AI+RPAの新しい自動化の進め方ー日立ソリューションズの事例をご紹介
近年、生成AIとRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の組み合わせが、業務の自動化において大きな注目を集めています。AIの高度な学習能力とRPAの効率的なタスク処理を融合させることで、従来の手作業を大幅に削減し、業務プロセスの最適化を図ることが可能です。しかし、いまだ生成AIを実際に業務自動化に取り入れるところまでは活用できていないケースが多く見られます。この記事では、日立ソリューションズが生成AI+RPAで実現した自動化の取り組み事例のご紹介と、その進め方について詳しく解説します。
生成AIとRPAの連携がもたらす効果
生成AIとRPAの特長
生成AIとは、大量のデータをもとに新しいコンテンツや情報を自動的に生成する人工知能技術のことです。この技術は、自然言語処理、画像生成、音声合成など、多岐にわたる分野で応用されています。生成AIは、機械学習アルゴリズムを用いてパターンや傾向を学習し、その結果を元に文章の作成やデータの要約、クリエイティブなコンテンツの生成を行います。特に、対話型AIや自動文章生成ツールにおいては、人間とほぼ区別がつかないほど自然な文章を生成することが可能です。この能力により、マーケティング、カスタマーサポート、クリエイティブ産業など、さまざまな分野で業務の効率化と生産性向上に貢献しています。しかし、生成AIが生成するコンテンツは常に正確とは限らず、誤りや偏りが含まれる可能性もあるため、適切な監視と管理が必要です。
一方、RPAは、繰り返し行われる定型業務を自動化することに特化しています。両者を組み合わせることで、単純作業の自動化にとどまらず、データの抽出や分析、意思決定支援など、より複雑な業務の自動化が可能となります。これにより、業務の効率化と精度の向上が期待できます。
生成AIが業務自動化に与えるインパクト
生成AIは、業務自動化において革新的な変化をもたらしています。従来のRPAが担当する定型業務に加え、生成AIは非構造化データの処理や複雑な意思決定支援にも対応可能です。たとえば、大量の顧客フィードバックから重要な意見を抽出し、迅速に対応策を提案することができるため、顧客対応の質を飛躍的に向上させます。また、生成AIは文章作成やデータ要約といった業務にも応用でき、人手を介さずに短時間で高品質なアウトプットを生成します。これにより、従業員はより戦略的なタスクに集中できるようになり、全体的な業務効率が大幅に向上します。生成AIは、単なる業務自動化を超えて、ビジネスの根本的な改善と競争力強化に寄与する技術です。
生成AIを活用することで、RPA単体では対処が難しかった非構造化データの処理が可能となります。たとえば、メールの内容を自動で解析し、対応すべきタスクを分類・割り振るといったことが実現できます。そのような機能とRPAを組み合わせることで、自動化の適用範囲が広がり、より多くの業務を自動化できるようになります。
日立ソリューションズのAIを使った自動化の取り組みの例
日立ソリューションズの生成AIとRPAを活用した自動化の事例をご紹介します。
日立ソリューションズのハイパーオートメーションビジネス部門では、サブスクリプション契約のお客さまに向けたサポートサービスを提供しています。競争の激しい市場において、顧客満足度を高め、契約を継続させるためには、サポートの充実が欠かせません。しかし、限られたリソースで質の高いサービスを維持することは容易ではありません。そこで、業務の一部を自動化することで効率化を図り、その中でも特に生成AIを活用した自動化が大きな役割を果たしています。
FAQ作成業務の自動化
日立ソリューションズでは、顧客からのお問い合わせに対応した後、その内容をFAQ記事として公開し、お客さまのセルフサポートの一助となるコンテンツを拡充しています。お問い合わせ完了後の「そのお問い合わせをFAQ記事として公開するかどうかの判断」や「FAQ記事の作成作業」を、従来は手作業で行っていました。これらの業務は時間と労力を要し、担当者に大きな負担がかかっていました。そこで、これらのプロセスに生成AIを導入することで、効率化を実現しました。生成AIは、お問い合わせ内容を自動的に分析し、FAQとして有用かどうかを判断します。また、記事化が決定した内容については、AIがそのまま記事を自動生成し、担当者の最終チェックを経て公開されるようになりました。これにより、作業時間が大幅に短縮され、従来よりも3倍の量でFAQ記事を公開できるようになりました。
類似FAQの自動レコメンド
お客さまから問い合わせが届いた際、生成AIが公開されているFAQ記事の中から、お問い合わせに類似した内容のものをサポート担当者にレコメンドします。この生成AIによる自動レコメンドにより、担当者は過去の解決策を迅速に参照でき、効率的かつ正確な対応が可能となります。これにより、サポート業務のスピードが向上し、顧客への迅速な対応が可能になることで、満足度の向上に寄与しています。
お客さまの感情分析
顧客との問い合わせのやり取りに生成AIを活用し、感情分析を行っています。生成AIは、顧客のメッセージや対応履歴を解析し、そこから不満やストレスの兆候をいち早くキャッチします。これにより、潜在的な問題が表面化する前に対応策を講じることができ、顧客満足度の向上に繋がります。また、ネガティブな感情を持つ顧客への適切なフォローアップを早めに行うことが可能となり、サービスの質をさらに高めることができています。
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実際のAI+RPA導入のステップ
生成AIを実際の業務に取り入れることは難しいと感じるかもしれません。ここでは、日立ソリューションズが実践した導入のステップをご紹介します。進め方はこれだけが正解ではありませんが、効果的かつスムーズにAI+RPAを導入するための参考になるかもしれません。
Step1:生成AIでできること、課題を知る
生成AIは、ビジネスプロセスの効率化において多くの可能性を秘めています。できることも多いですが、問題点もあります。生成AIの活用を検討する場合には、まずそれらをしっかり把握し、バランスを取って活用することが大切です。
ここに、生成AIのできること、課題、また生成AIを使った自動化のポイントをまとめます。
<生成AIの得意なことと課題>
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コンテンツの生成
生成AIは、大量のデータから新しいコンテンツを自動的に生成することができます。例えば、ブログ記事、ソーシャルメディアの投稿、商品説明文など、マーケティングや広報において日常的に必要とされるコンテンツを短時間で作成できます。
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情報の要約
生成AIは、膨大な文書やデータセットから重要なポイントを抽出し、簡潔に要約することができます。これにより、長時間を要するリサーチやデータ分析を効率化し、意思決定を迅速に行うことが可能になります。
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情報の抽出
生成AIは、大量の非構造化データの中から、特定の情報を抽出することにも優れています。例えば、顧客のフィードバックや市場調査レポートから、ビジネスに有用なインサイトを引き出すことができます。
しかし、生成AIは万能ではなく、いくつかの問題点も存在します。たとえば、AIが生成するコンテンツや要約が、必ずしも正確であるとは限りません。
また、生成AIは複雑な判断を伴うタスクや、ニュアンスを正確に理解する必要がある業務には不向きな場合があります。したがって、生成AIの導入に際しては、以下のポイントに注意が必要です。
<生成AIを使った自動化のポイント>
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人間のチェックを入れる
生成AIは高い精度を持つ一方で、時には誤りや不正確な情報を生成することもあります。そのため、AIが生成したコンテンツや要約をそのまま使用するのではなく、人間のチェックを必ず入れることが重要です。特に、重要な決定に関わる業務や、対外的なコンテンツにおいては、AIを信用しすぎない姿勢が求められます。
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誤っても問題のない業務に適用する
一方で、誤りが生じても大きな影響を与えない業務に生成AIを適用することで、チェックの負荷を軽減することができます。たとえば、社内向けに直近のニュースをまとめた報告書や、仮説検証のための一次情報の抽出など、後から修正が容易にできるタスクに適用するのが効果的です。このように、生成AIの活用範囲を慎重に選定し、適材適所での運用を行うことが成功の鍵となります。
生成AIの可能性を最大限に引き出すためには、その限界を理解し、適切に活用することが求められます。できることとできないことのバランスをとりながら、自動化の進め方を計画することが重要です。
Step2:業務にどう適用できるか考える
次に、生成AIをどの業務にどのように活用できるかを検討します。日立ソリューションズでは、特にリソースがひっ迫していたサポート業務に焦点を当てました。まず、生成AIの要約や生成の特性を生かし、お問い合わせ内容をもとにFAQを自動生成するプロセスに適用できないかを検討しました。顧客からの問い合わせをインプットとしてFAQ記事を作成することを考え、具体的な運用イメージを練り上げました。さらにこの機能を皮切りに、サポート業務のほかの作業にも使えないか、アイデアを広げていきました。
Step3:どう実装できるか考え、テストする
次に、具体的な実装方法の検討に進みました。できるだけ自動化するため、生成AIを使う前後の処理にRPAを使用することにしました。まず、RPAを使って生成AIに渡すプロンプトを自動作成し、生成AIに結果を出力させます。その後、RPAがその出力結果を後続の処理に活用し、最終的に担当者が確認するという流れを想定しました。この一連のプロセスにより、効率的な自動化が可能であると判断し、実際に試験運用を開始しました。この試験を通じて、生成AIとRPAの連携がスムーズに行えることを確認し、本番稼働を開始しました。
自社で導入する場合
Step1~3の内容は、あくまで日立ソリューションズの事例に基づいたものです。一般的に、業務自動化を進める際のセオリーは、まず業務の棚卸しを行い、その後、対象となる業務を選定するステップを踏むことです。しかし、これはあくまでアプローチ方法の一つであり、実際は自社の状況に応じて柔軟に対応することが重要です。企業ごとに異なるニーズやリソースの制約を考慮し、最も効果的な方法を選択することが成功の鍵となります。例えば、すべての業務を棚卸しする前に、特定の業務をピンポイントで自動化することで、早期に成果を上げることも可能です。自社に適したアプローチを見つけるために、セオリーにとらわれず、柔軟に進めていくことが大切です。
よくある課題と解決策
生成AIを使った自動化を検討する際、多くの企業が直面する課題には、どのような進め方が自社に適しているかわからない、生成AIの使用に対する不安、自動化の具体的なアイデアが浮かばない、実装方法がわからない、人材が不足しているなど、さまざまな要素があります。これらの課題を自社で解決するのが難しい場合は、外部の専門家に相談するのもよいでしょう。日立ソリューションズは、豊富な実績を持ち、相談から実装まで一貫してサポートする体制が整っています。このような専門知識を持つパートナーの力を借りれば、初めての導入に不安がある企業でも、安心して相談でき、適切なアプローチを見つけることができるでしょう。
まとめ
生成AIとRPAを組み合わせた業務自動化は、業務の効率化に大きく寄与する技術です。日立ソリューションズの事例からもわかるように、適切に導入すれば、さまざまな業務において、大きな成果を得ることが可能です。しかし、生成AI導入には課題もあり、適切に活用することが大切です。導入に際しては、自社に適したアプローチを選び、柔軟な視点を持つことも必要です。もし、自動化の進め方や実装に不安がある場合は、外部パートナーの力を借りることで、スムーズな導入を実現できるでしょう。自動化において豊富な実績を持っている日立ソリューションズにぜひご相談ください。