が多岐に渡ったりする場合や、自社と同じPLMシステムを採用している会社や自社の海外開発拠点や工場とやり取りをする場合には、自社PLMシステムに直接アクセスしてもらうほうがお互い効率的となります。
共有するデータサイズが大きくてかつ拠点同士が遠く離れているとデータの読込に時間がかかってしまいますので、このような場合はデータベース側で実体データのレプリカを持つなどの仕掛けの検討が必要になります。
また、このときもアクセス権設定が非常に重要になります。必要なプロジェクトデータだけが、必要な人だけに閲覧できるようにしましょう。
こういったレプリカサーバー設定やアクセス制御などはPLMシステムを利用しないと実現が難しいと思います。
他社も巻き込んだ「データ一気通貫へ」
こういったデータ共有の仕組みが構築できれば、他社とも単にデータを授受するだけでなくお互いの業務プロセスをデータでつなげることが可能になってきます。他社も巻き込んでデータ中心の仕事に変えていければ製品ライフサイクル管理をサプライチェーン全体で実現する第一歩になります。
連載コラム「いまさら聞けないPLM入門」の第7回「他社とデータ協業をすすめよう」は以上になります。自社内でのデータ活用だけでなく、他社ともデータを活用した業務プロセス基盤づくりを進めていきたいですね。次回コラムは、いよいよ最終回。ここまで紹介した各種取組みを実現させるためにどうしたらよいかについて紹介したいと思います。
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