RPA運用におけるリスクとは?
トラブルを回避するための対策も解説
近年、生産年齢人口の減少に伴う働き方改革の推進など、社会的背景の影響もあり、RPA(Robotic Process Automation)が注目されています。導入事例は着実に増加傾向にあり、国内企業(対象企業:従業員1,000人以上の企業)のRPA導入状況は85%という結果が出ています(*1)。業界や企業規模を問わず、RPAを活用する企業が増えており、その有用性が明らかになり始めている状況です。ロボットによる業務を自動化し、「効率化」を図るRPAですが、その効果を得るためには導入・運用時のリスク管理が欠かせません。そこで、この記事ではRPAが抱えるリスクやその対策についてご紹介していきます。
*1 出典:「RPA市場レポート2018」株式会社セグメント(RPA BANK.com)、アビームコンサルティング株式会社
RPAにおけるリスク
先述したように、RPAによる効果を得るためには、導入・運用におけるリスクへの向き合い方が大切です。RPAの特徴である「導入の容易さ」や「利便性」が持っているリスクについて把握し、導入後に想定されるトラブルへの対策を設定しておく必要があります。ここでは、RPAが抱える主なリスクについてまとめていきます。
誤処理を検知できない可能性
RPAは人間のように集中力に左右されることはなく、処理するデータの量や時間経過による精度の低下はありません。しかし、前提として人による「指示」の通りに作業をこなすことしかできないという側面もあります。もし、その「指示」の段階で誤りがあった場合も、RPAはそれを「間違い」として検知することはありません。このような場合、誤発注や誤送信、無意味なデータの収集など、取引先やお客様に迷惑がかかるような作業を進行し続けてしまいます。メリットであるはずの自動化が、重大な過失につながりかねないケースです。
「野良ロボット」の発生
「野良ロボット」の発生は、RPAの運用において、担当者が頭を悩ませる最も大きな問題と言っても過言ではありません。企業内では「使用するツールやソフトについては情報システム部門が管理している」というケースが一般的ですが、「管理部門が存在を把握できていないパソコンやクラウドサービスがある」という状況は珍しくありません。このような状態にあるものをIT業界では「野良」と表現しています。RPAの運用においても同様に「野良ロボット」が発生する可能性があり、管理部門の管轄外に置かれたロボットが、システムやデータの変更を反映しない状態で動作することで、業務に悪影響を及ぼしてしまう危険性があります。また、管理部門の目が行き届いていない箇所であることから、セキュリティ上の穴となってしまうことも少なくありません。
業務のブラックボックス化
RPA導入後は、人の手による「直接作業」の機会が減少することになります。このような状況に、異動をはじめとする「人の入れ替わり」が重なることで、RPAが対応できない範囲の例外的な処理を扱える人間がいなくなり、ロボットがエラーを起こしたときなどの業務プロセスの改善が難しくなる可能性があります。
セキュリティの問題
RPAの導入に際して、「セキュリティ」に関する問題も切り離すことはできません。自動処理をおこなうRPAでは、システムやアプリケーションのID・パスワードを埋め込むことが多く、効率化を優先させるあまりセキュリティ面の区分けを結合してしまうと本来の権限を越えた実行環境が形成される可能性があります。また、万が一ID・パスワードに関する情報が漏洩した場合、第三者が実行端末にログインしてしまうという危険性もあります。
既存システムとの不整合
企業の基幹システムやWebアプリケーションなど、複数のシステムの連携にRPAが導入されていることは少なくありません。連携先である既存システムにアップデートが生じた際、RPA側の改変が追い付かないことで処理が停止してしまったり誤作動を引き起こしたりなど、トラブルにつながる可能性があります。
リスクに対する管理対策
ここまでRPAが抱えるリスクについて見てきましたが、紹介したリスクの大半は、適切な対策を講じることで回避することができます。また、具体的な策定をおこなう際、RPAツールのベンダーではサポートが不足する部分もあるため、導入・運用のフルサポートに対応しているサービスを検討することも肝心です。それでは、以下でリスクへの対策について紹介していきます。
管理体制を確立する
RPAの導入・運用において、「ガバナンス体制の確立」は不可欠です。また、現場担当者であるロボットの開発者、それらを統括するRPA専任チームや情報システム部門など、それぞれの部門の連携が必須になります。「開発フローの明確化」や「監査・監視システムの構築」を徹底することで、「野良ロボット」発生の防止にもつながります。
プロセスをドキュメント化する
RPAに限らず、業務プロセスのブラックボックス化を防ぐためには、「マニュアルの作成」が大切です。基本的な業務プロセスをベースとして、例外的な処理への対応を網羅する形でドキュメント化する必要があります。また、ロボットの開発段階から、そもそもの業務フローを明確にし、適切な「RPAの適用範囲」を設定することも重要です。
エラーへの対処を策定する
「プロセスのドキュメント化」にも通じる部分はありますが、「システムのアップデート」をはじめ、「人為的なミス」や「突発的なシステム障害」などによるロボットのエラーへの対応を策定しておくことが重要です。業務が停止した際に「誰が」「どう」対応するのか、条件分岐など、エラーに対するプログラムを含めて決定しておきましょう。そのためにも、「RPA=エラーの可能性がある」という意識を全社レベルで共有することが大切です。
現場への普及を図る
さまざまな「リスクへの対策」を挙げてきましたが、RPAによる「業務の自動化」を考える際に「現場開発」という言葉は切り離すことはできません。管理部門が主体となり、作業フローの作成をはじめ開発・メンテナンスを推進し、現場へのヒアリングを実施するなど、現場に「RPAへの意識」を普及することが大切です。このような業務の見直しが進み、現場に「自動化による恩恵」が浸透することで、業務効率化へのモチベーションアップにもつながります。
まとめ
ここまでRPAの導入・運用におけるリスク、その対策について見てきました。RAPが抱えるリスクはさまざまなものがありますが、それらに対して「RPA=エラーの可能性がある」という前提のもと適切な対策を講じることで防止できるトラブルも多くありました。導入準備から導入後の全社展開まで、それぞれのフェーズに潜むリスクに対策することが「自動化」の効果を最大化するためのポイントです。日立ソリューションズでは、RPAの導入ステップに応じて、きめ細かい支援サービスを提供し、製品検討から全社展開までをサポートしています。「自動化すべき業務の選定」や「運用業務の負担軽減」をワンストップで支援し、部門横断で自動化を実現しています。運用担当者の方をはじめ、RPAの導入・運用について悩みをお抱えの方は、ぜひ活用を検討してみてください。
関連コラム
関連するお役立ちコンテンツ
-
統合システム運用管理JP1と各種RPA製品の連携により、柔軟なソフトウェアロボットの実行や一元的な予実績管理を実現。
バックオフィス業務のさらなる運用効率化と信頼性の維持・向上を実現します。