RPAの課題とは?原因から解決方法まで徹底解説
業務効率化ツールとしてだけでなく、労働力不足という社会問題を解消する手段としても注目されているRPA。RPAは作業手順を記憶することで、人間の代わりに自動で作業を遂行し、業務を効率化することができるツールです。膨大なデータを扱うメガバンクなど、金融業界で導入が進み、そこで大きな成果を上げたことがきっかけとなって、現在はさまざまな業界で導入する企業が増えています。しかし、その一方で、まだ導入をためらっている企業があるのも事実です。その理由は、RPA導入に関わるさまざまな課題の存在です。ここでは、実際に多くの企業が直面している課題を紹介したうえで、その解決方法を解説します。
RPAにおける課題とは?
RPAは、人件費が多くかかるような手作業の業務プロセスを、正確かつスピーディーに行うことができ、比較的短期間、かつ、低コストで導入できるという特長があります。さまざまな業界業種で活用されているが、導入を阻害する原因や導入した後の運用面での課題もあります。ここではまず、具体的にどのような課題があるかを紹介します。
どの業務に適用すれば良いか分からない
一般的に、RPA導入のメリットとして、よく挙げられるのは「人件費が削減できる」「24時間365日稼働できる」「生産性が上がる」などです。ただ、RPAによって、パソコンを使った面倒な手作業を自動化でき、多くのメリットがあるというイメージはできるが、実際に導入をしようとすると、自社の業務の中でRPAにできるものは何なのか、どの業務に導入するのが効果的なのかが分からずに、導入を断念してしまいがちです。
また、RPAツールにもさまざまな種類があり、多くのベンダーから販売されていますが、自社に最適なRPAツールがどれなのかが分からないということも、導入を断念する原因になっています。
RPAの設定方法が分からない
RPAの特長として、「プログラミングの知識が必要ない」と言われることがあります。確かに、プログラミング言語を使うことなく、簡単に設定ができるRPAツールも多数存在しています。しかし、実際にRPAを導入し、自分で設定をしてみたところ、思うように動作せず、設定をどう変えればいいのかが分からずに、途中で諦めてしまったという事例もあります。また、自分で設定し、一見うまく動作しているように見えても、それが一番効果的な方法でなかった場合、せっかく導入したRPAを最大限に活用できていなかったり、不必要にシステムに負荷がかかりすぎていたりというケースも珍しくありません。
運用できる人材がいない
前項でも触れたとおり、RPAはプログラム言語の知識がなくても導入できますが、とはいえ、やはりそれなりにITの知識を持っている人材が社内にいるほうが安心です。エラーが発生したときや、業務内容や作業手順が変わったとき、社内の基幹システムの変更にともなってRPAの再設定が必要になったとき、別の業務にもRPAを活用するときなど、IT知識に乏しい従業員だけでは対応しきれなくなってしまいます。 また、RPA導入を担当した従業員が異動や退職することも想定しておく必要があります。RPAが行っている業務内容やシナリオに加えて、RPAツール自体についても、引き継ぎをしておかないと、せっかく導入したのに運用できる人がいないという状況になってしまいます。
期待していたほどの効果が実感できない
RPAツールさえあればさまざまな業務が自動化でき、生産性向上などの効果がすぐに表れるかと言うと、現実にはそうならないことも多くあります。その原因のひとつは、社内でRPA活用の意識が統一されないことです。その結果、効果的な活用がなされなかったり、一部の限られた業務にだけしか適用されなかったりして、得られる効果よりも導入のための手間やコストのほうが大きくなってしまうケースがあります。また、RPA導入の目的が不明確で、どのくらいの効果が見込めるのかも事前に想定していないことが原因で、効果を実感しにくくなってしまうことも多くあります。
トラブルが発生する
RPAは非常に有用であるため、さまざまな業務に導入して拡大していくことで、より大きな成果を得ることができます。しかし、RPAを十分理解せずに設定をしたことで、予期せぬ動作をしたり、別の業務の邪魔をしてしまったりするといった事態が起こる危険性もあります。RPAの特性を把握しないまま導入したことでトラブルが発生し、その結果、メリットよりもデメリットが際立ってしまい、導入したが実際には活用されなくなってしまうということも起こりえます。
そもそもRPAとは?
RPAは、Robotic Process Automationの略語で、人間がパソコン上で行う作業を自動化するソフトウェアロボットのことです。たとえば、あるファイルから別のファイルに、データをコピー&ペーストするといった作業を、シナリオとしてRPAに記憶させることで、自動的にその作業を反復するようにできます。しかも、RPAはロボットなので、24時間365日稼働可能。このことから、RPAは「デジタルレイバー(仮想知的労働者)」と呼ばれることもあり、人間の代わりになる労働力として期待されています。
関連情報:RPAとは
RPA導入の現状
RPAが、注目され始めたのは2017年ごろで、いち早く導入されたのは金融業界です。膨大なデータを扱う手間のかかる定型的な業務が多く、RPAに向いていると考えられたからでしょう。そして、金融業界で成果を上げたRPAは、業務効率化や人手不足の解消といった効果を見込まれ、導入する企業は急激に増加しました。2020年には85%以上の企業がRPAを導入済みと言われています。ただし、その85%超の企業の中でも、全社でRPAを活用できているのは、そのうちの5%に過ぎません(*1)。
また、RPAを活用している業務については、営業事務や経理事務、人事事務、総務事務といった事務作業が多く、全体の約60%を占めています。具体的には、見積書や請求書、提案書の作成、経費精算、勤怠管理、備品管理などに活用されています。事務作業に次いで多かったのは、データ管理・監視で、全体の22%を占めています(*2)。
なお、RPA導入の効果に「満足している」と答えた人は約40%で、60%以上の人が、満足のいく効果を実感できていないということが判明しました(*2)。効果が実感できないと、RPAを導入する業務を拡大するモチベーションが低下し、導入が進まなくなってしまいます。これが、全社でRPAを活用している企業が5%に留まっている原因のひとつと考えられます。
- *1RPA BANK調べ
- *2日立ソリューションズ調べ
RPAの各種課題の解決方法
上述したとおり、RPAには「効果が実感できない」「運用できる人材がいない」など、さまざまな課題があります。それが要因となり、企業の業務にRPAが完全に浸透しているとは言えない状況です。これらの課題に対しては、導入前からきちんと対策を考えておくことで、導入時はもちろん、その後の運用もやりやすくなります。そこで、ここからはRPAの課題に対する対策例をご紹介します。
導入の目的を明確化する
どの業務にRPAを導入するのかを決定するため、さらには導入の効果を最大化するために必要なことは、目的や目標を明確化することです。まずは、自社内の業務内容の整理から着手します。整理をしていくと、自ずと課題や問題点が見えてきます。そこから自動化によって業務効率を改善する業務を見つけて、RPAを導入。また、RPA導入前の業務状況を分析し、数値化できるものは数値化しておくことが大切です。目標値を決める材料にもなるほか、導入後に効果測定をした際の比較材料になります。あらかじめ設定した目的や目標を達成できているかを確認し、次のステップの参考にします。
ベンダーの支援を受ける
RPAは、プログラミング言語を使わずに設定できるものがあるため、自社内の人材でも導入することは可能です。ただし、プログラミング不要というツールであっても、効果的に使おうとすると、やはりプログラミング知識が必要なるケースも少なくありません。シナリオの設定などに手間取ってしまうようであれば、ベンダーのサポートを受けることを検討しましょう。ベンダーのサポートを受けることで、導入がスムーズに進み、自社内の人材を本来の業務に集中させることができます。また、経験豊富なプロに任せることで、より効果的なRPA導入が期待できるほか、導入後のメンテナンス方法についても学ぶことができます。
RPAの意義を社内で共有し、人材を育てる
経営層や導入を推進する部門の従業員だけでRPA導入を進めてしまうと、現場に意義が伝わらず、「仕事を奪われる」「自分の仕事がなくなってしまう」といった抵抗感が生まれたり、うまく活用されないまま頓挫してしまったりする可能性が高くなります。RPA導入の目的や有用性を社内全体で共有し、現場の従業員がRPAの効果を実感できるようにしましょう。そうすると、自然と現場で活用が進んでいきます。また、導入後の運用やメンテナンスができる体制をつくるために、導入時から必要に応じて研修などを行い、RPA人材を育てていくことをおすすめします。
運用ルールを決める
トラブル発生時に迅速で適切な対応をするためや、セキュリティー対策のためには、RPAガバナンスを整備しておくことが重要です。そのためには、社内でRPAの運用ルールを取り決めておく必要があります。まずは、誰がどのRPAを開発したのか、どの業務にどのRPAが稼働しているのかなど、RPAを一元管理できるようにします。さらに、RPAを開発する際、メンテナンスをする際、稼働を停止する際などのマニュアルを作成し、ルールを全社で統一しておくようにしましょう。こうすることで、トラブルを予防できるほか、RPA業務の属人化を防ぐことができます。なお、マニュアルやガイドラインの作成、運用体制の構築には手間がかかる場合が多く、これに関してもベンダーの支援を受けることを検討してみても良いでしょう。
スモールスタートで始める
RPAはうまく活用すれば、かなりの業務効率化が期待できる非常に有用なツールです。しかし、だからと言って、さまざまな業務や規模の大きな業務にいきなり導入してしまうのは、リスクもあります。特に人材が育っていない場合には、トラブル対応が間に合わず、大きな損失につながりかねません。まずは小規模な業務で試験的にRPAを導入し、その効果が実感でき、RPAがどういうものかをつかむことが重要です。そこには、RPAを活用するイメージが湧きやすくなり、社内からアイデアや意見も出やすくなるというメリットもあります。着実に成功を積み重ねながら、少しずつ自動化する業務を拡大していくのがおすすめです。
まとめ
組織の規模や体制によっても異なりますが、RPA導入時には、さまざまな課題が発生し、導入に失敗してしまう企業も少なくありません。ここでご紹介したような課題をあらかじめ頭に入れて、対応策を考えておくことで、よりスムーズに、より効果的にRPA導入を進めることができます。また、運用後のことも見据えて、サポートの充実したベンダーやツールを慎重に選定するようにしましょう。
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